債務整理 弁護士コラム
自己破産を検討している人には、自己破産によって生じるデメリットを不安に感じている人も多いと思います。たしかに、さまざまな場面に影響を及ぼしてしまうことがないわけではありません。たとえば親の遺産相続の場面でも、自己破産が一定の影響を与えるケースがあります。
本記事では、自己破産が相続に影響を及ぼしてしまうケースや、それを回避するための対処方法について解説していきます。
自己破産すると一定の期間(手続き開始から免責確定まで)は就けなくなる仕事などがあることから、自己破産すると相続する権利なども失うという心配をしている人もいるかもしれません。しかし、自己破産をしたことで家族などの財産を相続する権利を失うことはありません。
相続欠格とは、法律が定める事情に該当した場合に相続する権利を失ってしまう制度です。具体的には、民法891条が以下の事情を相続欠格事由として定めています。
相続欠格となるのは、この5つの事情に該当した場合のみに限られますので、相続人(となるはずの人)が自己破産をしたとしても、相続欠格となることはありません。
相続廃除とは、被相続人の意思によって特定の相続人を相続から除外する制度です。しかし、相続する権利は、相続人固有の権利という側面も持ち合わせているので、相続廃除は、必ずしも被相続人の意思だけで自由に決めることはできず、次のような事情がある場合のみ認められています。
相続人が自己破産をしたということだけでは、相続廃除も認められません。しかし、自己破産の原因となった理由によっては、相続廃除となってしまう可能性があることは注意しておく必要があるでしょう。
自己破産をした場合には、債務者(破産者)が所有する財産が強制的に売却されてしまう可能性があり、このことが相続にも悪影響を与えてしまうことがないわけではありません。
まずは自己破産した場合に強制処分される財産についての基本的なルールを確認しておきましょう。
自己破産した場合に強制売却(差し押さえ)の対象となるのは、破産者が所有する財産に限られます。たとえば、同居の家族などの財産であっても、破産者本人の財産ではありませんから、自己破産で差し押さえられることはありません。
自己破産した場合に強制売却の対象となるのは、「破産手続き開始決定のとき」に破産者が所有していた財産に限られます。このことは、破産手続き開始決定よりも後に取得した財産は、強制売却の対象とはならないという点で大きな意味をもっています。
このような自己破産後に取得した財産のことを新得財産と呼んでいますが、典型的には自己破産後に得た給料などが該当します。
破産者が破産手続き開始決定のときに所有していた財産であっても、そのすべてが強制処分の対象となるわけではありません。破産者の今後の生活に欠かせない財産まで強制処分してしまうことは、破産者にとってあまりにも酷で債権者との関係でも公平とはいえないからです。
自己破産をしても強制売却されない財産の例としては、次のようなものが挙げられます。
また、売却しても利益の生じない財産や、売却それ自体が難しい財産(山地やがけ地など)についても、強制売却の対象とならない場合が多いといえます。
上記のルールを前提に、自己破産が相続に与える実際の影響について確認していきましょう。
自己破産の申し立て前に相続が発生した場合には、当然のことですが、通常の場合と同様に相続手続きが行われます。したがって、(相続人が複数にいる場合には)遺産分割協議を行い、その内容に基づいて相続人それぞれが財産を相続することになります。
ただし、上記で解説した基本ルールにしたがって、相続によって取得した財産は破産手続きにおける強制売却の対象となり得ることに注意しておく必要があるでしょう。
自己破産の申し立てから、破産手続き開始決定前までの間に相続が発生したケースでは特に対応に注意する必要があります。
この場合には、すでに自己破産の申し立てをしている以上は、破産手続きが開始される前であっても、破産手続きの開始を念頭において相続の手続きを進める必要があるからです。
したがって、このケースにおいては、相続財産も上記で解説した基本ルールにしたがって、強制売却の対象となってしまい一切取得できない可能性があります。
また、他の共同相続人と行う遺産分割協議も破産者である相続人ではなく、裁判所から選任された破産管財人が行いますので、他の相続人にも自己破産したことを知られてしまいます。
自己破産の手続きが開始された後に相続が発生した場合には、その相続には自己破産の影響は生じません。上記で解説したように、破産手続きにおいて強制売却の対象となるのは、「破産手続き開始のとき」に破産者が所有していた財産に限定されるからです。
したがって、このケースは、自己破産手続きによって財産を没収されることもなく、相続財産を取得できるという点でもっと有利なケースといえます。
自己破産による相続への影響は、自己破産をする相続人だけでなく、他の共同相続人の相続内容にも大きな影響を与えてしまうことが少なくありません。
たとえば、相続財産が被相続人の自宅しかないというようなケースで3人の相続人のひとりが自己破産した場合には、自己破産した人の相続分(持分権)が破産手続きにおいて競売に掛けられてしまうこともあり、その自宅を手放すことになってしまう可能性もあります。
このようなケースで相続による影響を小さくする方法としては、相続放棄などによる対応が考えられます。
相続放棄とは、自らの意思で「相続人にならない」選択することをいいます。相続放棄をした場合には、その相続人は「はじめから相続人ではなかった」という取り扱いになるため、相続の手続き(遺産分与)からは完全に除外されます。
したがって、自己破産手続きが開始される前に相続が発生した場合には、相続放棄をすることで、その自己破産による相続への影響を排除することができます。前述の被相続人の自宅を数人で相続するケースであれば、自己破産する人が相続放棄をすることで、残りのふたりの相続人だけでその自宅を相続できるようになるというわけです。
しかし、この相続放棄による対応は、破産手続き開始決定が下される前になされる必要があることに注意する必要があります。なぜなら、破産手続き開始後の相続放棄は、「限定承認」の効果しかもたないと破産法で定められているからです(破産法238条1項)。
限定承認とは、その相続で得られた利益の範囲で債務を引き受けるという方法のことを指すので、破産手続き開始後に相続放棄をしたとしても、破産者の相続分を破産手続きから除外することはできなくなってしまうからです。
なお、相続放棄や限定承認は、相続が開始していないと行うことができません。相続それ自体は自己破産のタイミングにあわせて発生するものではありませんので、相続放棄によってうまく対応できるケースというのは、実際にはかなり限られるといえます。
相続人が複数いる場合には、遺産分割の内容は、相続人全員による遺産分割協議によって決めなければなりません。相続人それぞれの相続分は、必ずしも法定相続分どおりでなければならないわけではないので、理屈としては、「特定の相続人の相続分をゼロとする」という内容の遺産分割協議をすることも可能です。
しかし、自己破産手続きを申し立てている相続人の相続分だけをゼロとするような内容の遺産分割協議は、後の自己破産手続きで問題となる可能性があることに注意しておかなければなりません。このような遺産分割協議は、詐害行為(債権者の権利を害する行為)に該当すると評価されてしまう可能性があるからです。
破産者が詐害行為をした場合には、破産管財人による否認権行使の対象となります。否認権が行使されれば、その遺産分割協議は法的な効力を失うことになりますので、結局、相続財産は、破産手続きによって強制売却されるということになります。
さらに、詐害行為が悪質であると判断された場合には、自己破産が失敗する(免責を認めてもらえない)原因にもなってしまいます。
ここまで解説してきたように、自己破産中に相続が発生したときには相続に大きな影響を与えてしまう場合があります。相続財産が破産手続きの中で売却されてしまうために、自分の相続分が少なくなってしまうだけでなく、他の相続人の相続分にも重大な影響を与えてしまう可能性があります。
このような悪影響を回避する方法としては、できるだけ早い時期に自己破産で借金を清算してしまうという選択肢があります。自己破産で借金を解決してしまえば、家族から引き継ぐ遺産もしっかり守ることができるからです。
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自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。