債務整理 弁護士コラム
自己破産をして免責が認められると、多額の借金を返済する必要がなくなるという大きなメリットが得られます。しかし、デメリットが気になって自己破産をためらってしまう人が数多くいらっしゃいます。
たしかに、自己破産をすると一定のデメリットを受けることは避けられませんが、実際には生活に支障が生じることは意外と少ないのです。誤解が解ければ、安心して自己破産手続きを利用し、借金問題を解決することが可能となるでしょう。
本コラムでは、自己破産によって実際に生じるデメリットと、誤解されやすいけれど実際にはデメリットでないことについて解説します。どうしても自己破産のデメリットを回避したい場合の解決方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
まずは、自己破産によって生じる7つのデメリットを正確にご説明します。
自己破産をすると、高価な財産は処分されます。しかし、あらゆる財産を引き揚げられるわけではありません。
生活に必要不可欠な家財道具や衣服、99万円以下の現金、その他、法律で差し押さえが禁止されている財産は処分されません。東京地方裁判所をはじめとして多くの裁判所では、それ以外にも評価額20万円以下の財産は処分しないこととされています。意外に多くの財産を手元に残すことが可能です。
自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録され、各種ローンやクレジットカードなどの利用が難しくなります。これが、いわゆる「ブラックリストに登録された」という状態です。
ただし、事故情報は破産手続の開始決定から10年ほどで削除され、その後はローンやクレジットカードの利用が可能になります。
なお、他の債務整理をした場合も、登録期間の違いはありますが、事故情報は登録されます。債務整理をしなくても、借金の滞納を続けると事故情報の登録は避けられません。それなら、自己破産で早期に借金問題を解決する方が得策であるといえます。
連帯保証人が付いている借金がある場合は、自己破産すると連帯保証人が支払い請求を受けてしまいます。保証人付きの借金を除外して自己破産を申し立てることはできません。連帯保証人には申し立て前に事情を話し、理解を得ておくことが大切です。
任意整理であれば一部の債権者を除外して手続きを行うことは可能ですが、大幅に借金を減額させることは期待できないというデメリットがあります。
自己破産の手続き中は一部の資格・職業に制限がかかります。たとえば、税理士や行政書士、宅地建物取引士など「士業」と呼ばれる職業、保険の外交員、警備員などの職業に就くことはできません。
ただし、手続きが完了すると制限が解除されます。同時廃止事件なら、一般的に4~5か月程度で手続きが完了します。その間、部署異動などで職種を変更できる場合には、退職することなく自己破産をすることも可能です。
また、管財事件の自己破産の手続き中に限りますが、引っ越し(転居)や2泊以上の旅行・出張をするためには、事前に裁判所の許可が必要となります。
とはいえ、通常は正当な目的があれば許可されます。遊興目的での長期の旅行などは不許可となることもありますが、社員旅行などであれば一般的に許可されています。
管財事件に付された場合、管財手続き中は破産者宛の郵便物が破産管財人に転送され、内容をチェックされます。破産管財人は破産者の財産や負債の状況や免責の可否について調査する職務を担っているため、調査の一環として破産者宛の郵便物を調べるのです。チェックが終わった郵便物は、破産管財人から返してもらえます。
なお、同時廃止事件では破産管財人が選任されないため、郵便物が転送されることはありません。
自己破産をすると、官報という政府の日刊紙に氏名や住所が掲載されます。とはいえ、官報を見るのは、一部の職種に従事している限られた人だけです。一般の人が官報を見ることはほとんどありません。
ただし、闇金や悪質な詐欺業者などが官報を見てダイレクトメールなどを送ってくる可能性はあります。
なお、個人再生をした場合も官報に掲載されます。
自己破産のデメリットとして、「破産後は極めて限定的な生活を強いられるのではないか」「家族にも多大な迷惑がかかるのではないか」「周囲の人から“破産者”というレッテルを貼られるのではないか」といったイメージを持たれることが多いですが、これらはすべて誤解です。
実際のところ、自己破産を申し立てる人の大半は高価な財産を所有していないので、自己破産しても何も処分されないケースが数多くあります。令和3年の司法統計年報によると、自己破産事件のうち約58%は同時廃止事件であり、何ら財産は処分されていません。
車や保険、仕事道具などで高価な財産がある場合でも、今後の生活に必要不可欠な場合には「自由財産拡張」によって保有が認められることもあります。給料など破産手続き開始後に取得した財産は「新得財産」となるため、処分する必要がありません。
また、自己破産をしても戸籍や住民票に記載されたり、選挙権を失ったり、年金受給権を失ったりすることもありません。
ローンやクレジットカードの利用が一定期間はできなくなるという点を除き、自己破産後も生活に特段の支障は生じないケースが多いのが実情です。
自己破産は個人単位の手続きなので、家族の財産が処分されたり、家族(連帯保証人となっている場合は除きます)が支払い請求を受けることはありません。子どもの就職や結婚に支障をきたすことも、基本的にありません。
もっとも、事故情報の影響で住宅ローンや車のローンを組めなかったり、子どもの奨学金の保証人となれなかったりすることで、間接的に家族の生活に影響が及ぶことはあり得ます。自己破産の申し立て前に、家族の生活設計について再検討しておいた方がよいでしょう。
自己破産をした事実は、官報への掲載を除いて公表されることはありません。そのため、周囲の人に自己破産したことを知られる可能性は極めて低いといえます。
ただし、自分で自己破産をした場合には、裁判所からの郵便物や電話連絡によって、家族にばれる可能性が高いことに注意が必要です。弁護士に自己破産を依頼すれば、弁護士の事務所がすべての連絡の窓口となるため、家族にばれるリスクを最小限に抑えることができます。
自己破産のデメリットというわけではありませんが、以下のケースでは自己破産で解決できない可能性があることに注意が必要です。
自己破産しても、税金などの租税公課、婚姻費用や養育費、損害賠償債務(一定の悪質なケース)、罰金などは免責されません。
これらの債務を支払えない場合には、役所への相談や相手方との話し合いなどによって解決する必要があります。
一般的な借金であっても、浪費やギャンブルが原因の場合や、財産隠しをした場合、一部の債権者にのみ優先的に返済(偏頗(へんぱ)弁済)をした場合など、「免責不許可事由」があると、原則として返済義務は免除されません。
状況によっては裁判所の裁量による免責(裁量免責)が許可されることもありますが、裁量免責も見込めない場合は、他の債務整理を検討することになります。
どうしても自己破産のデメリットを回避したい場合には、他の債務整理で解決できる可能性があります。状況に応じて、最適な債務整理を選択することが重要です。
個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金を大幅に減額する方法です。自己破産とは異なり、基本的に財産を処分する必要はありませんし、職業制限や引っ越し・旅行の制限もありません。免責不許可事由もありません。
一定の条件を満たす場合には、「住宅ローン特則」を適用してマイホームを残すことも可能です。
任意整理は、債権者と直接交渉して借金の返済額を減らす方法です。手続きの対象とする債権者を自由に選べるため、連帯保証人に迷惑をかけずに借金を整理することも可能です。
ただし、大幅な借金の減額は期待できないため、多額の借金を抱えている場合には向いていません。家族や親戚が返済を手伝ってくれる場合なら、任意整理を検討するのもよいでしょう。
自己破産には一定のデメリットがありますが、意外に生活への影響は少ないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。過度にデメリットを心配して悩み続けるよりも、借金問題を解決してしまうことが先決です。
ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、自己破産のデメリットをはじめとして、債務整理についてわかりやすくご説明いたします。その上で、状況に応じて最適な解決方法を提案いたします。
債務整理に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。