債務整理 弁護士コラム
借金の返済に完全に行き詰まったとしても「どうしても自己破産だけはしたくない」と考える人は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと思います。また、債務整理というと自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。しかし、債務整理の方法は自己破産だけではありません。債務整理には、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決する方法も用意されています。
そこで今回は、借金を返済するのはつらいけれども自己破産はしたくないと考えている人のために、自己破産以外で借金を解決する3つの方法と特徴などについて解説します。
まずは、借金の返済に行き詰まってしまっても「自己破産したくない」と考えてしまう理由は、人それぞれだと思います。一般論としては次のようなことが理由となっている場合が多いといえます。
借金に苦しんでいても自己破産はしたくないと考えてしまうのは、自己破産それ自体にネガティブなイメージをもっていることと無関係とはいえない場合が多いでしょう。たとえば、「破産者」という言葉に対しては、「人生に失敗した人」、「お金にだらしのない人」といったイメージをもってしまう人も少なくないからです。
そして、自己破産したことを他人に知られれば、自分がそのような目で他人から見られるかもしれないという不安が「自己破産はしたくない」という気持ちを大きくさせるものと考えられます。
しかし、自己破産することは必ずしも人生の失敗ではありませんし、いわゆるコロナ倒産などのように、自分ではどうしようもない理由で自己破産しなければならない状況に追い込まれてしまうケースも少なくありません。また、自己破産したことが家族以外の他人に知られるという可能性もゼロではありませんが、実際にはあまりないことといえます。
自己破産する場合には、自分の財産を処分して債権者への配当を行うことが原則です。そのため、自己破産をすると「ありとあらゆる財産を失う」、「家族の財産も差し押さえられてしまう」と思い込んでいる人も多いようです。
しかし、自己破産をしたとしても、あらゆる財産が差し押さえの対象となるわけではありません。
たとえば、次のような財産は自己破産したとしても差し押さえの対象からは除外されます。
実は、実際の自己破産では、自己破産をしても何一つ差し押さえられないというケースも珍しくありません。
自己破産をしたことが勤務先に知られる可能性は、勤務先から借金がある場合を除けば、かなり低いといえます。また、仮に、勤務先に自己破産を知られたとしても、それだけが理由で懲戒解雇にあうことはありません。「自己破産した」ということだけを理由に懲戒解雇することは、違法解雇にあたると考えられているからです。
なお、一部の職業(弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など)に就いている場合には、自己破産によって資格などに制限が生じるため、一定の不都合が生じることは避けられません。
しかし、自己破産による資格などの制限は一生続くというわけではありません。自己破産による資格などの制限は、復権(通常は免責確定で復権します)によって回復されるからです。また、あらかじめ会社に相談すれば、別の部署で業務を行うなどの方法で対処することも可能ですから、資格制限に該当する仕事に就いていても自己破産できないと決めつけてしまうことは早計といえます。
自己破産以外の借金解決方法としては、借金の借り換え、任意整理、個人再生の3つの方法を挙げることができます。これらの方法には一長一短があるので、借金の金額、件数、毎月の収入といった諸条件に応じて適切な方法を選択する必要があります。
以下では、この3つの方法の特徴などについて解説していきます。
借金の借り換えは、もっともリスクの小さい借金の解決方法といえます。たとえば、家族に借りたお金で消費者金融や銀行の借金を完済してしまえば、その後は利息を負担しなくてもよい場合がほとんどですし、返済期間についても融通を利かせてもらえる可能性も高いでしょう。また、銀行・消費者金融のカードローンのように利息の高い借金を、低利の借金(たとえば組合や共済などからの借り入れ)で借り換えることも有効な方法のひとつです。
①借り換えをするメリット
これらの方法が利用できない場合でも、近年は銀行や消費者金融の「借り換え用の商品(いわゆる「おまとめローン」)を利用して借り換えることで対応できる場合があります。
特に、小口の借金が複数件あるという場合には、借金を1つにまとめることで返済の負担を大幅に軽減できる場合も少なくないといえます。借金は小口の借金の方が金利も高く、件数が多ければそれだけ毎月の返済日(返済回数)も多くなるので資金繰りの面でも負担が大きくなるからです。
複数の債務者から借金をしている場合には、おまとめローンが有効です。小口の借金は利息の負担が大きくなるので、1つの大きな借金にまとめることによって金利を下げることができ、毎月の返済額を減らすことも可能になります。
また、返済日も1回になるので、借金の状況も把握しやすく、お金の管理がしやすくなるというメリットもあります。
②借り換えの限界
しかし、借り換えは、お金を貸してくれる相手が必要となる点で、希望していても利用できないこともありえます。たとえば、借金の額が多くなるほど家族から借りることも難しくなるといえますし、おまとめローンの場合には、収入などの条件が合わずに審査が通らないこともあります。
また、おまとめローンを利用しても金利が思ったよりも下がらないという可能性もありますし、返済期間をかなりの長期間に設定したことが原因で完済までの支払総額が逆に増えてしまうこともあります。そして、返済期間が長くなるほど病気や失業などの理由で返済できなくなるリスクも高くなるといえます。
任意整理とは、今後の返済の負担を軽くしてもらえるように債権者と直接話し合いをする方法です。任意整理の交渉は裁判所を介さずに行うため、書類の作成や裁判期日への出席などの負担もなく、費用も安く済ませることができます。
①任意整理の効果
任意整理をする場合には、債権者に今後の利息の免除と返済期間の見直しをお願いするのが一般的です。借金の滞納で期限の利益を失ってしまった場合でも、任意整理が成功すれば債権者との同意内容にしたがって期限の利益が改めて付与されます。
借金返済における利息の負担はかなり重いものといえます。たとえば、消費者金融や銀行のカードローンで50万円借り、それぞれの金融機関が定めている最低の返済額(4年~5年の期間)で完済した場合には、完済までに20万円~25万円ほどの利息を支払うことになり、毎月の返済額の半分程度が利息の支払いに消えてしまうこともあります。任意整理をすれば、今後の利息の支払いを免除してもらえるので、完済までの支払総額を大幅に減らせるというわけです。
②任意整理に適したケース
消費者金融・銀行カードローンのような高利の借金を何件も抱えているケースや、クレジットカードのリボ払い残高が膨らんでしまったケースは、任意整理に適した典型例といえます。
また、任意整理はどの借金を対象にするかも自由に選ぶことができますので、「消費者金融の借金が軽くなれば、自動車ローンはこれまで通り返済できる」といった場合などにも適しています。
③任意整理できないケース
任意整理を成功させるためには、今後の返済条件について債権者の同意を得なければなりません。したがって、長期の滞納などによって債権者との関係がかなり悪化している場合や、債権者がすでに訴訟を提起しているケースなどでは、そもそも話し合いができない可能性もあります。
また、借金元金の免除を認めてもらうことも難しいですから、返済能力をはるかに上回る借金を抱えてしまった場合には、任意整理で解決することは難しいといえます。
借金が多すぎる、債権者が話し合いに応じてくれないなどの理由で任意整理ができない場合でも、裁判所の手続である個人再生をすれば、借金の負担を大幅に減らせる可能性があります。
個人再生では、今後の利息だけでなく借金の元金についても免除を受けられるからです。
①個人再生の効果
個人再生では、民事再生法という法律で定められている基準に従って、借金の元金が免除されます。
免除される最大の額は、債務者の抱える負債の総額(個人再生の対象となる借金のみ)に応じて下の表のように決められています(民事再生法231条2項2~4号)。
借金の総額 | 返済すべき最低額 |
---|---|
100万円未満 | 全額(減額なし) |
100万円以上~500万円以下 | 100万円 |
500万円超~1500万円以下 | 債務総額の1/5(100万円~300万円) |
1500万円超~3000万以下 | 300万円 |
3000万円超~5000万円 | 債務総額の1/10(300万円~500万円) |
5000万円 | 個人再生は不可(通常の民事再生は可能) |
つまり、銀行カードローンで300万円の借金があるという場合であれば、個人再生によって200万円の免除を受けられる可能性があるということです。このように、個人再生は任意整理の場合よりも借金減額の効果が大きいので、「自己破産するしかない」と考えてしまうような借金や、奨学金のような低利の借金でも解決できる可能性があります。
②住宅ローンにも効果がある
個人再生の最大の特徴は、住宅ローンの返済が行き詰まったという場合にも利用できることです。住宅ローンのように担保を提供している借金は、債務整理をすると担保(マイホーム)が債権者に差し押さえられてしまいます。しかし、個人再生手続のいわゆる住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を適用すれば、債権者からの差し押さえを回避しながら、期限の利益の回復、支払期間の延長、一定期間の元金据え置き(利息のみの支払い)といった対応をとることができます(民事再生法196条以下)。
③個人再生の限界
個人再生は、任意整理と同様に、借金元金の一部を毎月の収入から分割で返済していく手続きです。個人再生の返済期間は原則3年(最大5年)と決められているため、裁判所の決定で決められた金額をこの期間に返済できるだけの継続的な収入がない場合には手続きすることができません。たとえば、借金300万円を100万円に減額してもらえたという場合であれば、3年間で100万円を返済できるだけの見込みがなければいけないということです。アルバイト・パートや年金収入の人でも個人再生をすることは可能ですが、収入との関係で対応できる借金の額には限界があります。
また、ローン完済済みやアンダーローンの不動産を持っている場合のように、高額な資産を持っている場合には、個人再生をしても借金が(あまり)免除されない可能性があります。個人再生をした場合には、その時点で破産した場合の配当見込額よりも多い金額を債権者に返済しなければならないとされているからです(清算価値保障の原則)。
さらに、大口の債権者との関係が悪化している場合には、債権者の反対によって個人再生が失敗してしまう可能性もあります。債権者の過半数もしくは債権額の過半数から反対があった場合には個人再生は認められないことになっているからです(民事再生法230条6項)。
返せなくなった借金を自己破産せずに解決したいという場合には、できるだけ早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。相談が遅れたことで借金の額が増えすぎてしまった場合や、債権者との関係が相当に悪化してしまった場合には、自己破産をせずに任意整理・個人再生で借金を解決することも難しくなってしまうからです。
また、借金問題を弁護士に相談し債務整理を依頼することには次のようなメリットがあります。
ここまで解説してきたように、債務整理の方法にはそれぞれ一長一短があり、万能な手続きはありません。したがって、それぞれのケースが抱える個別の事情に適した手続きを正しく選択することがとても重要です。
手続きを正しく選択するためには、現在の状況を客観的に正しく分析できる専門知識・スキルが不可欠です。借金が返せなくなった事情によっては「自己破産したくない」と考えていてもやむなく自己破産を選択するほかないという場合もあるかもしれません。
しかし、そのような場合であっても、一般の人が心配しているような自己破産によるデメリットは大きくないこともあります。自己破産をしても財産の差し押さえを受けないというケースは珍しくありません。また、周囲の人に自己破産を知られる可能性も低いといえるからです。
弁護士にご相談いただければ、それぞれの手続きごとに生じうるデメリットなどについても丁寧に説明させていただいた上で、借金解決のためにもっともよいと思われる解決方法を提案させていただきます。
弁護士に相談するというと、「費用が心配」と感じる人も多いのではないかと思います。
しかし、当事務所では借金や債務整理のご相談は無料相談で対応させていただいていますので、相談費用の心配は不要です。
また、借金をしている、返済が苦しいということは、なかなか他人に相談しづらい、という人も多いでしょう。弁護士や事務所のスタッフには守秘義務があり、ご相談いただいた内容が家族などに漏れてしまうこともありませんので安心してご相談いただけます。なお、実際に債務整理をご依頼いただいた場合にかかる弁護士費用の詳細は、章の最後にあるリンクからご確認ください。
借金の返済が滞り出した場合には、債権者からの取立てが精神的に大きな負担となっている場合も多いでしょう。特に、「家族に内緒にしておきたい借金」であった場合には、督促の郵便物や電話から家族に知られるのではないかと落ち着かない日々を過ごしている人も少なくありません。
しかし、弁護士に債務整理を依頼すれば、このような不安も即座に解消することができます。金融機関の債権者は、弁護士が債務整理に着手したことを知った場合には、代理人である弁護士以外の者に取立てを行うことを法律で禁止されているからです(貸金業法21条1項9号)。
さらに、弁護士が債務整理に着手した場合には、毎月の借金の返済も一時的に停止する旨の通知を債権者に送りますので、借金返済のために毎月金策をする必要もなくなります。お仕事をされていて毎月の収入がある人であれば、これまで借金返済に充てていたお金を債務整理の費用として積み立てることもできるようになりますし、毎月の支払いをストップさせることで家計を立て直せるきっかけとなる場合も多いでしょう。
返せなくなった借金の解決方法は自己破産だけではありません。したがって、「自己破産はしたくない」と考えるような事情がある場合でも、債務整理によって借金を解決することも可能です。
しかし、自己破産以外の手続きで解決する場合には、借金の一部を分割で返済することが必須となります。その意味では、状況が深刻なるほど自己破産をせずに借金を解決することは難しくなるといえますので、「自己破産はしたくない」とお考えの場合には、1日でも早く弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。