債務整理 弁護士コラム
個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金の返済額を大幅に減額させることが可能な手続きです。一定の要件を満たせばマイホームを残すことも可能となるなど、非常に大きなメリットのある債務整理の方法です。
しかし、個人再生の手続きには「やってはいけないこと」があり、場合によっては手続きが失敗に終わる恐れがあります。個人再生は、他の債務整理よりも手続きが複雑であるため、思わぬ行為が失敗につながることもあるので、特に注意が必要です。
この記事では、個人再生手続きで失敗しないためにやってはいけないことと、万が一失敗してしまった場合の対処法について解説します。
個人再生手続きを利用する際にやってはいけないこととして、以下の6つの行為が挙げられます。
個人再生の申し立てを行う際には、借入先や借金額、財産状況、家計収支の状況などを正確に申告しなければなりません。「財産を隠す」「財産の評価額を実際よりも低く申告する」「身内の人や友人からの借金を除外して申し立てを行う」などは、「虚偽の申告」に該当します。
虚偽の申告をすると、申し立てを棄却されたり(民事再生法第25条4号)、途中で手続きが廃止されたりする(同法第237条2項、第244条)ことになります。
悪質な場合には、「詐欺再生罪」(同法第255条1項)という罪に問われる可能性もあるので、注意が必要です。
個人再生の申し立て前に一部の債権者にのみ優先して返済することは、「偏頗(へんぱ)弁済」に該当します。
個人再生では「債権者平等の原則」が適用されるため、偏頗(へんぱ)弁済をした場合には他の債権者との公平を図るために、偏頗(へんぱ)弁済した金額が「清算価値」(所有財産の総額)に加算されます。
その影響で、返済額が本来の金額より大きくなってしまう可能性があるのです。
身内や友人からの借金、保証人がついている借金、抵当権や質権、所有権留保などの担保権がついた借金を手続きから除外するため優先的に返済してしまうと、偏頗(へんぱ)弁済の問題となるので注意しましょう。
個人再生手続きを弁護士に依頼した後は、一般的な金融機関からの借り入れはできなくなりますが、友人・知人などからの借り入れもしてはいけません。他の債権者への支払いを停止した後に借り入れをしていると、個人再生の申し立てが誠実に成されたものではないと判断され、申し立てが棄却される可能性があります(民事再生法第237条2項、第244条)。
また、返せないことが分かっていながら借りたと判断されれば、詐欺罪(刑法第246条1項)に問われる恐れもあることに注意が必要です。
個人再生を申し立てた後は、裁判所が定めたスケジュールに従って手続きが進められます。
その中で、申立人は「再生計画案」を定められた期限までに提出しなければなりません。1日でも提出が遅れると、その時点で再生手続きが廃止されてしまいます(民事再生法第191条2号前段、第243条2号前段)。
個人再生を申し立てた後、再生計画案の認可・不認可の決定が出るまでの間に「履行テスト」というものが行われます。履行テストとは、原則として再生計画案が認可された場合に返済していくべき予定の金額(月額)を滞りなく返済していけるかテストすることで、申立人が4~6か月間にわたって積み立てる制度です。
この履行テストの積み立てが滞るようであれば、再生計画案に従って返済していける見込みがないと判断され、再生計画案が不認可となってしまう可能性があります。
再生計画案の認可決定が確定すると裁判所における手続きは終結します(民事再生法第233条、第244条)が、まだ借金は残っています。再生計画案に従って完済するまで返済を続けなければなりません。
もし、途中で返済が滞ると再生計画が取り消されることがあります(同法第189条1項2号)。
法律上は1回でも返済が遅れると再生計画の取り消し事由となるため、認可決定後の返済は滞りなく行うことが極めて重要です。
個人再生でやってはいけないことをすると、以下のデメリットが生じてしまいます。
個人再生の手続きに失敗してしまうと、借金は減額されずにそのまま残ります。
認可決定後、再生計画が取り消されるまでに支払った金額は返済に充てられますが、通常は遅延損害金が加算されるため、個人再生の申し立て前よりも借金総額が膨らんでしまうことに注意が必要です。
個人再生を申し立てる際には、裁判所に納める費用の他、弁護士に依頼する場合は弁護士費用もかかります。申し立て後は、履行テストを兼ねて個人再生委員の報酬を支払い、認可決定後には債権者への分割返済もしなければなりません。
個人再生手続きに失敗した場合、これらのお金は戻ってこないので、経済的負担が重くなってしまいます。
個人再生手続きを弁護士に依頼した場合には受任通知が債権者に届いた時点、自分で申し立てた場合には再生手続き開始決定の通知書が裁判所から債権者に届いた時点で、信用情報機関に事故情報が登録されます。
事故情報は個人再生手続きに失敗したからといって削除されることはなく、信用情報機関には5~10年登録され続けることに注意が必要です。
万が一、個人再生手続きに失敗した場合でも、以下の対処法によって借金問題を解決することが可能です。
個人再生手続きが途中で終了した場合も、認可決定後に再生計画が取り消された場合も、改めて個人再生を申し立てることは可能です。再度の個人再生手続きを不備なく進めることができれば、借金問題を解決できます。
ただし、履行テストの積み立てができなかったり、再生計画認可決定後の返済ができなかったりすると、家計の収支を改善しない限り、再度の申し立てても解決できない可能性があるので注意が必要です。
再生計画認可決定後にやむを得ない事由で返済が難しくなった場合には、再生計画を変更して返済期限を最長2年まで延長できる可能性があります(民事再生法第234条、第244条)。
また、再生計画による返済額の、4分の3以上の返済を終えている場合で、一定の事由により返済が困難となった場合には、残りの返済義務を免除してもらえる可能性もあります(同法第235条、第244条)。この制度のことを「ハードシップ免責」といいます。
ただし、これらの制度はどちらも適用要件が厳しいため、利用できるケースはさほど多くないのが実情です。
以上の方法で解決が難しい場合は、他の債務整理への切り替えを検討すべきです。
個人再生を申し立てるほどの借金額を抱えているのであれば、多くの場合は自己破産への切り替えを検討することになると考えられます。
個人再生手続きが失敗した後でも、自己破産を申し立てることに支障はありません。
ただし、自己破産には一定の評価額を超える財産は処分されることや、免責不許可事由があることなど、個人再生とは異なるデメリットがあります。自己破産の申し立て前に、デメリットについて確認しておくことも大切です。
個人再生をするなら、可能な限り失敗は回避したいところです。以下の方法により成功率を高めることができます。
個人再生の手続きは、債務整理の中でももっとも複雑なものです。的確に進めるためには専門的な知識やノウハウが要求されます。無理に自分で申し立てようとせず、経験豊富な弁護士に依頼することが成功率を高めるための最善策となります。
弁護士に依頼しても、その弁護士にうそをついたのでは個人再生を成功させることはできません。
借り入れ状況や財産状況、家計の収支状況などについて、自分に不利な事情も弁護士に対して正直に話すことが重要です。そうすることによって初めて、最適な方法で借金問題を解決することが可能となります。
弁護士に個人再生を依頼すれば、手続きを代わりに進めてくれるだけでなく、「やってはいけないこと」についてアドバイスが受けられます。弁護士のアドバイスに従うことで、知らずのうちにやってはいけないことをやってしまい、個人再生に失敗するという事態を回避できます。
個人再生でやってはいけないことをやってしまったというケースでは、法律上のルールを知らなかった場合も多いですが、個人再生では解決が難しい事案で無理に申し立てた場合も少なくありません。
個人再生手続きで失敗することを回避するには、最適な債務整理を選ぶことも重要です。そのためには、経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
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借金があるのに収入が大幅に減ってしまい、毎月のローン返済が本当に苦しい……。持ち家は手放したくないけど借金を減らしてもらいたい……。
このようなお悩みをお持ちの方は、個人再生を選択することによって借金問題を解決できる可能性があります。
個人再生を裁判所に認めてもらえれば、借金を今の残高からおよそ5分の1にまで減らしてもらうことができるのです。
この記事では、個人再生とはどういうものなのか? について簡単にわかりやすく解説します。
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。
個人再生とは、基本的に財産を処分することなく、借金を大幅に減額できる債務整理の方法です。
個人再生の大きなメリットのひとつとして、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」があります。これは、一定の条件を満たしていることで、自宅を維持しながら借金を整理できる制度です。
本コラムでは、個人再生の住宅ローン特則の内容や利用条件、特則を使えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。