債務整理 弁護士コラム
個人再生は、自分の財産を処分することなく多額の借金問題を解決できるメリットの大きな手続きです。特に、定期収入があり住宅ローンの残っている方が抱える借金問題を解決するための方法としては、最善の選択ということができます。
しかし、実際の個人再生の中には、残念なことに失敗してしまうケースがないわけではありません。多額の借金を抱えている人の中にも「私のケースでは個人再生を利用しても失敗してしまうのではないか」と不安に感じている人もいるかもしれません。
そこで、今回は、個人再生が失敗してしまうケースや、個人再生で失敗しないための対処方法についてまとめてみました。
まずは、「個人再生が失敗する」というのがどのような場合で、実際にどのくらいの割合で失敗しているのかについて確認しておきましょう。
「個人再生が失敗する」のは、次の5つのケースに該当する場合です。
個人再生の手続きは、①申し立て→②再生計画案の提出→③再生計画案の認可→④再生計画の履行(3(~5)年の分割返済)→⑤再生計画の終了(残債務の免除)という手順で進められますので、段階ごとに失敗するケースがでてきます。
下の表は、裁判所が毎年公表している司法統計で示されている個人再生手続きの終わり方ごとの件数です。
総数 | 総数 | 廃止 | 不認可 | 取消し | 棄却・却下 | 取り下げ |
---|---|---|---|---|---|---|
小規模個人再生 | 11473 | 356 | 22 | 0 | 25 | 440 |
給与所得者等再生 | 813 | 19 | 2 | 0 | 4 | 49 |
※平成30年司法統計(第109表)に基づいて作成
廃止から取り下げまでのすべての数値を合計した割合は、小規模個人再生では約7%、小規模個人再生約9%、合計約7.5%となっています。
ただし、上の項目でもっとも大きい数字になっているうち「取り下げ」については、必ずしもすべてが失敗に該当するケースとは限りません。たとえば、手続き中に債務者が死亡したことで取り下げた場合や、家族等から援助を得られるめどが付いて取り下げたようなケースも含まれているからです。つまり、個人再生に失敗する割合は、どんなに多く見積もっても10人に1人以下といえることになります。
次の6つのケースに該当する場合には、個人再生の手続きを開始することも認めてもらえません。
この段階で失敗するケースの大半は、「個人再生という手続きについて正しい知識を持っていなかった」ことを理由とするものです。
開始された裁判所の手続きが、その途中で目的を達成できずに終了させられる場合のことを「手続きの廃止」といいます。上で紹介した表でも示されているように、個人再生が失敗するケースでもっとも多いのは、手続きの廃止です(取り下げされるケースもこの段階で取り下げられる場合が多いです)。
開始された個人再生の手続きが廃止されてしまうのは、次のような事情を抱えた場合です。
個人再生が廃止となる理由のほとんどは、「個人再生の手続きを進める上でのルールを守れなかった」ことを原因とするものです。特に、再生計画案の提出は、提出期限に1日でも遅れてしまうと「即廃止」となることに注意する必要があります。
個人再生が廃止された場合には、個人再生の手続き開始決定によって生じた法律上の効果はすべて消滅してしまいます。わかりやすくいえば、借金が個人再生申し立て前の状態に戻ってしまうということです。たとえば、再生手続き開始によって停止させられた債務者の財産差し押さえなども復活してしまいます。
また、裁判所は、個人再生の廃止決定をした場合には、それと合わせて債務者を破産させる決定をすることも認められています。これを「牽連破産」といいます(民事再生法250条1項)。
個人再生は、債務者から提出された再生計画案について裁判所が認可・不認可の決定を与えることで終了します。再生計画案が不認可となれば、個人再生が廃止となった場合と同様に、借金は個人再生前の状態に戻ってしまうため失敗となります。
再生計画が不認可となるのは、次のような場合です。
これらの不認可事由のほとんどは、「提出された再生計画案が不適切な内容」だったことを原因としています。また、再生計画案が形式的には正しいもので(基準額以上の返済をする計画を定めているもの)であっても、「債務者にはそれを実現できるだけの資力がない」と裁判所に判断されれば、不認可となってしまいます。さらに、計画が正しく、資力があるという場合でも、一定以上の債権者から反対された場合には、再生計画を認可してもらうこともできません。
裁判所に再生計画が認可された場合には、その計画にしたがって、借金の一部を分割で返済しなければなりません。この分割返済が履行できなくなってしまった場合にも個人再生は失敗してしまいます。
債務者が再生計画の履行(分割返済)を怠った場合には、裁判所によって再生計画の認可が取り消されることがあります。
再生計画が取り消されたときにも、廃止・不認可の場合と同様に、借金は個人再生前の状態に戻ってしまいます。
再生計画の履行が難しくなった場合には、「リスケジュール(再生計画の変更)」という方法で、対処することができます。やむを得ない事情で再生計画の履行が難しくなったときには、裁判所の許可を得ることで、再生計画の期間を最大2年まで延長することができます(その分だけ毎月の返済額を減らすことができます)。
再生計画の履行中に、失業などの状況に陥ってしまったときには、できるだけ早く個人再生の申し立てを依頼した弁護士に相談しましょう。
再生計画の不履行以外にも、再生計画認可後に、個人再生手続きにおける債務者の不正が発覚した場合には、再生計画認可が取り消され、個人再生は失敗してしまいます。
典型例としては、財産隠しをしていた(虚偽の財産目録を提出して不正に再生計画の認可を受けた)、偏頗(へんぱ)弁済をしていた(個人再生前に特定の債権者にだけ不公平な返済をしていた)ことが判明したケースを挙げることができます。
個人再生で失敗しないためには、次の4つのポイントに注意することが重要です。
個人再生は、確かに多額の借金でも解決できる強力な手続きですが、限界もあります。個人再生における計画返済(借金の分割返済)は、原則3年間(最大5年間)と決められているからです。
つまり、ケースごとに定められている基準を超えるだけの金額を、3(~5)年で返済できるだけの収入がなければならないわけです。
たとえば、600万円の借金がある人が個人再生をした場合であれば、最低でも3年で120万円の返済をする必要がありますから、「3か月で10万円以上の返済」ができるだけの収入がなければいけないわけです。
したがって、借金が膨らみきる前に個人再生に踏み切ることができれば、その分だけ個人再生の成功率も高くなるといえます。
個人再生は、債務整理の中でもっとも複雑な手続きです。裁判所に提出しなければならない書類ももっとも多く、さまざまな厳しいルールが定められています。
特に、個人再生が棄却(却下)、廃止となるケースの多くは、手続き上のルールを正しく理解できなかったことを原因とする場合が多いといえますから、法律(民事再生法)の規定を正しく理解することも個人再生で失敗しないためには重要な対処方法です。
個人再生は、無条件で借金の一部を免除してもらえる仕組みではありません。一方的に債権者の権利を(不利に)変更することは原則として認められるべきではないからです。そのため、(ほとんどの場合の個人再生で利用される)小規模個人再生では、再生計画案について一定数以上の債権者からの反対があった場合には、個人再生は失敗してしまいます。
上の(1)~(3)で触れた点は、専門知識のない一般の人がひとりで克服することの難しいものばかりです。
それぞれのケースについて、どの債務整理の方法が最適かということは、専門知識がなければ判断することの難しい問題です。また、法律の素養の全くない人が民事再生法の条文を正しく理解することも簡単ではないでしょう。法律には独特の表現、用語が多いので、「読むだけでも大変」と感じる人が多いからです。
さらには、適切な再生計画案を作るには、それぞれのケースでの最低返済額を適切に計算した上で、個別ケースの事情に応じた修正をする必要もあります。再生計画案を提出する前に債権者と交渉をしなければならない場合もでてくるでしょうから、専門知識・スキルのない一般の方がひとりで行うことは簡単ではありません。
弁護士に個人再生の手続きを依頼すれば、これらの問題は一気に解決することができます。
また、弁護士に債務整理を依頼すれば、債権者からの督促も、借金の返済もストップさせることができるので、自分で個人再生を申し立てるよりも早く借金から解放されます。
個人再生は、債務者にとってはメリットの大きな手続きですが、手続きが難しいのが最大のデメリットといえます。
そのため、債務者自身で手続きを行えば、失敗してしまう可能性も低くはありません。
しかし、債務整理の経験の豊富な弁護士に依頼すれば、弁護士の指示に従い、弁護士から依頼された作業を行うだけで、個人再生を確実に成功させることができます。
ぜひ、債務整理の経験が豊富な弁護士がそろうベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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奨学金を借りて大学や短期大学に進学したものの、就職後に思うような収入が得られず、奨学金の返済に苦しむ方が増えています。奨学金の返済のために、新たな借金を抱えてしまうケースも少なくありません。
多額の借金を抱えた場合、個人再生ができれば自己破産をすることなく、借金問題を解決することが可能です。ただし、奨学金を個人再生する場合には、いくつかの注意点があります。
本コラムでは、個人再生をするときの奨学金の返済義務や、連帯保証人・保証人に及ぶ影響、個人再生が失敗するケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金があるのに収入が大幅に減ってしまい、毎月のローン返済が本当に苦しい……。持ち家は手放したくないけど借金を減らしてもらいたい……。
このようなお悩みをお持ちの方は、個人再生を選択することによって借金問題を解決できる可能性があります。
個人再生を裁判所に認めてもらえれば、借金を今の残高からおよそ5分の1にまで減らしてもらうことができるのです。
この記事では、個人再生とはどういうものなのか? について簡単にわかりやすく解説します。
個人再生は借金の返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の方法です。ただ、自己破産のように返済額がゼロになるわけではなく、減額後の借金を継続的に返済していく必要があります。
個人再生では「最低弁済額」というものが法律で定められており、事案の内容によっては返済額があまり減らない可能性もあるので注意が必要です。
本コラムでは、最低弁済額の内容、その金額を決める基準、最低弁済額を払えないときの対処法について解説します。