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自己破産後の復権とは? ~自己破産したときの資格・就業制限について解説

2019年09月10日
  • 自己破産
  • 復権

自己破産後の復権とは? ~自己破産したときの資格・就業制限について解説

復権とは、破産者が本来の法的地位を回復させ、一般人の状態に戻ることを指します。

自己破産を考えている人は、色んなことに不安を感じると思います。特に、勤めのある人にとっては、「自己破産すると就けなくなる仕事がある」ことは気がかりでではないでしょうか? 「自己破産するなら仕事を辞めなければならないのだろうか?」と神経質にもなるでしょう。

そこで、この記事では、

・そもそも自己破産すると仕事にどのような影響があるのか?
・資格制限が生じる場合の具体例
・復権するための方法
・資格制限を回避したいときの借金解決方法

について解説します。

自己破産後の「復権」は、決してハードルの高いものではありません。実際に自己破産した人のほとんどは、問題なく復権しています。自己破産したことで影響を受ける仕事に就いている場合でも、事前にきちんと対応すれば、退職する必要もなければ、解雇されることもありません。
資格制限が気になって自己破産に踏み切れないという人は、この記事の解説をぜひ参考にしてください。また、自己破産について不安なこと、わからないことは、無料相談を活用して弁護士に相談してみると良いでしょう。

1、「復権」とは?

復権とは、簡単にいえば「破産者」ではなくなることです。自己破産を申し立て、裁判所から「破産手続き開始決定」をうけると、「破産者」となり一定の制約が生じます。「復権」は、その制約を解除してもらうための手続きのことです。

  1. (1)自己破産における資格制限とは?

    自己破産したことで「破産者」となると、一定の資格者として業務を行うことができなくなります。
    たとえば警備員はその代表例で、警備業法では次のように規定されています。

    第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
    一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

    第十四条 十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。
    2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。

    また、弁護士・司法書士といったいわゆる「士業」のほとんどは、それぞれの根拠法(弁護士法)などによって、資格の停止となることが定められています。

  2. (2)資格制限は一生続くわけではない

    自己破産による資格・就業制限の規定は、例外なく「破産者で復権を得ないもの」という文言を用いています。つまり、自己破産による資格・就業制限は、「一生続くわけではない」ということです。

    たとえば、自己破産によって資格が停止された弁護士であっても、復権すれば資格制限は解除されます。自己破産前に取った資格を剥奪されるわけではないので、司法試験を再度受け直さなければならないというわけではありません。

  3. (3)資格制限される期間は長い?

    自己破産による資格制限は、ほとんどのケースで「免責による復権」で解除されます。また、破産者となるのは、「破産手続き開始決定」を受けたときなので、自己破産の申し立てをしたらすぐに資格停止となるわけでもありません。

    一般的な自己破産事件では、破産手続き開始決定から免責まで、同時廃止となったケースでは3ヶ月前後、管財事件となったケースでは5ヶ月(~1年)程度です。同時廃止が見込まれるケースでは、資格・就業制限を受ける期間もかなり短いものです。

2、自己破産で資格制限される資格や仕事には何がある?

自己破産による資格や就業の制限は、すべての職業で生じるわけではありません。前述した弁護士などの士業や、警備員に加え、「他人の財産を管理する」、「高額な財産を取り扱う」資格や仕事などに限られます。

したがって、普通のサラリーマンとして勤務している人のほとんどは、自己破産したことで「仕事に就けなくなる」ことはありません。公務員の場合も、同様です。

  1. (1)自己破産すると制限を受ける資格・職業

    自己破産すると制限を受ける資格や職業の主なものは、下記のとおりです(五十音順)。

    卸売業者 貸金業者 行政書士 警備員 警備業者 建築士事務所開設者 建設業(一般建設業、特別建設業) 公証人 公認会計士 質屋 司法修習生 司法書士 社会保険労務士 生命保険募集人税理士 損害保険代理店 宅地建物取引士 宅地建物取扱業 中小企業診断士 通関士 土地家屋調査士 廃棄物処理業者(一般廃棄物処理業者、産業廃棄物処理業者) 不動産鑑定士 弁護士 弁理士 旅行業務取扱管理者 旅行業者


    仕事以外のものとしては、「後見人」、「保佐人」、「補助人」、「遺言執行者」に就くこともできなくなります。

    現在の法律では、株式会社の取締役は自己破産をして復権を受けてない人でも就任することは可能です。かつての商法の規定は、「破産者で復権を得ない」場合を取締役の欠格事由として定めていましたが、会社法制定に伴って廃止されています。ただし、取締役に就いている人が自己破産すると、株式会社との委任契約が解除されることになるため、解任されてしまうことに注意が必要です(解任後復権前に再就任することは可能です)。

  2. (2)資格制限されると具体的にどうなる?

    ここでは、自己破産によって制限を受ける資格のうち、対象となる人が多い2つの職業について資格制限の具体例を紹介します。

    ①警備員が自己破産した場合
    警備員が自己破産したときの制限は、他の資格・職業に比べて規定が明確です。警備業について定めている警備業法では、「破産者で復権を得ない者」は、「警備業を営む(警備会社の経営する)こと」も、「警備員となる」ことも禁止しています(警備業法3条・14条)。

    警備員の制限は、現金の輸送といった財産の警備だけでなく、工事現場や駐車場・イベント会場の警備といったあらゆる警備に適用されます。正社員・アルバイトの区別もありません。

    したがって、警備員の人が自己破産するときには、勤務先への事前報告が必須です。万が一、事前報告なしに、復権前に警備業に従事すれば、勤務先が行政処分を受け、その損害賠償を請求される可能性があります。

    ②保険募集人の場合
    保険募集人(保険外交員)の制限は、警備員よりは緩やかです。保険募集人が自己破産したときには、「登録の取消または6ヶ月以内の業務の全部もしくは一部停止」を命じられる「可能性がある」にとどまります(保険業法307条)。

    ここでのポイントは、「必ず登録が取り消される」わけでも「業務停止となる」わけでもないことです。処分される(制限を受ける)かどうかは、監督官庁の任意の判断に委ねられています。保険募集人には、「自己破産したことを監督官庁に報告する義務」もありません。

    とはいえ、万が一の場合に備えて、自己破産する際には、勤務先(保険会社)には必ず事前相談すべきです(自己破産したことよりも「報告・相談をしなかったこと」が解雇事由となる可能性があります)。

    なお、保険会社(法人)が破産したときには、当然の欠格事由として登録が取り消されます。
    また、保険会社には自己破産したことの報告義務も課せられています。ウェブ上の記事には、保険会社に対する制限と(従業員にすぎない)保険外交員に対する制限とを混同して解説している記事もあるので注意してください。

    他方で、これから保険募集人になろうとしている人は、注意が必要です。「破産者で復権を得ない者」は、保険募集人として新規に登録を受けることはできないからです。

  3. (3)資格制限をうけたら懲戒解雇になる?

    「自己破産が会社にばれたらクビになる」という不安を抱えている人は多いと思います。しかし、「自己破産のみを理由とした懲戒(解雇)」は、労働契約法に違反するというのが一般的な解釈です。

    自己破産を理由に解雇するときには、社員が自己破産したことで「会社の業務執行に大きな支障が出た」という場合や「会社の社会的信用を失墜させた」といった合理的な理由が必要となります。

    過去の最高裁判例では、社員が労働組合活動中に公務執行妨害で逮捕された場合、酔っ払って他人の住居に不法侵入して罰金刑となった場合でも「懲戒解雇は合理的な理由がなく無効」としたものもあります。

    これらのケースと比較しても、私的な問題にすぎない自己破産で懲戒解雇が認められるのは、ごく限られたケース(重大な理由がある場合)だけと理解してよいでしょう。

3、自己破産後に復権を得る方法

自己破産後に復権する具体的な方法を紹介します。

  1. (1)免責が確定すれば何もしなくても復権する

    復権のほとんどは、「免責の確定」によって当然復権します。「当然復権」というのは、文字通り、特別な手続きを何もしなくても「当たり前のこととして復権する」場合のことをいいます。

    そもそも、自己破産は、「免責を得る」ことを目的に申し立てられるものです。免責を受けなければ、自己破産をしても借金の返済義務は免除されません。

    したがって一般の方にとっては、自己破産の終了は「免責を得ること」を意味しているので、「無事に自己破産が終わること」が復権の条件と言えるのです。

    なお、「ギャンブルによる多額の借金がある」場合のように、免責不許可事由に該当するケースでも心配はいりません。ほとんどの自己破産では、免責不許可事由に該当していても「裁判所の裁量による免責」を受けることができるからです。最終的に免責不許可になるケースは、自己破産全体のほんの数%にすぎないといわれています。

  2. (2)「免責が得られなかった場合」に復権する方法

    免責を得られなかった場合でも、次の方法で復権することができます。

    • 個人再生の申し立て
    • 破産手続き開始決定から10年の経過
    • 復権の申し立て

    ①個人再生で「再生計画が認可」されると復権する
    免責不許可となった場合には、自己破産しても借金は免除されません。この場合には、自力で借金を返せないことがほとんどなので、個人再生で解決を図るほかありません。

    個人再生を申し立て、裁判所による「再生計画認可決定」が確定すれば、「当然復権」となります。

    ただし、再生計画認可後に、計画返済(計画に基づく借金の分割返済)を怠れば、再生計画認可が取り消されることで、復権も取り消されてしまいます。

    ②破産手続きから10年たつまで放置する
    免責不許可になった破産者の経済的な事情によっては、個人再生を申し立てられない場合もあるかもしれません(個人再生を利用できる収入がない場合)。また、個人再生を申し立てても、債権者の反対にあって再生計画案が否決されてしまう場合も考えられます。このような場合には、「借金を返済したくても返済できない」可能性があります。

    万が一、免責不許可後に借金問題を解決できなかったとしても、「破産手続き開始決定から10年が経過」すれば、当然復権となります(破産法255条1項4号)。

    ③申し立てによる復権(裁判による復権)
    免責不許可となった後に、次のような事実が生じたときには、破産者の申し立てにより復権が認められます。

    • 借金を完済できた
    • 借金が消滅時効にかかった
    • 債権者が借金を免除してくれた

    たとえば免責不許可となった後に、「債権者と任意整理をしてその借金の返済が終わったとき」や、「免責不許可後に相続で得た財産で借金を完済できた」といった場合が上のケースに該当します。

    これらのケースでは、「借金がなくなった」ことを裁判所は逐一把握できません。したがって、破産者(債務者)が自ら、「借金がなくなったことの証拠」をそろえて、裁判所に復権の申し立てをする必要があります。

4、復権したら仕事に復帰できる! けど?

免責確定などによって復権すると、具体的にどのような効果が生じるのかについて確認しておきましょう。

  1. (1)復権の効果

    復権の効果は、「自己破産による資格制限が解除されること」です。したがって、士業者や警備員・保険外交員などが自己破産したときには、免責確定によって、元通りの仕事に戻ることができます。

    復権の申し立てによって決定を下した場合を除き、裁判所が「復権したこと」を通知してくることはありません。裁判所が下す「免責決定」にも主文に「免責を許可する」とだけ記載されるだけですが、こちらから「復権」しているかどうかを確認するための手続きも不要です。

    なお、本籍地のある自治体で発行される「身分証明書」では、「破産者でないこと」は確認できます。現在の運用では、「自己破産をしただけ」では破産者名簿に氏名などは登載されず、免責不許可の可能性が高い・免責不許可が確定した場合のみ登載されます。

  2. (2)復権したらまた借金ができるの?

    自己破産すると金融機関から借金をしたり、クレジットカードの発行を受けたりすることが難しくなります。このような信用取引上の制約は、復権によって解除されるわけではありません。
    そもそも、自己破産(債務整理)後に、信用取引(借金・カード発行)ができないことと復権は無関係の制度です。「自己破産した人は借金してはいけない」、「自己破産した人にクレジットカードを発行してはいけない」という法律があるわけではないからです。

    信用取引上の制約は、信用情報から事故情報が消去されるなどによって、「あなた自身の信用力」が回復することによってのみ解除されます。言い換えれば、事故情報が残っていたとしても「十分な信用」があればローンを組めたり、クレジットカードを作れたりする可能性も残されています。
    実際に、外資系のクレジットカード会社などは、過去の債務整理歴(信用情報上の事故情報)よりも「現在の収入」を重視する会社が少なくありません。また、中小の消費者金融では、現在の収入があれば過去の自己破産のブラック情報が登録されていても融資してくれるところもあるようです。

5、資格制限のある自己破産はムリ! そんな場合はどうする?

自己破産による資格制限は、一定期間だけに限定されるものです。それでも、「勤務先の就業規則に自己破産が懲戒事由として定められている場合」や、「自己破産すると許認可を失う事業を自分で営んでいる場合」などには、「数週間であっても資格制限を受けると死活問題になる」ケースがあるかもしれません。

  1. (1)資格制限を受けても配置転換などで対応してもらえることも

    前述したように、自己破産は解雇事由となる旨の就業規則があったとしても、「業務に支障を来す合理的な理由」がない限り、「自己破産を理由とした懲戒解雇は違法」というのが、法律論としての一般的な解釈です。

    たとえば、保険外交員として直接保険の勧誘を行えなくても、営業所の事務仕事を行ったり、他の外交員のサポート業務を行ったりすることは可能です。また、「営業所に登録されている従事者」となっている宅地建物取引士であっても、他の宅地建物取引士と従事者を交代できれば、勤務先(不動産会社)への影響を最小限にすることができます。

    実際に、配置転換などで上手に対応、復権後に元の職場に復帰できたケースは少なくありません。自己破産が避けられないという状況でも、勤務先に誠実に事前の報告相談を怠らないことが一番大切でしょう。

  2. (2)自己破産以外にも借金を解決する方法はある

    「どうしても自己破産できない」というときには、他の債務整理の方法で借金を解決することを考えるほかありません。任意整理・個人再生では、一切の資格制限は生じないからです。

    個人再生であれば、借金の一部が免除されるので、一般の人が「自己破産で解決するしかない」思っているような借金でも解決できる場合があります。たとえば、500万円の借金を個人再生すれば、最大で400万円が免除される可能性があります。

    ただし、任意整理・個人再生のいずれも、今後の収入から借金を分割返済していく手続きなので、整理できる借金の額には限界があります。自己破産による資格制限を回避したいと考えるときには、できるだけ借金が膨らむ前に弁護士に相談した方がよいでしょう。

6、借金のお悩みは弁護士へ相談してみましょう

借金の悩みは、人に相談しづらい問題です。難しくつらい問題をひとりで抱え込めば、悪い方向に考えてしまう、間違った判断をしてしまうことも少なくありません。また、債務整理や自己破産は、ほとんどの人にとって初めての経験です。わからないこと、不安なこともたくさんあると思います。

弁護士は、そんな方の気持ちにより添ってくれる頼もしい存在です。借金の問題についてはほとんどの事務所が「無料相談」で対応してくれるので、不安なことがあるときには、気軽に問い合わせてみましょう。

7、まとめ

自己破産は借金を解決し、人生をやり直すための救済手段です。しかし、「自己破産によって仕事を失うのではないか?」という不安があれば、自己破産する決断ができないこともあるでしょう。

この記事で解説してきたように、自己破産による資格制限は一部の職業に限られ、その期間も一時的なものにすぎません。実際に、配置転換などによって上手に対処できたケースもあります。

借金が返せなくなったというときには、できるだけ早く弁護士に債務整理の相談をしましょう。早期に対処すれば自己破産せず、仕事に全く影響も与えずに借金問題を解決できる可能性が高くなります。

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