債務整理 弁護士コラム
自己破産は、到底返済できないほどの借金を抱えたときに裁判所に申し立てることで、一定の条件のもとにすべての借金の返済義務を免除してもらえる債務整理の方法です。
ただ、自己破産をしたくても自分の借金額では少なすぎて認められないのではないか、と不安を感じている人もいらっしゃるでしょう。
この記事では、どれくらいの借金があれば自己破産ができるのかを解説し、借金が少ないために自己破産ができないときの解決方法についてもご紹介します。
自己破産ができるのは、破産法に定められている、以下の3つの条件を満たす場合です。
第一の条件は、支払不能の状態に陥っていることです(破産法第1条)。
ただ、支払能力は人によって異なります。数十万円の借金でも返済が厳しいという人もいれば、1000万円を超える借金でも順調に返済していける人もいます。
支払不能に当たるかどうかは、借金額だけでなく、本人の収入や生活状況などを総合的に考慮して裁判所が客観的に判断します。
借金額が同じでも、人によって支払不能と認められるケースもあれば、認められないケースもあることに注意が必要です。
第二の条件は、免責不許可事由がないことです。
正確にいうと、免責不許可事由があっても自己破産はできますが、免責が認められず借金がそのまま残ってしまうため、自己破産を申し立てる実益がないということになります。
免責不許可事由とは、破産法第252条1項に掲げられている、11個の事由のことを指します。
などが比較的多く見受けられます。
ただし、免責不許可事由があっても事情によっては、裁判所の裁量で免責が許可されることもあります(同条2項)。このことを「裁量免責」といいます。
免責不許可事由に該当する事情があったとしても、自己破産の申し立てを検討する余地はあります。
第三の条件は、抱えている債務が非免責債権でないことです。非免責債権は自己破産をしても支払義務が免除されないからです。
非免責債権とは、破産法第253条1項に掲げられた、7つの債権のことを指します。たとえば、税金の滞納(同項1号に該当)は自己破産をしても解消されず、自力で支払うなどして解決しなければなりません。
ただし、多少の非免責債権があっても、他に多額の借金を抱えている場合には自己破産をするメリットがあります。
借金を免責してもらうことによって、非免責債権も支払いやすくなるはずです。それに対して、もっぱら非免責債権のみを抱えている場合には、自己破産はできません。
借金がいくらあれば自己破産できるのかは、どのような場合に「支払不能」と認められるかにかかっています。支払不能と認められるのは、以下の3つの条件を満たす場合です(破産法第2条11号)。
「支払能力が欠ける」とは、簡単にいうと借金の支払いをするだけの経済的な余裕がないことを指します。
経済的余裕があるかどうかについて、第一次的には収入が重要な判断要素となりますが、その他にも財産や信用、労力なども含めて総合的に考慮して判断されます。
これらのリソースをすべて活用しても支払いが間に合わない場合に、初めて「支払能力が欠ける」と認められるのです。
たとえば、収入がなくても高価な財産を所有しており、その財産を換金して支払に回すことが可能と認められる場合には「支払能力あり」と判断されます。
また、無収入とはいえ働いて収入を得ることが容易であるにもかかわらず、正当な理由なく働こうとしない場合にも「支払能力あり」と判断される可能性があります。
どのような債務を支払えない場合に支払不能と認められるかというと、弁済期にある債務を弁済できない場合に限られます。
このままでは将来に弁済期が到来する債務を支払えなくなるような状態であっても、すでに弁済期が来ている債務を支払うことが可能であれば、支払不能には該当しないことになります。
したがって、たとえば「○年後に子どもの学費を支払わなければならないから、現在の借金は支払えない」という言い訳は認められません。
支払不能と認められるためには、債務を弁済できない状態が「一般的」かつ「継続的」なものであることも必要です。
一般的に弁済できない状態というのは、抱えている債務について全体的に遅滞なく支払っていくことができない状態を指します。
複数社からの借金を抱えている場合、小口の債権者に対しては全額を支払うことができても、そのために他の大口債権者への支払いができなくなる場合には、一般的に弁済できない状態に該当します。
継続的に弁済できない状態というのは、突発的な事情などで一時的に支払えなくなっただけでは足りず、今後ずっと支払いが見込めない状態のことを指します。
病気や失業で収入が途絶えたことがきっかけで自己破産を申し立てる場合、すぐ仕事に復帰するか、新たな仕事について収入の回復が見込まれる場合は、継続的に弁済できない状態には当たりません。
仕事に就けず収入が回復しない状態が長期間続く場合には、継続的に弁済できない状態に該当する可能性が出てきます。
具体的に借金額がいくら以上であれば支払不能と認められ、自己破産ができるのかについて、おおよその目安をご説明します。
自己破産が可能となる借金額について、明確な基準はありません。
最低いくら以上でなければ自己破産はできないという決まりはありませんし、月収○○万円の人なら借金額○○万円以上が必要、といった基準もないのです。
あくまでも、個別の事案ごとに裁判所が具体的な事情を考慮して、支払不能かどうかを判断します。
ひとつの目安として、抱えている借金総額を5年の分割払いで完済できるかどうか、という基準が挙げられます。
なぜなら、個人再生でも分割返済期間が最長5年とされていることと、5年かかっても返済しきれない借金を抱えていれば、やがて破綻する可能性が高いと一般的に考えられるからです。
たとえば、毎月の給料から生活費を除いて5万円を返済に充てられるとした場合、300万円(5万円×60か月)を超える借金があれば、自己破産が認められる可能性が高くなります。
一方で、生活保護受給者の場合は、保護費を借金の返済に充てることは認められないため、わずかな借金額でも自己破産が認められる可能性が十分にあります。
日本弁護士連合会が2020年に実施した調査によると、自己破産した人が抱えていた負債額は500万円未満のケースが半数以上を占めており、その中でも特に多かったのは「200万円以上300万円未満」(14.52%)、「100万円以上200万円未満」(13.87%)となっています。
(参考:「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」(日本弁護士連合会))
自己破産が認められるかどうかは、あくまでも個別の事案ごとに判断されますが、このデータはひとつの参考資料となるでしょう。
借金額が少なくて自己破産が認められない場合で、自力で返済できない場合は、他の債務整理を検討することになります。
任意整理は、債権者と直接交渉して将来利息をカットしてもらい、残った借金を3~5年で分割返済する債務整理の方法です。
毎月の返済額を減らすことが可能なので、ある程度の収入がある場合には任意整理を検討するとよいでしょう。
個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金を5分の1~10分の1にまで減額し、残った借金を3年~5年で分割返済する債務整理の方法です。
安定収入は必要ですが、毎月の返済額が大幅に減るので、任意整理で支払えない場合でも個人再生なら支払える可能性があります。
借金総額が100万円以下の場合は減額されませんが(民事再生法第231条2項4号)、それでも一定の条件を満たせば強制的に将来利息のカットと分割払いが認められるというメリットがあります。
自己破産できる借金額は、家計の収支状況や本人の財産、信用、労力によって異なります。
本記事では一応の目安をご紹介しましたが、具体的に確認したい場合は弁護士への相談をおすすめします。
経験豊富な弁護士であれば、自己破産できない場合でも他の解決方法に関するアドバイスが可能です。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
本コラムでは、妻の借金を自己破産で解決した場合に、家族に及ぶ影響について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
本コラムでは、「自己破産したくない」と考えたときに、自己破産以外で借金を解決する3つの方法と特徴などについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。