債務整理 弁護士コラム
日本学生支援機構が公表する「令和4年度 学生生活調査結果」の調査によると、「令和4年に何らかの奨学金を受給している」と回答した学生比率は55%でした。
奨学金については、卒業後に返還できなくなる人が増えていることが社会問題化しています。大学等を卒業しても思うような収入が得られる企業に就職できるとは限りませんし、就職しても病気などで奨学金の返還が難しくなることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産で奨学金の返済義務が免除されるのかについて、自己破産のデメリットや他の解決方法を踏まえながら、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すれば、奨学金の返済義務は原則的に免除されます。ただし、連帯保証人や保証人がいる場合には注意が必要です。
自己破産で負債の返済義務の免除を受けるためには、次の要件を満たさなければなりません。
免責不許可事由とは、自己破産で返済義務を免除することが相当でない事情のことであり、破産法第252条1項に定められています。浪費やギャンブルのために借金をしたケースが代表例です。
非免責債権とは、債権の性質上、自己破産しても返済義務が免除されないもののことであり、破産法第253条1項に定められています。租税等が代表例です。なお、奨学金は非免責債権ではありません。
したがって、奨学金を含む借金を抱えて到底返済していけない状態であれば、免責不許可事由がない限り、借りた本人の返済義務は自己破産で免除されます。
奨学金を借りる際に連帯保証人・保証人を付けている場合、借りた本人が自己破産しても連帯保証人・保証人の返済義務は免除されません。そのため、本人の返済義務が免除されると、連帯保証人・保証人が残高の返済請求を受けてしまいます。
もっとも、連帯保証人・保証人も支払い不能の状態であれば自己破産が可能であり、免責が認められると、誰も奨学金を返済する必要はなくなります。
一方で、連帯保証人・保証人が残高をすぐに一括で支払えるのであれば、借りた本人も自己破産をする必要はありません。
奨学金で自己破産する場合、「連帯保証人・保証人がいれば返済請求を受ける」という点が大きなデメリットになります。しかしその他にも、以下のデメリットに注意することが必要です。
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されることになります。
いわゆるブラックリストに登録された状態となり、各種ローンやキャッシング、クレジットカードの利用が難しくなることがデメリットです。また、携帯電話やスマホの端末を分割払いで購入できなくなったり、賃貸住宅に入居できないことがあったり、他人の借金の保証人になれなくなったりするなどのデメリットも生じることに留意しましょう。
ただし、信用情報の悪化によるデメリットは、自己破産後7年ほどで解消されます。
自己破産で借金の返済義務が免除されることと引き換えに、一定の範囲を超える財産があれば処分されてしまいます。処分された財産は換金され、債権者への配当に充てられるのです。
マイホームや自動車、生命保険などを失うケースが多いため、注意しましょう。
自己破産手続き中は、一部の資格や職業に制限がかかります。
たとえば、税理士や行政書士など「士業」と呼ばれる職業や、生命保険の募集人、警備員、旅行取扱管理者などは、自己破産をすれば廃業や退職をしなければならない可能性があります。
ただし、免責許可決定が確定すると、資格・職業の制限は解除されます。
自己破産をすると、「官報」という国の日刊紙のようなものに氏名や住所が掲載されてしまいます。
一般の人が官報を見ることはほとんどないため影響は少ないですが、家族や知人が金融機関や不動産会社に勤務している場合などでは、自己破産したことを知られてしまう可能性があるでしょう。
また、闇金や詐欺業者などが官報を見てダイレクトメールを送ってくることも多いため、ご注意ください。
奨学金の返済ができないときの解決方法は、自己破産以外にもあります。自己破産のデメリットを回避するために、まずは以下の解決方法も検討してみましょう。
日本学生支援機構では、奨学金の返還が難しくなった方のために、以下の救済制度が用意されています。「返還免除」の利用条件は極めて限定的ですが、「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」は多くの方が利用できる可能性があります。
任意整理とは、債権者との交渉で利息をカットしてもらい、返済方法を変更する手続きです。
奨学金の金利は極めて低いため、任意整理をしても、あまりメリットは得られません。
しかし、他に高金利の借金を抱えている場合には、他社の債務について任意整理をし、毎月の返済額を減額することで、奨学金の返済を継続できるようになる可能性があります。
奨学金を除外して任意整理をすれば、連帯保証人・保証人に迷惑がかかることもありません。
個人再生とは、裁判所の手続きを利用して借金を大幅に減額できる方法です。
自己破産と異なり、原則として財産を処分する必要はなく、免責不許可事由や資格・職業の制限もないというメリットがあります。ただし手続きをすると、連帯保証人・保証人が返済を受けるというデメリットがあるという点は、自己破産と同様です。
奨学金問題の解決方法として自己破産が向いているのは、以下のケースです。
奨学金を借りる際に保証機関による保証(機関保証)を利用した場合には、自己破産をしても連帯保証人・保証人に迷惑をかける心配がありません。
自己破産の条件を満たせば、保証機関に対する債務も免責されます。
連帯保証人・保証人が付いている場合でも、借金総額や収入・財産の状況などによっては、自己破産をせざるを得ないこともあるでしょう。そのようなときは、事前に連帯保証人・保証人に事情を話しておくことが重要です。
連帯保証人・保証人が残高をすぐに完済できない場合でも、奨学金の貸出機関と分割払いの交渉をしたり、債務整理をしたりするなど、対処法はいくつかあります。
事前に連帯保証人・保証人の理解が得られるのであれば、自己破産をしても親族間のトラブルに発展する心配はないといえるでしょう。
自己破産以外の解決方法では、「返還免除」を利用できない限り、いずれ奨学金を支払わなければなりません。任意整理では毎月の支払金額が減額されますが、手続きをするための条件として、安定収入が求められます。
そのため、収入が少ない方や無収入の方で、今後も長期的に安定収入が見込めない場合には、自己破産が最適な解決方法です。
一般的に奨学金を完済するまでには長期間を要しますが、その間に不測の事態により返済が難しくなることもあるでしょう。そのため、日本学生支援機構では救済制度も用意されていますが、他にも借金を抱えている場合には、自己破産または他の債務整理を検討することが有効です。
ベリーベスト法律事務所では、奨学金を含む借金問題に関するご相談を何度でも無料で受け付けております。債務整理専門チームの経験豊富な弁護士が状況に応じて最適な解決方法を提案いたしますので、奨学金の返還が難しいと感じた場合には、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所の決定をもって、すべての借金の返済義務を免除してもらうことができる手続きです。
裁判所での手続きとしては、大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があり、同時廃止事件になれば比較的速やかに手続きが終了します。ただし、どちらの手続きで進めるかを申立人が自由に選べるわけではありません。
本コラムでは、「同時廃止」とは何か、同時廃止事件になるケースや手続き、同時廃止事件にならなかったときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産をすれば、お金を借りた本人の借金返済義務はすべて免除されますが、連帯保証人に迷惑がかかることがあります。実際、「自己破産すると連帯保証人はどうなるのだろうか」と気になっている方は多いことでしょう。
連帯保証人がいる場合は、自己破産をする前に事情を伝えるべきですが、一方では、連帯保証人に迷惑をかけずに借金問題を解決できる方法もあります。
本コラムでは、自己破産をすると連帯保証人にどのような影響が及ぶのか、迷惑をかけない3つの解決方法について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金の返済継続が難しい状況に追い込まれたとき、生活再建方法として「自己破産」が選択肢に挙がることもあるでしょう。
自己破産とは、裁判所が免責許可を下した場合に限り、原則としてすべての借金返済義務が帳消しになる債務整理手続きのことです。自己破産が認められた時点で借金生活が終了する反面、大きなメリットを与えるに相応しい債務者かを審理するため、裁判所では慎重に手続きが進められます。
本コラムでは、自己破産を検討している方のために、弁護士に自己破産の手続きを依頼する場合の流れについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。自己破産は良くも悪くも債務者の借金問題・生活を根本から激変させるものなので、債務者自身の判断で勝手に手続きに踏み出すのではなく、必ず事前に弁護士までご相談ください。