債務整理 弁護士コラム
最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情には関知しない夫婦も珍しくありません。そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあるでしょう。
しかし、妻が借金を理由に自己破産した場合、配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出ることを不安に感じる人もいるかもしれません。
そこで今回は、妻の借金を自己破産で解決した場合に、その夫や子どもといった家族に与える影響について解説していきます。
まずは自己破産した場合に借金がどのように解決されるのかということについて基本的なところを確認しておきましょう。
自己破産は、債務者が手続開始の時点で抱えているすべての借金を対象に、債務者が所有している財産で強制的に清算をするための手続です。
したがって、「消費者金融からの借金は自己破産するが住宅ローンは自己破産しない」ということをすることはできませんし、家族や親族・友人といった非事業者からの借金も必ず対象に含めなければなりません。
自己破産した場合には、その対象となる借金は、以下のような段取りで清算されることになります。
① 財産の換価処分と債権者への配当
自己破産をした場合には、破産手続開始の時点で債務者が所有していた財産を換価した上で、その売得金を債権者への返済(配当)に充てることで清算します。
しかし、自己破産をした場合でもあらゆる財産が強制売却の対象となるわけではなく、99万円までの現金(にかわる財産)や、生活に必要な家具・家電、生業を維持するために必要な道具類などは、強制処分の対象から外されます。
なお、債務者に換価できる財産がないという場合には、裁判所は破産手続開始と同時に、手続を廃止させる決定を下すことがあります(同時廃止決定)。
② 破産免責の効果
自己破産をするケースでは、債務者の財産を処分したとしても、借金の全額を返済することはできず、必ず残額が出てしまいます(全額返済できるケースでは自己破産は認められません)。
このとき、自己破産の手続では、それ以上の返済を求めることはなく、その後に行われる免責手続で、免責許可決定を得ることによって、残債務の返済が免除されます。
自己破産で借金を解決した場合には、その債務者本人について次のような悪影響が生じてしまいます。
自己破産によって借金を解決することは、いわゆる信用事故に該当するため、債務者本人の信用情報に事故の記録(いわゆるブラック情報)が残されてしまいます。そのため、自己破産後は、新規の借金やクレジットカードの申し込みが難しくなってしまいます(審査に通らなくなってしまいます)。
しかし、このブラック情報は、一生残るというものではなく、一定期間の経過で消去されることになっています。具体的な登録期間は、信用情報機関によって異なりますが、5年~10年とされています。
上でも触れたように、自己破産をした場合には、法律などで強制処分(差し押さえ)が禁止されている財産を除いては、債権者への配当に充てるために強制売却の対象となってしまいます。
といった、「○○士」と名の付く資格や、旅行業務取扱主任者などの国家資格を用いて仕事をしている人の場合には、自己破産の開始から免責確定までの一定期間(数ヶ月から1年程度)はその資格を用いる業務を行えなくなってしまいます。
これらの資格を有するものが自己破産した場合には、資格が一時停止となることがそれぞれの資格を定めた法律によって決められているからです。
自己破産が本人に与える影響を確認したところで、次は、妻が自己破産したことによって家族にどのような影響が生じ得るのかという点について確認していきたいと思います。
結論から先に示しておけば、妻の自己破産よって、その配偶者や子どもなどの家族に、自己破産手続が直接の影響を与える場面はかなり限定的といえます。
たとえば、妻が自己破産したとしても、家族の財産まで強制売却されてしまうわけではありません。自己破産によって強制売却されてしまうのは、あくまでも自己破産した本人の財産に限られるからです(家族と共有の財産については次の(2)で別に解説します)。
次に、妻の自己破産が夫の勤務先に知らされるようなことも(妻が夫の勤務先から借金している場合を除けば)ありません。また、戸籍や住民票・マイナンバーを通じて他の人に知られることもありませんから、子どもが結婚する際などに過去の自己破産を知られてしまう心配も不要です。
さらには、将来の年金などにも自己破産は影響を与えません。自己破産をしたら年金が受け取れなくなる(減らされてしまう)、年金が差し押さえるという認識を持っている方を見受けることがありますが、このようなことは完全に誤解です(ただし、自己破産に追い込まれる人には年金の猶予などを受けている人も多く、それによって受け取れる年金が減ってしまうことはあり得ます)。
したがって、妻が自己破産した場合に、家族に生じる影響は、次で解説するケースを除いては、家計が苦しいことや、妻の財産が処分されてしまったことによる間接的な影響にとどまる場合が多いといえます。
妻の自己破産によって家族などの身近な人に迷惑をかけてしまう主なケースとしては、以下の3つのケースを挙げることができるでしょう。
① 夫や家族が連帯保証人となっている借金がある場合
夫や親などの妻の家族が妻の借金の連帯保証人となっている場合には、妻の自己破産によって悪影響が出ることを回避することができません。連帯保証人がいる借金を自己破産した場合には、債権者は連帯保証人に対して残債務の一括返済を請求するのが一般的だからです。
したがって、連帯保証人となった家族に残債務の返済能力がない場合には、妻だけでなく連帯保証人となっている家族もあわせて自己破産しなければならない可能性があります。
② 親戚などから借金をしている場合
自己破産しなければならないほどの借金を抱えてしまったケースでは、金融機関からだけでなく家族や親戚・友人などの親しい人から借金をしているケースも多いといえます。このような場合にも、お金を貸してくれた家族・親戚などに迷惑をかけてしまうことは回避できません。すでに解説したように、自己破産した場合には、あらゆる借金が手続の対象となるのが原則で、家族からの好意による借金も例外ではないからです。
なお、親戚・友人に迷惑をかけたくないという気持ちから、親戚・友人からの借金を申告せずに自己破産の申し立てをした場合や、自己破産前に親戚からの借金だけを返済してしまった場合には、免責許可をもらえない可能性があるなど、自己破産手続において不利益な取り扱いを受ける可能性があります。
③ 重要な財産が妻名義になっている場合(夫婦で共有名義のマイホームなど)
家族に迷惑をかけてしまう3つの目のケースは、配偶者である夫や親などと共有の財産がある場合です。特に、夫婦や親子で自宅などの不動産を共有している場合には、破産した人の持ち分が強制売却の対象となってしまいます。
持ち分が競売にかけられれば、不動産が競売手続で最高価格を入札した買受人(つまり見ず知らず他人)との共有になる可能性があります。そのため、その後の不動産の利用・売却について買受人との折り合いがつかないリスクや、新たな共有者から共有物の分割を求められるリスクを抱えることになってしまいます。
見ず知らずの人との共有を回避するためには、他の家族などに不動産を買い取ってもらうことによって対応するのがもっとも一般的な方法といえますが、そのためには多額の資金を工面しなければなりません。
自己破産を検討する人の多くは、手持ちの現金や預貯金がすでに心許なくなっている場合も多く、費用節約のために債務者本人での自己破産申し立てを考える人もいるかもしれません。
たしかに、自己破産の申し立てそれ自体は本人だけで行うことも認められていますが、実際には弁護士に依頼をした方がよい場合が多いといえます。その理由は以下のとおりです。
妻の自己破産は、配偶者である夫が自己破産する場合に比べて、債務者自身にめぼしい財産がない場合も多いといえます。多くの裁判所では、債務者の財産が20万円に満たない場合には、申し立てられた自己破産を同時廃止として取り扱うことになるので、手続も早く簡単に終わり費用も大幅に節約することができます。
しかし、自己破産を本人申し立てでした場合には、書類などに不備があるケースが多いだけでなく、財産や借金の調査も慎重に行う必要が生じるため、保有財産の程度を問わずに破産管財人が選任され同時廃止にしてもらえない可能性が高くなってしまいます。
本人申し立てで破産管財人が選任された場合には、50万円程度の予納金を納める必要が生じてしまい経済的な負担がかなり重くなってしまいます。
自己破産が開始された場合に、強制売却の対象となる財産の範囲は、最終的には裁判所・破産管財人の判断で決められます。一般的には、それぞれの財産の評価額をベースに売却実施の有無が決められますが、売却すべきかどうか判断に迷うケースや、本来は売却対象となる財産であっても債務者の生活維持などのために、強制売却を回避したいと思う財産があることもあり得ます。
弁護士に破産手続を依頼すれば、このような場合にも、裁判所に対して自由財産(自己破産しても手元に残せる財産)の拡張の申し立てや、特定の財産を破産手続から放棄してもらえるように破産管財人と交渉することによって、手元に残せる財産を増やせる可能性があります。
借金を解決するための手続は自己破産以外にも任意整理・個人再生という方法があります。弁護士にご依頼いただければ、それぞれのケースに応じて、最善の方法で借金を解決することが可能となります。実際に、債務者の方は「自己破産でしか解決できない」と思っている場合でも、任意整理・個人再生で解決可能ということがないわけではありません。
今回は、妻が自己破産した場合に生じ得る家族への影響などについて解説してきました。たしかに、自己破産に至る状況ではさまざまなことに不安を感じることが多く、「家族に迷惑をかけるなら」と自己破産をためらう方も多いでしょう。
しかし、自己破産した場合に生じる不都合などについての認識は誤解や思い込みに基づく場合、必ずしもすべてのケースで生じるとは限らないものも少なくありません。自己破産について不安なことやわからないことは、弁護士に相談して解決するのが一番よい方法といえます。
また、弁護士にご相談いただければ、他の債務整理で解決できる可能性なども検討することができます。借金問題は早期に対応することが重要です。借金返済が苦しいと感じた場合などにはできるだけ早くご相談いただくことをおすすめします。なお、借金に関するご相談は当事務所では何度でも無料です。また、ご依頼していただいた際にかかる費用は以下ページに記載しております。
ベリーベスト法律事務所の弁護士へ、ぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。