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ヤミ金からの借金を返済しなくてよい法的根拠と借り逃げのリスク

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更新日:2023年05月23日 公開日:2020年10月27日

ヤミ金からの借金を返済しなくてよい法的根拠と借り逃げのリスク

ヤミ金とは絶対に関わるべきではありませんが、万が一の場合には「ヤミ金からの借金は返済しなくてもよい」という話を耳にしたことのある人もいるかもしれません。

「それは借り逃げではないのか?」「そんな都合のよい話があるのか?」と信じられない人もいるかもしれませんが、法外な利率のヤミ金には返済義務がないとされています。しかし実際に借り逃げすることは大きなリスクも伴います。

この記事では、ヤミ金からの借金を返さなくてよい法的な根拠について解説していきます。ヤミ金と関わってしまって誰にも相談できずに困っているという人は参考にしてください。

1、なぜヤミ金からの借金は返済しなくてよいのか?

金融機関からの借金には、「利息」と「元本(元金)」があります。ヤミ金からの借金にもこれと同じように利息と元本が設定されているのが通常です。

「ヤミ金の借金を返済しなくてよい」というのは、利息だけでなく「元本も返さなくてよい」ということを意味しています。
以下では、利息・元本それぞれについて「支払わなくてよい・返さなくてよい」ということの根拠について説明していきます。

  1. (1)法外な違法利息を支払う必要がない法的根拠

    ヤミ金の利息は、いわゆる「トイチ(10日で1割の利息)」や「トニ(10日で2割の利息)」など、法律に違反しているケースが少なくありません。

    利息の上限を定めた法律には、

    • 利息制限法
    • 出資法

    の2つがあり、営利目的で金銭を貸し付ける場合に設定できる上限金利は年20%と定められています。

    そのため、トイチなどのヤミ金の金利であれば「法律違反の金利」といえるでしょう。

    また、これらの上限金利に関するルールは「強行法規」と解釈されるものなので、当事者間でこれと異なる合意をしても法的な効力が認められませんし、法律上は「違法金利の支払いを要求しただけ」で出資法が定める罰則(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれの併科)に問われることになります。

    したがって、ヤミ金の設定した違法金利の支払い要求に応じる必要はありませんし、すでに支払った分については返金を求めることが可能ということになります。

  2. (2)ヤミ金業者からの借金は「元本」も返済不要(最高裁判決)

    ヤミ金からの借金は、「利息を支払う必要がない」だけでなく、「借りた元金」も返済する必要がありません。

    実際に、最高裁判所がそのような内容の判決を下しています(最判平成20年6月10日)。この判決は「ヤミ金行為は反倫理的行為なので不法原因給付(民法708条)に当たる」という判断を示したものです。

    民法708条は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と定めていますから、「ヤミ金行為のために顧客に金銭を貸し付けたヤミ金業者は、その元本の返還を請求することはできない」ということになるわけです。

    したがって、ヤミ金は顧客に貸し付けた分は丸損することになってしまいますが、そもそもヤミ金行為は犯罪ですから、自業自得ということになります。

  3. (3)ヤミ金業者はそもそも完済を望んでいない?

    意外に感じる人も多いかもしれませんが、ヤミ金被害に遭ってしまう人には「真面目な人」が少なくありません。たとえば、「支払いを滞納してはいけない」と強く感じる人ほど、「危険な取引をしてでもお金を工面しなければならない」と考えてしまいがちな傾向があるからです。

    そのようなケースでは、「いくら違法行為でも、借りた分だけは返すべきなのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際のヤミ金との取引において、「元本を完済する」ことはかなり難しいことといえます。

    なぜなら、ヤミ金業者は、「元本を完済されることは望んでいない」といえるからです。

    ヤミ金業は、「1万円を貸して10万円の利息をむさぼり取る」ことを目的とした行為です。したがって、顧客から元金を1円でも返済されることは、利息を減らすことになってしまうので望ましいことではないというわけです。

2、「元本返済不要」でもやってはいけない2つの対応

これまで解説したように、ヤミ金からの法外な利息の借金は、返済する必要がありません。

しかし、だからといって「ヤミ金の借金を借り逃げする」というのは非常に危険な行為であることに注意しておく必要があります。

簡単にいえば、「やむを得ない事情で(返すつもりで)借りてしまったヤミ金の借金は返済不要である」ということと、「最初から返すつもりもなく借り逃げできる」ということは別ということなのですが、以下の2つのポイントを通して説明したいと思います。

  1. (1)悪意のある借り逃げは犯罪になる

    法外な利息の借金は、元本も利息も返済しなくていという法的根拠があったとしても、「ヤミ金から借り逃げするつもりで借金してよい」ということにはなりません。

    そもそも「返済する意思が全くないのにお金を借りる」という行為は「詐欺」に該当し、借りた側も犯罪に問われる可能性があります。

    また、民法1条2項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と定めていますので、「悪意の借り逃げ行為」は、この信義則にも抵触すると考えることもできるでしょう。

    したがって、一般には、「最初から返すつもりのなかった債務者」は、上で解説した不法原因給付の法理で救済されない可能性も高いといえます。

  2. (2)ヤミ金業者を不要に刺激することは危険

    近年のヤミ金業者は、廃業した正規の貸金業者というケースもあるので、すべてが暴力団組織というわけではありませんが、反社会的勢力を背景とするものが少なくないのは事実です。

    その意味でも「返さなくてよいという判決があるから大丈夫」と、安易な気持ちでヤミ金と関わることは非常に危険ですので、絶対にやめましょう。ヤミ金の返済で悩んだら借金問題の実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

3、ヤミ金被害は弁護士に相談すべき理由

万が一、ヤミ金から借金してしまったという場合には、弁護士などの借金問題の経験がある専門家に相談することが最も適切な対応といえます。
その主な理由について確認しておきましょう。

  1. (1)警察は解決してくれない場合も

    ヤミ金被害に遭った場合には「警察への相談」で解決を考える人も多いと思います。たしかに、警察が動いてくれるのであれば、ヤミ金も今後の取り立てを諦める可能性はあるといえます。

    しかし、実際に警察に動いてもらうためには相談ではなく「被害届」を出す必要がありますが、被害届を出す準備は意外と大変です。債務者は、ヤミ金業者の詳細を知らないことの方が多いですし、「警察の管轄」が壁になる(最寄りの警察では被害届を受理してくれない)こともありえます。

    また、被害届を出したとしても、無店舗のヤミ金業者の場合、警察が検挙(逮捕)することも簡単ではないでしょう。

  2. (2)弁護士なら依頼人のために行動してくれる

    ヤミ金問題を弁護士に相談・依頼すべき一番の理由は、弁護士であれば「依頼人である債務者の利益のため」に行動してくれることにあります。

    たとえば、警察は、犯罪者の検挙や社会の安全を守るのが職務ですが、それが必ずしも依頼人の利益に直結するとは限りません。また、他の事件で忙しいといった警察内部の都合に左右される可能性もあるでしょう。

    弁護士は依頼人の利益を守ることが職責ですから、それぞれのケースで考えられるあらゆる選択肢の中から、依頼人の希望もふまえて最善の対応をしてくれます。
    警察の協力を得る必要がある状況でも、弁護士がいれば警察もスムーズに動いてくれる可能性が高いです。

4、まとめ

法外な利息を付して融資を行うヤミ金行為は、非常に悪質な違法行為です。「お金を借りている」ということで相手に対して引け目を感じることもあるかもしれませんが、不条理な要求に屈する必要はありません。

とはいえ、「借り逃げできる」と安易に理解することは、逆に自らを危険な状況に追い込む原因にもなりかねないので注意する必要があります。

万が一、ヤミ金と関わってしまった場合には、できるだけ早く借金問題の実績がある弁護士に相談しましょう。ベリーベスト法律事務所では、借金問題や債務整理に関するご相談を受け付けております。メールかお電話で、まずはお気軽にご連絡ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国73拠点、約360名の弁護士が在籍
※2024年2月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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