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会社経営者が借金を自己破産で解決するときのデメリット・注意点

2020年11月17日
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会社経営者が借金を自己破産で解決するときのデメリット・注意点

会社の経営者、特に中小企業の経営者にとって借金はかなり身近な問題といえるでしょう。

理由のひとつとして挙げられるのは、経営する会社の融資に際しては、経営者の個人保証が必要となるケースが圧倒的に多いことです。そのため、会社経営者の借金問題は、その金額の関係上、自己破産で解決する場合が少なくありません。

そこで、この記事では、会社の経営者の借金を自己破産で解決する際に生じるデメリットや自己破産する際の注意点についてまとめてみました。

1、経営者の自己破産と会社との関係

会社の経営者の自己破産の多くは、会社の倒産とセットになる場合が多いといえますが、いわゆる「雇われ社長」が個人的な事情で多額の借金を抱えた場合や、他人の借金の連帯保証人となった場合などのように、自社の経営とは無関係の借金を抱える場合もないわけではありません。

自社の経営とは無関係の個人的な借金が理由で経営者が自己破産する場合には、経営する会社との関係が途切れてしまう点に注意する必要があります。

  1. (1)株式会社の経営者が自己破産した場合

    株式会社の経営者(取締役)が自己破産した場合には、経営者の地位を退くことになる点に注意する必要があります。

    株式会社の場合には、会社の経営者(取締役・役員)であるという地位は、会社との「委任契約」が根拠となっていますが、委任契約は当事者が破産手続開始決定を受けると終了することが民法によって定められているからです(民法653条)。

    1. 民法653条
    2. 委任は、次に掲げる事由によって終了する。

    1. 一 委任者又は受任者の死亡
    2. 二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
    3. 三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。


    この規定は、当事者の意思表示とは無関係に、「法律上の事由によって契約が当然に終了する」ことを定めているものですから、会社に解任の意向があるかどうか、本人に退任の意向があるかどうかは全く影響しません。

    なお、法律は、自己破産した者が株式会社の取締役に就任することまで禁止しているわけではありません。

    したがって、株主総会などの必要な手続きを経ることができれば、自己破産(破産手続開始決定)後すぐに取締役に再度就任することも不可能ではありません。

  2. (2)持分会社の経営者が自己破産した場合

    持分会社には、

    • 合同会社
    • 合名会社
    • 合資会社


    があります。

    持分会社は、会社への出資(資本金の負担)と役員(社員)の地位とが結びついている点に株式会社との大きな違いがあります。

    そのことから、持分会社は定款によって認められる裁量の範囲が広く、経営の自由度が高い点も特徴であるといえます。

    そのため近年では、Amazon・Appleのように合同会社の形態を選択する有名企業も増えています。

    持分会社の場合も、原則としては、社員(役員)が自己破産した場合には、役員の地位を退くことが原則です(会社法607条1項5号)。

    一般的なモデル定款の文面を採用した場合には、この原則での対応になることが多いといえるでしょう。

    1. 会社法607条 
    2. 社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。

    1. 一 定款で定めた事由の発生
    2. 二 総社員の同意
    3. 三 死亡
    4. 四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
    5. 五 破産手続開始の決定
    6. 六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
    7. 七 後見開始の審判を受けたこと。
    8. 八 除名
    9. 2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。


    なお、同条2項は、破産手続決定があっても退社しない旨の定款を定めることも認めていますので、持分会社の場合には、定款の定め方次第によっては、経営者が(個人的な理由で)自己破産をしても経営者として残れるような仕組みにしておくことも可能です。

    ただ、このような定款を定める場合には、それぞれの会社の業務執行のあり方や、他の出資者との関係、取引先からの信頼確保といった観点から慎重に対応する必要があるといえます。

    事前に、会社法務に詳しい弁護士、司法書士などの専門家に相談してから対応した方がよいでしょう。

2、自己破産による資格制限が影響する場合

破産手続が開始されたときには、破産者とされた者の財産が差し押さえの対象となるだけでなく、資格などに制限が生じる(資格などの欠格・取り消し事由などに該当する)場合があります。

  1. (1)自己破産による資格制限

    この制限の対象となるものの典型例は、弁護士・司法書士などのいわゆる「士業」や、警備員・生命保険募集人・旅行業務取扱管理者といった他人の財産を管理する業務などが典型例といえますが、そのほかの業種についても営業許認可の要件に抵触する場合があります。

    法人の代表者(経営者)の自己破産が許認可要件に該当する主な業種は下記のとおりです。これらの業種に該当し経営者の自己破産後も会社の事業を継続する場合には、事前の代表者変更が必要になりますので注意しましょう。

    警備業 探偵業 通関業 酒類の製造免許、販売免許 宅地建物取引業 一般建設業
    一般廃棄物処理業 産業廃棄物処理業の許可 解体業、粉砕業 質屋営業 古物商
    風俗営業 有料職業紹介事業 一般労働者派遣事業 自動車運転代行業
    軽油販売の仮特約業者 マンション管理業者 建築事務所 不動産鑑定業 測量業
    サービス付き高齢者向け住宅事業 旅行業の登録 インターネット異性紹介事業者
    製造たばこの小売販売業


    ※他にも多くの資格・業種が該当しますので、営業に、国や地方公共団体などからの許認可・登録・指定の必要な業種の場合には、それぞれの業法を必ず確認することをおすすめします。

  2. (2)復権の時期

    破産による資格制限は、「復権」によって解除されます。復権される場合については、破産法255条に規定されていますが、ほとんどのケースでは「免責の確定」によって復権します。

    この点については、会社の経営者の自己破産の場合には、一般の個人の自己破産よりも破産手続が長期化する可能性が高いことに注意しておく必要があるかもしれません。

    経営する会社と経営者との間に不透明なお金のやり取りがある場合などには、その調査のために時間を要することも考えられるからです。

    免責の手続きは破産手続が終了しなければ開始することができませんので、その分だけ復権のタイミングも遅くなってしまいます。

3、経営者の個人資産と会社の資産の区別

破産手続では、法律上差し押さえることが可能な破産者の財産は、債権者の配当に充てるため処分の対象となります。

特に中小企業の経営者の場合には、会社との共有名義になっている財産なども差し押さえの対象となることがあり、会社の事業にも影響が出る場合があるので注意する必要があります。

不利益から逃れようとして、財産を過小(不正)に申告したり、積極的に財産を隠匿した場合には、刑事罰に問われる可能性があるので絶対にしてはいけません。

  1. (1)資産売却は「適正価格」で行う

    会社を存続させる(会社の経営には問題がない)場合に、経営者の財産の差し押さえによる事業への影響を生じさせない方法としては、経営者名義の資産を会社に売却することが考えられます。

    この場合には、「客観的にみて適正な価格」で売却することがとても大切です。

    「自分の会社だから」と不当に安い価格で売却したときには、次のような形で不利益が生じますので注意しましょう。

    • 差し押さえるべき財産が全くない(同時廃止可能な)ケースでも破産管財人の選任が必要となり、予納金が高額になる
    • 破産管財人によって否認権が行使され不当な売却が取り消される
    • 上記の手続きを行うために破産手続が長期化する
  2. (2)代表者の自己破産費用を会社が支払うことは可能か?

    自己破産に追い込まれる場合には、「手元資金が尽きてしまった」というケースも少なくありません。

    会社経営者の自己破産の場合には、法テラスによる費用の立替払い(民事法律扶助)を利用できない場合がほとんどといえますので、自己破産にかかる費用の工面に頭を悩ませることも少なくありません。

    この場合にも「手持ちの資産の売却」や「他者への貸付金の回収」などによって手続費用を工面するのが一般的な方法といえますが、売却価格や売却によって得た現金の使途に注意する必要があります。

    また、「自分が経営する会社に経営者の破産費用を支払ってもらう」ということも慎重に対処する必要があります。

    返済できるアテのない借り入れは詐欺などの問題を生じさせることになりますし、「経営者と一緒に会社も破産させる」という場合には、会社債権者の権利を害する行為にあたるとして否認権行使の対象となるケースがあるからです。

    破産費用の工面が難しいという場合には、無料相談などを上手に活用して弁護士などの助言を受けて慎重に対応しましょう。

4、自己破産以外の選択肢の可能性~早めの相談が大切

債務整理は、個人・法人いずれの場合であっても、「できるだけ早い時期」から対応することがとても重要といえます。

特に、会社経営者の債務整理は、会社の事業にも大きな影響を与えることから、これらの対応を十分に行うためには、相応の準備期間も必要となります。

また、早期に債務整理に着手できれば、自己破産以外の手続きで借金を解決できる可能性もそれだけ高くなります。

弁護士に依頼するタイミングが遅くなるほど、借金の額も増えてしまう場合が多いからです。

会社の経営それ自体に大きな問題がないときには、「自己破産するしかない」と考えるほどの多額な借金を抱えた場合でも、個人再生手続で解決できる可能性は十分に残されています。

個人再生手続を利用した場合には、自己破産で生じるような資格制限や財産の差し押さえはありません。また、住宅ローンが残っている場合でも「住宅ローン特則」を利用することで差し押さえを回避できる場合があります(事務所と兼用の場合でも住宅ローン特則を利用できる場合があります)。

5、まとめ

会社経営者の借金問題は、一般の人のケースと比べて、金額的にも内容的にも難しい事情を抱える場合が多いといえます。

また、経営者の借金問題は、会社の経営状況と密接不可分な場合も多く、「会社を潰したくない」という思いなどから対応が遅れがちになってしまう傾向にもあるといえます。

しかし、ここまで解説してきたように、借金の問題は早期対応が何よりも大切です。

会社が抱える負債処理も個人の場合と同様に、早期に対応することで選択肢を増やすことができます。

借金問題については、無料相談で対応してくれる弁護士事務所も増えていますので、少しでも借金の返済が苦しいと感じたときには、早めに相談してみるとよいでしょう。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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