債務整理 弁護士コラム
自己破産は借金の返済義務を全て免除してもらうための手続きですが、無条件に免除されるわけではありません。一定の財産がある場合には、処分して債権者への配当に充てなければなりませんし、免責不許可事由があるのではないかと疑われる場合もあります。
これらの場合には破産管財人が選任され、さまざまな調査が行われます。債務者としては、できる限り多くの財産を手元に残し、免責を受けたいところですが、破産管財人による調査には誠実に協力しなければなりません。
そこで本コラムでは、破産管財人は何をどこまで調べるのか、どのような調べ方をするのかについて解説します。
破産管財人とは、破産手続きにおいて破産者の財産を管理・処分し、換価されたお金を債権者に配当する職務を行う人のことを指します。
この職務を果たすためには、前提として破産者の財産状況と債権・債務の状況の調査が必要です。
また、個人の自己破産手続きにおいては免責不許可事由がないかどうかを調査する役割も果たします。
以下で、破産管財人が行う調査の内容を具体的にご説明します。
破産者の所有財産は、自己破産の申立書に添付する「資産目録」に全て記載されているはずですが、破産管財人は、その他にも財産がないかどうかを調べます。
自己破産は、破産者が所有する財産のうち自由財産を除いて処分し、債権者に配当することと引き換えに免責を認める制度です。
破産者が、故意または過失で申告しなかった財産を破産者の手元に残しながら免責を認めると、債権者との間で著しい不公平が生じてしまいます。
このような事態を防止するために、破産管財人は隠し財産や申告漏れの財産がないかどうかを調べるのです。
破産者が第三者に対して有する貸金や売掛金、あるいは保険の解約返戻金などの「債権」も、債権者への配当の引き当てとすべき財産に該当します。
また、破産者が申告し忘れた「債務」があると、その債権者は配当を受けることができません。
さらに、破産者が親族や知人からの借金や、担保が付いた借金を意図的に申告しないことも考えられますが、このような行為は自己破産手続きにおいて認められていません。
そこで、破産管財人によって、申告漏れの債権・債務がないかについても調査が行われます。
個人の自己破産では、破産手続きが終了しても破産者が消滅するわけではないので、残った債務をどうするかが問題となります。
破産法では、免責不許可事由がない限り、非免責債権(同法第253条1項)を除く全ての債務が消滅するものとされています(同法第252条1項)。
破産管財人が選任される事案(管財事件)では、破産管財人が免責不許可事由の有無も調査することになります。
意図的な財産隠しや、虚偽の債権者一覧表の提出(一部の債務を意図的に申告しないことなど)も免責不許可事由に該当します。
その他にも浪費やギャンブルによる借金はないか、一部の債権者のみに優先して返済をしていないかなど、破産法第252条1項に列挙された免責不許可事由がないかについて調べられます。
次に、前項で挙げた調査事項について、破産管財人がどのような調べ方をするのかについてご説明します。
まずは、破産者が自己破産の申立時に提出した書類や資料が精査されます。その際、預金通帳のコピーなどによりお金の流れまで細かく確認されることに注意が必要です。
不自然な入金があれば、申告していない収入または借り入れがあるのではないかと疑われてしまいます。
逆に、不自然な出金があれば、浪費やギャンブルに使ったのではないか、隠し財産を購入したのではないか、一部の債権者に優先的に返済したのではないかなどということが疑われることになります。
次に、破産管財人は破産者と直接面談し、事情を聴き取ります。このとき、破産者がうそをついても、借り入れや通帳の入出金の流れと整合しない内容であれば破産管財人に明るみに出ます。
破産手続き上の調査において破産者が説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりすることも免責不許可事由のひとつなので、破産管財人からの質問には正直に答えなければなりません。
破産管財人が選任された後、破産者宛ての郵便物は全て破産管財人へ回送され、内容を調べられます。
破産管財人が郵便物をチェックすることにより、生命保険や有価証券などの隠し財産や、申告していない借金が発覚することもあるので、注意が必要です。
破産管財人は必要に応じて、破産者の自宅や、個人事業主の破産の場合には事業所などの現地調査を行うこともあります。
その際、車その他の高価な財産の申告漏れが発覚することも少なくありません。
以上の調査の結果、破産管財人が「さらに詳しく調べる必要がある」と判断した場合には、金融機関や保険会社、自治体などに情報照会を行うことがあります。
その回答により、破産者の隠し財産や未申告の債権・債務が判明することがあります。
結局のところ、自己破産手続きにおいて財産隠しをしたり、虚偽の申告や説明をしたりしても、破産管財人の徹底的な調査により、ほぼ確実に明るみに出てしまいます。
これらの不正行為が発覚すると、以下のデメリットが生じます。
破産手続き上の調査において破産者が説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりする行為が免責不許可事由に該当することは先ほどもご説明しました。
単に免責不許可事由があるという場合であれば、破産者の反省状況などにより裁判所の裁量による免責許可を受けることも期待できます。このことを「裁量免責」といいます(破産法第252条2項)。
しかし、意図的な財産隠しや一部の債務を隠すような行為は悪質であると判断されやすく、裁量免責を得ることも難しくなってしまうでしょう。
意図的な財産隠しは「詐欺破産罪」という犯罪に該当し、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方」という刑事罰の対象となります。
悪質な事案では実際に詐欺破産罪に問われる可能性もあるので、決して財産隠しを行ってはいけません。
やましいことがなければ、破産管財人の調査を恐れる必要は全くありません。
それでも、「できる限り多くの財産を残したい」「浪費やギャンブルなど、免責不許可事由について心当たりがある」といった場合には、調査が不安になることもあるでしょう。
そんなときは、以下のように対処しましょう。
自己破産の申し立ては、くれぐれも適正に行う必要があります。
場合によっては、申し立ての時点で裁判所の書記官から「これでは免責が見込めないので、申し立てを取り下げてはどうか」と打診されることもあります。
破産手続き開始決定後は取り下げが認められず、破産管財人によって財産を処分されてから免責不許可決定が出ると破産者のダメージが大きくなるでしょう。
そのため、事前に書記官が親切心で忠告してくれることがあります。
申立書や添付書類に虚偽を記載したのでは、このような忠告を受けることもできません。その意味でも、申し立てを適正に行うことは極めて重要です。
財産を失いたくない場合や、免責不許可事由がある場合には、任意整理または個人再生を検討するのも1つの方法です。
これらの手続きにおいては財産を処分する必要がなく、免責不許可事由もないからです。
借金総額が比較的少なく、毎月の返済額を減らせば返済可能な場合は、任意整理で解決できるでしょう。
借金総額が大きいものの自己破産は難しいという場合には、安定収入があることが条件となりますが、個人再生が適しています。
任意整理・個人再生・自己破産はそれぞれ特徴の異なる手続きなので、スムーズに借金問題を解決するためには状況に合った手続きを選択することが重要です。
そのためには専門的な知識が要求されるので、債務整理事案の経験が豊富な弁護士に相談してアドバイスを受けた方がよいでしょう。
弁護士に債務整理を依頼すれば、受任通知が送付されるので数日以内に債権者からの督促がいったん止まります。
その後も、債務整理の複雑な手続きは弁護士に一任できるというメリットもあります。
破産管財人が何をどこまで調べるのか、どのような調べ方をするのかについて、ひと言でまとめるなら、財産や債権・債務、免責不許可事由の有無を「徹底的に調べられる」ということになります。
うそをついても、ほぼ確実に見破られると考えるべきです。
そもそも、自己破産の申し立てを弁護士に依頼して適正に申し立てれば、破産管財人による調査を恐れる必要はありません。
弁護士からのアドバイスによって、自己破産以外に最適な解決方法が見つかることもあります。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理事案の経験が豊富な弁護士が対応し、ご相談者ごとの事情に応じて最適な解決方法を提案いたします。
借金問題に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけますので、お困りの方はぜひ一度、お問い合わせください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
本コラムでは、夫婦がそろって借金を抱えてしまった場合の解決方法と重要なポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
本コラムでは、妻の借金を自己破産で解決した場合に、家族に及ぶ影響について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
本コラムでは、「自己破産したくない」と考えたときに、自己破産以外で借金を解決する3つの方法と特徴などについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。