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特定調停の流れや費用は? 任意整理との違いも弁護士が解説

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更新日:2025年09月10日 公開日:2025年09月10日

特定調停の流れや費用は? 任意整理との違いも弁護士が解説

「借金の返済で生活が苦しい」「利息の返済ばかりで借金が減っていかない」などの借金問題を解決する手段に、特定調停があります。

特定調停は、裁判所を利用して借金の減額や分割払いを目指す手続きです。費用が安く、個人でも申し立てができるなどのメリットがありますが、デメリットも大きいため、利用するかどうかは慎重に検討するべきでしょう。

今回は、特定調停のメリット・デメリットや任意整理との違い、手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、特定調停とは? 任意整理との違い

以下では、特定調停がどのような手続きなのか、任意整理との違いについて詳しく説明します。

  1. (1)特定調停とは?|手続きの概要と条件

    特定調停とは、債務整理の一種で、借金の返済が困難になってしまった債務者が裁判所の手続きを利用して借金の返済条件を見直すための法的手続きです
    特定調停は、経済的に破綻するおそれがあることを条件として利用することができます。そのため、借金返済が難しい状況であれば、個人であるか法人(事業者)であるかを問わず、幅広く利用することが可能です。

  2. (2)特定調停と任意整理の違い

    特定調停と同じく、債権者との話し合いにより借金の返済条件を見直す手続きに「任意整理」という手続きがあります。特定調停と任意整理の主な違いは、以下のとおりです

    ① 裁判所の関与の有無
    特定調停は、裁判所を利用する法的手続きで、必ず簡易裁判所への申し立てが必要です。
    任意整理は、裁判所の関与なく直接債権者と交渉を進められます。

    ② 手続きの主体
    特定調停は、簡易裁判所の調停委員が間に入って返済方法の調整を行います。特に弁護士などに依頼せず、債務者ひとりでも対応することも可能です。
    任意整理は、債権者と直接やりとりが必要です。そのため、通常は弁護士や司法書士が代理人として交渉することになります。

2、特定調停をやるべき? メリット・デメリットをチェック

特定調停をしようかとお考えの方は、以下のようなメリット・デメリットがあることを踏まえて判断するようにしましょう。

  1. (1)特定調停のメリット

    特定調停のメリットには、以下が挙げられます。

    ① 自分一人でできる
    任意整理、自己破産、個人再生といった債務整理は、基本的には弁護士などの専門家に依頼します。十分な法律知識を有していない一般の方が、ひとりで対応することは難しいでしょう。
    しかし、特定調停は、裁判所の窓口に備え付けられている申し立てのひな型を利用すれば、自分ひとりで申し立てができます。また、調停期日には、裁判所の調停委員が間に入って返済方法の調整を行うため、法的知識が十分でなくても対応可能です。

    ② 費用が比較的安い
    特定調停は、自分ひとりで対応することで、弁護士などの専門家に依頼する必要がなく、着手金や報酬金などの費用がかかりません。
    特定調停の申し立て手数料は1社あたり500円なので、金銭的な余裕のない方でも安心して利用することができます。
  2. (2)特定調停のデメリット

    弁護士など専門家に依頼しなくても利用しやすい特定調停ですが、デメリットもあります。さらに上記のメリットと比べると、デメリットのほうが大きいため、慎重に検討すべきです。借金の返済が困難なときは、特定調停ではなく、任意整理がおすすめです。

    ① 成立率が低い
    特定調停は、基本的には債権者と債務者との話し合いの手続きになります。そのため、特定調停を成立させるためには、債権者と債務者の合意が不可欠です。

    • 債権者が調停に応じない
    • 債務額が高額
    • 債権者の姿勢が強硬
    • 複数の債権者がいる


    このような事情がある場合には、双方の折り合いがつかず、特定調停の手続きは終了してしまいます。実際、特定調停の成立率は低く、特定調停を利用しても満足いく結果が得られない可能性が高いでしょう。

    ② 平日に裁判所に行く必要がある
    特定調停の期日には、裁判所に出頭する必要があります。調停は平日にしか行われないため、平日に仕事をしている方は仕事を休まなければなりません。
    債権者の数が多ければ、それだけ裁判所に出頭する回数が増えるため、仕事を休むことで収入が減ってしまいます。簡単に会社を休めない方にとっては、大きなデメリットといえるでしょう。

    ③ 返済ができなくなった場合に給与などがすぐ差し押さえになる
    特定調停が成立すると調停調書が作成され、債務者は調書の内容に従って返済を行わなければなりません。
    途中で返済ができなくなってしまうと、債権者は調停調書に基づいて強制執行の申し立てを行い、債務者の財産(預貯金、給料など)を差し押さえることができます。
    また、特定調停を利用することで、債務者は自分の財産を債権者に把握されてしまうので、生活に必要な財産を差し押さえられてしまうおそれもあるでしょう。返済ができなくなった際のリスクを踏まえて、特定調停の利用は慎重に判断しなければなりません。

    ④ 過払い金請求はできない
    特定調停は、利息制限法に引き直した借金の返済方法を調整する手続きです。そのため、特定調停の手続きでは、過払い金を請求することはできません
    同じく債務整理の手段のひとつである任意整理では、一部の債権者に過払い金が発生していた場合、過払い金を回収してほかの債権者への返済に充てることができます。しかし、特定調停ではそのような対応ができない点がデメリットです。

3、特定調停の手続きの流れ・費用

以下では、特定調停を利用する際の必要書類・費用と手続きの流れについて説明します。

  1. (1)特定調停の必要書類と費用

    特定調停の必要書類と費用は、以下のとおりです。

    必要書類
    • 特定調停申立書
    • 関係権利者一覧表(債務額、債権者名など)
    • 財産の状況を示すべき明細書、そのほか特定債務者であることを明らかにする資料(生活状況、資産・負債、家族の状況、返済額等について参考となる事項、返済についての希望)
    • 借入契約書や返済状況のわかる資料
    • 資格証明書(現在事項全部証明書または代表者事項証明書)


    特定調停の費用は、債権者数によって変動しますが、数千円~1万円程度に収まるケースが多く、費用は比較的安価といえるでしょう。

    費用
    • 収入印紙代:1社あたり500円
    • 郵便切手代:1社あたり500円程度(裁判所により異なる)
  2. (2)特定調停の手続きの流れ

    特定調停の手続きは、以下のような流れで進みます。

    ① 申立書の作成・提出
    まずは特定調停の申し立てに必要となる申立書を作成し、必要書類を収集しましょう。そして、債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に書類を提出して、特定調停の申し立てを行います。

    ② 調停期日の決定
    提出した書類に不備がなければ、特定調停の申し立てが受理され、調停期日が決められます。

    ③ 事情聴取期日
    特定調停の申し立てから約1か月後に、事情聴取期日が設定されます。
    事情聴取期日とは、裁判所が申立人である債務者から事情を聴取する期日です。債務者は、事情聴取期日に裁判所に出頭し、調停委員から生活状況や収入、今後の返済の方法などについて聴取されます。

    ④ 調整期日
    事情聴取期日が終わると、次は調整期日が設定されます。
    調停期日には、申立人(債務者)だけではなく、相手方(債権者)にも裁判所に来てもらい、返済方法などの調整を行います。相手方が裁判所に出頭しない場合は、調停委員が相手方に電話をして調整を行います。

    ⑤ 調停成立
    調整期日における返済方法の調整の結果、当事者双方が合意すると調停成立となります。
    特定調停で合意した内容は調停調書にまとめられ、債務者は調停調書に従って債権者への返済を行います。

4、借金返済でお困りの方は、弁護士に相談を

特定調停は、先述のとおり自分ひとりで手続きができ、手続きの費用も安く抑えることができます。一方で、特定調停の成立率は低く、期待していた効果が得られない可能性も大いにあります。そのため、借金問題でお困りの際は、弁護士に相談するのがおすすめです。

  1. (1)適切な返済方法についてアドバイスできる

    借金問題を解決する方法には、特定調停だけではなく、任意整理、自己破産、個人再生があります。それぞれメリット・デメリットがあるため、状況に応じた最適な手段を選択することが重要です

    弁護士であれば、借金総額、収支状況、資産内容、返済についての希望などを踏まえて、最適な方法をアドバイスできます。自分に合った方法を選択すれば、借金返済の負担を大幅に軽減できるため、返済が難しいと感じたら、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

  2. (2)借金の返済を一時的にストップできる

    弁護士は、債権者に対して受任通知を送付します。受任通知が債権者に届くと、債権者から債務者に対する直接の取り立てが禁止されるため、一時的に返済をストップすることができます
    借金返済に追われている状況では、冷静な判断ができません。弁護士と相談を行い、落ち着いて返済計画を立てることをおすすめします。

  3. (3)債権者との交渉や裁判所との対応を任せられる

    特定調停とは異なり、任意整理、自己破産、個人再生の手続きは、債務者本人だけでは対応が難しいため、専門家である弁護士に任せたほうがよいでしょう。
    弁護士に債務整理を依頼すれば、債権者との交渉や裁判所との対応など、債務整理に関するすべての手続きを任せることができます

5、まとめ

特定調停は、裁判所を介して借金の返済条件を見直す制度です。債務者ひとりで対応できるものの、成立率が低いなどのデメリットが複数あるため、任意整理などほかの債務整理の手段と比較検討したうえで、最善の方法を選びましょう。
自分に合った手段を選択するには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。生活再建のためにも、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 13万1237件
  ※集計期間:2010年12⽉〜2024年12⽉末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約410名の弁護士が在籍
※2025年4月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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