債務整理 弁護士コラム
個人再生は、財産を処分することなく借金を大幅に減額することができる債務整理の方法です。一定の条件を満たせば自宅を残すことも可能であり、非常に大きなメリットがあります。
しかし、中には個人再生に反対する業者(債権者)もいて、場合によってはその影響で手続きが失敗に終わるおそれもあることに注意が必要です。
本コラムでは、個人再生に反対する業者がいると手続きにどのような影響を及ぼすのか、業者が反対する理由、反対されたときの対処法を解説します。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2種類の手続きがあり、小規模個人再生は業者の意見が手続きに大きな影響を及ぼす可能性があります。
個人再生で債務者が返済すべき金額と返済方法は「再生計画」にまとめられます。
手続きとしては、債務者が「再生計画案」を作成して裁判所に提出し、裁判所が認可・不認可を判断して決定します。
小規模個人再生では、給与所得者等再生の場合よりも柔軟に再生計画案を作成することができます。
一方で、債権者の利益を保護する必要があるため、再生計画案は債権者による書面決議に付されます(民事再生法第169条1項、第230条1項)。
この書面決議において、各業者(各債権者)が個人再生に反対するか賛成するかの意見が裁判所に提出されるのです。
個人再生に反対する業者は、書面決議で「不同意」の意見を提出します。
不同意とした債権者が総債権者数の半数以上、または不同意とした債権者の債権額を合計したときに総債権額の2分の1を超えるときには、再生計画案が否決されます(同法第230条6項)。
再生計画案が否決されると、裁判所が認可・不認可の判断を下すまでもなく、手続きが廃止されます(同法第231条1項)。
つまり、借金が減額されないまま、個人再生手続きが終了してしまうということです。
業者(債権者)が個人再生に反対する割合は、高いわけではありません。
司法統計によると、2021年に小規模個人再生が手続廃止で終結した事案は403件で、全体の3.4%に過ぎません。他の理由で廃止された事案も多いと考えられるので、業者の反対が原因で個人再生に失敗したケースはごくわずかであるといえます。
ただし、近年では業者が書面決議で不同意の意見を提出するケースが増えてきており、小規模個人再生が手続廃止で終結する件数も増加傾向にあります。
小規模個人再生を申し立てる際には、業者の意向に注意する必要があるのです。
参考:令和3年 司法統計年報(民事・行政編)第109表
多くの業者は、債務者に自己破産をされるよりも個人再生で一部でも借金を返済してもらうほうが得策であることから、個人再生に賛成します。
しかし、一部の業者は以下の理由で個人再生に反対すると考えられます。
少数ですが、会社(組織)の方針として「個人再生には反対する」と決めている業者がいます。代表例は信用保証協会です。
信用保証協会とは、中小企業や個人事業主が銀行などの金融機関から融資を受ける際に保証を行う機関です。以前から、信用保証協会は再生計画案の書面決議で不同意の意見を提出する例が多く見受けられました。
ほかにも銀行系のカードローンの保証会社や日本政策金融公庫等の政府系の金融機関、公務員を対象とする共済組合などでも、個人再生に反対するケースが徐々に増えています。
以前はそのほかの業者が個人再生に反対することはめったにありませんでしたが、近年では状況次第では反対するケースが出てきています。そのひとつとして、取引期間が短いために反対するケースがあります。
取引期間が短い場合、業者はまだ債権をほとんど回収できていないことから、少しでも多くの金額を回収したいと考え、個人再生に反対してくるのです。
もうひとつのケースとして、債務者の不正行為が疑われるために業者が個人再生に反対するケースもあります。
債務者が借り入れをして一度も返済しないまますぐに個人再生を申し立てた場合や、クレジットカードで商品券など換金価値が高いものを購入して換金する「クレジットカードの現金化」をしたと考えられる場合が挙げられます。
これらのケースで再生計画が認可されると、業者は不当な不利益を被ることになるため、「個人再生を認めてはならない」と考え、不同意の意見を提出するのです。
個人再生に反対する業者がいる場合でも、以下の対処法をとることによって借金問題を解決することが可能です。
反対する意向を持つ業者がいることが事前にわかった場合は、再生計画案を提出する前にその業者と交渉することにより、不同意の意見の提出を回避できる可能性があります。
取引期間が短い場合や不正行為が疑われるような経緯がある場合は、状況を具体的に説明し、個人再生を申し立てざるを得なかったことについて理解を求めることになります。
場合によっては、法律上の最低弁済額よりも増額した再生計画案を示すことも有効です。
業者の理解が得られない場合や、実際に反対されてしまった場合には、給与所得者等再生に切り替えることが考えられます。
給与所得者等再生は、給与所得のように定期的かつ変動幅が小さい収入の見込みがある債務者が利用できる個人再生手続きです。一定の計算方法により算出した「可処分所得」の2年分以上の金額を返済しなければならないため、小規模個人再生よりも返済額が大きくなりやすいことに注意が必要です。
一方で債権者による再生計画案の書面決議は行われず、一定の条件を満たした再生計画案を提出すれば認可され、強制的に借金を減額できるというメリットがあります。
最終手段として、自己破産を申し立てるという解決方法もあります。
自己破産では、免責不許可事由がなければ債権者(業者)の意向にかかわらず免責が許可され、やはり強制的に借金の返済義務が免除されます。
ただし、借りてから一度も返済していない場合や、クレジットカードの現金化をした場合には、免責不許可事由に該当する可能性もあります(破産法第252条1項)。
その場合でも、事情によっては裁判所の裁量により免責が許可されることがある(同条2項)ので、自己破産を検討する価値はあります。
個人再生の手続きは複雑で専門的な知識を要するため、弁護士に相談したうえで進めることが有効です。
個人再生をはじめとする債務整理事案の経験が豊富な弁護士なら、どの業者がどのような場合に個人再生に反対するのかについて、おおよその見通しがわかります。
そのような弁護士に相談して借入先をすべて伝えることにより、小規模個人再生で解決できるかどうかの見通しをつけることが可能です。
反対しそうな業者がいる場合でも、依頼した後は弁護士が業者と事前交渉を行います。
場合によっては、小規模個人再生での解決は難しいこともあります。
経験豊富な弁護士は給与所得者等再生または自己破産など、状況に応じて最適な解決方法を提案してくれるでしょう。
弁護士から的確なアドバイスを受けることで、借金を返済できないまま債権者からの督促を受け続けたり、差し押さえを受けたりするといった事態を回避することが可能です。
弁護士に相談して解決方針が定まり、依頼した後は、弁護士が債務者の代理人としてすべての手続きを行います。個人再生や自己破産の手続きは複雑ですが、弁護士がすべて代行するので、依頼者には手間がかかりません。
何よりも、弁護士が的確に手続きを行うので、債務整理に失敗するというリスクを極限まで抑えることが可能です。
業者が個人再生に反対する割合は低いとはいえ、場合によっては業者の反対によって手続きに失敗するおそれもあり、近年では徐々に業者が反対するケースも増えつつあります。
個人再生(小規模個人再生)に失敗しないためには、借入先の中に反対する業者がいるかどうかを事前に見極めることが大切です。
場合によっては、ほかの解決方法を検討すべき場合もあります。そのため、スムーズに借金問題を解決するためには弁護士に相談することをおすすめします。
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個人再生を裁判所に認めてもらえれば、借金を今の残高からおよそ5分の1にまで減らしてもらうことができるのです。
この記事では、個人再生とはどういうものなのか? について簡単にわかりやすく解説します。
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。
個人再生とは、基本的に財産を処分することなく、借金を大幅に減額できる債務整理の方法です。
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本コラムでは、個人再生の住宅ローン特則の内容や利用条件、特則を使えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。