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住宅ローンを滞納してしまったときに差し押さえを回避する3つの方法

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更新日:2023年06月09日 公開日:2020年07月20日

住宅ローンを滞納してしまったときに差し押さえを回避する3つの方法

住宅ローンは30年を超える長期間の返済期間を設定することも珍しくありません。

返済期間を長くできれば、毎月の返済額をおさえることができますが、その一方で、返済途中に病気・ケガなどによる減収・失職といった不測のトラブルに巻き込まれて返済できなくなるリスクも抱えることになります。

そのため、住宅ローンを組むときには、「万が一の場合」が不安という人もいるでしょうし、すでに何かしらの事情でローンの返済が難しくなってしまったという人もいるかもしれません。

しかし、住宅ローンの返済が苦しくなったからといって「せっかく買ったマイホームを失う」とあきらめてしまう必要はありません。

住宅ローンを滞納してしまった場合でも、差し押さえを回避する方法がないわけではないからです。

そこで、今回は、滞納してしまった住宅ローンを差し押さえされずに解決する方法について紹介したいと思います。

1、住宅ローンはどのくらい滞納すると差し押さえにあうのか?

最初に、住宅ローンの滞納と差し押さえとの関係について簡単に確認しておきたいと思います。

住宅ローンを滞納したときに債権者に差し押さえ(強制売却)されてしまうのは、ローン契約を締結したときに、購入した不動産(マイホームとその敷地)を担保として提供する契約(債権者のための抵当権の設定)もしているからです。

抵当権を設定した債権者は、債務者の借金返済に滞納があったときには、担保目的物(マイホーム)を差し押さえた上で、競売にかけることで、融資金の残額を回収できる権利が認められています。

  1. (1)住宅ローン滞納から差し押さえまでの期間

    通常は、「住宅ローンの返済が1回だけ遅れてしまった」という程度でいきなり差し押さえが行われることはありません。

    マイホームを差し押さえて、競売にかけるためにも、さまざまな手間や費用の負担が必要となるので、「返済日の記憶違い」、「入金手続き(口座の残額管理)ミス」などを原因とした、ちょっとした遅れの場合にまで差し押さえをしていてはキリがないからです。
    また、期限の利益が失われない限り、住宅ローン債権者が一括請求する権利はありません。
    したがって、マイホームの差し押さえが行われるのは、「住宅ローンの滞納が続いた場合」ということになります。

  2. (2)ローン滞納から競売までの流れ

    住宅ローンの最初の滞納からマイホームの差し押さえ・競売までの基本的な流れは下記のとおりです。

    1. ①最初のローン滞納
    2. ②返済遅れの連絡
    3. ③2か月目のローン滞納
    4. ④督促状による取り立て
    5. ⑤3~6か月目のローン滞納
    6. ⑥期限の利益喪失予告の送付(指定日までに滞納を解消しないと一括請求されることを通告される)
    7. ⑦指定期日までに滞納を解消できないことによる期限の利益の喪失
    8. ⑧保証会社による代位弁済の実施
    9. ⑨保証会社からの一括返済の請求
    10. ⑩保証会社(抵当権者)による差し押さえの申し立て
    11. ⑪裁判所による差し押さえ(差し押さえ開始決定)
    12. ⑫競売の公告・入札・開札(競売の実施と買受人の決定)
    13. ⑬買受人への物件引き渡し


    以上の流れのなかでのポイントは、債権者による「期限の利益の喪失の予告」です。

    通常のケースでは、住宅ローンを滞納していても、債権者が具体的に指定してきた「最終期日」までになんとか滞納を解消できれば、差し押さえを回避することは可能ということです。

    また、債権者によって差し押さえが申し立てられ、裁判所による差し押さえが実施されたときでも、競売手続きにおいて入札される前であれば、差し押さえを取り下げることは可能です。

    したがって、差し押さえ後にも債権者と話し合う余地は残されています。

  3. (3)競売実施後に残った住宅ローンはどうなるのか?

    競売された場合の代金は、最優先に抵当権者への返済に充てられます。

    抵当権者が複数いる場合には、抵当権が設定された順にしたがって上位の債権者が満足(全額回収)した場合には、次の順位の抵当権者への返済に充てられるという流れになります。

    競売の売却代金で、ローンの残額を完済できたときには、マイホームは失ってしまいますが、それで手続きは終わりとなります。

    しかし、マイホームを競売にかけられたときでも、その代金ではローンを完済できなかった場合には、その残額についての返済義務はなくならずに、債権者からの請求に応じなければなりません。

    競売となっているときには、ローン返済についてすでに期限の利益を失っていることになるので、競売後の残債務には遅延損害金が発生することになります。

2、住宅ローン滞納後に差し押さえを回避するための3つの方法

住宅ローンを滞納してしまった場合でも、債権者が差し押さえに向けた具体的な対応をとってくる前であれば、差し押さえを回避することは可能です。

ローン滞納後に差し押さえを回避するためには、次のような対策をとる必要があります。

  1. (1)住宅ローンの返済を追いつかせる

    滞納後の差し押さえを回避するには、「遅れている住宅ローンの返済を追いつかせる」ことが一番確実な方法です。

    上でも解説したように、マイホームの差し押さえは、1回の滞納ですぐに行われるわけではないからです。

    住宅ローン以外にも借金を抱えていることが原因で、住宅ローンの返済が苦しいというときには、他の借金(消費者金融のカードローンやクレジットカードの支払い)だけを任意整理することが有効な場合もあります。

    弁護士に債務整理を依頼すれば、これらのカードローンなどの返済を一時的にストップさせることができるので、住宅ローンの遅れを取り戻せばマイホームの差し押さえは回避することができます。

  2. (2)1か月遅れの返済を維持する

    遅れている住宅ローンをすぐに追いつかせることが難しいときには、「1か月の返済遅れ」と維持することで、債権者の取り立てがこれ以上先に進むことを回避することになります。

    この間に、返済遅れを追いつかせられるように、家計の見直し、(上で触れたように)他の借金の債務整理などの対応策を検討・実施することになります。

    交渉が可能であれば、住宅ローンのリスケ(返済期間の見直し)のための交渉をローン債権者と行うこともあります。

  3. (3)住宅ローンを債務整理する

    上記の2つの方法でも対処できないときには、住宅ローンそれ自体を債務整理することで、債権者による差し押さえを回避・遅らせることが可能となる場合があります。

    住宅ローンを債務整理する方法としては、次の2つの方法があります。

    • 任意売却
    • 個人再生(次の3、で詳しく解説します)


    任意売却は、債務者自らが不動産を売却することで、ローン残債務を返済することが大前提なる手続きですから、マイホームを手放すことは回避できません。

    しかし、ローンを滞納し続けたために、債権者のペース(債権者の都合の良いタイミング)で差し押さえが申し立てられてしまえば、引っ越しなどについて融通の利かないスケジュールを組まされてしまいます。

    また、競売で売却した場合には、市場価格よりもかなり低い金額での売却なってしまうこともあるので、競売後のローン残が多く残ってしまう可能性があります。

    任意売却では、マイホームを失うことは避けられないですが、債務整理を行う(マイホームを手放す)時期・方法などの点で、債務者がある程度のイニシアチブを握れるという意味でメリットがあります。

3、住宅ローン特則付き個人再生

個人再生は、多額の借金を返済できなくなった場合でも「元本の大幅カット」と「残元金の分割返済」を組み合わせることで、財産の処分なしに解決できるメリットの大きい債務整理手続きです。

個人再生手続きに「住宅ローン特則(住宅資金条項)」を適用すれば、すでに支払いを滞納してしまった住宅ローンがある場合でも、住宅ローンの返済条件を見直してもらうことが可能です。

あわせてカードローンなどの一部免除も行えるので、複数の借金を抱えてしまった場合でも、住宅ローン以外の圧縮と住宅ローンの見直しによって返済可能となることも少なくありません。

  1. (1)「住宅ローン特則」を利用できる場合

    個人再生手続きに住宅ローン特則を適用することができるのは、次の条件を満たしているときです。

    • 担保の設定されたローンが住宅の購入代金やリフォーム代金を目的としていること
    • 債務者本人が実際に居住する住宅についてのローンであること(別荘・事務所などは不可)
    • 抵当権者が住宅ローンの債権者(またはその保証会社)であること
    • 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
    • 再生計画に基づいて借金を分割返済できるだけの収入があること


    通常の住宅ローンのケースであれば、特に問題となることはほとんどありませんが、自宅兼事務所(店舗)などの用途になっている場合には、注意が必要です。

    事務所・店舗面積の方が広い物件の場合には、住宅ローン特則を適用できないからです。

    また、他の借金を借り換える目的などで、不動産担保ローンを組んだ場合(第2順位以下の抵当権が設定されている)にも住宅ローン特則付き個人再生を利用することはできません。

    多額の借金をいわゆるおまとめローンで借り換える場合などには、担保の提供を求められることもあるので注意が必要でしょう。

    なお、夫婦や親子でペアローンを組んでいる場合には、ローンを組んでいる債務者すべてが一緒に個人再生を申し立てることで、住宅ローン特則を適用することができます(ローン債務者の一部は返済条件を変更する必要がない場合でも申し立てが必要です)。

  2. (2)住宅ローン特則の3つの内容

    個人再生手続きに住宅ローン特則を適用したときには、主として次の3つの方法によって、住宅ローンを現状よりも返済しやすくしてもらうことができます。

    また、これらの方法を組み合わせる場合や、債権者の同意のとれた追加措置(ボーナス払いの条件変更など)を講じることもあります。

    • 期限の利益の回復(住宅ローンの巻き戻し)
    • 住宅ローンのリスケジュール
    • 一定期間の元金据え置き


    ①住宅ローンの巻き戻しによる期限の利益の回復
    住宅ローンの(長期)滞納によって、期限の利益を失ってしまった場合であっても、住宅ローン特則付き個人再生が認められると、住宅ローンの契約関係は、滞納前の状態に戻してもらうことができます。このことを実務では「住宅ローンの巻き戻し」と呼んでいます。

    住宅ローンの滞納が、住宅ローン以外の借金にあるケースであれば、個人再生で他の借金を大幅減額してもらうことで、「巻き戻しだけ」でも住宅ローンの遅れを取り戻せるようになることは珍しくありません。

    なお、住宅ローンの巻き戻し(による差し止め・競売の停止)が認められるのは、保証会社による代位弁済から6か月以内または競売手続きの入札前の早い時期までです。

    ②支払い期限の延長
    住宅ローンの巻き戻しだけでは返済できるようにならない(遅れを取り戻せない)という場合には、最初に契約をしたローンの返済期間をさらに延長してもらうことで、毎月の返済額を減らしローンの返済を継続できる状態にしてもらいます。

    住宅ローン特則を適用したときには、当初の返済期間より「最大10年まで」返済期間を延長してもらうことができます。

    つまり、35年ローンを組んでいて5年間返済したときに、個人再生をしたというケースであれば、残り30年の返済期間を残り40年まで伸ばすことができます。

    ただし、延長した返済期間の途中で債務者が70歳になる場合には、70歳になった年が延長の最大年限となります。

    上のケースでローン債務者が個人再生時に35歳だったとすれば、ローンの返済期限は5年間(70歳になる年まで)しか延長できないということです。

    ③元金据え置き
    住宅ローンのリスケだけでは返済を続けることが難しいというケースでは、さらに「住宅ローンを一定期間元金据え置き」にする措置がとられます。

    「元金据え置き」というのは、毎月の返済を利息のみにする措置のことです。
    住宅ローンは、担保を提供する代わりに借入れ利率もかなり低く設定されるので、「元金据え置き」とリスケジュールを組み合わせることで、返済の負担をかなり軽くすることができます。

    再生計画を履行(住宅ローン以外の借金の分割返済)している期間(原則3年)を元金据え置き期間として設定した上で、その後は、リスケジュールした返済期間にしたがって住宅ローンの残金を返済していく方法がよく用いられます。

  3. (3)個人再生前に滞納してしまった住宅ローンの取り扱い

    個人再生申し立て前に住宅ローンを滞納分の対応としては、次の方法が考えられます。

    • 弁護士に債務整理を依頼することで、他の借金の返済とストップさせて生じた余裕で住宅ローンを追いつかせてから個人再生を申し立てる
    • 個人再生の申し立て後に、滞納分を解消させる
    • 個人再生認可後に、ローンの巻き戻しなどを利用して滞納を追いつかせる


    これらのうち、いずれの方法を採用するかは、住宅ローン債権者の意向も確認しながら、ケースごとに決定していくことになります。

4、住宅ローンの返済が苦しくなったら早めに弁護士に相談しましょう

住宅ローンの返済が苦しいことは、他の借金の返済が難しくなった場合よりも精神的な負担が多いつらい問題といえます。

「住宅ローンが返せないなんて恥ずかしい」、「せっかく買ったマイホームを手放したくない」という気持ちにこだわってしまい、問題をひとりで抱え込んでしまえば、状況はさらに深刻化してしまいます。

住宅ローンは、「普通に生活できていれば返済できる」ということを確認して借り入れることが通常ですから、それが難しくなった状況を、自力で改善させることは簡単なことではないからです。

借金の問題は、早い段階で正しく対応すれば、できるだけデメリットを小さく解決するためのさまざまな選択肢を検討することができます。

ここまで解説してきたように、住宅ローンの返済を滞納してしまった場合でも、差し押さえにあう前になんとか遅れを取り戻せるようになることも不可能ではありません。

住宅ローンを滞納してしまったケースも含めて、借金の問題は、無料で相談できる弁護士事務所がたくさんあります。

相談費用の心配もいらないので、住宅ローンの返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

住宅ローンを滞納してしまったことで「もうマイホームを失ってしまう」とつらい気持ちになってしまう人も多いと思います。

しかし、一度の滞納だけでいきなりマイホームが差し押さえられることはありませんし、滞納が長期になった場合でも、差し押さえを回避する方法がないわけではないので、「あきらめないこと」、「自暴自棄にならないこと」、「これ以上状況を悪化させないこと」が何よりも大切です。

状況を悪化させない一番の方法は、できるだけ早く弁護士に相談することでしょう。

借金問題に詳しい弁護士に相談すれば、状況を改善させるためのさまざまな方法について助言してもらうことができます。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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