債務整理 弁護士コラム
借金の返済を滞納すると、遅延損害金というものがかかります。
遅延損害金は通常の利息よりも高い利率で計算されるため、滞納が長引くと返済の継続が困難になることもあるでしょう。返済できなくなれば、最終的には財産を差し押さえられることにもなりかねません。
この記事では、遅延損害金の意味と計算方法、払えない場合のリスク、そして遅延損害金を払えないときの対処法についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まずは、借金の遅延損害金について基本的なことを確認していきましょう。
遅延損害金とは、借金を約束の期日までに返済できなかった場合に発生するものであり、法律上は「債務不履行に基づく損害賠償金」(民法第415条1項)に該当します。
借金の返済義務という金銭債務が不履行となった場合の損害賠償額は、原則として法定利率(年3%)によって定めますが、約定利率がそれよりも高い場合には約定利率によって定めることとされています(同法第419条1項)。
金融機関との取引においては、一般的に遅延損害金の利率が法定利率よりも高利で約定されているため、約定利率で計算した遅延損害金を請求されることになります。
利息とは、お金を貸してもらったとことへの対価として、債務者から債権者に支払うお金のことです。それに対して遅延損害金は、約束した支払期日を守らず滞納したことに対するペナルティーとしての違約金のようなものです。
遅延損害金のことを俗に「遅延利息」「延滞利息」と呼ぶこともありますが、利息とは法的な意味合いが異なります。
なお、利息と遅延損害金が同時に発生することはありません。借金を遅滞なく返済している間は利息がかかり、滞納が生じている間は利息に代わって遅延損害金がかかります。
両者はこのような関係にあるので、ほとんどの場合は遅延損害金の方が高い利率で約定されています。
遅延損害金は、借金の返済を滞納した場合に、支払期日の翌日から発生します。そして、滞納を解消するまで発生し続けます。
たとえば、8月31日の支払期日に返済できず滞納し、9月30日に滞納金を支払った場合は、9月1日から同月30日までの30日分、遅延損害金が発生するということです。
なお、遅延損害金を支払うタイミングは債権者によってさまざまです。
基本的には滞納金の支払いと同時に遅延損害金も支払うべきものですが、金融機関によっては滞納が発生した月の、翌々月の支払日に遅延損害金を請求するところもあります。
遅延損害金も利息と同じように、所定の「利率」に応じて発生します。しかし、両者の利率は異なるのが通常です。
借り入れの際に、当事者間の契約で利息と遅延損害金について定めなかった場合は、利息は0%、遅延損害金は法定利率の3%(民法第404条2項)となります。
しかし、金融機関からの借り入れでは通常、契約で利息と遅延損害金の利率が定められます。
この利率のことを「約定利率」といい、利息制限法で以下のように上限が定められています(利息につき第1条、遅延損害金につき第4条1項)。
借入残高 | 利息 | 遅延損害金 |
---|---|---|
10万円未満 | 20% | 29.2% |
10万円以上~100万円未満 | 18% | 26.28% |
100万円以上 | 15% | 21.9% |
もっとも、銀行や消費者金融、クレジットカードによるキャッシングの遅延損害金は、同法第7条1項で20%が上限とされています。そのため、多くの業者が、契約約款で遅延損害金を20%と定めているのが実情です。
なお、クレジットカードのショッピング代金(分割払いの場合)については、利息制限法ではなく消費者契約法が適用されるため、遅延損害金の上限は14.6%(同法第9条2号)となります。
実際に滞納したときに遅延損害金がいくらかかるのかを確認するためには、計算方法を知っておく必要があります。
遅延損害金の計算式は、以下のとおりです。
「滞納額」とは、支払期日に支払うべきであった元金と、その日までに発生した利息の合計額です。つまり、毎月1万円ずつを返済していて滞納が生じた場合は、1万円に対して遅延損害金がかかることになります。
ここで注意が必要なことは、遅延損害金は滞納した金額にのみかかるものであり、借入残高全体に対してかかるとは限らないということです。
借金を分割で返済している場合、まだ返済期限が到来していない部分は債務不履行に陥っていないので、通常の利息がかかるだけです。
すでに返済期限が到来したにもかかわらず返済していない部分にのみ、上記の計算式で計算した遅延損害金がかかることになります。
たとえば、消費者金融から50万円を借りていて、毎月1万3000円ずつ返済しているとしましょう。
このケースで1か月(30日)滞納した場合で、遅延損害金の利率が年20%だとすれば、以下のような計算となります。
多くの金融機関では1円未満の端数は切り捨てとされているので、このケースでの遅延損害金は213円です。
この金額だけをみると、大した問題ではないように感じられるかもしれません。
次に、総額300万円の多重債務を抱えていて、毎月10万円を返済しているケースで、3か月滞納した場合の遅延損害金を計算してみましょう。
毎月の返済金と滞納金に加えて、これだけの遅延損害金が生じると、返済が相当に厳しくなることがおわかりいただけることでしょう。また、期限の利益を喪失すると金融機関が一括請求し得る状態となり、その場合には上記の「滞納額」は元金全額となるため、遅延損害金の額もさらに大きくなります。
滞納が生じたら、早期に解消することが大切です。遅延損害金を支払えないまま放置すると、重大なデメリットが生じます。
遅延損害金は滞納日数に応じて発生するので、当然ながら滞納を解消するまで増え続けます。
また、滞納を続けると翌月の滞納金にも遅延損害金がかかり、返済額が加速度的に増えていくことにも注意が必要です。返済が2回以上連続で遅れると、その後の返済は難しくなってしまうことが多いでしょう。
61日以上または3か月(3回)以上、滞納が続くと信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。いわゆる「ブラックリスト」に掲載された状態となり、その後は新たな借り入れやクレジットカードの利用などの信用取引ができなくなります。
事故情報は滞納を解消してから5年は消えないので、遅延損害金を支払えなければいつまでたっても信用取引はできないままです。
滞納が続くと、債権者から再三にわたって電話や郵便による督促を受けます。それでも滞納が解消できなければ、債権者は法的措置によって債権の回収を図ってきます。
具体的には、支払い督促や訴訟を経て、強制執行手続きにより財産を差し押さえられることになるでしょう。
差し押さえの対象となるのは主に給料や預金口座です。これらの財産が差し押さえられると、生活費に支障をきたす可能性が高い上に、職場や家族に借金のことを知られることにもつながります。
返済が苦しい場合でも、遅延損害金の支払いを回避できる可能性があります。
まずは、借入先に相談しましょう。支払期日を過ぎると遅延損害金を免除してもらうことは難しくなりますが、滞納が発生する前に連絡して相談すれば、ある程度は柔軟な対応も期待できます。
たとえば、毎月の返済額を支払い可能な程度に減額してもらえたり、支払期日に利息さえ支払えば滞納扱いとはならなかったりといったケースもあり得るのです。
このような配慮をしてもらえるかどうかは債権者次第なので、返済できない理由や、いつまでに支払えるのかなどを具体的に伝えるなどして、誠実に対応することが重要となります。
債権者に少し待ってもらうだけでは返済が追いつかないような場合には、債務整理を検討するのが良いでしょう。ただし、遅延損害金は債務整理手続きに影響を及ぼす可能性もあることに注意が必要です。
債務整理を検討する場合も、できる限り早期に弁護士に相談し、状況に合った手続きを選択した方がよいでしょう。
遅延損害金は1か月分だけであれば大した金額にはならないことが多いですが、滞納が続いた場合や、借入件数・借入総額が大きい場合には積み重なることにより、返済が難しくなってしまいます。
「このままでは返済が苦しい」と感じた時点で弁護士に相談し、正しく対処することをおすすめします。
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