債務整理 弁護士コラム
多額の借金を背負っても、自己破産をして免責が許可されれば借金はゼロとなり、人生の再スタートを切ることができます。実際、令和3年、自己破産を裁判所に申請し受け付けられた件数は、6万8240件でした。(令和3年司法統計第105表 「破産新受事件数 受理区分別 全地方裁判所」より)
とはいえ、自己破産をしてしまうと、その後の生活においてさまざまな制限に悩まされることになると考えている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、自己破産をすると、その後の生活への影響がゼロというわけではありません。しかし、実は多くの方が心配しているほど制限された生活を余儀なくされるわけでもありません。
もし、後々の生活への影響を心配して自己破産の申し立てを躊躇している方がいらっしゃったとしたら、それは非常にもったいないことです。
今回は、
・自己破産が今後の生活に及ぼす影響とは
・自己破産によって家族の生活に影響はあるのか
・自己破産後の生活に重要な意味を持つ免責とは何か
などについて解説していきます。
自己破産後の生活が気になる方のご参考になれば幸いです。
自己破産後の生活について、今すぐ知りたいという方はこちらの動画をご覧ください。
自己破産後の生活がどうなるかを考える際には、以下の4つのポイントに注意する必要があります。この4つのポイントが、自己破産のデメリットともいえるものです。
まず、自己破産をすると原則として財産を処分する必要があります。自己破産というのは、財産があればお金に換えて債権者に配当し、それでも残った借金を免除してもらう手続きだからです。
ただし、破産者が所有しているあらゆる財産を処分しなければならないわけではありません。破産者といえども生活していかなければならないので、99万円以下の現金や財産的価値が一定額(一般的には20万円)以内の物品は自由財産として手元に残しておくことができるのです。
持ち家があれば基本的に手放す必要がありますが、車については手元に残せる可能性も高いです。古い車であれば財産的価値が乏しいとみなされるためです。
自己破産をすると、ブラックリストに載せられてしまいます。ブラックリストとは、金融取引に関する個人情報を保有する「信用情報機関」に登録された事故情報のことです。
ブラックリストに載せられることによって、後ほど4でご説明するデメリットが発生します。多くの方にとって、自己破産後の生活に及ぼす影響として最大のデメリットは、ブラックリストに載せられることです。
ただし、ブラックリストに載せられるのは自己破産をした場合に限りません。個人再生や任意整理をしたときもブラックリストに載せられ、同様のデメリットを受けます。
なお、ブラックリストに載せられる期間は自己破産と個人再生の場合で約10年、任意整理の場合で約5年と言われています。
自己破産をすると、一定の資格や職業に制限がかかります。具体的には、
といった「士業」の資格は停止されます。
他にも、
などの職業に就くこともできません。
ただし、資格や職業が制限されるのは自己破産の手続き中だけです。免責が許可されると、これらの制限も解除されます。
自己破産をすると、官報に氏名や住所が掲載されてしまいます。官報というのは政府が発行する新聞のようなものです。
金融業や不動産業、役所や公的な機関に勤務している人が職業的に官報を見ることはありますが、一般の方が官報を見ることはほとんどありません。したがって、官報に掲載されたからといって自己破産をしたことが知人に知られてしまうことはまずありません。
自己破産の申し立てを検討している方なら、「免責」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、免責の具体的な意味をご存知でしょうか。
破産法では、免責について以下のように定められています。
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。(以下略)
引用元:破産法
つまり、自己破産を申し立てた後、破産手続開始決定を受けて、さらに免責許可の決定が確定してはじめて借金の支払い義務を免除されるのです。
したがって、免責が許可されるかどうかが自己破産後の生活に重要な意味を持ちます。
免責が許可されなければ、借金の支払い義務が免除されません。せっかく破産しても、借金を返済し続けなければならないことになってしまいます。
さらに、前記1(3)でご紹介した資格や職業の制限も当然には解除されません。
つまり、免責が許可されないと、自己破産後の生活は自己破産前と変わらないことになってしまうおそれがあるのです。
そもそも自己破産というのは、債務者の経済的更生の機会を確保することを目的として定められた制度です(破産法第1条)。
そのため、借金の理由がやむを得ないものであり、破産手続を誠実に実行した人には免責が許可されることによって経済的更生の機会が確保されます。
しかし、この制度趣旨に合致しない人にまで免責を許可すると、債権者との関係で過度に不公平が生じてしまいます。
そのため、破産法では免責を許可すべきでない事由(免責不許可事由)を定めているのです。主な免責不許可事由をわかりやすく説明すると、以下のようなものが挙げられます。
簡単に言うと、生活費や事業資金、債務の返済のためにやむを得ず借金をし、全ての債権者に対して平等に返済をしてきた場合は免責が許可されますが、そうではない場合は免責が許可されないことになります。
そこで問題となるのは、免責不許可事由がある場合は自己破産後に普通の生活を送るのは諦めなければならないのか、ということです。
実は、免責不許可事由があっても免責を受ける方法があります。
まず、免責不許可事由に該当する行為をしてしまった場合でも、その程度が軽い場合は免責が許可されることがあります。
たとえば、借金で浪費やギャンブルをしていた場合でも、それはごく一部であり、借金の大半は生活費や事業資金、債務の返済に充てていたと認められれば免責が許可される可能性が高いのです。
また、免責不許可事由に該当する行為の程度が軽いとはいえない場合でも、反省の度合いや生活再建への意欲などを考慮してもらうことによって、裁量的に免責が許可される場合もあります。
前記1で自己破産のデメリットをご紹介しましたが、免責さえ許可されれば自己破産後はほぼ普通の生活を送ることができるようになります。
破産手続において財産を処分する必要はありますが、破産後に新たな財産を持つのは自由です。免責によって借金の返済義務を免除されていれば、新たな財産を換金して返済に充てる必要はありません。
後ほど4(1)でご説明するように、自己破産後しばらくはローンを組むことが難しいですが、借金がなくなっているので生活に困ることはほぼないでしょう。たとえば、車を購入する必要があるなら、安価な中古車を一括払いで購入するとよいでしょう。
破産手続で財産を処分する必要があるといっても、実際には処分されない財産も多くあります。自由財産が手元に残ることや査定額の低い車は処分されないことを前記1(1)でご説明しましたが、他にも多くの財産が手元に残ります。
生活に必要な家財道具は処分されませんし、高価で購入した家具や家電であっても、時間が経過していれば財産的価値がゼロと判断されて処分されない場合が多くあります。いずれにせよ、生活するに困らない程度の財産は残すことができます。
仕事は破産手続き中も自己破産後も、普通にできます。債務者の経済的更生を図ることが破産法の目的なので、むしろ積極的に働くべきです。
前記1(3)でご説明したとおり、破産手続き中は一定の資格や職業の制限がありますが、免責が許可された後は一切の制限がなくなります。
自己破産をしたことは官報を除いて公表されることはありません。戸籍や住民票などの公的書類に記載されることもありません。
前記1(4)でご説明したとおり、官報も一般の人が見ることはほとんどありません。
市区町村役場には「破産者名簿」というものがありますが、これは一般の人が見ることはできないものです。かつ、免責を受けた人は「破産者名簿」に掲載されません。したがって、自分で言わない限り自己破産したことを他人に知られることはほぼありません。
積極的におすすめはしませんが、家族に内緒で自己破産をすることも可能です。
自己破産をすると選挙権がなくなるのではないかと気にしている方もいると思いますが、そのようなことはありません。
選挙権が自己破産によって影響を受けることは一切ありません。被選挙権にも影響はないので、公職に立候補することもできます。
自己破産後も実際上はほぼ普通に生活できますが、前記1(2)でご紹介した「ブラックリスト」の影響で、自己破産後の約10年間はお金の面で以下の制限があります。
もっとも、個人再生や任意整理をした場合でもブラックリストに登録されますし、そもそも借金の返済を3か月滞納すればブラックリストに掲載されます。
したがって、以下のデメリットも自己破産に特有のものというわけではありません。
ブラックリストに登録されると、新たな借り入れやローンを利用することは難しくなります。
なども利用することが難しいので、生活設計については家族でよく話し合う必要があるでしょう。
ただ、借り入れやローンを利用できないことでメリットもあります。借金癖のために自己破産に至った方であれば、強制的に癖を直すことに役立ちます。
ヤミ金など違法な業者はブラックリストに登録された人にもお金を貸しますが、くれぐれもそのような業者に手を出さないよう注意しましょう。
ブラックリストに掲載されることで、クレジットカードの利用も難しくなります。最近はネットショッピングやさまざまな決済でクレジットカードを利用する必要性が高まっていますが、多くの場合はデビットカードで代用することができます。
デビットカードとは、口座にある預金残高の範囲内で即時に決済され、利用代金が引き落とされるカードのことです。クレジットカードのような審査はないので、ブラックリストに登録されている方でもデビットカードは自由に利用することができます。
どうしてもクレジットカードを利用する必要がある場合は、家族が契約しているクレジットカード会社で家族カードを発行してもらうこともできます。
意外なデメリットとして、携帯電話やスマホの端末を分割払いで購入することが難しくなるということが挙げられます。
端末代金を分割払いすることもローンの一種なので、ブラックリストに登録されていると分割購入はできないのです。
ただ、自己破産をしても携帯電話やスマホを利用するのは自由です。利用料金の滞納がない限り、以前から使っていた端末や、一括払いで購入できる安価な端末を用意して回線契約をすることができます。
自分が自己破産をすることで家族の生活に影響が及ぶのではないかが気になる方は多いと思いますので、この点についてもご説明します。
自己破産は、個人が契約した借金を免除してもらうために、個人の財産を処分する手続きです。家族であっても他者には返済義務もありませんし、財産を処分されることもありません。
したがって、基本的に家族の生活には影響はありません。
前記3(4)でご説明したとおり、自己破産したことを他人知られることはほぼないので、お子さまの進学や就職、結婚などにも影響はありません。興信所に依頼して調査されると支障が出ることもありますが、そのようなケースは極めてまれです。
ブラックリストに登録されるのも個人単位なので、自分が自己破産をしても家族が借り入れやローン、クレジットカードを利用することに制限はかかりません。
ただ、主婦や学生のお子さまがこれらの金融取引をする際には、世帯主の信用が審査されることがあるので、場合によっては家族にクレジットカードが発行されないという場合もあります。
そのため、家族がお金に困らないよう、生活設計をよく考えることが大切です。
自己破産後の新しい生活設計を考えるためには、免責を受けることが何よりも重要です。
免責不許可事由がある場合でも、弁護士に依頼すれば裁量的な免責を受けられる可能性が高まります。
ただ、なかにはどうしても免責を受けることが不可能なケースもあります。また、住宅ローンを返済中の自宅を手放したくないという場合や、マイカーローンを返済中の車があるけれど仕事のためにどうしても車が必要だという場合もあるでしょう。
その他にも、資格や職業が一時的にせよ制限されてしまうと生活が成り立たなくなってしまう方もいらっしゃるかと思います。そのような場合も、弁護士に相談すれば、自己破産以外の債務整理で解決する方法が見つかる可能性があります。
状況によっては、今ある自宅や車を手放してでも自己破産をした方が得策であるということもあります。
いずれにせよ、経験豊富な弁護士に相談すれば、最適な解決方法を見つけることができます。ぜひ弁護士にご相談の上、一緒に生活設計を考えてみましょう。なお、当事務所では借金に関するご相談は何度でも無料です。その他の費用が気になるという方は、以下から当事務所の費用をご確認ください。
自己破産後の生活は100%とはいえないものの、ほぼ普通の生活を送ることができることがお分かりいただけたでしょうか。人によっては、わずかな制限が大きなネックとなって自己破産の申し立てを躊躇されているかもしれません。しかし、普通の生活を取り戻すためには、借金問題を早期に解決することが第一です。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
本コラムでは、妻の借金を自己破産で解決した場合に、家族に及ぶ影響について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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