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破産者とは? 自己破産後の影響やデメリット、知っておきたい法的知識

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更新日:2021年01月19日 公開日:2021年01月19日

破産者とは? 自己破産後の影響やデメリット、知っておきたい法的知識

自己破産をして破産者であることを誰かに知られてしまうのが怖いという人は少なくないでしょう。そのため、完済することが不可能といえる多額の借金を抱えてしまった場合でも自己破産をすることにためらいを感じてしまうケースは珍しいことではありません。

しかし、破産者となるデメリットやリスクと思われていることには、破産の悪いイメージに起因して誤解されているものや、大げさに理解されているものも多いといえます。そこで今回は破産者について解説します。

1、破産者とは?

破産者とは、その名のとおり破産手続における債務者のことです。破産法2条4項は、破産者について次のように定義しています。

破産法2条
4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。


したがって、法律の上での破産者というのは、裁判所が出す破産手続開始決定の名宛人との「呼称」にすぎないということになります。

2、破産者になるとどんなデメリットがあるのか?

破産者となった場合、つまり自分に対して破産手続が開始された場合には、破産手続を迅速・公平・適正に実施することなどの目的で次のような不利益が生じてしまいます。

  1. (1)財産の管理処分権が制限される

    破産者となった場合、自己の財産についての管理処分権限が制限されることになります。破産者の財産に対する管理処分権の剥奪は、財産の隠匿を防止し、債権者に必要な配当を行うために必要となるものです。その典型は、破産者の財産に対する差し押さえと換価(破産者の意思によらずに財産が処分されてしまうこと)が挙げられます。

    とはいえ、破産者となったからといって、あらゆる財産が差し押さえの対象になるわけではありません。破産者となっても、その後の生活に必要となる財産については、自分の意思で管理処分することができます。さらには、破産手続開始決定よりも後に取得した財産についても管理処分権は制限されません。

  2. (2)職業や事業が制限される場合

    一定の国家資格の登録をしている場合や、営業免許を必要とする事業を営んでいる場合には、破産者となることで、資格・営業免許の欠格や登録の取消し事由となる場合があります(弁護士法7条4号など)。

    しかし、資格試験に合格したことが取り消されるわけではありません。資格制限を解除する「復権」を得ることでこれらの制限は解除されます。

    ほとんどのケースでは免責の確定によって復権(当然復権:破産法255条)しますので、資格や営業免許に制限が生じる期間はごく限られた期間(数ヶ月から1年程度)にとどまるといえますが、不動産売却の有無や裁判所ごとの手続の進め方の違いによって前後してきます。

    なお、東京地方裁判所の少額管財事件の場合には、破産手続開始決定から第1回債権者集会(兼免責審尋期日)までを3か月とするスケジュールで手続が進められ、債権者集会の日付で免責許可決定が下されます(その後官報公告を経て免責は確定します)。

    また、会社の役員が破産者となった場合にも役員としての地位を失うことになります。株式会社の取締役の場合には、破産者となることで会社との委任契約が解除されることになるからです(民法653条2項)。

    持分会社(合同会社など)の役員の場合にも会社への出資金との関係から役員(社員)としての地位を失うことになります。しかし、会社役員の場合には、復権を得なくても法律・定款が定める手続に従えば復権を得る前に再度役員に就任することが可能です。かつての商法では、破産者となることは株式会社の取締役の欠格事由とされていましたが、現行の会社法ではこの規定は廃止されています。

  3. (3)そのほか私生活に影響が出る場合

    破産者となった場合には、破産手続に必要な範囲で私生活にも不都合が生じる場合があります。

    たとえば、破産者は居住地を離れる(引っ越しや長期の旅行など)ときには裁判所の許可を得る必要があります(破産法37条1項)。

    また、基本的に破産者宛ての郵便物はすべて破産管財人に回送されます(破産法81条1項)。

    とはいえ、破産者となったら「どこにも行けない」というわけではありません。「自己破産したら海外旅行にいけない」と勘違いしている人も多いようですが、裁判所の許可を得れば問題はありませんし、正当な理由があれば(破産手続の進行の妨げにならなければ)プライベートの旅行であっても許可を得ることは可能です。

    これらの制限は、破産者に対する懲罰を目的にしているのではなく、あくまでも破産手続の円滑な進行や、財産の確保(隠匿・散逸の防止)・調査のためにとられる措置にすぎないからです。

    なお、居住地を離れることや通信の制限などの不利益は、原則として破産手続の終了によって解除されます。

3、破産者になったことは他人に知られてしまうのか?

「破産者となったことは誰にも知られたくない」と考える人は多いと思います。借金の問題は非常にデリケートな問題ですから、誰にも知られたくないと思うのは当然のことといえるでしょう。

自己破産をすると、官報に氏名・住所などが掲載されることで公告されてしまうことから「他人に知られてしまう」と自己破産に抵抗を感じる人も少なくないようです。

しかし、実際に官報公告をきっかけに自己破産したことが他人に知られる可能性は低いといえるでしょう。

  1. (1)官報公告の具体例

    官報は原則として休日をのぞく全日で発刊されています。したがって、官報をつぶさにチェックするということはそれだけでもかなりの手間がかかります。

    破産手続開始の公告の場合、債務者の住所・氏名に加え、以下の情報が掲載されます。

    • 決定年月日
    • 主文
    • 破産管財人
    • 破産債権の届出期間
    • 財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日
    • 免責意見申述期間


    また、官報には、新しく公布された法令や、官公庁からの告示などの情報も掲載されていますし、裁判所の公告事項も破産に関するものだけでなく、公示送達、相続、失踪などさまざまな多数の事項が掲載されることになります。

    実際の官報には、全国の裁判所でなされた公告が1頁あたりに10件以上も並べて掲載されています。日によっては何ページにもわたって公告事項が掲載されることになりますから、この中から「たまたま知り合いが自己破産しているのを知る」ということは、ほとんどあり得ないことといえるでしょう。

  2. (2)破産者の情報サイトとは

    最近では、上で紹介した官報掲載事項を自動収集し一般向けの公開情報としてまとめた破産者の情報サイトが作られたことが大きな話題になりました。

    しかし、このような破産者情報サイトに対しては国から停止命令(閉鎖命令)が出されており、主立った破産者情報サイトのほとんどすべては、この記事を作成している時点ですでに閉鎖されています。

  3. (3)戸籍・住民票への記載はなし

    自己破産をすると「戸籍や住民票などに記録が残るのではないか?」ということを不安に感じている人もいるかもしれません。

    実際のところ、自己破産に関する事項は、戸籍や住民票に記載されることは一切なく、また、マイナンバーと自己破産の情報が紐付けされることもありません

    一般的に裁判手続でマイナンバーを用いることはありませんし、裁判所もマイナンバーの記載のある書類を提出しないように案内しています。

  4. (4)破産者名簿とは?

    自己破産情報が戸籍などに記載されるという勘違いは、市区町村において「破産者ではないことの身分証明書」の発行を受けられることと関係していると思われます。

    しかし、この身分証明書の発行は、市区町村が管理している「破産者名簿」という非公開の名簿を元に行われるものです

    また、今の実務では、自己破産をしただけで破産者名簿に登載されることはなく、免責不許可が確定した場合や、免責不許可となる可能性が高い場合などのケースに限って破産者名簿への登載が行われることになっています。

4、自己破産について不安なことは弁護士に相談

自己破産しなければならないと考えるほどの状況に追い込まれてしまえば、あらゆることについて不安を感じるようになっても仕方のないことです。このような不安は弁護士に相談して解決することが一番よいといえます。

  1. (1)自己破産には誤解も多い

    ここまでの解説と重複する部分もありますが、自己破産にまつわることには、誤解や思い込みの類いも少なくありません

    • 自己破産すると海外旅行にいけない
    • 自己破産をすると年金がもらえなくなる(少なくなる)
    • 自己破産すると年金が差し押さえられる
    • 自己破産すると無一文になる(財産を全て失う)


    といったことはすべて誤った情報です。

    また、ネットなどで目にすることのできる体験談も、あらゆる破産事件で同じような結論になるというわけではありません。自己破産の手続は裁判所の裁量判断による場合も多いですから、事件ごとの事情の違いが結論に大きな影響を与えることもあるのです。

    弁護士であれば、それぞれのケースが抱える細かな事情を踏まえながら正しい見通しを立てることができます

  2. (2)自己破産以外の方法で借金を解決できる場合も

    返済できなくなった借金を解決する方法は自己破産だけではありません。債務者の方が「自己破産しなければならない」と思っている事案であっても、自己破産以外の任意整理・個人再生でも解決可能なケースもあります

    任意整理・個人再生で借金を解決できれば、上で解説したような破産者となることで生じる不都合はほとんど発生しません。

    特に、個人再生ができれば借金の元金を大幅に減額してもらえる可能性がありますので、定期的・継続的な収入のある人であれば、年収に迫るような借金でも解決できる可能性があります。

  3. (3)自己破産の相談は「無料」で受けられる

    弁護士に相談するというと、相談料の負担が気になるという人も多いでしょう。しかし、近年では、借金の相談は無料で受けられるという弁護士事務所が増えています。

    当事務所でも借金の相談・債務整理の相談は無料でお受けいただけますので安心してお問い合わせください。

5、まとめ

破産・破産者という言葉は、一般の人にとってはかなりネガティブなイメージで理解されてしまうことが多いといえます。それゆえ、大きなデメリットが生じるのではないか、誰かに知られてしまうのではないかといった不安がよぎり、借金問題の解決が遅れてしまうケースも少なくないかもしれません。

しかし、自分の力では返済することが難しい借金をそのままにしておけば、状況はさらに悪化し、自己破産した場合よりもさらに大きなデメリットが生じる可能性もあります。弁護士にご相談いただければ、それぞれのケースの状況に応じて発生し得るあらゆるリスク・デメリットを分析した上で最善の解決方法をアドバイスすることが可能です。

借金の相談には費用もかかりませんので、是非当事務所までご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約360名の弁護士が在籍
※2024年2月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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