債務整理 弁護士コラム
自己破産をすると、借金の返済義務がすべて免除されることと引き換えに、一定の評価額を超える財産は処分されてしまいます。そのため、持ち家がある人は自己破産で家がどうなってしまうのかが気になることでしょう。
住み慣れた持ち家には思い入れもあり、手放したくないと考えるのも自然なことです。その反面で、多額の借金を整理するためには何らかのデメリットを受けることも避けられません。
この記事では、自己破産すると持ち家はどうなるのか、持ち家を残して借金を整理するにはどうすればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
自己破産手続きにおいて、破産者名義の持ち家は以下のように取り扱われます。
破産者名義の財産は原則として債権者への配当の引き当てとなるため、換金処分されてしまいます。
ただし、以下のような財産は「自由財産」として手元に残すことが認められています。
持ち家については、評価額20万円以下であることはまずありませんし、差押禁止財産にも該当しません。原則として、自己破産すると持ち家は失うことになります。
持ち家が共有名義となっている場合、理論上は破産者名義の持ち分のみを失い、共有者名義の持ち分は残せるはずです。
しかし、実際には共有者名義の持ち分も含めて全体を失うことがほとんどです。
たとえば、持ち家が夫婦の共有名義となっていて夫が自己破産した場合、夫の持ち分のみを売却すれば、第三者と妻との共有名義となります。
このままでは住居として使用できず買い手がつかないので、妻の持ち分も含めて全体を売却し、妻は持ち分に応じた売却代金を取得するという処理を行うことが一般的となっています。
自己破産すると、破産者の財産は自由財産を除いて破産管財人が管理・処分することになります。
ただし、買い手がつかない場合や、管理・処分に高額の費用を要して破産財団が減少してしまうような場合には、破産管財人がその財産を破産財団から放棄することがあります。
破産財団とは、簡単にいえば債権者への配当の引き当てとなる財産のことです。
破産財団から放棄された財産は破産管財人の手から離れ、処分されることはなくなるので、結果として破産者の手元に残ります。
持ち家が破産財団から放棄された場合には、例外的に持ち家を失わずにすむことになります。
しかし、持ち家は個人の買い手がつかなかったとしても不動産業者が買い取るケースがほとんどです。
破産財団から放棄されるのは、山奥など辺鄙な立地にある古い家屋など極めて稀なケースに限られます。
自己破産手続きにおいて持ち家が処分されるまでの流れは、以下のとおりです。
破産法上、破産者名義の不動産の処分は強制執行手続きによることが原則とされています(同法第184条1項)。
具体的には、破産管財人の申し立てによって持ち家が競売にかけられることになります。
競売の手続きは順調に進んでも6か月以上の期間を要し、その間は持ち家に住み続けることが可能です。
ただし、買受人が代金を納付した後は強制的に退去を求められることがあるので、早めに次の住居を確保して立ち退く必要があります。
破産管財人は、裁判所の許可を得て破産者の持ち家を任意売却することもできます(破産法第78条2項1号、184条1項)。
ここにいう任意売却とは、破産管財人が競売にかけるのではなく、通常の方法で持ち家を売りに出して買い受け希望者を見つけ、売却することを指します。
一般的に競売よりも任意売却の方が高額で、かつ早期に売却できるため、任意売却の方法がとられるのがほとんどのケースです。
任意売却では競売の場合よりも早期に持ち家から立ち退く必要があることが多いですが、場合によっては買受人から引っ越し代を出してもらうことも可能というメリットもあります。
持ち家の住宅ローンが残っている場合、通常は住宅ローン債権者(金融機関)の抵当権が付いています。
住宅ローン債権者は、破産手続き外で抵当権を実行し、持ち家を競売にかけることが可能です。
しかし、住宅ローン債権者にとっても競売よりは任意売却の方が有利となります。
破産管財人が住宅ローン債権者の承諾と裁判所の許可を得て、任意売却により処理しているのがほとんどのケースです。
売却した結果、オーバーローンであれば残ったローンは破産債権として処理されます。
アンダーローンであれば、売却代金の中から99万円以内の現金を自由財産として取得することが可能です。
「持ち家を残したい」という気持ちがあるとしても、以下の行為をすると自己破産手続きに失敗する恐れがあるので注意が必要です。
自己破産手続きにおいて債権者への配当の引き当てとなるのは、破産手続開始決定時に破産者名義であった財産に限られます。たとえ家族でも他人名義の財産は処分されません。
しかし、自己破産申し立て前に持ち家の名義を変更していると「財産隠し」とみなされる可能性があります。
財産隠しに該当すると、免責が許可されない可能性が高い(破産法第252条1項1号)だけでなく、悪質なケースでは「詐欺破産罪」(同法第265条1項1号)に問われる恐れもあるでしょう。
自己破産の申し立ての際には、過去2年以内に名義変更した財産があれば申告するように求められています。
申し立て前2年以内に持ち家の名義変更をしていると、財産隠しを疑われる恐れがあることに注意が必要です。
自己破産申し立て前に、持ち家を不当な低価格で売却した場合も、名義変更の場合と同様のリスクが生じます(免責不許可について破産法第252条1項1号、詐欺破産罪について同法第265条1項4号)。
ただ、持ち家を適正な価格で売却することまで禁止されているわけではありません。
とはいえ、売却代金を浪費したり、売却代金の中から一部の債権者に優先的に返済したりすると、不当に破産財団を減少させたものとみなされることがあります。
その場合は、自己破産手続きにおいて「不当に減少させた金額」を別途積み立てるなどして調達し、債権者への配当に充てなければなりません。
自己破産申し立て前に持ち家を任意売却する場合は弁護士に依頼し、弁護士のアドバイスに従って行う方が無難です。
債務整理をしても持ち家を残すためには、以下の方法があります。
破産財団を構成する財産は、破産者の親族等が買い取ることも可能です。持ち家を親族等に買い取ってもらえば、その後も買受人の承諾を得て住み続けることができます。
あくまでも適正価格で買い取ってもらう必要がありますが、破産管財人が一般の市場に売りに出す場合より多少は低価格でも裁判所の許可が得られる可能性もあります。
個人再生には「住宅ローン特則」という制度があります。
住宅ローンを返済中の持ち家があり、一定の要件を満たす場合には、住宅ローン特則付き個人再生を申し立てることで、持ち家を残しつつ他の借金を整理することが可能です。
ただし、アンダーローンの場合は持ち家の評価額と住宅ローン残高との差額が資産とみなされます。
個人再生による返済額が高額となる可能性があることに、注意しなければなりません。
任意整理では自己破産とは異なり、財産を処分する必要はありません。
借金額が大きい場合でも、親族等の協力が得られる場合は任意整理での解決を検討してみるとよいでしょう。
任意整理は、基本的に将来利息をカットしてもらい、残元金を3~5年で分割返済する手続きです。
自己破産をした場合に持ち家を親族等に一括払いで買い取ってもらうことが難しくても、任意整理をして分割返済を親族等に手伝ってもらうことができれば、持ち家を残せる可能性があります。
自己破産をすると原則として持ち家を失ってしまいますが、親族等の協力が得られる場合や、他の債務整理も視野に入れるならば、持ち家を残せる可能性も十分にあります。
そのためには、自己破産を含む債務整理に関する正確な知識が要求されますので、弁護士に相談して検討しましょう。
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借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
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借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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