債務整理 弁護士コラム
住民税とは、都道府県や市区町村といった自治体がさまざまな行政サービスを住民に提供するための費用に充てられる税金のことです。正式名称は「市町村民税」や「都道府県民税」など地域によって異なりますが、この2つを総称して住民税と呼びます。
会社などに勤務している方は、住民税のことをあまり意識したことはないかもしれませんが、自営業の方などは住民税の他にも国民年金保険料や国民健康保険料をはじめとして、さまざまな税金や公共料金を自分で納めなければなりません。
全ての納付額を合計するとそれなりの金額になってしまうので、支払うのが厳しい場合もあるでしょう。また、支払い忘れによって滞納してしまうこともあるはずです。
本コラムでは、住民税を滞納するとどうなるのか、財産の差し押さえはいつどのようにして行われるのか、どうしても住民税の滞納を解消できないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
住民税滞納により、お困りの方のご参考になれば幸いです。
まずは、どんな方が住民税を滞納しやすいのかを考えるために、住民税の支払い方を確認しておきましょう。
住民税の納付方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類があります。
普通徴収とは、役所から送られてくる納付書を使用したり、口座振替を利用したりして個人が直接支払う納付方法です。
特別徴収とは、勤務先の企業などが従業員に支払う給料から住民税を天引きし、預かった金額を企業などから役所へ支払う形の納付方法です。
企業などに勤務している方は、一般的に特別徴収によって住民税を納めています。
天引きされる住民税の分手取り給料が減ってしまいますが、勤務先が住民税の納付をしてくれるため、滞納する心配はありません。
一方、自営業の方などは普通徴収により、自分で所得の中から納付しなければなりません。
普通徴収による納付額は、毎年1回、役所から送られてくる納税通知書によって通知されます。
一年分を一括で納付すれば翌年まで滞納するおそれはありませんが、一年分となるとそれなりの金額なので、多くの方は分割納付を選択します。
分割納付の場合は、6月、8月、10月、1月と年4回に分けて支払うことになります。
毎月の納付ではないので、支払い忘れが生じやすい上に、支払い月には負担が重くなり、支払いが厳しくなってしまうこともあるかもしれません。
普通徴収の方は、払い忘れにはくれぐれも注意しましょう。
住民税を滞納したところで、サラ金のように取り立てられることはないだろうと軽く考えている方もいるかもしれませんが、この考え方は危険です。
住民税を滞納することには、以下のようなリスクがあります。
住民税を滞納してしまうと、完済するまで延滞金がかかり続けるので、滞納が続けば続くほど納付する負担が大きくなっていきます。
延滞金の額は、次の計算式によって算出します。
延滞利率が何%かは、納期限の翌日から2か月以内と2か月より後で、次のように異なります。
特例基準割合は毎年改正されますが、令和6年(2024年)では、下記のとおりとなっています。
滞納が発生すると、その日から20日以内に役所から督促状が送られてきます。督促状を受け取っても納税しなければ、通常はさらに催告書が何通か届けられます。
これらの督促状や催告書は納税を促すものに過ぎず、法的な強制力はありません。
しかし、これらの書類が自宅に送られてくることで家族に滞納がバレてしまうリスクがあります。
督促状が発送されてから10日が経過しても滞納が解消されなければ、役所は滞納者の財産を差し押さえることが可能になります。
役所が滞納処分として差し押さえをする場合は、裁判手続きが不要なため、あるとき突然に財産を差し押さえられて困ることになるおそれがあります。
差し押さえられる対象は、給料や預金口座となることが多いです。住民税の滞納額はそれほど高額にはならないことが多いので、持ち家や車が差し押さえられるケースはあまりないようです。
しかし、給料や預金口座が差し押さえられてしまうと、たちまち生活に困ってしまう可能性が高いので、注意が必要です。
企業などにお勤めの方が住民税を滞納した場合は、差し押さえ前に役所から勤務先へ問い合わせの連絡があったり、差押通知書が送付されたりします。
そのため、滞納していることが会社にバレてしまい、職場での信用を失うおそれがあります。
自営業の方でも、預金口座が差し押さえられてしまうと、その後は口座がある銀行から融資を受けることは難しくなります。そのため、資金繰りが困難となるおそれがあります。
また、取引先に滞納したことを知られると信用を失ってしまい、仕事を失うおそれもあります。
住民税の滞納を続けていると、最終的には財産を差し押さえられることになります。そこで、滞納が発生してから差し押さえに至るまでにどのような流れを辿るのかをみていきましょう。
先述したように、住民税を滞納すると20日以内に督促状が送られてきます。
督促状の送付は次のように法律で定められた手順なので、必ず行われます。
督促状自体に法的な強制力はありませんが、後の差し押さえ手続きに繋がる重要な意味を持っています。
つまり、役所が督促状を発送してから10日以内に滞納を解消しなければ、ただちに差し押さえが可能となるのです。
実際には、役所もただちに差し押さえをするわけではなく、さらに催告書を何通か送付することによって納税を促してきます。
差し押さえを回避するためには、督促や催告を受けている間に滞納を解消することが大切です。
役所は、実際に差し押さえ手続きに入る前に「差し押さえ予告書」を送付してくるのが一般的です。
差し押さえ予告書も法的な強制力を持つものではありませんが、差し押さえ前に今一度納税を促すために、最終通告の意味で送られてくる書類です。
役所としても、このようにできる限り差し押さえは行わず、任意での納税を促す配慮をしているのですから、役所から送られてくる書類を無視することは得策ではありません。
差し押さえが必要と役所が判断した場合は、まず財産調査が行われます。
財産調査では、どのような財産があるかを調べられるのはもちろんですが、その他にも就業状況を調べるために勤務先、取引先などからの聴き取り調査も行われます。
したがって、この段階にまで至るともはや自分だけの問題ではなく、家族や勤務先、取引先にも大きな影響を与えてしまうことになります。
以上の調査によっても差し押さえをなし得る財産が見つからなかった場合は、さらに捜索が行われることになります。
捜索とは、刑事事件の捜査における「家宅捜索」に似た手続きで、予告なしに自宅や職場に立ち入られ、隠し財産がないかを調べられます。
財産調査によって差し押さえできる財産が見つかった場合は、実際に差し押さえ処分が行われます。
給料が差し押さえられると、毎月の給料の一部が滞納額と延滞金に充当され、全額を回収できるまで差し押さえが続きます。
ただし、差し押さえられるのは1か月あたりの支給額の4分の1に相当する金額が上限です。
預金口座が差し押さえられた場合は、その口座にある預金がそのまま滞納額と延滞金に充当され、役所の方に直接支払われることになります。
持ち家や車が差し押さえられるケースは少ないですが、他に差し押さえられる財産がなければ差し押さえられる可能性もあるので、注意が必要です。
もし、住民税を滞納してしまった場合は、役所から送られてくる督促状や催告書を無視することなく、早めに対策をとることが重要です。
ここでは、どのような対策をとればよいのかご説明します。
まず、督促状が発送されてから10日以内に、必ず役所に連絡しましょう。
すぐに納付することが難しい事情を正直に話した上で、遅れてでも納税する意思があることを伝えれば、いきなり差し押さえをされることはありません。
また、誠実に対応することによって酌量の余地があると認められれば、次にご紹介する住民税の「減免」や「猶予」を受けられる可能性もあります。
なお、差し押さえを受ける可能性が発生するのは、督促状を「受け取ってから」10日後ではなく、「発送されてから」10日後である点にご注意ください。
住民税は、一定の要件に該当する場合は減免を受けることができると地方税法に規定されています。
細かな要件は各自治体の条例によって定められているため異なる部分もありますが、おおむね次のような要件が定められています。
役所に相談すれば詳細を教えてもらえるので、早めに連絡して相談することが大切です。
住民税の減免が認められない場合でも、分割納付や延納などの「猶予」が認められる場合があります。
猶予についても、地方自治法の規定を根拠として、各自治体の条例で細かな要件が定められています。
この地方税の規定を根拠として、各自治体の条例ではおおむね次の要件が定められています。
住民税の減免や納税の猶予が認められない場合でも、納税について誠実な意思があると認められれば、一年以内の期限で換価を猶予してもらえる場合があります。
換価の猶予とは、差し押さえの対象となり得る財産だけでなく、すでに差し押さえを受けている財産についても換価処分(公売)を待ってもらえる制度です。
したがって、既に財産を差し押さえられてしまった場合でも、誠意をもって役所に相談することが大切です。
令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響によって住民税の納付が困難な方を対象とした納税猶予制度が、ほとんどの市区町村で実施されています。
納税者ご本人やご家族が新型コロナウイルスに感染した場合の他、以下のようなケースに該当する場合に、原則として一年間、納税や換価が猶予されます。
なお、納税の猶予とはいっても一年間待ってもらえるわけではなく、納期限までに支払えなかった税額を猶予期間中に分割納付することになります。
ただし、猶予期間中は延滞税がかからず、新たな督促や差し押さえ処分も行われません。制度の詳細については、市区町村によって異なる部分もあります。
多くの市区町村で猶予制度が実施されているので、該当すると思われる方はお住まいの市区町村の役所へ問い合わせてみましょう。
住民税の滞納を続けた場合、時効によって納税義務を免れる可能性はないのかと気になる方もいらっしゃるかもしれません。
住民税の納税義務は、5年で消滅時効にかかります。
ただし、役所が督促や財産調査、差し押さえを行うことは法律で定められた義務なので、必ず行われます。
仮に、差し押さえが可能な財産が何もなかったとしても、役所が督促や財産調査を行えば消滅時効の進行はストップするため、時効が完成することはまずありません。
したがって、時効によって納税義務を免れることは期待すべきではないでしょう。
住民税を滞納してしまってどうしても支払えないとき、督促を無視したり時効を期待したりして免れようと思っても延滞金が膨らむばかりで、決して解決することはできません。
そのようなときは、以下の対策も検討されることをおすすめします。
住民税を滞納する方の中には、他の借金の返済の負担が大きいために住民税の納付が難しいという方もいるでしょう。その場合は、債務整理によって借金を減免することがおすすめです。
債務整理には、自己破産・個人再生・任意整理という主に3種類の方法がありますが、借金額や収入、財産や職業などに応じてご自分に適した債務整理方法は異なります。
自己破産とは、裁判所の手続きを経て借金をゼロにする債務整理の方法です。もっとも、借金の返済を免れる代わりに、生活に必要なものや一定の資産以外の財産は没収され、その分は債権者に配当がされます。
一方、個人再生は、持ち家も没収される自己破産と違い、持ち家に住み続けながら、借金を大幅に圧縮する方法です。
任意整理は、上記2つとは違い、裁判所を介さずに債権者(金融機関など)と直接交渉し、将来払う利息や払いすぎた利息を削減して、借金を減らす方法です。
全ての債務整理の方法に共通するメリットとして、弁護士に債務整理を依頼し、弁護士が発送した受任通知を債権者が受け取ると、一時的に借金の取り立てが止まることが挙げられます。この期間に生活の立て直しを図ることも可能でしょう。
ただし、各債務整理の共通のデメリットとしては、クレジットカードが数年間使えなくなる、新たな借金ができなくなるといった点があります。
このほか、各債務整理の方法にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。どの方法をとるかは弁護士に相談の上、慎重に決定するようにしましょう。
税金よりも借金を優先して返済する方も多いですが、税金の減免は困難であるのに対して、借金の減免は税金に比べると、難しいことではないと言えます。早めに債務整理をして月々の借金返済の負担を減らし、税金は遅滞なく納めた方がよいでしょう。
どうしても住民税を支払うお金がないときは、生活保護を受給することも検討してみましょう。
生活保護受給者となれば、住民税の納付が免除されます。
ここまでご説明してきたように、住民税を滞納してしまっても、必ず解決できる方法はあります。
ただ、放置していると延滞金が膨らみ、解決が困難となってしまいます。
借金をして納税する方もいらっしゃいますが、借金をすると利息がかさみますし、なおさら経済的に苦しくなってしまう方がほとんどです。
そのようなとき、弁護士に相談すれば債務整理や生活保護の受給なども含めて、適切な解決方法のアドバイスを受けることができます。
早めに対処すれば解決方法の選択肢も多いので、ぜひお早めに弁護士にご相談なさることをおすすめします。
なお、ベリーベスト法律事務所では借金に関するご相談は何度でも無料で承っております。費用について、詳しくは以下をご覧ください。
住民税を滞納したときには、誠意をもって役所に相談することで、財産の差し押さえ処分をある程度待ってもらうことはできます。
しかし、一定の限られた事由に該当する場合を除いて、納税額を減免してもらうことはできません。納税義務は、ある意味で借金の返済義務より厳しいものだといえます。
財産調査や差し押さえ処分を受けてしまうと大きなデメリットがあるので、早めに前向きな解決策を考えることが大切です。
住民税が支払えず、滞納してしまってお困りの方は、ぜひべリーベスト法律事務所にまでご相談ください。借金による債務整理についてのご相談は、無料で何度でも承っております。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
「今回だけ…」とおそるおそる少額で始めたはずの課金も、いつも間にか抵抗がない状態に陥っている方も多いのではないでしょうか。
スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
本コラムでは、ソシャゲなどのスマホゲームで課金をやめられない心理、課金に制限をかける方法、課金をやめる方法、課金が原因で借金に悩んでいるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介します。
廃課金とよばれるような過度な課金は、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。できるだけ早めに課金をコントロールしたり、借金問題を解決したりして、通常の生活に戻していきましょう。
「必死に働いても生活が苦しい」「働きたいのに働けない」「借金返済でどうすればよいのか分からない」などの悩みを抱える人は少なくありません。
このような生活苦には、働けない・給料が低い・借金を抱えていることが大きな原因となっているケースも多くあります。
本コラムでは、生活が苦しい状況から抜け出すための対処方法や相談先、支援制度について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。