債務整理 弁護士コラム
自己破産は、借金の返済義務をすべて免除してもらうための手続きです。どのように多額の借金を抱えていても、免責が許可されると返済する必要がなくなります。
しかし、あらゆるケースで自己破産ができるわけではありません。自己破産が認められる条件は法律で定められています。条件を満たしていても、デメリットがメリットを上回るなどの理由により、自己破産では解決が難しいケースがあることにも注意が必要です。
本コラムでは、自己破産するための3つの条件や、どのようなケースが自己破産に向いているのか、自己破産では解決できない場合にどうすればよいのかについて解説します。
自己破産をするためには、以下の3つの条件を満たさなければならないことが破産法で定められています。
第一の条件は「破産手続開始の原因となる事実がある」ことです(破産法第30条1項柱書き)。具体的には、「支払い不能」の状態にあるかどうかが問われます。
支払い不能とは、支払い能力を欠き、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態にあることを指します(破産法第2条11号)。簡単にいうと、客観的に見て返済を続けていくことが不可能と認められる状態のことです。裁判所では、借金額だけでなく財産や生活の状況、家族構成など、さまざまな要素を総合的に考慮して、支払い不能かどうかが判断されます。
そのため、多額の借金を抱えていても、家や車などの財産を処分すれば当面は返済が可能、といったケースは、支払い不能ではありません。逆に、病気などの影響で働けない人や生活保護受給者などの場合は、借金総額が100万円以下でも支払い不能と認められる可能性があります。
自己破産を申し立てるためには、裁判所に以下の金額を予納する必要があります。支払えない場合、自己破産はできません(破産法第30条1項1号)。
自己破産手続きの種類 | 予納金の額 |
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① 同時廃止事件 | 1万5000円程度 |
② 少額管財事件 | ①の金額に加えて20万円程度 |
③ 通常管財事件 | ①の金額に加えて50万円程度 |
個人の自己破産の6割程度は同時廃止事件となりますが、処分すべき財産がある場合や、免責不許可事由の存在が疑われる場合は管財事件となります。管財事件の大半は少額管財事件ですが、財産状況が複雑な場合や債権者数が多い場合などでは通常管財事件となることもあります。
なお、法テラスで弁護士費用を立て替えてもらえる場合でも、予納金は自腹で一括払いする必要があることに注意が必要です。
自己破産の申し立てが不当な目的に基づく場合など誠実な申し立てでない場合、自己破産は認められません(破産法第30条1項2号)。
例えば、最初から自己破産をするつもりで借金をして浪費を重ねていたようなケースが考えられます。原則としては、浪費をしていても自己破産そのものは認められ、免責不許可となる可能性があるに過ぎません(破産法第252条1項4号)。しかし、浪費の程度が著しく、初めから自己破産を考えていたと認められるような場合には、申し立ての段階で「不当な目的」あるいは「不誠実な申し立て」であると判断され、申し立てが却下または棄却される可能性があるのです。
法律上の破産条件を満たしていても、以下のケースでは自己破産をしても根本的な解決に至らないか、または自己破産はしない方がよい、という可能性があります。
浪費やギャンブルで借金をした場合など「免責不許可事由」(破産法第252条1項に列挙されている各事由)がある場合は、自己破産をしても原則として借金の返済義務が免除されません。借金がそのまま残ってしまうのですから、自己破産をする意味がないといえます。
自己破産で免責が許可されたとしても、税金や養育費、罰金などの「非免責債権」(破産法第253条1項に列挙されている各債権)は免除されません。非免責債権が支払えない場合には、役所に相談したり、相手方と交渉するなどして解決を図る必要があります。負債の中に貸金業者などからの借金がわずかしかなく、非免責債権が占める割合が大きい場合には、自己破産をする実益が乏しいといえるでしょう。
自己破産をすると、99万円を超える現金と、その他の財産で評価額20万円を超えるものは処分されてしまいます。該当する財産をどうしても失いたくない場合は、自己破産以外の解決方法を検討するしかありません。
保証人付きの借金がある場合、自己破産をすると保証人が債権者から返済の請求を受けてしまいます。自己破産手続きには「債権者平等の原則」というものが適用されるため、保証人付きの借金を除外して申し立てることは許されません。どうしても保証人に迷惑をかけたくないという場合は、自己破産以外の解決方法を検討するしかないでしょう。
自己破産の手続き中は、士業と呼ばれる資格に基づく職業や、警備員、生命保険の外交員、建築業の経営など一部の職業に就くことができなくなります。退職しても構わない場合や、部署異動などによって職種を変更できる場合は、自己破産をしても差し支えありません。しかし、一時的にでも職業制限を受けると生活が厳しくなるような場合は、自己破産は避けた方がよいといえます。
法律上の破産条件を満たしていることを前提として、自己破産が向いているといえるのは以下のケースです。
借金総額が大きければ大きいほど、自己破産に向いているといえます。例えば、年収300万円の方であれば、借金額が50万円なら完済できる見込みが十分にありますが、100万円を超えると厳しくなってくるでしょう。200万円になると、自力での完済は非常に困難となるはずです。
借金の返済は一般的に長期間に及ぶため、安定収入がなければ完済は難しいといわざるを得ません。この点、相応の安定収入があれば、借金の減額や返済期間の延長が認められれば完済できる可能性もあるでしょう。しかし、継続的な収入が見込めない場合には、自己破産が最善の解決策となります。
自己破産手続きでは、借金をした経緯も問われます。生活費の不足や病気の治療費、借金返済などのやむを得ない理由で借金をした場合は、問題なく免責が許可されるので、自己破産に向いています。
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合も、状況次第では「裁量免責」(破産法第252条2項)が許可される可能性はあります。しかし、少額管財事件となる可能性が高い上に、免責の条件として裁判所から数十万円程度の配当を指示される場合もあり、ある程度の経済的負担がかかります。
自己破産では解決が難しい、あるいは自己破産ができない、という場合には、以下の対処法が考えられます。
債務整理には自己破産だけでなく、任意整理や個人再生という手続きもあります。どちらも、借金を減額した上で分割返済していく手続きです。自己破産とは異なり、財産を処分する必要は基本的になく、免責不許可事由や職業制限もありません。
任意整理では原則として利息が免除されるのみなので、多額の借金を抱えているケースには向いていません。ただし、家族や親戚などが返済に協力してくれるような場合には、任意整理を検討するのもよいでしょう。
個人再生では、一定の要件を満たせば借金総額が基本的に5分の1~10分の1にまで減額されます。ただし、減額後の借金を3年~5年で完済しなければならないため、継続的に安定収入が見込めない場合は、個人再生は利用できません。
自己破産の条件を満たすものの、財産を失いたくない、保証人に迷惑をかけたくない、という場合には、そのデメリットを受け入れて自己破産することも考えられます。
財産を失ったとしても、自己破産後の収入で同様の財産を取得することは可能です。保証人が支払えないほどの借金がある場合には、保証人にも債務整理をしてもらうことで解決できます。
3種類の債務整理のメリット・デメリットを比較検討することで、最善の解決方法が見つかるはずです。
返済しきれない借金を抱えたときに、自己破産できるかどうか、できるとしても他によい解決方法はないか、自己破産できない場合にはどうすればよいのか、を的確に判断するためには、専門的な知識が要求されます。判断に困った場合は、弁護士に相談して専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、自己破産をはじめとする債務整理のご相談は、何度でも無料で承っております。経験豊富な弁護士が親身に対応し、最善の解決策を提案いたします。お困りの際は、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。
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借金を抱えて返済しきれなくなっても、自己破産をすれば返済義務が免除されます。しかし、税金の支払いは自己破産をしても免除されません。
実のところ、自己破産では、あらゆる債務が消滅するわけではなく、自己破産後も残る債務があることに注意が必要です。
そのような債務を抱えている場合は、自己破産以外の手段で解決しなければ、差し押さえなどの重大なデメリットを受けるおそれがあります。
本コラムでは、自己破産をしても税金の支払いが免除されない理由と、税金が払えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
本コラムでは、夫婦がそろって借金を抱えてしまった場合の解決方法と重要なポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
本コラムでは、妻の借金を自己破産で解決した場合に、家族に及ぶ影響について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。