債務整理 弁護士コラム
自己破産すると、一定の条件を満たしていれば借金の返済義務がすべて免除されます。
しかし、その前提として、ある程度の財産を処分しなければならないことがあるため、「自己破産後は年金がもらえなくなるのではないか」と心配する方は少なくありません。また、借金の返済に追われて年金保険料が払えなくなり、「自己破産をすることでその状態を解決したい」と考える人もいます。
年金は老後の生活を支えるための大切なものなので、自己破産による影響が気になるのも自然なことです。
この記事では、自己破産すると年金はもらえなくなるのか、年金保険料が払えない場合はどのようにして解決すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
自己破産した後に年金をもらえるかどうかは、年金の種類によって結論が異なります。以下では、自己破産後の年金支給について、ご紹介します。
自己破産しても、公的年金の受給権には影響がありません。ここにいう公的年金とは、国民年金および厚生年金のことを指します。
公的年金を受給中の方は、自己破産後も変更なく年金を受け取れますし、公的年金を受給していない方も、自己破産によって将来年金を受け取れなくなったり受給額を減らされたりすることはありません。
その理由は、自己破産手続きにおいて、公的年金の受給権は「自由財産」として取り扱われるからです。
自由財産とは、自己破産しても換金処分する必要がなく、破産者の手元に残せる財産のことです。主な自由財産として、99万円以下の現金や差し押さえが禁止された財産などが挙げられます(破産法第34条3項)。
公的年金の受給権に関しては、差し押さえが禁止された財産として自由財産に該当するため(国民年金法第24条本文、厚生年金保険法第41条1項本文)、自己破産による影響は及びません。
私的年金には企業年金と個人年金があります。そのうち、企業年金の受給権は自己破産の影響を受けることがありません。
企業年金には、主に確定給付型、確定拠出型、厚生年金基金といった種類がありますが、これら3つの受給権はどれも差し押さえが禁止されています(確定給付企業年金法第34条1項本文、確定拠出年金法第32条1項本文、厚生年金保険法第41条1項本文)。
したがって、企業年金は公的年金と同様、自由財産に該当し、自己破産しても受け取ることが可能です。
個人で民間の生命保険会社等と契約して保険料を支払い、一定の年齢に達すると保険会社から受けることができる年金のことを「個人年金」といいます。
この個人年金の受給権は、差し押さえが禁止されていません。そのため、自己破産手続きにおいては、生命保険の解約返戻金(解約払戻金)と同様に処分の対象とされています。
もっとも、多くの裁判所では運用上、現金以外の財産でも評価額20万円以内のものは自由財産として取り扱われています。
その場合は、個人年金の解約返戻金見込み額が破産手続き開始決定の時点で20万円以内であれば、解約不要であり継続が可能です。解約返戻金見込み額が20万円を超えれば解約しなければなりませんが、20万円は手元に残すことができます。
なお、個人年金でも「iDeCo」は確定拠出型のために差し押さえが禁止されており、自由財産に該当するので、自己破産しても継続することが可能です。
「公的年金の受給権は自己破産による影響を受けない」とはいっても、年金を受給中の方が自己破産をする場合、以下の3点に注意しましょう。
公的年金も、受け取った後は「受給権」から「現金」、または「預金」に変わります。
自己破産手続きにおいて、現金については99万円を超える部分、預金については20万円を超える部分は自由財産とならず、処分されることに注意してください。なお、預金は裁判所により、取り扱いが異なる可能性があります。
なお、上記の金額を超えるかどうかの判断は、破産手続き開始決定時に破産者が有していた現金・預金の額に基づいて行われます。
破産手続き開始決定後に受け取った年金は、「新得財産」として自由に使うことが可能です。
独立行政法人福祉医療機構が運営している年金担保融資を利用している場合、自己破産しても、その返済義務は免除されません。
年金担保融資は、年金受給者が一時的に高額の出費を要する場合に貸し付けを行う公的な制度で、貸し手の福祉医療機構が有する返済請求権は、「租税等の請求権」と同様に「非免責債権」とされているからです(破産法第253条1項1号)。
年金担保融資制度による借金を完済するまでは、自己破産後も支給される年金から返済金が天引きされ続けることに注意しましょう。
なお、令和4年3月末をもって年金担保融資の申し込み受付は終了しており、新たに利用することはできなくなっています。
公的年金の差し押さえ禁止の例外として、税金を滞納した場合には公的年金の差し押さえが認められています(国民年金法第24条ただし書き、厚生年金保険法第41条1項ただし書き)。
税金を滞納してもすぐに差し押さえを受けるわけではありませんが、滞納を続けていると、公的年金の受給権が国や地方公共団体によって、実際に差し押さえられることもあります。
その場合は、年金を満額受け取ることはできません(国税徴収法第77条1項)。
まだ年金を受給していない方が自己破産する場合、年金保険料が未払いとなっているケースも少なくありません。
しかし、自己破産をしても、年金の支払い義務は免除されないことに注意しましょう。年金保険料の支払い義務も、破産法上の「租税等の請求権」(破産法第253条1項1号)という非免責債権に基づく債務に該当するからです。
自己破産で免責が許可されても、年金保険料の未払いは解消されることなく、その後も年金保険料は支払い続ける必要があります。
仮に未払いを続けていると、滞納処分により財産を差し押さえられる可能性もあるため、支払いの義務は守るようにしましょう。
どうしても年金保険料を支払えないときは、どのように対処したらよいのでしょうか。ここからは、そんなときの正しい対処方法について、説明します。
年金保険料を支払うことが経済的に困難場合には、「保険料免除制度」または「保険料納付猶予制度」を申請することができます。
保険料免除制度は、所得などの状況に応じて保険料の全部、または一部の納付が免除される制度です。保険料納付猶予制度は、20歳以上50歳未満の人で、所得が一定額以下の場合に年金保険料の納付が猶予される制度になっています。
免除や納付猶予が承認されると、年金保険料を納めない期間も年金の受給資格期間に算入されるため、将来、年金を受給することが可能です。しかし、免除を受けた場合は、年金額を減らされます。
免除された保険料を追納すれば本来の年金額に戻すことができるため、自己破産をして経済生活を立て直した後、できる限り追納するようにした方がよいでしょう。
借金の返済に追われているために年金保険料が支払えない場合は、借金問題を解決することが先決といえます。自力で借金を返済することが厳しいときは、債務整理をすることが有効です。
債務整理には、自己破産の他にも任意整理・個人再生という手続きがあります。
借金総額が比較的少なく、毎月の返済額を減らせば年金保険料を支払える状況であれば、任意整理で解決できる可能性があるでしょう。
多額の借金を抱えている場合は、個人再生または自己破産を検討することが必要です。
個人再生では、ある程度の返済を継続する必要がありますが、任意整理よりも大幅に借金を減額できますし、自己破産とは異なり、財産を処分する必要がないというメリットもあります。
自己破産の申し立てを決意した方であっても、状況によっては任意整理または個人再生で解決できる可能性もあるため、弁護士に相談して再検討してみましょう。
自己破産をしても公的年金や企業年金は受け取れますが、注意しなければ、当てにしていた年金を使えないといった事態も起こり得ます。
まだ年金を受給していない人にとっては、年金保険料の支払いが借金の返済と同様に、重い負担となっていることもあるでしょう。
年金を守りつつ借金問題を解決するためには、状況に合った債務整理を選択することが重要となります。そのためには、経験豊富な弁護士からアドバイスを受けることが有効です。
ベリーベスト法律事務所では、経験豊富な弁護士が対応し、状況に応じて最適な解決方法を提案いたします。
借金問題に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけますので、お困りの際はぜひ一度、ベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。