債務整理 弁護士コラム
個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金の返済額を大幅に減らすことができる手続きです。多くの場合は、借金総額の5分の1から10分の1が再生計画による返済額となります。
ただし、「清算価値保障原則」の影響により、返済額があまり減らないこともあります。もし、清算価値保障原則に反している再生計画案を提出すると不認可となり、自己破産の手続きに移行してしまうこともあるので注意が必要です。特に、高額の財産を所有している人は清算価値保障原則に注意しなければなりません。
本コラムでは、清算価値保障原則の内容や返済額に及ぼす影響、清算価値保障原則の影響で返済額が高額となる場合の対処法などについて解説します。
清算価値保障原則は、個人再生による返済額を決めるための要件のひとつとして、民事再生法で定められているものです。個人再生では最低限、借金総額の5分の1~10分の1を返済しなければなりませんが、清算価値保障原則によってそれよりも高額となる場合もあります。
清算価値保障原則の内容は、以下のとおりです。
個人再生による返済額は、借金総額に応じた最低弁済額以上でなければならない(民事再生法第231条2項3号・4号、第241条2項5号)ことに加えて、再生債権者一般の利益に反しない金額でなければならない(同法第174条2項4号)とされています。
「再生債権者一般の利益に反しない」とは、個人再生による返済額が、債務者が自己破産した場合に配当すべき金額以上であることを意味します。これがすなわち、清算価値保障原則でもあります。
さらに平たくいうと、清算価値保障原則とは、債務者の所有財産の総額に相当する金額(ただし、差押禁止財産や一定の自由財産は除外されます)は最低限、返済しなければならないという、個人再生における決まりのことです。
たとえば、借金総額に応じた最低弁済額が100万円となるケースでも、総額150万円の財産を所有していれば、個人再生による返済額は100万円を超える可能性があります。
個人再生では、自己破産のように債務者の財産が処分されることなく、借金の返済額が大幅に軽減されます。減額後の借金を完済すれば残りの借金は免責されるので、債務者にとって非常に大きなメリットのある手続きです。
しかし、債務者が高額な財産を所有しているにもかかわらず、それを考慮せず借金の返済額が大幅に軽減されるとすると、債権者が一方的に損失を被ることになります。納得できない債権者は債務者の自己破産を申し立てることが可能ですが(破産法第18条)、それでは「財産を処分せずに借金を整理できる」という個人再生のメリットが損なわれていまいます。
そこで民事再生法では、債務者は財産を処分する必要はない代わりに、最低限、自己破産した場合の配当額以上の金額は返済しなければならないこととし、債権者と債務者の利益のバランスをとっているのです。
清算価値保障原則が個人再生による返済額に影響を及ぼすことがあるため、清算価値の計算方法を知っておくことは重要です。
清算価値とは、所有財産全体のうち、自己破産しても手元に残せるものを除外した財産を換価(売却など)した場合に得られるであろう価額のことです。したがって、自己破産手続きにおいて自由財産として認められるものは、個人再生で清算価値を算出する際にも所有財産から除外されます。
99万円以下の現金や、生活に必要不可欠な家財道具などは、法律で差し押さえが禁止されているため、自由財産として認められています。
その他にも、東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所では、現金以外の財産で時価20万円以内のものも自由財産として取り扱われています。ただし、裁判所によっては取り扱いが異なるところもあるので注意が必要です。
次に、清算価値保障原則との関係で問題となることが多い個別財産について、価値の評価の仕方をご紹介します。ここでは東京地方裁判所における評価方法をご紹介しますが、裁判所によって異なるところもあるのでご注意ください。
なお、東京地方裁判所では、以下の評価方法によって20万円以下と評価されるものは清算価値に計上されません。
個人再生手続きにおいて、清算価値は裁判所が再生計画案の認可・不認可を判断する時点で計算されます。実際には再生計画案を提出する時点までの資料で計算されることが多いですが、その後に裁判所または個人再生委員から追加資料の提出を指示されることもあります。
個人再生を申し立てるときには返済額に影響を及ぼすような清算価値がなくても、その後に給料や賞与を受け取って預貯金が増えたり、生命保険を掛け続けて解約返戻金見込額が上がったり、贈与や相続で財産を取得することもあるでしょう。このような場合には清算価値が増え、個人再生による返済額が高額化する可能性があることに注意が必要です。
清算価値保障原則の影響で個人再生による返済額が高額化した場合には、以下の対処法が考えられます。
返済額が高額化したとしても、家計の収支の状況に照らして返済できる見込みがあるときは、再生計画案が認可されます。
その後に、やむを得ない事情で返済の継続が著しく困難となった場合には、最長2年まで返済期間を延長できることもあります(民事再生法第234条1項)。ただし、ここにいう「やむを得ない事情」とは、病気や怪我、リストラなど、自分ではコントロールしがたい事情を指すことに注意が必要です。
高額の財産を所有しているために返済額が高額化したのであれば、財産を処分して返済に充てるのもひとつの方法です。個人再生で財産を処分するかどうかは、債務者が自由に決めることができます。
生命保険の解約や契約者貸し付けの利用、自己破産を回避したいのであれば、不動産や車などを売却することも考えられます。
返済額が高額化して返済できる見込みがなく、再生計画案が認可されないのであれば、他の債務整理を検討する必要があります。個人再生から切り替えるなら、多くの場合は自己破産を検討することになるでしょう。
高額の清算価値がある以上、自己破産をすればある程度の財産は処分されます。しかし、その反面で免責不許可事由がなければ借金の返済義務がすべて免除されるという、大きなメリットが得られます。
個人再生をすれば借金を5分の1~10分の1に減らせると考えていても、財産状況によっては思うように借金が減らないこともあります。再生計画案が不認可となれば、それまでの手続きにかかった労力や費用が無駄になるので、債務整理をするなら事前に最適な手続きを選択することが重要です。
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個人再生を裁判所に認めてもらえれば、借金を今の残高からおよそ5分の1にまで減らしてもらうことができるのです。
この記事では、個人再生とはどういうものなのか? について簡単にわかりやすく解説します。
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。
個人再生とは、基本的に財産を処分することなく、借金を大幅に減額できる債務整理の方法です。
個人再生の大きなメリットのひとつとして、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」があります。これは、一定の条件を満たしていることで、自宅を維持しながら借金を整理できる制度です。
本コラムでは、個人再生の住宅ローン特則の内容や利用条件、特則を使えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。