債務整理 弁護士コラム
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。
この記事で分かること
個人再生の「最低弁済額」とは、個人再生を申請し手続きが終わった後に、最低限返済しなければならない金額のことです。ここでは、最低弁済額の基準についてご説明します。
個人再生は、裁判所に申し立てをして再生計画案を認可してもらうことで、借金の返済額を減らすことができる手続きです。
任意整理のように個別の債権者と交渉する必要はありません。
一定の条件を満たせば多くの場合は5分の1、最大で10分の1まで返済額を強制的に減らすことが可能です。
ただし、債権者の利益を保護するために、最低弁済額が法律で定められています。
最低弁済額以上の金額を3~5年で返済すれば、自己破産のように財産の処分や資格・職業の制限などといったデメリットを回避しつつ、残りの借金の返済義務から解放されるでしょう。
個人再生の中にも「小規模個人再生」、そして「給与所得者等再生」という2種類の手続きがあります。
小規模個人再生は、主に自営業を営む個人事業主を対象とした手続きです。
債務者が作成する再生計画案が債権者による書面決議に付され、不同意の意見が一定数を超えた場合には再生計画案が否決され、個人再生が認められなくなるという特徴があります。
給与所得者等再生は、会社員のように安定収入がある人を対象とした手続きです。毎月の収入の変動幅が概ね2割以内であることが求められます。
最低弁済額の基準が小規模個人再生よりも厳格に定められているため、再生計画案の書面決議は不要とされています。
個人再生で返済すべき金額は、債務者が作成する再生計画案が裁判所に認可されることによって定まります。
ただし、再生計画案は法律で定められている最低弁済額の基準を満たす内容でなければなりません。
その基準として、民事再生法で以下の3つが定められています。
小規模個人再生と給与所得者等再生では、これらの基準の適用方法が異なります。
以下で、それぞれの手続きにおける最低弁済額の計算方法を確認しましょう。
小規模個人再生では、上記3つの基準のうち「1」と「2」で計算した金額のどちらか多い方が最低弁済額となります。
借金総額に応じた最低弁済額は、民事再生法で以下のとおり定められています(同法第231条2項3号、4号)。
借金総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 借金総額(減額なし) |
100万円以上~500万円未満 | 100万円 |
500万円以上~1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
1500万円以上~3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上~5000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
たとえば、借金総額が300万円の場合、最低弁済額は100万円です。
清算価値保証の原則とは、個人再生で債務者は保有資産の総額以上の金額を返済しなければならないという原則のことです。
民事再生法に明文の規定はありませんが、債権者と債務者の権利関係を適切に調整しつつ、債務者の経済生活の再生を図るという、個人再生の目的(同法1条)から導き出される原則です。
言い換えると、仮に自己破産した場合に債権者へ配当される金額は最低限、個人再生でも返済しなければなりません。
具体的な基準は裁判所によって異なることに注意しましょう。
東京地方裁判所では、債務者の保有財産のうち99万円を超える現金と、評価額が20万を超えるその他の財産の合計額が「清算価値」とされています。
たとえば、借金総額300万円を抱える債務者が、以下の財産を保有しているとします。
計算すると、清算価値は150万円となります。
このケースでは、「借金総額に応じた最低弁済額」(100万円)よりも「清算価値保障の原則に基づく最低弁済額」(150万円)の方が多くなるため、150万円が最低弁済額となるのです。
給与所得者等再生では、2章で説明した「借金総額に応じた最低弁済額」と「清算価値保障の原則に基づく最低弁済額」だけでなく、もうひとつ「可処分所得に基づく最低弁済額」を考慮しなければなりません。3つの基準で計算した金額のうち、最も多い金額が最低弁済額となります。
可処分所得とは、債務者の収入から債務者本人とその扶養家族が最低限度の生活を維持に必要な費用を差し引いた金額のことです。
差し引かれる金額は、債務者が居住する地域の生活保護基準に準じて定められています。
給与所得者等再生をする場合には、可処分所得の2年分以上の金額を返済しなければなりません(民事再生法第241条7項)。
可処分所得の2年分は思いのほか高額となることが多いため、給与所得者等再生では小規模個人再生よりも最低弁済額が高額となりやすいことに、注意が必要です。
たとえば、年間の可処分所得が100万円であったとしても、給与所得者等再生では2年分に相当する200万円を返済しなければなりません。
借金総額300万円を抱え、清算価値として150万円相当の資産を保有し、年間の可処分所得が100万円の債務者のケースで給与所得者等再生をすると、小規模個人再生の場合よりも最低弁済額が大きくなってしまいます。
個人再生の最低弁済額を支払えないときは、以下の対処法を検討する必要があります。
個人再生では、最低弁済額以上の金額を3年~5年で分割返済します(民事再生法第229条2項2号、第244条)。
返済期間3年を超える再生計画案が認可されるのは、3年で完済できないことについて、やむを得ない事情がある場合に限られますが、この点については裁判所も比較的柔軟に認めています。
3年(36回払い)で完済できなくても5年(60回払い)で完済が見込める場合には、返済期間を5年とする再生計画案を提出しましょう。
個人再生の手続き終了後の返済が、途中でできなくなった場合、滞納を放置すると再生計画を取り消されて、借金が元の状態に戻ってしまうおそれがあります(民事再生法第236条)。
この場合には、裁判所に「再生計画の変更」を申し立てることにより、最長2年まで返済期間の延長が認められる可能性があります(同法第234条1項)。
ただし、当初の再生計画の通りに返済できなくなったことについて、やむを得ない事情がなければ、変更は認められません。
この点については裁判所が厳しく判断するため、変更が認められるケースは多くないのが実情です。
再生計画どおりの返済が途中でできなくなった場合で以下の条件に該当するときは、裁判所に「ハードシップ免責」を申し立てることにより、残りの借金の返済義務が免除される可能性があります(同法第235条1項)。
ただし、ハードシップ免責の許否について裁判所は相当厳しく判断しますので、免責が許可されるケースは少ないのが実情です。
以上の方法でも最低弁済額を支払えないときには、自己破産に切り替えるしかありません。
自己破産を申し立てれば、「免責不許可事由」(破産法第252条1項)がない限り、借金の返済義務がすべて免除されます。
免責不許可事由がある場合でも、事情によっては裁判所の裁量によって免責が許可される「裁量免責」が得られる可能性があります。
免責の可能性について弁護士に相談して確認した上で、自己破産の申し立てを検討するとよいでしょう。
個人再生をすれば借金の返済額を、5分の1から10分の1にまで減らせる可能性がありますが、清算価値や可処分所得の金額によっては、最低弁済額が高額となることもあります。
個人再生の申し立てをお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。
事前に相談することで最低弁済額のおおよその金額がわかりますし、必要に応じて他の解決方法に関するアドバイスも得られます。
解決方針が定まったら、弁護士が依頼を受け債務整理の複雑な手続きをすべて代行します。
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個人再生を裁判所に認めてもらえれば、借金を今の残高からおよそ5分の1にまで減らしてもらうことができるのです。
この記事では、個人再生とはどういうものなのか? について簡単にわかりやすく解説します。
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。
個人再生とは、基本的に財産を処分することなく、借金を大幅に減額できる債務整理の方法です。
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本コラムでは、個人再生の住宅ローン特則の内容や利用条件、特則を使えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。