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個人再生の住宅ローン特則とは? 利用条件や利用できないときの対処法

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更新日:2024年09月18日 公開日:2024年09月18日

個人再生の住宅ローン特則とは? 利用条件や利用できないときの対処法

個人再生とは、基本的に財産を処分することなく、借金を大幅に減額できる債務整理の方法です。

個人再生の大きなメリットのひとつとして、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」があります。これは、一定の条件を満たしていることで、自宅を維持しながら借金を整理できる制度です。

本コラムでは、個人再生の住宅ローン特則の内容や利用条件、特則を使えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは?

個人再生の住宅ローン特則の正式名称は、「住宅資金特別条項」といいます。その制度の内容は、以下のとおりです。

  1. (1)個人再生をすると原則として住宅を失う

    住宅ローンも個人再生の対象ですが、住宅ローン特則を使わなければ、消費者金融などからの借金と同様に取り扱われます。手続き中はローンの支払いが停止し、最終的には大幅に減額されるのです。

    しかし、そうなると債権者は抵当権を実行することが可能となり、住宅が競売にかけられるなどして売却されてしまいます。なお抵当権とは、債務者が返済できなくなった際などに、債権者が担保として設定していた不動産から弁済を受けることができる権利のことです。

  2. (2)住宅ローン特則を利用することで住宅を残せる

    個人再生で住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンだけは特別に返済を継続することが認められます。それによって債権者に抵当権を実行されることがなくなるため、住宅を失うことはありません。

    つまり、住宅ローンは減額されないものの住宅を残しつつ、他の借金のみを減額できる制度が住宅ローン特則(住宅資金特別条項)というものです。

  3. (3)住宅ローン特則を利用した後の返済方法

    住宅ローン特則を利用した場合の返済方法としては、民事再生法で次の5つが認められています

    ① 従来どおりに返済を継続する(原契約型)
    住宅ローンの滞納がない場合は、債権者との元の契約どおりに返済を継続できます(民事再生法第199条1項)。ただし、個人再生の手続き中は原則として借金の返済が禁止されます(同法第85条1項)。そのため、滞りなく返済を継続するためには、個人再生の申立時に「住宅資金貸付債権の一部弁済許可申立て」を併せて行い、裁判所の許可を得ることが必要です(同法第197条3項参照)。

    ② 代位弁済がなかったことにできる(巻き戻し型)
    住宅ローンの滞納が続き、すでに代位弁済した保証会社から一括返済を請求されている場合でも、代位弁済がなかったことにして分割払いに戻すことが可能です(同法第198条2項)。ただし、代位弁済が行われてから6か月以上が経過すると、住宅ローン特則は利用できません。

    ③ 返済期間を延長できる(リスケジュール型)
    元の契約どおりに住宅ローンを返済することが難しい場合には、返済期間を延長できます(同法第199条2項)。その際に延長できる期間は最大10年で、かつ、70歳までに完済することが必要です。

    ④ 一定期間は利息の支払いのみにできる(元本据え置き型)
    個人再生後の一般再生債務の返済期間(3~5年)を限度として、一定期間は住宅ローンの元本の返済を猶予してもらい、利息の支払いのみとすることも可能です(同法第199条3項)。据え置かれた元本は、その後、契約上の返済期間内に完済しなければならないのが原則ですが、③のリスケジュール型を併用し、返済期間を延長することもできます。

    ⑤ 債権者との交渉次第では自由に変更できる
    債権者の同意があれば、住宅ローンの返済方法は自由に変更できます。たとえば、返済期間を10年以上延長したり、70歳以降も返済を継続したりすることも、債権者との交渉次第では可能です。

2、住宅ローン特則の利用条件と注意点

2章では、住宅ローン特則の利用条件と、利用する際の注意点を解説します。

  1. (1)法律上の利用条件

    住宅ローンの法律上の利用条件は、以下のとおりです。

    • 住宅の購入または建築、もしくはリフォームのためのローンであること
    • 申立人が所有する住宅であること
    • 申立人が現に居住しており、床面積の2分の1以上が居住スペースであること
    • 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
    • 滞納がないか、代位弁済から6か月が経過していないこと
    • 住宅ローンを利用する旨を債権者一覧表に記載して申立時に提出すること

    これらのうち、ひとつでも条件を満たさない場合には、住宅ローン特則は利用できません

  2. (2)ペアローンの場合の注意点

    夫婦共有の住宅について、夫婦が別々に住宅ローンを組む「ペアローン」を利用している場合、原則として住宅ローン特則は利用できません。なぜなら、「住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと」という利用条件を満たさないからです。ペアローンでは住宅に2つの抵当権が設定され、申立人から見て配偶者のための抵当権は、他人の借金を担保するための抵当権とみなされてしまうのです。

    ただし、実務上は、夫婦で同時に住宅ローン特則付き個人再生を申し立てるか、夫婦の片方だけが申し立てる場合でも、もう一方が住宅ローンを滞りなく返済できる見込みがあり、その抵当権を実行される恐れがないといえる場合には、住宅ローン特則の利用が認められる傾向にあります。

  3. (3)連帯保証人がいる場合の注意点

    住宅ローンに連帯保証人が付いていても、住宅ローン特則は問題なく利用できます。主債務者が住宅ローンの返済を継続する限り、連帯保証人が請求を受けることはないからです。

    「連帯保証人がいるから住宅ローン特則は使えない」と考えて自己破産をすると、住宅を手放すことになるので注意しましょう

  4. (4)アンダーローンとなっている場合の注意点

    住宅ローンがアンダーローンとなっている場合は、他の借金の個人再生による返済額が大きくなる可能性があります。個人再生では、所有財産の総額は最低限返済しなければならないという「清算価値保障の原則」が適用されるからです。

    たとえば、住宅の評価額が2000万円で、住宅ローン残高が1500万円の場合、差額の500万円は所有財産となります。この他に100万円の財産を所有しているとすれば、合計600万円を3~5年で返済しなければなりません。

    住宅ローン残高が住宅の評価額よりも大幅に低い場合には、返済能力の問題で個人再生が利用できないこともあるでしょう。

3、個人再生の住宅ローン特則が使えないときの対処法

個人再生の住宅ローン特則が使えなくても、自宅に住み続ける方法はいくつかあります。

  1. (1)任意整理を検討する

    任意整理は、債権者との直接交渉によって借金の返済方法を決め直す手続きです。裁判所を介さないため、住宅ローンを手続きから除外して、他の借金のみを整理することができます

    ただし任意整理では、原則として元金のカットができません。そのため、住宅ローン以外に多額の借金を抱えている場合には、解決できない可能性もあります。

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  2. (2)任意売却で親族に買い取ってもらう

    任意整理で解決できない場合には、親族に住宅を買い取ってもらい、その親族から借りて住み続けることが考えられます

    この場合は任意売却という形をとるため、債権者の承諾が必要です。債権者の承諾を得るためには、親族が適正な価格を支払わなければなりません。

  3. (3)リースバックを利用する

    リースバックとは、住宅を不動産会社などに売却するとともに賃貸借契約を結び、その住宅に住み続ける仕組みのことです

    ただし、賃貸借期間は2年程度に限られることが多く、賃貸借終了時に住宅を買い戻すためには、売却価格よりも高い金額が必要となるケースがほとんどです。そのため、一時的に住み続けたい場合を除いて、リースバックはあまりおすすめできません。

4、個人再生後は住宅ローンを組めなくなる?

個人再生で住宅を失ったとしても、将来、再び住宅ローンを組んでマイホームを購入したいと考えることもあるでしょう。そのようなときは、次の2点に注意が必要です。

  1. (1)一定期間の経過後に住宅ローンが組めるようになる

    個人再生をすると信用情報機関に事故情報が登録されるため、一時的に住宅ローンは組めなくなります。しかし、一定期間が経過すると事故情報は削除され、その後は住宅ローンが組めるようになります

    事故情報が削除されるまでの期間は、再生手続きの開始決定から7年です。

  2. (2)住宅ローンの審査に通りやすくなる方法

    信用情報機関の事故情報が削除された直後は、プラスの信用情報も何も登録されていない状態なので、住宅ローンの審査で有利になるとはいえません。

    少しでも審査に通りやすくなる方法として、次のようなことが考えられます

    • 安定した企業で長期間、勤続する
    • 可能であれば増収を図る
    • 頭金をできる限り多めに貯めておく
    • ペアローンや親子リレーローンで自己負担額を抑える
    • 個人再生の対象とした債権者以外の金融機関に申し込む
    • 審査に一度落ちたら、次の申し込みまでに6か月以上の期間を空ける

    融資を申し込んだ事実も、信用情報機関に6か月間は登録されます。そのため、ダメ元で立て続けに申し込みをすると、金融機関から「お金に余裕がない」と判断され、審査に通りにくくなる可能性があることに注意が必要です。

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5、まとめ

個人再生の住宅ローン特則の利用条件は細かくて複雑なので、利用を検討する際は弁護士へのご相談をおすすめします。債務整理の経験が豊富な弁護士に相談すれば、利用する際の注意点も含めて、具体的なアドバイスが受けられます。

また、住宅ローン特則付き個人再生の手続きは非常に複雑なので、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、知見・経験豊富な弁護士が住宅ローン特則付き個人再生の手続きを全面的にサポートすることが可能です。住宅ローン特則が利用できない場合でも、任意整理をするなど、最善の解決方法を提案いたします。

「住宅を手放したくないけれど、個人再生や任意整理をして借金問題を解決したい」とお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。債務整理についてのご相談は、何度でも無料で承っております。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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