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個人事業主が民事再生で事業継続する際知っておくべき3つのこと

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更新日:2022年06月01日 公開日:2021年02月25日

個人事業主が民事再生で事業継続する際知っておくべき3つのこと

個人事業主の借金問題は、事業を原因とする負債を抱える場合も多く、サラリーマンなどの場合と比べて多額の負債を抱えがちです。そのため、借金返済に行き詰まったときには自己破産を考えがちですが、民事再生手続きをすることができれば、財産を処分することなく多額の借金を解決できる可能性があります。

しかし、個人再生は債務整理の中でも、もっとも複雑な手続きであるため、一般の人にはわかりづらいことが多く、実際に踏み切るべきかどうか迷ってしまう人も多いかもしれません。

そこで今回は、個人事業主が民事再生・個人再生を利用した場合について、借金がどの程度減額されるのかと、おさえておくべきポイントなどについて解説します。

1、個人事業主・自営業者が利用できる民事再生手続き

個人事業主や自営業者が民事再生をするときには、通常の民事再生手続きだけでなく、個人向けの特別な再生手続き(小規模個人再生手続き)も利用することができます。

まずは、手続きの基本的な概要を確認しておきましょう。

  1. (1)両方の手続きに共通する基本的な流れ

    通常の(法人・事業者向け)民事再生手続きと個人再生(小規模個人再生)に共通する、手続きの基本的な流れは下記のとおりです。

    弁護士に依頼・債権者に受任通知を送付
         ↓
    申立書などの必要書類の作成
         ↓
    裁判所へ申し立て・再生委員・監督委員の選任
         ↓
    再生手続き開始決定
         ↓
    再生計画案の提出
         ↓
    債権者による再生計画案の決議
         ↓
    再生計画認可(不認可)決定
         ↓
    再生計画(分割返済)の履行開始
         ↓
    再生計画の終了・残債務の免除確定


    民事再生手続きに共通する重要なポイントは、次の3点にまとめられます。

    • 原則として、すべての負債が手続きの対象となる
    • 再生計画案は債務者が作成しなければならない
    • 再生計画案の認可には、債権者の賛成が必要


    つまり、民事再生手続きを成功させるためには、債権者(の多数)が納得できるだけの返済プランを債務者が作成しなければならないということです。その意味で、民事再生手続きは、任意整理や自己破産よりもハードルが高く、弁護士のサポート抜きで手続きを成功させるのはかなり難しいといえます。

  2. (2)通常民事再生手続きと個人再生(小規模個人再生)の違い

    通常の民事再生手続きと個人再生は、いずれも再生計画の認可とその完遂によって借金の一部を免除してもらえる手続きである点では共通しています。しかし、個人再生手続き(小規模個人再生)は、基本的に非事業者向けの手続きとして創設された経緯があることから、次のような点で違いがあります。

    • 再生計画の対象となる負債総額が5000万円を超える場合には、個人再生を利用できない
    • 個人再生よりも通常民事再生の方が債権者の可決要件が厳しい
    • 最低弁済基準額が定められているのは個人再生のみ
    • 再生計画の実施期間(分割返済の期間)が異なる(通常10年、個人3年)
    • 通常民事再生では住宅ローン特則を利用できない
    • 個人再生では債権者集会は開催されない


    このうち特に注意すべき点は、個人事業主や自営業者が事業に関係する負債を抱えた場合に、負債総額が5000万円を超えてしまうケースでは、個人再生はできないということです

    さらに、再生計画の可決要件も、個人再生と通常民事再生とでは、下記のように通常民事再生の方がかなり厳しいことにも注目しておく必要があるでしょう。

    • 個人再生
      債権者の過半数もしくは債権額の過半数の反対で否決(意思表示なしは賛成扱い)
    • 通常民事再生
      債権者の過半数および債権額の過半数の賛成で可決(意思表示なしは反対扱い)


    負債の返済条件(再生計画案の内容)に関する違いについては、次章で改めて解説します。

2、民事再生・個人再生における返済額の決まり方

債権者による可決を経て、裁判所に認可された返済計画案にしたがって借金の一部を返済するという点では、通常民事再生も個人再生も違いはありません。

しかし、細かくみていくと、通常の民事再生と個人再生では大きな違いがあり、一般的には通常民事再生の方が債務者にとっては厳しい手続きになる場合が多いといえます。

  1. (1)小規模個人再生の場合

    小規模個人再生で再生計画案が認可されるためには、次のような内容を加味した再生計画案を作成する必要があります。

    • 債権者への返済総額(計画返済額)が負債額に応じた最低弁済基準額を下回っていない
    • 返済総額が債権者の一般の利益に反していないこと(清算価値を下回らないこと)
    • 3か月に1回以上の頻度で、3年以内の返済期間であること(特段の事情があるときは5年まで可能)


    個人再生をした場合のもっとも大きな特徴は、債権者へ支払うべき借金の総額について法律が以下に掲げるような「最低弁済基準額」を定めていることです。

    • 負債額が100円未満の場合:その負債額(減額なし)
    • 負債額が100万円以上500万円未満の場合:100万円
    • 負債額が500万円以上1500万円未満の場合:負債額の5分の1
    • 負債額が1500万円以上3000万円以下場合:300万円
    • 負債額が3000万円を超え5000万円以下の場合:負債額の10分の1


    ただし債務者が保有している、差押え可能な財産の評価額が上記の金額を超える場合には、計画返済額はその評価額を上回るようにしなければならない点に注意が必要です。
    債務者が自己破産した場合よりも返済額が少なくなってしまうのは、債権者の一般の利益に反することになる(債権者としては再生手続きよりも破産手続きの方が有利になる)からです。これを「清算価値保障の原則」といいます。

  2. (2)通常民事再生の場合

    通常民事再生手続きの場合には最低弁済基準額がなく、返済期限は再生計画認可確定の日から10年以内となります。一見すると、個人再生の場合よりも緩やかな条件のように思われますが、前述したように債権者による決議の要件は厳しく、債権者が納得できる(再生計画案に積極的に賛成できるだけの)金額を返済する必要があります。そのため、実際には個人再生よりもハードルが高い場合の方が多いといえます。

    また、個人再生では対応できないほどの負債を抱えてしまった場合には、事業規模もそれなりの規模であるケースが多いといえます。この場合には、事業用の設備や売掛金などとの関係で、清算価値それ自体がかなり高額になってしまい再生手続きをすることが難しいこともあります。

3、個人事業主が個人再生・民事再生する際の重要ポイント4つ

個人事業主や自営業者が民事再生で負債を処理する場合には、次の点について注意することが大切といえます。

特に、事業の継続、近い将来での再チャレンジ(再度の事業立ち上げ)を念頭においている場合には、弁護士などの専門家からしっかり助言を受けた上で、再生手続きをするべきといえます。

  1. (1)今後の事業継続の可能性を見極める

    民事再生・個人再生では、前述した基準で算出した金額を、法定の年限以内に分割返済しなければなりません。民事再生・個人再生では、財産の強制処分は行われず、債務者が今後得る収入の中から返済を行っていくことになります

    したがって、再生手続き後も事業を継続するという場合には、特に次の点などに注意しながら、その後の事業の見通しをしっかり見極めることが大切です。

    • 今後の事業収益の見通し
    • 運転資金を調達できる可能性(再生後は銀行の借り入れができなくなる)
    • 事業に必要な設備類の確保・調達(リース品は引き上げになる可能性が高い)
    • 再生手続きをしたことによる取引先の減少リスク
  2. (2)個人事業主・自営業者が住宅ローン特則を利用するときの注意点

    個人再生手続きでは住宅ローンについても、債権者による差押えを回避しながら返済条件を見直してもらえる、住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)を適用することができます。

    しかし、自宅が店舗や事務所と兼用になっていて、次のいずれかの条件に該当する場合には、住宅ローン特則を適用することができません

    • 店舗の専有面積の方が自宅(居住)部分の専有面積よりも大きい場合
    • 住宅ローン以外の担保権(抵当権)が設定されている場合
  3. (3)売掛金や在庫・買掛金の取り扱い

    取引先などからの売掛金や在庫がある場合には、債務者の財産として裁判所に申告する必要があり、これらの評価額は、預貯金や不動産といった他の積極財産と同様に清算価値として計上されることになります。すでに触れたように、売掛金や在庫の評価額は高額になることも多く、そのことが原因で再生手続きでの解決が困難になってしまうこともあります。

    また、買掛金についても負債扱いになりますので、こちらも裁判所に申告する必要があります。
    再生手続きの直前に買掛金の支払いをしてしまうと、偏頗弁済(へんぱべんさい:特定の債権者だけを優遇する不公平な返済行為)となってしまい弁済額が増額されたり、再生手続きの申し立てが棄却されたりしてしまう可能性があります。したがって、再生手続きを利用する際には、適切な時期に仕入れをストップするなどの措置も必要な場合があります。

  4. (4)取引先の買掛金で迷惑をかけたくないときの対処方法

    再生手続きの申し立て後も事業を継続したい場合などには、買掛金で取引先に迷惑をかけたくないと考えるでしょう。また、再生手続きを申し立てたことで買掛金の支払いがストップしてしまえば、取引先の連鎖倒産が起こる可能性も否定できません。

    そこで、民事再生法は、次にあげるケースでは裁判所(監督委員)の許可を得ることで、再生手続き(計画返済)とは別に、取引先からの仕入れ分などの支払いを行うことを認めています。

    • 民事再生申し立て開始決定前の仕入れ分の支払い
    • 手続きを円滑化するための少額債権
    • 中小企業である主要取引先への支払い
    • 少額債権の支払いをしないと事業継続に著しい支障をきたす場合

4、まとめ

個人事業主や自営業者であっても、負債総額が5000万円を超えない場合には、個人向けの手続きである個人再生手続き(小規模個人再生)で借金を解決することができます。

しかし、個人事業主・自営業者の再生手続きは、被事業者の場合以上に手続きが複雑になるのが一般的です。特に再生手続き後も事業を継続するケースでは、今後の事業見通しだけでなく、取引先との交渉や、運転資金の調達などについても十分な配慮をする必要があり、専門家の支援を受ける効果は非常に大きいといえます

ベリーベストでは、債務整理に詳しい弁護士がそれぞれのケースに見合った適切な対処とアドバイスを行っています。また、民事再生に関するご相談は、何度でも無料でご利用いただけますので、お困りの際にはぜひお問い合わせください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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