債務整理 弁護士コラム
奨学金を債務整理(任意整理)することは可能なのでしょうか?
奨学金を借りたら卒業後に返済しなければなりませんが、就職しても思ったほどの収入が得られず、返済できなくなる人が増えています。奨学金を返済するために借り入れをして、借金問題を抱える人も少なくありません。
奨学金を返済できない場合に債務整理(任意整理)をすることは可能ですが、一般的な貸金業者からの借金とは取り扱いが異なる点があるので注意が必要です。
そこでこの記事では、
・奨学金を返済できないときの対処法
・注意点
などを解説します。
奨学金の返済ができない場合は、貸金業者からの借金を返済できない場合とほぼ同様に、以下の流れで最終的には給料や預金口座などの財産を差し押さえられることになります。
以上は、人的保証(奨学金を借りる際に連帯保証人と保証人をつけること)を利用した場合の流れです。機関保証(保証機関に奨学金の保証をしてもらうこと)を利用した場合には、返済が一定期間滞ると保証機関が代位弁済し、保証機関によって
が申し立てられることになります。
支払督促が確定してしまうと、奨学金の残額を返済しない限り差し押さえを免れることはできません。その前に債務整理(任意整理)などで対処することが非常に重要です。
奨学金も債務整理(任意整理)はできますが、必ずしも貸金業者からの借金と同じように処理できるとは限らないことに注意が必要です。もちろん、債務整理(任意整理)に伴う一般的なデメリットにも注意しなければなりません。
奨学金の債務整理(任意整理)で特に注意が必要なデメリットは、以下の3点です。
奨学金を借りるときに人的保証を利用している場合は、債務整理をすると、連帯保証人と保証人が残額の一括請求を受けてしまいます。交渉次第で分割払いにしてもらうことも可能ですが、連帯保証人と保証人も返済していく余裕がない場合には、これらの人たちも債務整理をしなければならない可能性があります。
そもそも任意整理とは、将来利息を免除してもらい、元金のみを分割返済していく手続きです。消費者金融や銀行カードローンによる借金の場合は、金利が高いので、それなりに借金が減額されます。しかし、奨学金はもともと金利がわずかなので、任意整理をしてもあまり減額されません。
奨学金も借金なので、債務整理をすると信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に登録された状態となり、その後の一定期間は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。住宅ローンや自動車ローンを組むこともできません。
ただし、一定期間が経過すると事故情報は削除され、上記のような制限はなくなります。事故情報が削除されるまでの期間は、
とされています。
奨学金の返済が苦しくなったときの解決方法は、状況によって異なります。以下のように、状況に合った対処法を選ぶことが重要です。
奨学金制度には、債務整理をしなくても返済の負担を軽減できる救済制度が用意されています。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、「減額返還」と「返還期限猶予」という2つの救済制度があります。
いずれも、返還総額が減額されるわけではありません。また、延滞している場合には「減額返還」を利用できないことにも注意が必要です。
先ほどもご説明したとおり、任意整理でも総返還額の減額はあまり期待できないので、他に借金がない場合には、まず救済制度の利用を検討した方がよいでしょう。早期に救済制度を利用すれば、事故情報が登録されることなく解決できる可能性があります。
奨学金の他にも借金を抱えている場合には、他の借金を任意整理して返済の負担を抑えることで、奨学金の返済が可能となると考えられます。
任意整理では手続きの対象とする借金を自由に選べるので、奨学金を除外して手続きすることも可能です。そうすれば、連帯保証人や保証人に迷惑をかけることもありません。奨学金以外の借金総額が比較的少ない場合には、この方法を検討するとよいでしょう。
奨学金以外の借金が多額にのぼる場合は、個人再生を検討してみましょう。
奨学金を含めた借金総額が500万円までなら、毎月の返済額を1万7000円~2万8000円にまで減らせる可能性があります。就職して安定した給料を得ていれば、多くの場合は個人再生で解決可能と考えられます。
基本的に財産を処分する必要もなく、一定の条件を満たせば住宅ローンで購入したマイホームも残すことができるので、非常にメリットが大きい手続きといえます。
ただし、すべての借金を手続きの対象としなければならないため、連帯保証人と保証人に迷惑がかかることには注意が必要です。
借金総額が到底返済できないほどに大きい場合は、自己破産を検討することも必要となってきます。自己破産を裁判所に申し立てて免責が許可されたら、奨学金も含めてすべての借金の返済義務が免除されます。
ただし、個人再生と同様に連帯保証人と保証人に迷惑がかかることと、その他にも以下の諸点に注意が必要です。
これらのデメリットを回避するためには、任意整理または個人再生を検討することになります。
なお、自己破産による免責許可決定が確定した後は、連帯保証人や保証人による奨学金の返済を手伝うことに問題はありません。ただし、自己破産をする前に奨学金のみを一括返済すると偏頗(へんぱ)弁済(特定の債権者にだけ支払いをすること)となり、免責が受けられなくなる可能性が高いのでご注意ください。
奨学金の返済が苦しくなったときは、早めに適切な対処法を取ることが重要です。そのためには、返済が苦しいと感じた時点で弁護士に相談し、最適な解決方法のアドバイスを受けることをおすすめします。
最も望ましい解決方法は、「奨学金の救済制度」を利用することです。次に望ましいのは、「奨学金以外の借金のみを任意整理すること」です。この2つの方法であれば、連帯保証人と保証人に迷惑をかけることがないからです。
しかし、借金が大きく膨らんでしまうと個人再生または自己破産を検討せざるを得ず、連帯保証人と保証人に迷惑をかけてしまうことになります。奨学金に限らず、借金問題には早めに対処した方が取れる選択肢が多くなります。
返済が苦しくなったときは一人で抱え込まず、借金が膨れ上がる前に弁護士に相談しましょう。
奨学金が返済できなくなったときも、債務整理をすることは可能です。ただし、任意整理ではあまり効果が期待できず、個人再生や自己破産では連帯保証人と保証人に迷惑がかかるなどのデメリットに注意する必要があります。
デメリットを軽いものにとどめるためには、早期に対処することが必要です。早めに弁護士のサポートを受けて、最善の方法で解決することをおすすめします。奨学金の返済が苦しくなったときは、すぐにご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
債務整理をすると信用情報機関に事故情報が登録され、その後の一定期間は新たな借り入れ、そしてクレジットカードの利用ができなくなります。この状態になることを、俗に「ブラック入り」といいます。
任意整理も債務整理の一種であるため、手続き後はブラックリストに掲載されてしまいます。しかし、自己破産や個人再生とは異なり、任意整理の場合は例外的にブラックにならないケースが2つあります。
ただ、例外に該当しない場合でもブラック入りを過度に恐れず、早めに任意整理等をして借金問題を解消することが大切です。
この記事では、任意整理してもブラックにならない2つのケースと、ブラックになっても任意整理をするメリットについて、ベリーベスト法律事務所の債務整理に詳しい弁護士が解説します。
任意整理をすると、クレジットカードを今までどおりに利用できなくなります。キャッシュレス決済が普及した現在、クレジットカードが使えなくなると不便に感じることも多いことでしょう。
しかし、任意整理をしてから一定期間が経過すると、再びクレジットカードが使えるようになります。
そこで今回は、
・任意整理をするとクレジットカードがどうなるのか
・クレジットカードの新規作成はいつからできるようになるのか
・任意整理後にクレジットカードを使いたいときはどうすればよいのか
などについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームに所属する弁護士が解説します。
クレジットカードを任意整理するときの注意点も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
任意整理は、借金を整理する手段(債務整理)のひとつです。裁判所を用いることなく手続きを行えることから比較的費用も安く、カードローンの返済・リボ払いの支払いができなくなってしまった場合の解決方法として有効です。
ただ、任意整理によって借金を解決した場合には、信用情報(ブラックリスト)としてその記録が残ってしまうことから、その後のローンやカードの契約などに悪影響が生じる可能性も高くなってしまいます。
しかし、これらの悪影響は一生続くわけではなく限定的なものにすぎません。本コラムでは任意整理をした場合の信用情報の登録や回復までの登録期間、借金を放置するデメリットなどについて解説します。