債務整理 弁護士コラム
自分の銀行口座に身に覚えのない振り込みがあったときには慎重に対処する必要があります。「誰かがお金をくれたのはラッキー」などと安易に考えてしまうと、不要なトラブルに巻き込まれてしまうおそれがあるからです。
特に、過去にヤミ金と関わったことがある人の場合には、「押し貸し」をされてしまった可能性も高いといえます。
以下では、ヤミ金手口のひとつである「押し貸し」について基本的な仕組みや押し貸しされた場合の正しい対処方法について解説していきます。
押し貸しとは、その言葉のとおり、「お金を貸してほしい」と頼んでいないのにもかかわらず、相手方の方から無理やりお金を貸し付けてくる(押しつけてくる)行為のことをいい、ヤミ金の手口のひとつです。
ヤミ金から押し貸しされてしまった場合に、そのまま放置していると「法外な利息の支払い」を要求されてしまいます。ヤミ金はいったん捕まえた顧客を簡単には手放さないので、素直に返金に応じてもらえる可能性は低く、非常に危険です。
「押し貸し」は、やみくもに適当な銀行口座に送金しているというわけではありません。押し貸しが行われるのは、何かしらの事情によって、銀行口座の情報だけでなく、口座名義人の連絡先も把握しているケースに限られるといえます。よくわからない相手に送金をしても「押し貸し行為」はできないからです。
押し貸しにあってしまうよくあるパターンとしては、次の2つの場合を挙げることができます。
押し貸しにあってしまう最も典型的なケースは、すでにヤミ金業者と関わったことのある人の場合です。ヤミ金と過去に取引があれば、顧客の口座番号も連絡先(電話番号やSNS・メール)も把握されているからです。
すでに関わりのあるヤミ金業者からの押し貸しは、次のように行われることが多いといえます。
ヤミ金行為の勧誘は、常に逮捕・摘発のリスクと背中合わせといえます。その意味で、ヤミ金業者としては、新しい顧客を探すよりも、すでに知っている顧客からより多くの利息をむさぼりとる方が効率もよく安全ということが押し貸しの行われる理由といえます。つまり、押し貸しされたということは、ヤミ金業者から「カモになりやすい顧客」と目を付けられていると考えても良いでしょう。
押し貸しをされてしまうもうひとつのパターンは、ヤミ金業者とは関わりがなかったとしても、過去に何かしらの詐欺に遭った経験がある場合です。
悪質業者の間では、顧客名簿の横流しのようなことは横行しています。そのため、過去に詐欺被害に遭ったことのある人は「カモの有力候補」といえるわけです。
たとえば、フィッシング詐欺などに遭ってしまった場合には、自分の気づかないうちに口座番号・電話番号などの情報が盗み出されている場合も考えられます。また、ネットオークションなどで怪しい業者と取引した場合などにも、他の悪質業者に口座情報などが横流しされてしまうということもあり得えます。
押し貸しされたお金は慎重に取り扱う必要があります。押し貸しされた後に不適切な対応をとってしまえば、「タダより高いものはない」といわれるように、大きなトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
最高裁判所の判例には、「ヤミ金からの借金は元金の返済も必要ない」という判断したものがあります。ヤミ金行為は、法外な利息の搾取を目的とした公序良俗に反する行為なので、不法原因給付にあたるというのがその論拠です。
・最高裁判所平成20年6月10日判決(裁判所ウェブサイト)
この理屈を前提にすれば、「押し貸しされたお金も不法原因給付に該当するので返金する必要はない」と考えることができそうです。
しかし、身に覚えのない振り込みのすべてが押し貸しであるかどうかは、「振り込まれたというだけでは判断することはできない」ということに注意しておく必要があるでしょう。
他人の振り込み手続きにミスがあったことが原因で自分の口座にお金が振り込まれた場合には、そのお金は返金しなければなりません。最も、こちらで手数料などを負担してまで返金する必要はないといえますが、誤送金、入金ミスによって取得したお金を使い込んでしまった場合には、「窃盗罪」などの罪に問われる可能性があります。
道ばたなどに落ちているお金を使い込んでしまった場合と同様に考えるというわけです。
「身に覚えのないお金が振り込まれただけ」の状態は、法外な利息の支払いを求められているわけではないので「ヤミ金からの押し貸しである」と断定できない場合の方が多いといえます。それとは逆に、ヤミ金からの利息の支払いを要求される前に振り込まれたお金を使い込んでしまえば、ヤミ金業者に対する「窃盗」や「詐欺」にあたると脅される口実にもなりかねません。
押し貸しに気づいたときには、「お金をもらえてラッキー」というように安易に考えることはとても危険です。大きなトラブルに巻き込まれてしまうことを避けるためにも慎重に正しく対応しましょう。
身に覚えのない相手からの振り込みを確認した場合には、まずはその口座を管理している銀行に連絡しましょう。場合によっては、単純な「誤振り込み」である可能性もありうるからです。
誤振り込みだった場合には、振り込まれたお金を元の所有者に返金する手続き(振り戻し・組み戻し)が行われますが、こちらが手数料などを負担する必要はありません。
押し貸しが疑われる振り込みがあった場合には、今後も同様の被害に遭う可能性が高いといえます。すでに上でも触れたように、悪質業者は同じターゲットを繰り返し狙う傾向があるからです。実際にも、違う手口で何度も詐欺に遭ってしまうという人も少なくありません。
押し貸しを予防するには、ヤミ金などの悪質業者が把握している銀行口座、携帯・スマホを解約してしまうのが最も確実な方法といえます。
押し貸し被害に遭ったときには、ヤミ金対応の経験の豊富な弁護士にすぐに相談すべきといえます。ヤミ金業者は、違法業者なので、一般の人が交渉したところで素直に応じてくれない可能性があるからです。
また、警察に相談をしたとしても、ヤミ金業者の摘発は簡単ではないので、報復行為を受けるリスクがないとはいえません。弁護士に対応を依頼すれば、依頼人の身の安全と押し貸しの解決、振り込まれたお金の処理のすべてを安心して任せることができます。警察に対応してもらわなければならない事態になった場合も、弁護士が間に入っていることでよりスムーズに対応してもらえます。
ヤミ金から押し貸しされたお金は、使わずに返金してしまうのが最も安全な対処方法といえます。しかし、ヤミ金行為目的で押し貸しされたお金は返金しようにも返金先(振り戻し先)がわからないというケースもあります。被害者はヤミ金業者の詳細について知らない場合の方が多いからです。過去の取引に用いた電話や銀行口座なども、すでに使えなくなっている(凍結されている)場合も少なくありません。
そのような場合には、供託という手法で返金できることがあります。
供託とは(法務省)
弁護士に依頼していれば、供託手続きについても対応してもらえる可能性があります。
押し貸し行為は、放置しておくと大きなトラブルに発展する可能性の高いとても危険な手口です。「お金をもらえてラッキー」と甘く考えてしまうべきではありません。
特に、過去にヤミ金業者と取引のあった人や、詐欺被害に遭った経験のある人の場合には、今後も似たような手口の被害に遭ってしまう可能性も高いといえますので、そのようなリスクを完全に絶っておくことが大切です。
身に覚えのない不審な振り込みがあった場合には、決してお金を使い込んだりせずに、できるだけ速やかに、振り込まれた口座を管理している銀行やヤミ金問題に詳しい弁護士に相談した方がよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
銀行口座は、資産管理を行う上で欠かせないものです。万が一のために蓄えを備えるだけでなく、給料の受け取りや決済用の手段としても、必須のツールといえるからです。
しかし、借金の返済などを滞納してしまえば、銀行口座が差し押さえにあってしまうこともあります。債権者にとっても銀行口座の預貯金は、滞納した借金を回収するための重要な引き当て財産だからです。
令和2年4月に改正民事執行法が施行され、債権者による債務者の財産調査が容易になったことで、銀行口座は以前よりも差し押さえやすくなったといえます。
銀行口座に限った統計ではありませんが、令和4年司法統計年報によると、「債権及びその他の財産権に対する強制執行」の手続きが裁判所で行われた数は、13万6949件でした(うち11万7866件は取り下げられています)。(出典:令和4年司法統計年報 第101表民事執行既済事件数―事件の種類及び審理期間別―全地方裁判所)
そこで今回は、
・借金の返済を滞納した場合などに銀行口座が差し押さえられてしまうときの流れや効果
・差し押さえを回避・停止する方法
などについて解説します。
債務整理中は、基本的に借入をすることはできません。信用情報機関に事故情報が登録されているため、一般的な金融機関や消費者金融などに借金を申し込んでも、審査に通らないからです。
しかし、債務整理中であっても、生活費の不足などでお金が必要になることもあるでしょう。そんなとき、一部の業者や個人からは借入が可能なこともありますが、安易な借入は控えるべきです。
本コラムでは、債務整理中に借入をしてはいけない理由と、借入をした場合に生じるリスク、どうしてもお金が必要な時の対処法について解説します。
住民税とは、都道府県や市区町村といった自治体が住民に対してさまざまな行政サービスを提供するための費用に充てられる税金のことです。正式名称は、地域によって「市町村民税」であったり「都道府県民税」であったりしますが、この2つを総称して「住民税」と呼びます。
会社などに勤務している方は、住民税のことをあまり意識したことはないかもしれませんが、自営業の方などは住民税の他にも国民年金保険料や国民健康保険料をはじめとして、さまざまな税金や公共料金を自分で納めなければなりません。
全ての納付額を合計するとそれなりの金額になってしまうので、支払うのが厳しい場合もあるでしょう。また、支払い忘れによって滞納してしまうこともあると思います。
今回は、
・住民税を滞納するとどうなるのか
・住民税の滞納による差し押さえはいつ、どのようにして行われるのか
・どうしても住民税の滞納を解消できないときはどうすればいいのか
などの問題を解説していきます。
住民税を滞納してお困りの方のご参考になれば幸いです。