債務整理 弁護士コラム
私たちの生活において、クレジットカードはなくてはならない存在です。今では、1人で2枚・3枚のクレジットカードを持っている人も珍しくなくなりました。
その他方で、手持ちの現金がなくても決済できるクレジットカードは、常に「使いすぎ」のリスクを抱えることになります。クレジットカードの使い方を間違えたことが原因で、カード破産に追いこまれるケースは、自己破産の典型的な理由のひとつでもあります。
そこで今回は、カード破産に陥らないための注意点や、カードの支払いが行き詰まってしまった場合の対処方法などについて解説します。
カード破産は、クレジットカードの誤った使い方が原因となっている場合が少なくありません。
特に以下で解説するカード利用は、支払いきれないほどの多額の借金(利用残額)を抱える原因となるので控えるようにすべきでしょう。
クレジットカードの利用方法は、大きくわけて、ショッピング利用とキャッシング利用の2つの利用方法があります。キャッシングは、簡単にいえばクレジットカード会社から借金をすることで、あらかじめ設定された限度額の範囲内であれば繰り返し利用することができます。最近では、カード会社専用のATMだけでなく、コンビニに設置されたATMでも気軽にキャッシングできるカードが増えて便利になったといえます。
しかし、キャッシングが便利になるということは、「借りすぎ」のリスクも高くなることに注意が必要です。「消費者金融からの借金よりもクレジットカードのキャッシングの方が手軽で安心」と思っている人もいるかもしれませんが、クレジットカードのキャッシングには、消費者金融・銀行のカードローンと同程度の利息が発生しますのでリスクの大きさには違いがありません。
カードでのショッピングには、1回払い・2回払い・3回以上の分割払い・リボ払いといった支払い方法があります。これらの支払い方法のうち、分割払いやリボ払いを多用している人は、ほとんどを1回払いで決済している人に比べてカード破産の危険性が高いといえるので注意する必要があるでしょう。
特に、リボ払いは、毎月の支払額を低額に抑えられるメリットがある反面、毎月手数料(借金の利息と同程度の負担)が発生してしまうデメリットがあるだけでなく、多用してしまうと「支払額<利用額」という状況になりやすいことに注意する必要があります。
「毎月支払っているのに利用残額がなかなか減らない(完済できない)」と感じている人は、上のようなケースに該当している可能性が高いといえます。
キャッシングやリボ払い・分割払いによって、毎月の支払額が増えていけば、「毎月の支払額を工面できない」という状況にも陥りやすくなってしまいます。
このような場合に支払いに充てるお金を工面するために、消費者金融・銀行カードローン・他社クレジットカードのキャッシングでさらに借金を繰り返すことは、借金をさらに増やす要因になってしまうことの方が多く非常に危険です。最近では、1人で複数枚のクレジットカードを持つ人も増えましたので、このような自転車操業もやりやすくなったといえ、特に注意すべきでしょう。
次に、万が一カード破産となってしまった場合に発生するデメリットについて解説していきます。
自己破産した場合には、自己破産手続が開始された時点で抱えているすべての借金(負債)が破産手続による清算の対象となります。
そのため、破産手続開始の時点で利用残額が1円でも残っているクレジットカードは、(支払いが行き詰まっていないものであっても)すべて破産手続の対象となり強制解約となってしまいます。
とはいえ、実際には、自己破産手続が開始されるよりも早い段階でクレジットカードは強制解約となります。実務の上では、クレジットカード会社が自己破産を依頼した弁護士から受任通知(弁護士が債務整理の依頼を受任したことを債権者に通知する文書)を受領した時点で強制解約となるのが一般的となっているからです。
なお、自己破産手続が開始された時点で利用残額が1円も残っていないクレジットカードは、自己破産手続の対象とはなりませんので、自己破産をしても強制解約とならない可能性があります。しかし、自己破産直前にカードの強制解約を逃れるために、特定のカード会社の利用残額だけを支払う(返済する)行為は絶対にしてはいけません。このような行為は、他の債権者の公平を害する行為(偏頗弁済:へんぱべんさい)として破産手続のなかで問題とされてしまうからです。
自己破産手続は、債務者(破産者)の負債と財産を強制的に清算するための手続きです。そのため、自己破産をすれば、債権者への配当に充てるために、手持ちの財産を強制的に処分されてしまう可能性があります。
しかし、自己破産をした場合でもありとあらゆる財産を差押えられてしまうというわけではありません。今後の生活や生業の維持のために必要な財産は、自己破産をしたとしても差押えが禁止されていますし、一定額の現金(99万円まで)は差押えの対象から除外されます。
また、それぞれのケースが抱える事情によっては、手元に残せる財産の範囲を拡張してもらえる余地も残されています。
カード破産した場合には、信用情報に事故情報が登録されてしまいます。借金の文脈で「ブラックリスト入りする」といわれるのは、債権者である金融機関によって信用取引に事故があった情報が登録されてしまうことを指しています。
自己破産の事故情報が登録されている間は、他の金融機関との信用取引(ローンやクレジットカードの契約等)に次のような悪影響が出てしまう可能性が高いといえます。
毎月のカードの支払いが苦しくなってしまった場合には、以下のような方法で解決することができます。
カード破産(クレジットカードが原因の自己破産)は、カードの支払いができなくなった場合の最終的な解決方法です。自己破産後に、裁判所から免責の許可を得られれば、自己破産が開始された時点で抱えていたカードの利用残額・借金の返済義務は完全に免除されます。
しかし、次のような事情があるときには、自己破産をしても免責を得られない可能性があります。
ここまで解説してきたように、カード破産は、免責による負債の完全免除と引き換えに、財産処分などの大きなデメリットが生じる場合もあります。この記事の読者のなかにも、「カードの支払いは苦しいけど、カード破産だけは避けたい」と考えている人も少なくないと思います。
そのような場合には、次のような方法での解決を検討してみる余地があるといえます。
① 家族などの支援を受ける
クレジットカードの支払いが苦しいときには、家族などの支援を受けて一時的に支払いを肩代わりしてもらうことで解決することもできます。家族に立て替えてもらった支払いの返済は、金融機関からの借金と違い、利息も発生せず、返済期間も融通が利くことが多いといえます。
しかし、カードの支払いができなくなったということは、家族にも打ち明けづらいという場合は少なくありません。また、利用残額によっては、家族でも立て替えられないというケースもあるかもしれません。そのような場合には、以下で解説する自己破産以外の債務整理を検討するとよいでしょう。
② 自己破産以外の債務整理で解決する
債務整理というと自己破産(カード破産)を思い浮かべる人が多いと思いますが、債務整理には、自己破産以外にも任意整理・個人再生という方法があります。カードの支払いができなくなったというケースであれば、このいずれの方法でも対応できる場合が少なくありません。
● 任意整理
任意整理は、債権者(カード会社)と直接交渉して、今後の支払いの条件を見直してもらうことで、毎月の支払い負担を減らす手続きです。
任意整理では、裁判所を介さないため、手続きも簡単で費用も安くプライバシーも保護されるのでメリットの大きい債務整理の方法といえます。
一般的な任意整理の場合には、今後の利息・手数料を免除してもらった上で、残金については3年から5年程度の分割払いで返済するという契約(和解)を債権者と交わすことになります。カードのキャッシングやリボ払い(分割払い)には、カードローンと同等の高い利息・手数料が発生しているので、任意整理をすることで、完済までの支払総額を大幅に減らせる可能性があります。
その反面、任意整理では利用残額(元金)そのものを免除してもらうことはできない点で、自己破産に比べて減額効果は低くなってしまいます。そのため、カードの残額があまりにも高額になってしまった場合や、自転車操業で他にも多額の借金を抱えてしまった場合には対応しきれないこともあるので注意が必要です。
● 個人再生
個人再生は、裁判所の認可を受けた借金などの一部を分割返済する返済計画(再生計画)を完遂することで、残額の返済を免除してもらう手続きです。個人再生は、借金等の元金の免除を受けられるので、任意整理よりも減額の効果が高く、財産の処分も不要という点で優れているといえます。
また、カードの支払いなどが原因で住宅ローンも滞納してしまった(あるいは住宅ローンの返済がつらくてカードの支払いができなくなった)というようなケースでは、マイホームの差押えを回避しながら、ローンの返済条件を見直してもらうこともできます(いわゆる住宅ローン特則を適用した場合)。
以上のように、個人再生はメリットの大きな債務整理といえますが、次の点に注意する必要があります。
ここまでの解説と重複する点もありますが、最後に「カード破産にならない」ために特に注意しておきたいことについて解説しておきます。
クレジットカードでの買い物・決済は非常に便利ですが、実際に現金が手元から出ていくわけではないので「いくら利用したのかわからない」という状態に陥りやすいリスクがあります。現時点での利用額を把握しないままカードでの決済を続ければ、とても支払いきれない高額な請求をされてしまうことになりかねません。
今では、ウェブを通じてカードの利用状況(翌月の請求額など)を簡単に確認することもできますので、日頃から「今月はいくら使ったのか?」ということをしっかり意識しておくことはカード破産を回避するもっとも基本的な対応といえます。
クレジットカードの分割払い・リボ払いは高額の商品を購入する場合などに非常に便利です。しかし、分割払いやリボ払いでの決済を繰り返せば、利用額が一気に膨らんでしまうリスクがあります。特にリボ払いの場合には、毎月の支払額が低額に設定されていることも多いことから「いつまでも利用残額が減らずに手数料を支払い続ける」という状況にもなりかねません。クレジットカードを利用する場合にはできる限り1回払いで決済するように心がけるだけでもカード破産のリスクはかなり減るといえます。
お金に関するトラブルはできれば誰にも知られたくないと思ってしまうものです。そのため、カードの支払いに行き詰まってしまっても、家族などに相談できないままに、自転車操業などのリスクの高い対応をした結果、状況がさらに悪化してしまうケースは珍しくありません。
カードの支払いや借金に関するトラブルは、金額の小さいうちに対処をすれば、デメリットやコストを抑えて解決できる可能性も高くなるといえます。たとえば、カードの支払いが行き詰まったという場合であっても1社だけの問題であれば、任意整理で解決できる場合が多いといえるでしょう。
弁護士であれば、それぞれの状況にあったアドバイスをすることができますし、カードの支払いができなくなったことについて相談者を叱るようなこともありません。さらには、弁護士(およびその事務所スタッフ)には守秘義務があるので、相談いただいた内容が家族や他人に漏れる心配も不要ですので、お金のトラブルを抱えた場合には1日でも早く弁護士に相談することをおすすめします。
クレジットカードは非常に便利なツールで、今の私たちの取引ではなくてはならないものといえます。しかし、便利さの裏側には常にリスクがあります。カードの使いすぎや、誤った利用は、カード破産の原因になりかねないので、日頃から十分に注意してカードを利用することが重要といえます。
万が一、カードの支払いが苦しくなった場合や、いつまでも利用残額が減らないと感じた場合には、カード破産の黄色信号・赤信号のサインである可能性があります。カードの返済に行き詰まった場合であっても、早期に対応すれば、カード破産を回避し、よりコストの低い方法で解決できる可能性が残されています。
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「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
「今回だけ…」とおそるおそる少額で始めたはずの課金も、いつも間にか抵抗がない状態に陥っている方も多いのではないでしょうか。
スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
本コラムでは、ソシャゲなどのスマホゲームで課金をやめられない心理、課金に制限をかける方法、課金をやめる方法、課金が原因で借金に悩んでいるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介します。
廃課金とよばれるような過度な課金は、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。できるだけ早めに課金をコントロールしたり、借金問題を解決したりして、通常の生活に戻していきましょう。
「必死に働いても生活が苦しい」「働きたいのに働けない」「借金返済でどうすればよいのか分からない」などの悩みを抱える人は少なくありません。
このような生活苦には、働けない・給料が低い・借金を抱えていることが大きな原因となっているケースも多くあります。
本コラムでは、生活が苦しい状況から抜け出すための対処方法や相談先、支援制度について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。