債務整理 弁護士コラム
自己破産は、裁判所に申し立てるだけで終わるものではありません。事案によっては申し立て後の手続きに半年~1年程度の期間を要することもあります。
自己破産を成功させるためには、申し立て後にもさまざまなことに注意しなければなりません。
そこで、本コラムでは、
・自己破産申し立て後の手続きの流れと期間
・自己破産申し立て後に変わること
・自己破産申し立て後にしてはいけないこと
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
自己破産申し立て後の流れと期間は、「同時廃止事件」、「少額管財事件」、「特定管財事件」のどれに付されるのかによって大きく異なってきます。なお、以下では東京地方裁判所の運用を前提として解説します。裁判所によっては運用が異なる場合があることにご注意ください。
同時廃止事件とは、破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止される(終了する)事件のことです。債権者への配当に充てられるだけの財産がなく、免責不許可事由もないことが明らかな事案が同時廃止事件となります。
自己破産申し立て後、裁判官との面談(債務者審尋)を経て、同時廃止相当と判断されると破産手続開始決定・破産手続廃止決定が出されます。通常、ここまでに1か月程度を要します。その後は、直ちに免責手続きに移行するため、手続きは速やかに進行します。
申し立てから免責許可決定までの期間は3~4か月程度が平均的です。
少額管財事件とは、破産管財人が選任されて破産手続きが行われるものの、特定管財事件よりは手続きが簡略化された事件のことです。破産者に評価額20万円を超える財産があるケースや、財産がなくても免責不許可事由の存在が疑われるケースが少額管財事件に付されます。
やはり、申し立てから約1か月後に破産手続開始決定が出され、そのときに破産管財人が選任されます。そして、破産管財人による財産調査、免責に関する調査、必要に応じて財産の換価処分、債権者への配当が行われ、債権者集会も開催されます。これらの手続きに要する期間は平均して1~2か月です。その後、免責手続きに移ります。
申し立てから免責許可決定までの期間は4~6か月程度が平均的となっています。
特定管財事件とは、破産法の原則どおりに破産手続きが行われる事件のことです。東京地方裁判所では「特定管財事件」と呼ばれていますが、裁判所によっては「通常管財事件」と呼ばれていることもあります。破産者に評価額50万円を超える財産があるケースは特定管財事件に付される可能性があるでしょう。
破産手続きの基本的な流れは少額管財事件と同様ですが、簡略化されないため、平均して3~8か月程度の期間を要します。
そのため、申し立てから免責許可決定までの期間は6~12か月程度が平均的となっています。破産者の財産状況が複雑なケースや財産の換価作業に手間がかかるケース、債権者数が多いケースなどでは長期化する傾向にあり、12か月を超える場合も珍しくありません。
自己破産申し立て後には、以下のようなデメリットが生じます。申し立て前にしっかりと確認し、仕事や生活への支障が大きい場合は他の債務整理を検討した方がよいかもしれません。
破産手続開始決定が出ると信用情報機関に事故情報が登録され、新たな借り入れやクレジットカードの利用などの信用取引をすることが難しくなります。事故情報の登録期間は信用情報機関によって異なりますが、5~10年です。
なお、自己破産を弁護士に依頼した場合は、受任通知が債権者に到達した時点で事故情報が登録されることに注意が必要です。
破産手続きでは、破産者の財産は自由財産を除いて処分されます。処分とは、法的な措置によって財産等を自由に使えなくなる措置を受けることを指します。破産手続きにおける処分では、処分を受け自由に使うことを制限された破産者の財産は、管財人によってお金に換えられ(換価処分)、債権者に配当されます。
なお、自由財産とは、その名称の通り、法的な制限を受けることなく自由に使える財産です。具体的には、99万円以下の現金、法律で差し押さえが禁止されている財産、破産手続開始決定後に取得した財産などが該当します。
東京地方裁判所の運用では、その他にも評価額20万円以下の財産が自由財産として扱われており、処分されません。
破産手続開始決定が出ると、「士業」と呼ばれる資格や、生命保険の外交員、警備員など一部の職業に制限がかかります。したがって、人によっては仕事を辞めなければならない可能性がある点に注意が必要です。
また、破産手続開始決定が出ると、引っ越しや宿泊を伴う移動には裁判所の許可が必要となります。正当な理由があれば許可されますが、レジャー目的の旅行などは自己破産手続きが終了するまで控えた方がよいでしょう。
管財事件に付された場合は、財産や負債状況の調査のため、破産者宛ての郵便物は破産管財人に転送されます。破産管財人が開封して中身を確認した後、問題がない郵便物については破産者に返還されます。
自己破産すると、官報に住所や氏名などが掲載され、世間に公表されます。官報に掲載されるタイミングは、原則として破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回です。
自己破産申し立て後に以下の行為をすると、破産手続きに支障をきたし、免責が得られなくなる可能性があるので注意が必要です。
自己破産をするということは支払不能ということなので、申し立て後はすべての返済をストップしなければなりません。返済を継続すると申し立てを棄却される可能性があり、一部の債権者にのみ返済をすると免責不許可となる可能性があります。
財産を手元に残したいからといって隠したまま自己破産を申し立てると、免責不許可となる可能性があるだけでなく、詐欺破産罪に問われる恐れもあります。申し立て後に、申告し忘れた財産があることに気付いた場合は、直ちに裁判所へ正直に申告することが必要です。
自己破産の申し立て後は裁判官との面談や、管財事件となった場合は破産管財人との面談で、さまざまな事情を聴かれます。その際に虚偽の説明をすることも、免責不許可事由に該当します。裁判所や破産管財人が行う調査には、誠実に協力しなければなりません。
浪費やギャンブルも免責不許可事由のひとつです。自己破産申し立て前の浪費・ギャンブルについては、程度にもよりますが裁量免責が受けられる可能性が十分にあります。しかし、申し立て後も浪費・ギャンブルを続けていては、反省していることにならない上に、経済的更生の見込みが乏しいと裁判所から判断され、免責不許可となる可能性が極めて高くなります。申し立て後の浪費やギャンブルは厳に慎みましょう。
自己破産をすると金融機関や貸金業者からの借金はできなくなりますが、親族や友人などの個人や闇金から借りることは可能です。しかし、闇金から高金利で借りると、著しく不利益な条件で債務を負担したものとして、免責不許可事由に該当する可能性があります。また、返済するあてもないのに借金をすることで詐欺罪に問われる恐れもあります。借金を清算するために自己破産を申し立てた以上は、新たな借金をすべきではありません。
自己破産申し立て後の生活についても、いくつかの注意点があります。
管財事件に付された場合でも、処分の対象となるのは破産手続開始決定時に破産者が所有していたものに限られます。その後に支払いを受ける給料や報酬、贈与や相続などで取得した財産などは、すべて自由に使えるのです。自己破産をしても生活していくことは十分に可能なので、財産処分を過度に恐れる必要はありません。
免責許可決定が確定すると、借金の返済義務がすべて免除され、資格・職業の制限や転居・旅行の制限も解除されます。逆にいえば、確定するまでこれらの効果は生じないことに注意が必要です。免責許可決定から確定までは約1か月かかります。
自己破産すると官報に掲載されるものの、一般の人が官報を見ることはほとんどありません。また、「破産者マップ」と呼ばれるサイトが出現してインターネット上に破産者の個人情報が掲載されることもありますが、こういったサイトに対しては個人情報保護委員会が厳正に対処しています。自己破産が周囲にばれることを恐れて申し立てをためらう必要はないといえます。
自己破産申し立て後、手続きがすべて終了するまで(免責許可決定が確定するまで)には、同時廃止の場合で3~4か月程度、そのほかのケースでは6か月~1年程度かかります。事案によってはさらに長期化することもあるので、気になる場合は弁護士に相談して見通しを確認し、併せて、申し立て後の注意点についてもアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、自己破産をはじめとする債務整理のご相談は何度でも無料で受け付けております。経験豊富な弁護士が、どのようなご質問に対してもわかりやすく、親身にお答えいたします。お困りの際は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。
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借金問題の解決手段として自己破産を選択すれば、裁判所から免責許可を得られた場合に限り、原則としてすべての借金返済義務が帳消しになります。
ただし、自己破産の強力な借金減額効果を享受するには、自己破産特有の「財産処分」というデメリットに注意が必要です。特に会社員の方が自己破産をする場合は、退職金という大きな財産の扱いが問題になります。
本コラムでは、自己破産をしたときの退職金の取り扱いについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。自己破産手続きは、財産処分以外にも注意すべき点が少なくありません。想定外のデメリットを被る事態を避けるためにも、事前に弁護士までご相談ください。
多額の借金を背負っても、自己破産をして免責が許可されれば借金はゼロとなり、人生の再スタートを切ることができます。
実際、令和3年、自己破産を裁判所に申請し受け付けられた件数は、6万8240件でした。(令和3年司法統計第105表 「破産新受事件数 受理区分別 全地方裁判所」より)
とはいえ、自己破産をしてしまうと、その後の生活においてさまざまな制限に悩まされることになると考えている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、自己破産をすると、その後の生活への影響がゼロというわけではありません。しかし、実は多くの方が心配しているほど制限された生活を余儀なくされるわけでもありません。自己破産後の生活が気になる方は、本コラムを参考にしてみてください。
自己破産とは、返済できなくなった借金から解放されるための法的手続きです。
しかし、自己破産を申し立てても、必ず借金の返済義務が免除されるとは限りません。「免責」が許可されて初めて返済義務が免除され、借金から解放されます。
本コラムでは、自己破産における免責とは何か、どのようなケースで免責が許可されないのかについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。免責許可を受けるための手続きや、免責許可が難しい時の対処法も解説するので、ぜひ参考にしてください。