債務整理 弁護士コラム

任意整理とは? 手続きの流れや費用、メリット・デメリットを解説

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更新日:2023年06月30日 公開日:2022年05月23日

任意整理とは? 手続きの流れや費用、メリット・デメリットを解説

任意整理とは、返済が難しくなった借金を減額できる債務整理の一種です。自己破産や個人再生のように法律で定められた手続きではないので、柔軟な解決が可能というメリットがあります。

その反面でデメリットもあるため、任意整理をお考えの方は事前に正しい知識を持っておくことが大切です。

そこで今回は、
・任意整理のメリットやデメリット
・任意整理にかかる費用
・できないケース
などについて、詳しく解説していきます。

1、任意整理とは

任意整理とは、当初の契約どおりに返済できなくなった借金について、債権者(お金を貸した人)と直接交渉することによって返済額と返済方法を取り決め直す手続きのことです。

  1. (1)借金が減額される仕組み

    任意整理で債権者と交渉する内容は、以下のとおりです。

    • 払いすぎた利息があれば元金に充当する
    • 将来利息(残っている借金に対して発生し、完済まで払う予定の利息)をカットしてもらう
    • 返済期間を延長してもらう


    利息制限法で定められた金利(15%~20%)を超えて支払った利息があれば元金に充当し、残った借金を将来利息なしで、3年~5年をかけて分割返済していきます。

    しかし

    • 元金
    • 遅延損害金

    については、基本的にカットしてもらうことは難しくなっています。


    • 将来利息のカット
    • 返済期間の延長

    を認めてもらうことによって、毎月の返済額が軽減されます。

  2. (2)任意整理のメリット

    任意整理の主なメリットは、以下の5点です。

    • 毎月の返済が楽になる
    • 取り立てが一時的に止まる(弁護士に依頼した場合)
    • 手続きの負担が軽い
    • 財産を処分する必要がない
    • 保証人に迷惑がかからない


    弁護士に任意整理を依頼した場合には、債権者宛てに受任通知が送付されます。この受任通知を受け取った債権者は、貸金業法に基づき直接債務者に対して取り立て行為ができなくなります(貸金業法21条1項)。このことによって、一時的にですが借金返済の苦しみから解放されます

    また、任意整理は

    • 自己破産:裁判所に申し立て返済を免除してもらう制度
    • 個人再生:借金の総額を減額し再生計画に基づいて返済する制度

    と異なり裁判所の手続きを利用しないため、手続きの負担が軽く、財産を処分する必要もありません

    さらに自己破産・個人再生のように、すべての債権者を平等に扱う必要はなく、手続きの対象とする債権者を自由に選べます。保証人などの担保が付いている債権者を手続きから外せば、保証人が返済の請求を受けることはありません。

  3. (3)任意整理のデメリット

    一方で、任意整理には以下のようなデメリットもあります。

    • 信用情報機関に事故情報が登録される
    • 借金の大幅な減額は期待できない
    • 交渉に応じない債権者もいる


    任意整理に限らず、債務整理をすると信用情報機関に事故情報が登録され、その後の5年~10年ほどは

    • 新たな借り入れ
    • クレジットカードの利用

    などができなくなります

    また、任意整理で借金を減額できるのは基本的には将来利息の部分だけなので、大幅な減額は期待できません。

    さらに、交渉の手続きであるため、和解が成立するかどうかは債権者の意向次第です。
    交渉に一切応じない貸金業者はごくわずかですが

    • 借入期間が短い場合
    • 延滞歴が多い場合

    などでは和解条件が厳しくなる傾向にあります。

2、任意整理の手続きの流れ

次に、任意整理の手続きがどのような流れで進められるのかをみていきましょう。

  1. (1)和解成立までの5つのステップ

    任意整理の手続きは、以下の5つのステップを踏んで進んでいきます。

    ① 弁護士への相談・依頼
    弁護士に相談して借金の内容や生活状況などを伝え、任意整理が適しているということになれば依頼し、「委任契約」を交わします。

    ② 受任通知の送付(1日~数日)
    依頼を受けた弁護士は、すぐに受任通知を送付します。速達で送付するので、依頼してから数日後には取り立てが一時的に止まります(貸金業法21条1項)。

    同時に、弁護士は取引履歴の開示請求も行います。取引履歴とは、

    • 債権者との借り入れ
    • 返済の記録

    がすべて記載された書類のことです。

    ③ 利息引き直し計算(2週間~2か月程度)
    受任通知を受け取った債権者は、取引履歴を弁護士宛てに送付します。弁護士は、取引履歴に基づいて利息引き直し計算を行います。利息引き直し計算とは、すべての取引に法定金利を適用して計算し直すことです。これにより、借金の正確な残元金が判明します。

    ④ 交渉(1~3か月程度)
    弁護士は依頼者と打ち合わせの上、依頼者の希望する和解案を債権者に提示し、交渉します。債権者が合意すればすぐに和解が成立しますが、債権者が納得しない場合には交渉が長引くこともあります。

    ⑤ 和解成立
    和解が成立すれば、弁護士が債権者と和解書を取り交わし、任意整理の手続きは終了します。翌月から返済を開始することが一般的ですが、交渉次第で数か月後からの返済開始とできる場合もあります。

  2. (2)必要な書類

    任意整理では裁判所の手続きを利用しないため、必要書類は特にありません。以下に掲げるのは、弁護士との委任契約に必要なものや、弁護士がスムーズに手続きを進めるために役立つものです。

    • 身分証明書(運転免許証・保険証・パスポートなど)
    • 印鑑
    • 借入先の契約書
    • 返済に使用した預金通帳や振り込み明細書
    • クレジットカード(借り入れした金融機関)
    • 収入のわかる書類(給与明細や源泉徴収票など)
    • 登記簿謄本や権利証(不動産を所有している場合)
    • 生命保険証書(加入している場合)
  3. (3)手続きにかかる期間

    任意整理を弁護士に依頼してから和解が成立するまでにかかる期間は、3か月~6か月程度が平均的です。

    早ければ1か月以内に終了することもありますが、取引履歴の開示までに2か月以上かかる債権者もいるので、時間がかかることもあります。

    逆に、弁護士費用の分割払いや収入を確保するための必要性から、1年以上かけることが可能な場合もあります。ただし、期間が長引くと遅延損害金(返済が遅れたことに対するペナルティー)が加算されるとともに、債権者から裁判を起こされる可能性があることに注意が必要です。

3、任意整理にかかる費用

任意整理にかかる費用は、

  • 自分で手続きをする場合
  • 弁護士に依頼する場合

とで大きく異なります。

  1. (1)自分で手続きする場合

    自分で手続きをする場合は、実費のみの負担で済みます。実費は主に通信費で、金額は債権者数によりますが、おおよそ数千円程度です。

  2. (2)弁護士に依頼する場合

    弁護士に依頼する場合は、実費に加えて以下の弁護士費用が必要となります。ただし、ここでご紹介する金額は一般的な目安です。弁護士費用は事案の内容や法律事務所によっても異なりますので、正確な金額は実際に相談した上で見積もりを取ることになります。

    費用内訳 意味 目安
    相談料 弁護士へ相談した際にかかる費用 1時間:0~1万円
    ※法律事務所によっては無料相談を行っている
    着手金 弁護士に依頼する際に支払う費用。成功・失敗に関わらず支払い、返金はできない 1社:2万円~5万円程度
    解決報酬 依頼が成功した際に支払う費用 1社:2万円以下
    減額報酬 減額した借金の金額の一部を基礎報酬とは別で支払う報酬金 減額された金額の10%以下
    過払い金報酬 払いすぎた利息を取り戻した場合に、回収した金額の一部を支払う報酬金 交渉:15%~20%程度
    訴訟:20%~25%程度

    総額で1社あたり5万~7万円程度がおおよその相場となるでしょう。

4、任意整理できない場合もある?

任意整理をするためには、いくつかの条件を満たす必要があります。また、あらゆる借金問題を任意整理委で解決できるわけではありません。

  • 任意整理に失敗するケース
  • 任意整理をしない方がよいケース

などでは、自己破産や個人再生など他の解決方法を検討すべきです。

  1. (1)任意整理できる条件

    任意整理をするためには、最低限、以下の3つの条件を満たすことが必要です。

    • 貸金業者からの借金であること
    • 3年~5年で完済可能な安定収入があること
    • 返済を継続する意思があること


    ひとつでも条件が欠けると、和解ができないことがあります。また、無理に和解をしても解決することは難しくなります。

  2. (2)任意整理に失敗するケース

    任意整理をしても失敗に終わりやすいケースとして、以下の場合が挙げられます。

    • 借金総額が大きい
    • 返済能力が乏しい
    • すでに差し押さえを受けている
    • 借り入れてから間もない
    • 交渉に応じない債権者からの借り入れが多い


    これらのケースでは、自己破産または個人再生のように裁判所を利用する債務整理の方が適しているといえます。

  3. (3)任意整理しない方がよいケース

    以下のようなケースでは、任意整理が可能であってもしない方がよいといえます。

    • 借金総額が少ない
    • 金利が低い
    • 保証人が付いている借金
    • マイカーローンや住宅ローンなど担保が付いている借金


    保証人や抵当権などの担保が付いている借金がある場合は、その債権者を除外し、他の債権者と任意整理することで解決できる場合もあります。

5、まとめ

任意整理は他の債務整理と比べてデメリットが少なく、メリットが多いため利用しやすい手続きです。しかし、事案の内容によっては他の債務整理を行う方が適している場合もあります。

また、任意整理を自分でする場合は、債権者から一方的に不利な和解案を押しつけられ、結果的に失敗してしまう可能性もあります。対等に交渉するためには、弁護士に依頼することとよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、弁護士が詳しい事情を伺い、最適な解決方法を提案いたします。ご依頼いただければ、複雑な手続きはすべて弁護士が代行し、最善の解決を図ります。

債務整理に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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