債務整理 弁護士コラム
個人事業主の借金問題は、事業を原因とする負債を抱える場合も多く、サラリーマンなどの場合と比べて多額の負債を抱えがちです。そのため、借金返済に行き詰まったときには自己破産を考えがちですが、民事再生手続きをすることができれば、財産を処分することなく多額の借金を解決できる可能性があります。
しかし、個人再生は債務整理の中でも、もっとも複雑な手続きであるため、一般の人にはわかりづらいことが多く、実際に踏み切るべきかどうか迷ってしまう人も多いかもしれません。
そこで今回は、個人事業主が民事再生・個人再生を利用した場合について、借金がどの程度減額されるのかと、おさえておくべきポイントなどについて解説します。
個人事業主や自営業者が民事再生をするときには、通常の民事再生手続きだけでなく、個人向けの特別な再生手続き(小規模個人再生手続き)も利用することができます。
まずは、手続きの基本的な概要を確認しておきましょう。
通常の(法人・事業者向け)民事再生手続きと個人再生(小規模個人再生)に共通する、手続きの基本的な流れは下記のとおりです。
民事再生手続きに共通する重要なポイントは、次の3点にまとめられます。
つまり、民事再生手続きを成功させるためには、債権者(の多数)が納得できるだけの返済プランを債務者が作成しなければならないということです。その意味で、民事再生手続きは、任意整理や自己破産よりもハードルが高く、弁護士のサポート抜きで手続きを成功させるのはかなり難しいといえます。
通常の民事再生手続きと個人再生は、いずれも再生計画の認可とその完遂によって借金の一部を免除してもらえる手続きである点では共通しています。しかし、個人再生手続き(小規模個人再生)は、基本的に非事業者向けの手続きとして創設された経緯があることから、次のような点で違いがあります。
このうち特に注意すべき点は、個人事業主や自営業者が事業に関係する負債を抱えた場合に、負債総額が5000万円を超えてしまうケースでは、個人再生はできないということです。
さらに、再生計画の可決要件も、個人再生と通常民事再生とでは、下記のように通常民事再生の方がかなり厳しいことにも注目しておく必要があるでしょう。
負債の返済条件(再生計画案の内容)に関する違いについては、次章で改めて解説します。
債権者による可決を経て、裁判所に認可された返済計画案にしたがって借金の一部を返済するという点では、通常民事再生も個人再生も違いはありません。
しかし、細かくみていくと、通常の民事再生と個人再生では大きな違いがあり、一般的には通常民事再生の方が債務者にとっては厳しい手続きになる場合が多いといえます。
小規模個人再生で再生計画案が認可されるためには、次のような内容を加味した再生計画案を作成する必要があります。
個人再生をした場合のもっとも大きな特徴は、債権者へ支払うべき借金の総額について法律が以下に掲げるような「最低弁済基準額」を定めていることです。
ただし債務者が保有している、差押え可能な財産の評価額が上記の金額を超える場合には、計画返済額はその評価額を上回るようにしなければならない点に注意が必要です。
債務者が自己破産した場合よりも返済額が少なくなってしまうのは、債権者の一般の利益に反することになる(債権者としては再生手続きよりも破産手続きの方が有利になる)からです。これを「清算価値保障の原則」といいます。
通常民事再生手続きの場合には最低弁済基準額がなく、返済期限は再生計画認可確定の日から10年以内となります。一見すると、個人再生の場合よりも緩やかな条件のように思われますが、前述したように債権者による決議の要件は厳しく、債権者が納得できる(再生計画案に積極的に賛成できるだけの)金額を返済する必要があります。そのため、実際には個人再生よりもハードルが高い場合の方が多いといえます。
また、個人再生では対応できないほどの負債を抱えてしまった場合には、事業規模もそれなりの規模であるケースが多いといえます。この場合には、事業用の設備や売掛金などとの関係で、清算価値それ自体がかなり高額になってしまい再生手続きをすることが難しいこともあります。
個人事業主や自営業者が民事再生で負債を処理する場合には、次の点について注意することが大切といえます。
特に、事業の継続、近い将来での再チャレンジ(再度の事業立ち上げ)を念頭においている場合には、弁護士などの専門家からしっかり助言を受けた上で、再生手続きをするべきといえます。
民事再生・個人再生では、前述した基準で算出した金額を、法定の年限以内に分割返済しなければなりません。民事再生・個人再生では、財産の強制処分は行われず、債務者が今後得る収入の中から返済を行っていくことになります。
したがって、再生手続き後も事業を継続するという場合には、特に次の点などに注意しながら、その後の事業の見通しをしっかり見極めることが大切です。
個人再生手続きでは住宅ローンについても、債権者による差押えを回避しながら返済条件を見直してもらえる、住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)を適用することができます。
しかし、自宅が店舗や事務所と兼用になっていて、次のいずれかの条件に該当する場合には、住宅ローン特則を適用することができません。
取引先などからの売掛金や在庫がある場合には、債務者の財産として裁判所に申告する必要があり、これらの評価額は、預貯金や不動産といった他の積極財産と同様に清算価値として計上されることになります。すでに触れたように、売掛金や在庫の評価額は高額になることも多く、そのことが原因で再生手続きでの解決が困難になってしまうこともあります。
また、買掛金についても負債扱いになりますので、こちらも裁判所に申告する必要があります。
再生手続きの直前に買掛金の支払いをしてしまうと、偏頗弁済(へんぱべんさい:特定の債権者だけを優遇する不公平な返済行為)となってしまい弁済額が増額されたり、再生手続きの申し立てが棄却されたりしてしまう可能性があります。したがって、再生手続きを利用する際には、適切な時期に仕入れをストップするなどの措置も必要な場合があります。
再生手続きの申し立て後も事業を継続したい場合などには、買掛金で取引先に迷惑をかけたくないと考えるでしょう。また、再生手続きを申し立てたことで買掛金の支払いがストップしてしまえば、取引先の連鎖倒産が起こる可能性も否定できません。
そこで、民事再生法は、次にあげるケースでは裁判所(監督委員)の許可を得ることで、再生手続き(計画返済)とは別に、取引先からの仕入れ分などの支払いを行うことを認めています。
個人事業主や自営業者であっても、負債総額が5000万円を超えない場合には、個人向けの手続きである個人再生手続き(小規模個人再生)で借金を解決することができます。
しかし、個人事業主・自営業者の再生手続きは、被事業者の場合以上に手続きが複雑になるのが一般的です。特に再生手続き後も事業を継続するケースでは、今後の事業見通しだけでなく、取引先との交渉や、運転資金の調達などについても十分な配慮をする必要があり、専門家の支援を受ける効果は非常に大きいといえます。
ベリーベストでは、債務整理に詳しい弁護士がそれぞれのケースに見合った適切な対処とアドバイスを行っています。また、民事再生に関するご相談は、何度でも無料でご利用いただけますので、お困りの際にはぜひお問い合わせください。
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個人再生手続は、自己破産とは異なり財産処分による債権者への返済(配当実施)を前提とせずに多額の借金を解決できる点に大きな特徴のある手続きです。
しかしながら、高い金額で処分可能な財産がある場合には、手続きにおいて一定の不利益が生じたり、その財産を失ってしまうことがあります。高額な財産を手元に残したままで多額の借金を免除することは債権者との関係で必ずしも公平とはいえませんし、高額な財産には担保が設定されている場合も少なくないからです。
そのため、債務者が自動車を保有している場合には注意が必要です。個人再生を行う際には、その取り扱いが重要なポイントとなります。
個人再生は、裁判所に申し立てることによって借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。減額された借金は、3年~5年にわたって継続的に返済していくことになります。
ただ、この期間中にもさまざまな事情で家計が悪化し、返済が難しくなることもあるでしょう。そんなときでも、一定の要件を満たせばハードシップ免責という制度によって救済を受けることが可能です。
本コラムでは、ハードシップ免責という制度の内容や、どのような要件を満たせば完済しなくても免責されるのかについて解説します。
お金の悩みは家族であっても相談しづらい、知られたくないと感じる人が多いといえます。まして、「借金が返せずに個人再生で解決する」ということは、かなり多額の借金を抱えている場合が多いでしょう。
しかし、個人再生したことがバレて不利益を被るかもしれない、という不安がぬぐいきれずに、債務整理をするべきか迷ってしまう人も少なくありません。
実際には、個人再生をしたとしても会社などにバレるケースは必ずしも多くないといえます。
本コラムでは、具体的にどのような場面において、個人再生をしたことがバレる可能性があるのかと、バレずに債務整理を進める方法があるのかについて解説します。
借金を債務整理で解決したいものの、周囲にバレたくないと不安に感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。