債務整理 弁護士コラム
自己破産すると多額の借金をすべて消滅させることが可能です。その一方で、信用情報機関に事故情報が登録されてクレジットカードが使えなくなったり、一定の財産を失ったりするなどのデメリットもあります。
その影響で、携帯電話やスマホも没収されたり、強制解約されたりするのではないかという不安を抱えている方も多いことでしょう。今や、携帯・スマホは生活必需品であり、使えなくなると仕事や生活に支障をきたすことにもなりかねません。
そこで本コラムでは、自己破産で携帯・スマホが没収されるのか、没収されないとしても契約にどのような影響があるのかについて解説します。
自己破産することで携帯・スマホが強制解約となるかどうかは、利用料金や端末代金に未払いがあるかどうかによって異なります。
携帯・スマホの利用料金に滞納がなく、端末代金もすべて支払い終えている場合は、自己破産しても契約に影響はありません。そのまま使用を継続できます。
自己破産申し立て後に利用料金を支払い続けることにも問題はありません。今では裁判所も携帯・スマホは生活必需品として認めており、月々の利用料金の支払いは他の生活費の支払いと同視されているからです。
月々の利用料金とは異なり、利用料金の滞納分と端末代金の支払い義務は、借金と同様に「破産債権」として取り扱われます。そのため、自己破産の申し立て後に支払うことはできません。滞納が続くと、携帯電話会社が利用規約に基づき契約を強制解除します。
滞納発生から強制解約までの期間は携帯電話会社によって異なりますが、2か月~4か月程度です。自己破産手続き(裁判所への申し立てから免責許可決定の確定まで)には3か月~7・8か月程度かかるのが一般的なので、多くの場合はその間に強制解約されてしまうのです。
強制解約を回避するために、利用料金の滞納分や端末代金の未納分を自己破産の申し立て前に一括払いしようと考える人がいますが、安易に行ってはなりません。なぜなら、特定の債務のみを優先的に返済することは「偏頗(へんぱ)弁済」として免責不許可事由に該当するため(破産法第252条1項3号)、自己破産を申し立てても原則として免責が認められなくなるからです。
ただし、偏頗弁済があっても少額であれば裁判所で特に問題とならず、免責が許可されることもあります。そのため、利用料金の滞納分や端末代金の未納分が少額の場合は、裁判所の承諾を得て一括払いすることも考えられます。自己破産の申し立て前であれば、弁護士に相談してアドバイスを受けるべきです。
自己破産をすると財産を処分されることがありますが、携帯・スマホの端末を没収されることはないと考えて差し支えありません。
多くの裁判所では、評価額20万円以内の財産は自由財産として手元に残すことが認められています。最近は高額なスマホ端末もありますが、20万円を超えるものはまずありません。使用すれば中古品となるため、評価額はさらに下がります。
また、端末の分割代金の支払いがストップした場合でも、携帯電話会社による端末の引き揚げもありません。なぜなら、各携帯電話会社の契約約款で、端末を分割購入した場合には引き渡しの時点で購入者に所有権が移転するもの、と定められているからです。
ただし、自己破産で端末の分割代金が免責された場合、その端末の使用に制限がかかる可能性があることに注意しなければなりません。
結論として、利用料金の滞納がなく端末代金の支払いも終えている場合には、端末を没収されることはなく、契約にも影響がないので、そのまま使用を継続できるということになります。
利用料金の滞納分や端末代金の未納分がある場合、携帯・スマホの利用を続けるためには自己破産の申し立て前に一括払いする必要があります。しかし、未払いがある程度の金額になると偏頗弁済に該当してしまうため、一括払いはできません。そこで、以下の対処法が考えられます。
特定の債務であっても、自己破産の申立人以外の第三者が支払うことは偏頗弁済に該当せず、問題ありません。
ただし、同居の家族など申立人と生計を同じくする人が支払った場合には、実質的に申立人が支払ったものとみなされ、偏頗弁済として免責不許可となる可能性が高いことに注意が必要です。離れて暮らしている家族や親戚、友人・知人などの協力が得られる場合には、立て替え払いを依頼するとよいでしょう。
自己破産以外の債務整理を選択すれば、携帯・スマホの利用を問題なく継続できる可能性が高まります。
任意整理では、財産を処分する必要はありませんし、偏頗弁済が手続きに支障をきたすこともありません。携帯・スマホの利用料金や端末の分割代金の支払いが苦しい場合でも、任意整理で借金返済の負担を軽減すれば解決できる可能性があります。自己破産を検討するほどの借金額を抱えている場合に任意整理を選択することは難しいかもしれませんが、家族や親族が返済に協力してくれる場合は検討してみるとよいでしょう。
個人再生でも、財産を処分する必要はありません。ただし、偏頗弁済をすると返済額が上がる可能性があります。個人再生には「清算価値保障原則」というものがあり、所有財産の総額に相当する金額は最低限返済しなければなりません。偏頗弁済をした場合には、その金額が所有財産の価額に加算されるのです。とはいえ、その合計額が、借金総額に応じた最低弁済額(借金総額の5分の1~10分の1)を超えない場合には影響がありません。多額の借金を抱えている場合でも、安定収入があれば個人再生で解決できる可能性が高いといえます。
自己破産の影響で携帯・スマホを強制解約されてしまった場合は、新規契約をしたいと考えることでしょう。ここでは、自己破産後に新規契約ができるのか、できる場合でも注意すべきポイントについてご説明します。
前提として、自己破産の申し立て前に利用料金や滞納代金の未払いがなかった場合は、何らかの事情で解約したとしても、新規契約することに支障は一切ありません。この場合には、自己破産をしたことが携帯電話会社との契約には何ら影響しないからです。
しかし、未払いがあった場合には契約に影響が出てきます。
利用料金を滞納すると、通常はTCA(電気通信事業者協会)という機関のデータベースにその情報が登録されます。TCAには多くの携帯電話会社が加盟しており、TCAに登録された情報は加盟会社の間で共有されることになります。そのため、滞納の情報が登録されていると携帯・スマホの新規契約は難しくなるのです。この状態のことを「携帯ブラック」といいます。
滞納の情報は、滞納を解消するか、自己破産をした場合は免責許可決定が確定すると削除されます。その後は新規契約も可能となります。
ただし、自己破産の対象とした携帯電話会社の社内データには、自己破産をした顧客に関する情報が残り続けます。その影響で、その携帯電話会社に対しては新規契約を申し込んでも断られる可能性があるため注意が必要です。その場合でも、「預託金制度」を利用して申し込めば新規契約できる可能性はあります。預託金制度については、携帯電話会社のホームページなどでご確認ください。
新規契約が可能な場合でも、自己破産後は携帯・スマホ端末の分割購入はできなくなります。なぜなら、自己破産すると信用情報機関に事故情報が登録され、ローンを組めなくなるからです。携帯・スマホ端末の分割購入もローンの一種なので、携帯電話会社は申込者の信用情報を照会します。そのとき、事故情報が登録されていると分割購入を断られてしまうのです。
自己破産による事故情報は、免責許可決定から5~10年間、信用情報機関に保有されると言われています。その間は、基本的に端末の分割購入ができません。新たな端末が必要な場合は、一括払いで購入できる機種を選ぶか、家族名義で分割購入する必要があります。
自己破産をしても携帯・スマホを没収されることはありませんが、状況によっては強制解約され、新規契約にも支障が出る可能性があります。携帯・スマホの利用を継続するためには自己破産申し立て前の対処が重要となりますが、自己判断で対処すると自己破産手続きに支障を及ぼすおそれがあります。弁護士のアドバイスを受けて、適切に対処することが重要です。
ベリーベスト法律事務所では、経験豊富な弁護士が対応しますので、自己破産しても可能な限りスムーズに携帯・スマホが利用できるようにサポートすることが可能です。お困りの際は、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。