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自己破産で財産隠しがバレないケースはある? 財産を多く残す方法

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更新日:2023年03月14日 公開日:2023年03月14日

自己破産で財産隠しがバレないケースはある? 財産を多く残す方法

自己破産をすれば、一定の条件のもとにすべての借金の返済義務が免除されます。ただ、その前提として一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。

そのため、財産隠しをしようと考える人がいますが、絶対にやってはいけません。黙っておけばバレないと思われるかもしれませんがバレる可能性は非常に高いうえ、バレると重大なペナルティーを科せられることもあるので、注意が必要です。

本コラムでは、自己破産で財産隠しをしてもバレる理由と、バレたときのペナルティー、財産をできる限り多く残すための正当な手段などについて解説します。

1、自己破産で財産隠しはバレる?

自己破産で財産隠しをしようとしても、必ずバレると考えるべきです。まずは、その理由をご説明します。

  1. (1)依頼した弁護士との打ち合わせでバレる

    一般的に、自己破産は弁護士に依頼して行います。裁判所への申し立ては弁護士が行いますが、その準備として必要書類の収集と、弁護士との打ち合わせがあります。

    収入やお金の流れについては、給与明細書や確定申告書の控え・帳簿、過去2年分の預金通帳のコピー、家計表などを弁護士に渡さなければなりません。その他にも、あらゆる財産について疎明・証明する書類を弁護士に渡します。不動産や生命保険の解約返戻金、退職金などについては、ない場合には「ないこと」の証明書も必要です。

    これらの書類を弁護士がチェックして、不自然な点があれば事情を尋ねられます。財産隠しがバレると、弁護士に辞任されることもあります

  2. (2)裁判所による申立書類のチェックでバレる

    自己破産の申し立てが裁判所に受理されると、書記官が申立書類を精査します。財産状況に関する証明が不足している場合や不自然な点がある場合には、申立書の補正や資料の追加提出を指示されるでしょう。

    その上で裁判官との面談があり、ここでも不自然な点があれば説明を求められます。合理的な説明ができなければ、自己破産の申し立てが棄却されることもあります。

  3. (3)破産管財人による財産調査でバレる

    一定の評価額を超える財産がある場合は管財事件となり、破産管財人が選任されます。破産管財人は債権者への配当を適正に行うための前提として、破産者の財産を詳細に調査します。具体的には、破産者が提出した書類を精査した上で、本人と面談してさらに詳しい説明を求めます。
    また、破産者宛ての郵便物はすべて破産管財人に転送され、中身を確認されます。実際に、郵便物のチェックによって隠し財産が発覚するケースもあります。

    このように、自己破産する人の財産状況は何重にもわたって厳重にチェックされるので、財産隠しをしても必ずバレると考えるべきでしょう。

2、自己破産で財産隠しがバレるとどうなる?

財産隠しがバレると、以下のとおり重大なリスクが生じます。自己破産で財産隠しをすることは、百害あって一利なしであるといわなければなりません。

  1. (1)免責不許可となる

    財産隠しは免責不許可事由(破産法第252条1項)に該当するため、バレると借金の返済義務の免除が認められなくなります

    財産隠しで問題となる免責不許可事由には、以下のものがあります。財産隠しは手段を問わず、免責不許可になると考えるべきです。


    • 財産の隠匿、損壊、不当な処分(同項1号)
    • 財産や業務に関する書類、帳簿、その他の物件の隠滅、偽造、変造(同項6号)
    • 裁判所の調査に対する説明拒否または虚偽の説明(同項8号)
    • 破産管財人の職務を不正の手段で妨害すること(同項9号)
  2. (2)破産管財人に否認権を行使される

    財産隠しが破産管財人に発覚すると、否認権を行使されます。否認権とは、破産者が債権者の利益を害することを知りながらした行為について、法的効力を否定するために認められた、破産管財人の権限のことです。

    たとえば、自動車の処分を回避するために、申し立て直前に友人へ事情を話して友人名義に変更したとします。このような場合は破産管財人が選任され、否認権を行使されます(破産法第160条1項)。

    この例において否認権が行使されると、破産者と友人との譲渡契約の効力が否定され、自動車は破産者の名義に戻ります(同法第167条1項)。その結果、破産管財人によって自動車が売却されるので、財産隠しをするメリットはありません。

  3. (3)詐欺破産罪に問われることもある

    自己破産における財産隠しは、詐欺破産罪という犯罪に該当する行為です。刑罰は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方」であり、重罪です。

    軽微な財産隠しでは事実上、罪に問われないこともありますが、悪質なケースでは実際に処罰される可能性もあります。

3、自己破産で財産隠しに該当する行為

次に、どのような行為が財産隠しに該当するのかをご説明します。財産隠しとみなされることがないよう注意しましょう。

  1. (1)財産の名義を変更する

    自己破産で処分の対象となるのは本人名義の財産だけなので、申し立て前に名義変更をする人がいます。しかし、申し立て前1年以内に行われた名義変更は財産隠しとみなされます

    自動車やバイク、不動産、生命保険、有価証券などで名義変更が行われるケースが多いので、注意が必要です。

  2. (2)預金を移動させる

    生活していれば預金口座における入出金が日々発生するものですが、合理的な理由がない預金の移動は財産隠しとみなされます。

    たとえば、預金の中からまとまった金額を家族名義の口座に送金する、預金を引き出して現金として隠し持つ、などのケースが多く見受けられます。

  3. (3)財産目録に正しく計上しない

    自己破産を申し立てる際には、財産目録に所有財産をすべて記入して裁判所に提出します。この財産目録に計上していない財産がある場合や、計上しても虚偽の評価額を記載した場合も財産隠しとなります。

    財産目録の裏付けとなる資料を提出しない、改ざんした資料を提出するなどの行為も財産隠しの一環であり、免責不許可事由に該当するので注意が必要です。

  4. (4)偽装離婚で財産分与をする

    離婚に伴う財産分与は、自己破産手続きにおいて不当な財産処分に当たるわけではありません。

    しかし、偽装離婚して財産分与の名目で配偶者に財産を渡すことは財産隠しに該当します。離婚に至った経緯についても、依頼した弁護士・裁判所・破産管財人から詳しい説明を求められるので、偽装離婚したことはバレると考えてください。

    真実の離婚であっても、収入や財産状況、生活状況に照らして相当な範囲を超える財産分与をした場合は、超えた部分が財産隠しとみなされる可能性があります。

4、できる限り多くの財産を残す方法

財産隠しではなく正当な手段によっても、一部の財産を残すことは可能です。少しでも多くの財産を残すための方法を解説します。

  1. (1)現金に換えて保有しておく

    自己破産をしても、99万円までの現金は自由財産として手元に残せます(破産法第34条3項1号)。現金以外の財産については、基本的に評価額20万円を超えるものが処分されます。そこで、現金以外の財産を現金に換えて保有しておくことで、より多くの財産を残せる可能性があります。

    ただし、申し立て直前に現金化した場合、裁判所では現金化が認められず、元の状態のままで財産を保有しているものとみなされる可能性が高いことに注意が必要です。
    なお、現金化したお金を、必要不可欠な生活費、医療費、学費、税金をはじめとする公租公課、自己破産の申し立てに必要な予納金や弁護士費用などの「有用の資」に充てることは認められています。有用の資に充てても残ったお金があれば、浪費せずに保有しておきましょう。裁判所の判断次第となりますが、場合によっては手元に残せることもあります。

  2. (2)自由財産拡張を申し立てる

    本来は処分の対象となる財産でも、裁判所が破産者の生活状況やその他の事情を考慮し、自由財産として認めてくれることがあります。このことを「自由財産の拡張」といいます(破産法第34条4項)。

    仕事や生活に必要不可欠な車、持病のため生命保険へ新たに加入することが難しい人の生命保険などについては、自由財産の拡張が比較的認められやすくなっています。これらの財産を残したい場合には、現金化せず自由財産拡張の申し立てを行う方が得策です。

  3. (3)他の債務整理を検討する

    自己破産以外の債務整理なら、財産を処分せず借金を整理できる可能性が高まります。

    任意整理は債権者と任意に交渉する手続きであり、財産の有無や内容は基本的に一切問われません。多額の借金を抱えている場合でも、家族や親族などの協力を得られれば、任意整理で返済していける可能性があるでしょう。

    個人再生では、原則的に借金を5分の1~10分の1にまで減らせますが、「清算価値保障の原則」により、高価な財産を所有している場合には返済額が高額化することがあります。ただし、返済は3年~5年の分割払いとなるので、ある程度の財産があっても個人再生で解決できる可能性は高いといえます。

5、まとめ

「自己破産を考えているけれど、できる限り多くの財産を残したい」という場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。自己判断で財産を守ろうとすると、気付かないうちに財産隠しに該当する行為をしてしまうおそれがあるので注意が必要です

弁護士のサポートを受ければ、正当な手段で財産を残せる可能性が高まりますし、場合によっては自己破産以外の方法で借金問題を解決できることもあります。

ベリーベスト法律事務所では、経験豊富な弁護士が皆さまのご要望を可能な限り実現できるように全力でサポートいたします。お困りの際は、ぜひ当事務所へご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約360名の弁護士が在籍
※2024年2月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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