債務整理 弁護士コラム
自己破産は、裁判所の決定をもってすべての借金の返済義務を免除してもらうことが可能な手続きです。
裁判所での手続きとしては、大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があり、同時廃止事件になれば比較的速やかに手続きが終了します。ただ、どちらの手続きで進めるかを申立人が自由に選べるわけではありません。
本コラムでは、「同時廃止」とは何か、同時廃止事件になるケースと同時廃止事件にならないケースの対処法について解説します。
まずは、同時廃止の意味と、管財事件との違いを解説します。
同時廃止事件とは、破産管財人が選任されず、破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止される破産事件のことをいいます。
自己破産では、原則的には破産者の財産を処分して換価し、債権者に配当する必要があります。この手続きが「破産手続き」というものです。しかし、破産者が一定の評価額を超える財産を有していない場合には、債権者への配当という目的を果たすことができないため、破産手続きが廃止されて終了します。
破産手続き開始決定の時点で、破産者が一定の財産を有していないことが明らかな場合には、開始決定と同時に廃止決定も行われます。このことから、「同時廃止」と呼ばれているのです。
管財事件とは、破産管財人が選任され、破産者の財産の換価処分や債権者への配当、免責に関する調査などが行われる破産事件のことです。破産管財人が主体となって破産手続きを進めることから「管財事件」と呼ばれています。
管財事件に付されると、手続きにかかる期間が長引く上に、高額の費用を予納しなければなりません。「少額管財事件」では基本的に20万円、「通常管財事件」では事案によって異なりますが最低50万円の費用を要します。
そのため、管財事件よりも同時廃止事件の方が申立人にとってのメリットが大きいのです。
同時廃止事件となった場合の手続きの流れと、手続きにかかる期間、費用についてご紹介します。
同時廃止事件の手続きの流れは、次のとおりです。
同時廃止事件の場合、自己破産の申し立てから免責許可決定が確定するまでの期間は3か月~5か月程度が目安となります。ただし、申し立ての準備に1か月~数か月を要することが多いので、最短でもトータルで半年程度を見込んでおくとよいでしょう。
一方、管財事件では裁判所における手続きだけで半年程度の期間を要することが多く、事案によっては1年以上を要することもあります。同時廃止事件の方が、手続きにかかる負担は大きく軽減されるといえます。
同時廃止事件で裁判所に納めなければならない費用は、収入印紙代と予納金を合わせて1万2000円程度です。さらに、「債権者数×84円」程度の予納郵券も必要です。
多くの場合は総額で1万5000円までに収まりますが、具体的な金額は債権者数だけでなく裁判所によっても若干異なることがあります。
以上の金額は、管財事件でも同様に納めなければなりません。管財事件の場合はさらに、予納金として裁判所の定める額(少額管財事件の場合は20万円程度)と、「債権者数×2×84円」程度の予納郵券が必要となります。
費用負担の面でも、同時廃止事件の方が大幅に軽いといえます。
なお、自己破産手続きを弁護士に依頼する場合には弁護士費用がかかりますが、具体的な金額は事案の内容や法律事務所によって異なります。
破産法上、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」に同時廃止決定が行われるものとされています(同法第216条1項)。
実際には、裁判所の運用により3つの条件をすべて満たす場合に同廃止事件が選択されています。具体的にどのような条件なのかを確認していきましょう。
理論上は、法人の破産でも同時廃止事件とすることは可能です。しかし、法人の場合は事業用資産が多く、負債も多額で債権債務関係が複雑なことが通常であることから、原則的に管財事件に付されています。
そのため、同時廃止事件は主に個人の自己破産事件が対象となっています。
一定の額を超える財産がある場合には「破産財団をもって破産手続の費用を支弁する」ことが可能であるものとして管財事件に付されます。ここにいう「一定の額」とは、東京地方裁判所では99万円以下の現金と、その他の財産で評価額20万円以下のものとされています。
他の地域の裁判所でもこの基準を採用しているところが多いですが、裁判所によっては異なる基準を採用しているところもあるので、事前に裁判所または弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。
債務者にめぼしい財産がない場合でも、免責不許可事由があるのではないかと疑われるときには「少額管財事件」に付される可能性が高いです。破産管財人によって免責に関する詳しい調査を行う必要があるからです。
少額管財事件とは、通常の管財事件よりも破産手続きが簡略化された管財事件のことです。東京地裁を初めとして多くの裁判所で少額管財事件が取り扱われていますが、裁判所によっては取り扱っていないところもあるので、事前に裁判所または弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。
自己破産しなければならないほど多額の借金を抱えているものの、同時廃止事件となる見込みが乏しい場合には、2つの対処法が考えられます。
管財事件となれば手続きと費用の負担が重くなりますが、的確に手続きを進めれば最終的には一定の条件の下に免責を得ることが可能です。
個人の管財事件では、大半のケースで少額管財事件に付されています。少額管財事件になると20万円程度の予納金を納めなければなりませんが、他の債務整理を行うよりは経済的負担が大幅に軽いといえます。
管財事件の予納金をどうしても用意できない場合や、著しい免責不許可事由がある場合には、他の債務整理を検討する必要があります。借金総額が大きい場合は任意整理で解決することは難しいので、個人再生を検討することになります。
個人再生とは、裁判所の手続きを利用して借金総額を5分の1~10分の1にまで減額した上で、3年~5年で分割返済する手続きです。
自己破産のように借金の返済義務がすべて免除されるわけではありませんが、安定収入があれば多くの場合は個人再生で解決可能です。住宅ローン特則の適用条件を満たす場合にはマイホームを残せるという大きなメリットもあります。
自己破産事件が同時廃止事件となると速やかに手続きが終了し、労力や費用の負担も軽くなります。
同時廃止事件となる基準はありますが、個別の事案ごとに判断されるため、申立書や債務者審尋での説明次第で同時廃止事件となる可能性を高めることも可能です。そのため、自己破産を申し立てる際には経験豊かな弁護士に依頼することをおすすめします。
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借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
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そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
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借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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