債務整理 弁護士コラム

個人再生の流れは? 手続きの期間や費用についても解説

2021年12月20日
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個人再生の流れは? 手続きの期間や費用についても解説

多額の借金を整理したいけれど、マイホームなど手放したくない財産があるという場合は、個人再生が有効な解決方法となります。個人再生は、一定の要件を満たす場合にはすべての財産を手元に残しつつ、借金を原則として8割、最大で9割も減額できるという、非常にメリットの大きい債務整理の方法です。

ただし、個人再生の手続きは債務整理の中でも最も複雑なものとなっています。
● どのようなことが行われるのか
● 自分はいつ何をしなければならないのか
● 手続きはいつ頃終了するのか
● 費用はどれくらい準備すればよいのか……
など、さまざまなことが気になることでしょう。

そこで今回は、
● 個人再生手続きの流れ
● 期間
● 費用
などについて分かりやすく解説します。

1、個人再生手続きの流れと期間

個人再生手続きの一般的な流れについて、所要期間とともに一覧表にまとめましたので、まずは以下の表をご覧ください。

事前準備
弁護士への相談・依頼 数日~数週間
受任通知の送付 即日~数日
取引履歴の開示(借金額の調査) 数週間~数か月
申立書類の作成・必要書類の収集 1か月~数か月
裁判所での手続き
個人再生の申し立て
個人再生員の選任 即日~1週間
履行テスト開始(個人再生委員の選任と同時)
個人再生委員との面談 1週間~3週間
個人再生委員の意見書提出 即日~数日
再生手続開始決定 即日~数日
債権者からの債権届出 4週間
報告書等の提出 2週間
再生計画案の提出 5週間
個人再生委員の意見書提出 1週間
書面決議に付する決定(小規模個人再生の場合)
債権者の意見を聞く旨の決定(給与所得者等再生の場合)
即日~数日
債権者からの書面決議の回答(小規模個人再生の場合)
債権者からの意見の提出(給与所得者等再生の場合)
3週間
個人再生委員の意見書提出 即日~数日
再生計画案の認可・不認可の決定 即日~数日
履行テスト終了
官報公告 2週間
再生計画案認可決定の確定 2週間
再生計画に基づく返済
返済開始(認可決定が確定した月の翌月から)
完済 3年~5年
残債務の免除(完済と同時)

全体を通してみると、事前準備に数か月~半年程度、裁判所での手続きに5か月程度、その後の返済期間で3年~5年を要する手続きとなっています。

「履行テスト」とは、債務者が再生計画案のとおりに返済していくことができるかどうかを試すために、一定期間、実際に支払いをさせることをいいます

法律で定められた制度ではありませんが、履行テスト中に支払いが滞ると、将来的に反復・継続して収入を得る見込みが乏しいと判断され、再生計画案が不認可となる可能性があります。

履行テストを行うかどうかは、裁判所によって異なります。履行テストを行う場合でも、裁判所によって方法が異なることもあります。

東京地方裁判所の場合は、個人再生委員が指示する口座に毎月1回、再生計画案における1か月分の返済額を振り込んでいきます。テスト期間は個人再生委員が選任されてから再生計画案の認可・不認可決定が出るまでです。振り込んだお金は、最終的に個人再生員の報酬(原則として15万円)が差し引かれた後、残額があれば申立人に返還されます。

その他、上記の表で記載した各事項についての詳しい内容はこちらの記事で解説していますので、併せてご参照ください。

(関連記事:個人再生にかかる期間はどれくらい?必要期間を解説

2、個人再生の流れに関する注意点

個人再生では、すべてのケースが完全に同じ流れで進むわけではありません。ここでは、流れが異なる理由や、その他の注意点をまとめて解説します。

  1. (1)小規模個人再生と給与所得者等再生での違い

    個人再生には、主に個人事業主向けの「小規模個人再生」と、主に会社員向けの「給与所得者等再生」の2種類があります。両者で流れが大きく異なるわけではありませんが、次の2点で違いがあります。

    • 申立時の必要書類
    • 債権者による書面決議があるかどうか

    申立時には、給与所得者等再生の場合のみ「可処分所得額算出シート」という書面を作成して提出する必要があります。これは、債務者の収入から一般的に必要と認められる生活費や経費を差し引き、返済に充てることが可能な「可処分所得」を客観的に計算するための書類です。

    給与所得者等再生では、このシートで算出した可処分所得は全額返済に充てなければなりません。そのため、一般的に小規模個人再生の場合よりも返済額が大きくなる傾向にあります。その代わり、債権者による書面決議は不要とされています。

    もう一方の小規模個人再生では可処分所得額算出シートの提出は不要で、借金額から算出される最低返済額(借金額が500万円以下の場合は最低返済額100万円)と、清算価値(所有財産の総額)のどちらか大きい方以上の金額を返済すればよいことになっています。

    その代わり、債権者による書面決議に付され、再生計画案に対する不同意の意見が多数であれば否決され、再生計画案は不認可となってしまいます。

    もっとも、債権者から不同意の意見が出されることはめったにないので、会社員等の給与所得者も小規模個人再生を選択している人が多いのが実情です

  2. (2)裁判所による手続きの流れの違い

    個人再生をどこの裁判所に申し立てるかによっても、手続きの流れが異なることがあります。裁判所によって手続きの運用が異なることがあるからです。主に異なる点は、以下の2つです。

    • 個人再生委員が選任されるかどうか
    • 履行テストが行われるかどうか

    個人再生委員とは、個人再生手続きが適正に行われるように申立人を指導監督するために、裁判所から選任される人のことです。通常、地元の弁護士の中から個人再生手続きに精通した人が選ばれます。

    東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所では、全件において個人再生委員が選任されていますが、なかには原則的に個人再生委員は選任しない裁判所もあります。例えば、大阪地方裁判所では原則として個人再生委員を選任せず、裁判所が直接、申立人を指導監督しつつ手続きを進めています。

    履行テストも多くの裁判所で行われていますが、行われない裁判所もあります。ただし、履行テストが行われない裁判所でも、申立人の返済能力を確認するための何らかの方法が行われていることがほとんどです

    例えば、大阪地方裁判所では、裁判所による指導監督の下、申立人に毎月一定の金額を積み立てさせる「積立金制度」が行われています。この場合、個人再生委員の報酬は発生しないため、積み立てた金額は最終的に全額、申立人の手元に残ります。

  3. (3)書類提出が遅れると手続きに失敗することもある

    再生計画案は、裁判所が定めた期間内に提出しなければなりません。提出がなければ、裁判所は「再生手続廃止の決定」をしなければならないものと法律で定められています。

    再生手続きの廃止とは、その時点で再生手続きを終了させるという意味です。再生計画案が認可されないまま手続きが終了するので、個人再生が失敗に終わるということを意味します。

    厳しいようですが、法律で定められていることなので、再生計画案の提出が1日でも遅れると個人再生は失敗してしまうのです。

    期限内に提出することが難しい場合は、事前に「再生計画案の提出期間伸長の申し立て」をすることができます。債権者との協議に時間を要するなど、正当な理由があると裁判所が認めた場合は、提出期限が伸長されます。

  4. (4)完済するまで個人再生手続きは終わらない

    再生計画案の認可決定が確定すれば、裁判所における手続きは終結します。ただし、債権者および申立人にとっての個人再生手続きは、完済するまで終わりません。

    確定した再生計画の通りに返済できなければ、債権者が裁判所へ申し立てることによって、再生計画が取り消される可能性があります。取り消されると、借金は個人再生を申し立てる前の状態に戻ってしまいます。

    返済が1回遅れただけの場合は、債権者に事情を話すことで待ってもらえることもあります。しかし、法律上は1回でも遅れると再生計画が取り消される可能性があるので、3年~5年の返済期間中は遅れないように返済し続けることが極めて重要となります

  5. (5)認可決定後の返済が苦しくなったときの対処法

    現実には、再生計画案の認可決定・確定後の返済期間中に

    • リストラ
    • 勤務先の倒産
    • 病気
    • 事故


    などの影響で返済が苦しくなるケースもあるでしょう。その場合には、次の2つの対処法があります。

    • 再生計画の変更
    • ハードシップ免責


    再生計画の変更は、裁判所の決定によって再生計画における返済期間を最大2年まで延長できる制度です。

    返済期間の延長が認められれば、毎月の返済額が軽減されるので、返済しやすくなります。ただし、再生計画の変更は「再生債務者に責任を問えない事情」があるときでなければ認められません。リストラ、倒産、病気、事故、自然災害などの不可抗力であれば認められる可能性が高いですが、浪費や仕事を怠けて収入が減ったというような場合は認められません

    ハードシップ免責は、再生計画で確定した債務の4分の3以上の返済を終えている場合に、裁判所の決定によって残りの債務の返済を免除してもらえる制度です。ハードシップ免責が認められるためには、他にも以下の要件を満たす必要があります。

    • 債務者に責任を問えない事情で返済が極めて困難となったこと
    • 再生計画の変更によっても返済が極めて困難であること
    • ハードシップ免責の決定が債権者一般の利益に反しないこと


    この2つの制度は利用するためのハードルが高く、実際にも利用例はあまり多くありません。再生計画に基づく返済ができなくなったときは、他にも2回目の個人再生や自己破産といった解決方法もあります。困ったときは早めに弁護士に相談することをおすすめします。

3、個人再生手続きにかかる費用

個人再生は、借金の大幅な減額が可能で、一定の要件を満たせばマイホームを守ることもできるというように、非常に大きなメリットのある手続きです。ただ、個人再生手続きを利用するには、ある程度の費用がかかります。

  1. (1)申し立てにかかる費用

    個人再生を申し立てる際には、裁判所併科の費用を納める必要があります。

    • 申立手数料(収入印紙):1万円
    • 予納金:1万2268円
    • 郵便切手:数千円


    郵便切手の必要金額は、債権者数によって異なる他、裁判所によっても若干異なる可能性があります。多くの場合は数千円で収まります。具体的には、申立先の裁判所で確認することが必要です。

    その他にも、戸籍謄本や住民票などの必要書類を取得するための実費が1000円~数千円程度必要となります。

  2. (2)個人再生委員の報酬

    個人再生委員が選任されるケースでは、その報酬を負担しなければなりません。

    個人再生委員の報酬額は裁判所によって異なり、12万~25万円程度です。東京地方裁判所の場合は、15万円となっています。

    報酬は一括で支払うのではなく、履行テストの形で毎月分割して支払います。再生計画案の認可決定の後、履行テストで支払ったお金の中から個人再生委員が報酬を差し引いて受領することになります。

  3. (3)弁護士費用

    個人再生手続きを弁護士に依頼するときにかかる費用は、どの弁護士に依頼するかによって異なります。

    実際にかかる弁護士費用は1人1人状況によって異なるので、詳しくは弁護士にご相談ください。

4、個人再生を成功させるには事前準備がポイント

個人再生手続きにおける最重要ポイントは、再生計画案の作成・提出です。

再生計画案を実際に提出するのは申し立てから3~4か月後ですが、適切な再生計画案を作成するには、申し立て前の準備段階において再生計画案の原案ができていなければなりません

なぜなら、申し立てる時点で再生計画に基づく返済額をおおよそ算出しなければならず、その計算結果を前提として裁判所における手続きが進められていくからです。履行テストでの支払額も、ここで計算した金額で行われます。再生計画案の提出時期になって内容を大きく変更することは難しいので、事前準備が大切となるのです。

事前準備においては、全債権者から取引履歴を入手して借金額を精査するとともに、所有財産も整理して金額的な評価を適切に行い、さらに家計も管理した上で、民事再生法のルールにのっとって返済計画を検討していきます。これらの作業を適切に行うためには、弁護士のサポートを受けることが望ましいといえます。

また、個人再生手続きを速やかに進めるためにも、事前準備がポイントとなります。裁判所における手続きと、その後の返済は法律に定められたルールに従って行われるため、期間の長短を左右することはできません。

期間を短縮できるとすれば、事前準備の段階のみです。早めに弁護士に相談した上で、効率的に事前準備を進めるのがよいでしょう。

5、まとめ

個人再生の手続きは、大きく分けると「事前準備」、「裁判所における手続き」、「その後の返済期間」の3段階となっています。

事前準備をしっかりと行い、裁判所における手続きでは書類の提出期限に遅れないよう適切に対応し、再生計画案の認可決定が確定した後は、完済するまで遅滞なく返済を継続するという流れになります。

事前準備が不十分であれば、申し立て後に裁判所や個人再生委員からさまざまなことを指摘され、手続きがスムーズに進みません。書類の補完はできたとしても、適切な再生計画案を作ることができず、個人再生に失敗してしまうおそれもあります。個人再生の申し立てをお考えなら、早めに弁護士に相談してアドバイスを受けた方がよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、個人再生をはじめとする債務整理に関するご相談は、何度でもご利用いただけます。経験豊富な弁護士が詳しい事情を伺い、状況に応じて親身にサポートいたします。お困りの際は、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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