債務整理 弁護士コラム
平成31年10月から消費税が10%に増税されたこともあり、「生活が苦しくなる」と感じる年金生活者も多いと思います。間接税である消費税の増税は、所得の低い人ほど負担感が重くなる税金だからです。
そこで、消費税増税にあわせて、生活の苦しい年金生活者のための新しい給付金制度が創設されました。
新しい制度ができると、手続き漏れで受給できないケースや、新手の詐欺被害に遭ってしまうケースが生じることがありますので注意が必要です。
年金生活者支援給付金の仕組みや手続きがよくわからないという人は、ぜひ、この記事の解説を参考にしてください。
年金生活者支援給付金とは、低所得の年金受給者の生活を支える目的で、年金に上乗せして支給される公的給付金のことです。
年金生活者支援給付金の財源は、「消費税の引き上げ分」ですから、増税の還元政策の一種ということになります。
税金は、「富の再分配」という機能も併せ持っているものですから、低所得者ほど負担の重くなる消費税が引き上げられた以上、低所得者へ手厚く還元を行うことは、当然の政策判断ということもできます。
年金生活者支援給付金を受け取ることができるのは、年金の受給者のうちで、前年所得額が一定額以下の人に限られます。
「すべての年金生活者に必ず支給されるわけではない」ので注意しましょう。
65歳から受給することのできる老齢基礎年金を受給している人が「年金生活者支援給付金」の交付を受けるためには、次の条件を満たしている必要があります。
①同一世帯の「全員」が市町村民税非課税である
市区町村民税の課税対象となっている世帯では、「生活に困窮している」とはいえない状況にあるため、年金生活者支援給付金の受給対象外となります。また、「世帯全体」を基準に判定されるので、年金生活者の夫婦は市区町村税非課税だが、同居している子どもは収入があり課税対象というケースでは、年金生活者支援給付金の受給対象外となることに注意する必要があります。
②前年度所得が一定額以下である
支給基準となる前年度所得額については、老齢基礎年金の給付額に応じ毎年改訂されることになっていますが、令和元年の支給基準は、「非課税所得合計が78万円以下」と設定されています。
非課税所得となるものについては、次の収入があります。
年金保険には、老齢基礎年金だけでなく、障害年金、遺族年金もあります。
障害年金・遺族年金を受給している人の場合には、前年の非課税所得が462万1000円以下であるときに、年金生活者支援給付金が交付されます。
なお、障害・老齢年金受給者に扶養親族がいるときには、その人数に応じて上記の基準額は増額されて調整されます。
年金生活者支援給付金は、年金受給者の所得を基準に交付の可否が決まります。また、年間の支給総額も小さい金額ではないため、所得がボーダーラインにある人は、「所得を減らした方がよいのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、年金生活者支援給付金受給を受給するために所得調整をする(所得を減らす)必要は基本的にはありません。所得額のボーダーライン上にある人に対しては、「補足的老齢年金生活支援給付金」が支給されることになっているからです。
令和元年の場合には、前年の非課税所得が78万円を超えていても、87万円以下である人には、補足的老齢年金生活支援給付金が交付されることになっています。
年金生活者支援給付金を解説するサイトによっては、前年所得87万円以下であれば給付を受けられると解説している場合があるのは、補足的老齢年金生活支援給付金を加味して解説しているからということになります。
なお、補足的老齢年金生活支援給付金の給付額は、それぞれの受給者の所得額に応じて異なります。あくまでも補足的老齢年金生活支援給付金は、年金生活者支援給付金の受給の有無によって所得逆転となることを回避するため(公平を期すため)の補助的な制度にすぎないからです。
補足的老齢年金生活支援給付金の支給額は、下記の計算式で算出することができます。
年金生活者支援給付金の給付額と受給方法についても確認しておきましょう。
年金生活者支援給付金の給付額は、年金事務所から送付されている受給手続きのために必要な書類(請求書)に、それぞれの給付額が記載されています。
①老齢年金生活者支援給付金の給付額
老齢年金生活者支援給付金の給付額(月額)は、5000円を基準に、下記の計算で算出される金額の合計額となります。
たとえば、年金保険料の未納も免除も全くない場合には、それぞれの計算結果は、次のようになります。
・5000円×480/480=5000円
・1万834円×0/480=0円
したがって、「5000円+0円」となり、老齢年金生活支援給付金の月額は5000円となります。
また、保険料免除期間が5年(60か月)あるというケースの計算結果は下記のとおりです。
・5000円×420/480=4375円
・1万834円×60/480=1354円(50銭未満は切り捨て)
この場合には、4375円+1354円=5729円が毎月の給付額となります。
保険料免除期間のある人の方が免除期間のない人に比べて給付額が多くなるのは、保険料免除期間の長い人ほど経済的な余裕がない場合が多いことへの配慮というわけです。
②障害年金生活者支援給付金の場合
障害年金生活者支援給付金の場合には、認定されている障害等級に応じて、下記のとおりに支給額が決まっています。
障害等級2級:月額5000円
障害等級1級:月額6250円
③遺族年金生活者支援給付金の場合
遺族年金生活者支援給付金の給付額は、月額5000円と固定額になっています。
ただし、遺族基礎年金の受給者が複数人いる場合(複数人の子どもで受給している場合)には、受給者の人数による頭割り額となります。
たとえば、4人の子どもで遺族年金を受給している場合には、5000円÷4人となりますから、1人あたりの給付月額は1250円となります(1円未満の端数がでる場合には50銭以上を切り上げた額となります)。
年金生活者支援給付金の受け取り方法は、年金給付金の受け取り方と同じです。
したがって、偶数月の支給日(中旬頃)までに、「年金と一緒に」前月分までが振り込まれることになります。
なお、年金生活者支援給付金の初回給付は、令和元年(2019年)12月に、10月・11月分について行われます。
また、振込先の銀行口座も年金の振込口座と同様です。
※通帳には振り込みが2件記録される(通常の年金と支援給付金が別に記帳される)ことになるそうです。
年金生活者支援給付金を受給するためには、必要な手続きを行う必要があります。
支給条件を満たしていても、手続きを行っていないときには、給付金は支給されないので注意しましょう。
年金生活者支援給付金の受給資格のある人には、年金事務所から手続きを行うためのハガキもしくは封書が送付されてきます。
なお、年金受給資格のない人(65歳未満の人など)の場合には、年金生活者支援給付金の受給資格があれば、年金受給手続きの際にあわせて、手続きを行うことになります。
年金生活者支援給付金の受給手続きは、手元に届いた請求ハガキ(封書が送付される場合も請求ハガキが同封されています)に必要事項を記載して返送するだけです。
記載しなければならない項目は、次の3点のみなので、手続きはとても簡単です。
なお、請求ハガキの送付に必要な切手は各自で用意する必要があります。
ハガキの送付に必要な切手代も消費税増税に伴い63円と改訂されていますので注意しましょう。
年金生活者支援給付金の受給手続きは、一度行うだけでよく更新の手続きはありません。
なお、給付金受給後に所得が増えた場合には、受給資格を失うことになりますが、再度条件を満たしたとき(所得が減ったとき)には、再度請求手続きを行うことで受給することができます。
年金生活者支援給付金について、「制度それ自体がよくわからない」、「受給のための手続き方法がわからない」という場合には、厚生労働省が設置している専用のナビダイヤルに問い合わせすることができます。
年金生活者支援給付金に関する問い合わせ先(日本年金機構)
新しい公的な給付金制度ができると、必ずといってよいほど、その制度を語った詐欺手口が横行します。
特に、次のような手口の詐欺が予想されますので注意しましょう。
すでに本文中でも解説しているように、年金生活者支援給付金を受給資格のある人には、年金事務所から適宜請求ハガキが送付されることになっています。
こちらから請求ハガキの送付を請求する必要はありませんし、所得の多い人が例外的に受給できる特例措置も補足的老齢年金生活支援給付金に該当する場合を除いてはありません。
また、年金生活者支援給付金は、すでに手続きを済ませている年金手続きに付帯して給付される交付金なので、別途の口座登録なども不要です。
怪しいと感じたときには、お近くの年金事務所や警察相談専用電話(#9110)に連絡・通報するにしましょう。
年金生活者支援給付金は、年金だけでギリギリの生活を行っている人にとっては、とても助かる給付金です。
万が一、いまだに手続きを終えていないというときには、できるだけ早く請求ハガキを送付するようにしましょう。
また、年金生活者支援給付金を語った詐欺には特に注意する必要があります。高齢者は、ネットなどで上手に情報を集められない人も少なくありませんから、年金受給者が身内にいる場合には、あらかじめ注意喚起を促しておくことも大切といえます。
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「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
「今回だけ…」とおそるおそる少額で始めたはずの課金も、いつも間にか抵抗がない状態に陥っている方も多いのではないでしょうか。
スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
本コラムでは、ソシャゲなどのスマホゲームで課金をやめられない心理、課金に制限をかける方法、課金をやめる方法、課金が原因で借金に悩んでいるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介します。
廃課金とよばれるような過度な課金は、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。できるだけ早めに課金をコントロールしたり、借金問題を解決したりして、通常の生活に戻していきましょう。
「必死に働いても生活が苦しい」「働きたいのに働けない」「借金返済でどうすればよいのか分からない」などの悩みを抱える人は少なくありません。
このような生活苦には、働けない・給料が低い・借金を抱えていることが大きな原因となっているケースも多くあります。
本コラムでは、生活が苦しい状況から抜け出すための対処方法や相談先、支援制度について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。