債務整理 弁護士コラム
多額の借金を抱えてしまったときは、自己破産をすることで経済的に再スタートを切ることができます。
しかし、自己破産をしたことはできるだけ他人に知られたくないと誰しも思うことでしょう。
特に、結婚したい人がいる場合、その相手には知られたくないと考える方が多いと思います。
では、自己破産したことを隠したまま結婚することはできるのでしょうか。また、自己破産が結婚後の生活に影響を及ぼすことはあるのでしょうか。
本記事では、自己破産が結婚に際しておよぼす影響などについて解説していきます。
結婚相手に内緒の借金を抱えてお悩み中の方のご参考になれば幸いです。
結論から言えば、自己破産をしてもその事実がすぐに結婚相手に知られる可能性は低いといえます。
したがって、自己破産したことを隠したまま結婚することは十分に可能です。
自己破産をしても、そのことが家族や結婚相手に裁判所などから通知されることはなく、一般の方の目につくような形で公表されることもありません。
ただ、自己破産の手続き中は、裁判所からの連絡が自宅にくることがあります。したがって、結婚後に自己破産をした場合や結婚前でもすでに相手と同居している場合は、電話や郵便物によって知られてしまう可能性があります。
しかし、弁護士に依頼して自己破産した場合、弁護士の事務所が全ての連絡窓口になるため、自宅に連絡がくることはありません。
したがって、結婚相手に対して自分から言わない限り、自己破産が知られることはほとんどありません。
自己破産をしたことが一切公表されないのかというと、そうではなく、官報に掲載されます。
官報というのは、政府が発行する新聞のようなものですが、一般の方でこれを毎日見るのは金融機関に勤務している人などごく一部の人に限られます。
したがって、結婚相手やその家族が金融機関などで官報にかかわる業務に就いている場合は別ですが、そうでない限りは官報を見られることはほとんどありません。
また、市区町村の役所で作成されている「破産者名簿」にも破産者の氏名や住所が記載されます。
しかし、破産者名簿に記載されるのは自己破産をして免責が許可されなかった人だけです。免責を受けるともはや「破産者」ではないので、破産者名簿に記載されることはありません。
また、破産者名簿は役所が「身分証明書(破産者でないことや成年被後見人でないこと等の証明書)」を発行するために使用するものであり、一般の方が閲覧できるものではありません。
結婚相手に自己破産が知られる原因として、自分から言うことの他に考えられるのは、信用調査会社に調べられることです。
まれにですが、結婚前に信用調査会社に身辺調査を依頼する人がいます。
結婚相手に信用調査会社を利用された場合は、知られる可能性が高いといえます。
自己破産したことを隠したまま結婚することは十分に可能ですが、結婚後の生活に影響が及ぶのであれば、やがて破産の事実が発覚してしまう可能性があります。
そこで、自己破産した場合、結婚生活にどのような影響が及ぶのかを見ていきましょう。
自己破産をするとブラックリストに掲載されるため、ローンなどの利用が難しくなります。
ブラックリストとは、金融取引に関する個人の利用歴を保有する信用情報機関に事故情報(延滞や債務整理をした事実など)が登録されているもののことをいいます。
金融機関は、ローンなどの申し込みを受けると信用情報を確認するので、ブラックリストに掲載されている人はローンの審査が通りにくくなります。
結婚生活においては、
などローンの利用が必要となる場面が意外に多くあります。
その際にローンを組めないと、結婚相手から「何か事情があるのでは?」と疑問を持たれるおそれがあります。
ブラックリストに掲載されると、クレジットカードの作成も難しくなります。
最近は、ネットショッピングや自動料金収受システム(ETC)、キャッシュレス決済などの普及によって、日常生活でクレジットカードを使う必要性が高まっています。
「クレジットカードは持たない主義だから作らない」と言い通すこともできますが、結婚相手によっては疑問を持たれる可能性もあります。
ブラックリストに掲載されると、キャッシングも難しくなります。
結婚すると自分の生活だけではなく、相手や子どもの生活もあるため、急な出費を要する機会が独身時代よりも多くなります。
十分な収入があればいいですが、時にはキャッシングしなければならないこともあるかもしれません。
以上のように、自己破産でブラックリストに掲載されることによって結婚生活に影響が及ぶ可能性があります。
ただ、ブラックリストに登録された事故情報はやがて消去されるので、永久にローンやクレジットカード、キャッシングの利用ができないわけではありません。
ブラック情報が消去される目安ですが、自己破産した場合は約10年と言われています。
次に、自分が自己破産をすることによって家族に直接の影響が及ぶことはあるのかという問題についてご説明します。
自己破産をするかどうかは個人の問題なので、基本的に家族に影響が及ぶことはありません。
本人がブラックリストに掲載されても、家族は問題なくローンやクレジットカード、キャッシングなどを利用することができます。
また、自己破産をすると、ある程度の財産を処分する必要がありますが、処分しなければならないのは本人の財産だけです。
家族の財産は「他人の所有物」なので、結婚後に自己破産をしたとしても、家族名義の財産を処分する必要はありません。
ブラックリストに掲載されるとローンなどの利用が難しくなることはご説明しましたが、他人の債務の保証人になることも難しくなります。
この点で問題になるのが、子どもの奨学金の連帯保証人になれないのではということです。
ただ、多くの場合は連帯保証人について収入は審査されますが、信用情報までは審査の対象にならないようです。
そのため、債務整理中は連帯保証人にはなれませんが、手続き終了後であれば、自己破産歴があっても親が連帯保証人としてサインすることで奨学金の審査を通過できるのが一般的です。
とはいえ、基本的にはブラック情報が消去されるまで保証人になることは難しいので、ご注意ください。
子どもが就職や結婚する際に親の自己破産歴が影響しないかと心配する方も多いですが、基本的に影響はありません。
ただし、就職先や結婚相手が親の自己破産歴まで調査する可能性もゼロではありません。しかし、そのようなケースは極めてまれです。
また、家族が借り入れやクレジットカードの作成をする際、申込先の業者のデータに破産歴が残っていれば審査が少し厳しくなる可能性はあります。
とはいえ、条件が少し不利になる程度であり、家族が借り入れやクレジットカードの作成をできなくなることはありません。
結婚したい相手がいるけれど多額の借金を抱えているという方の中には、自己破産の申し立てをちゅうちょして、先に結婚しようと考える方も少なくありません。
しかし、自己破産をするのであれば結婚する前に手続きを済ませておくことをおすすめします。
その理由を詳しくご説明します。
自己破産をすると、基本的には財産を処分しなければなりません。
破産手続きでも、一定額以内の財産は「自由財産」として残すことができますが、それ以上の財産(たとえば、持ち家や高額の車)などは手放す必要があります。
結婚後に自己破産をして財産を処分すると結婚相手にバレてしまいますし、結婚生活への影響も大きくなります。
手続き上の問題として、自己破産を申し立てる際に家計の状況を裁判所に申告しなければならないという問題もあります。
家計の収支状況を報告するには、直近2~3か月分の家計表を作成する必要があります。
家計表には自分の収入や支出だけではなく、家族全体の収支を記載しなければなりません。
などを細かく記載する必要があります。
また、自分以外にも働いている家族がいる場合は、その人の給与明細書などを提出する必要もあります。
これらの手続きを進めるためには家族の協力が必要な場合が多いため、自己破産することが知られる可能性が高くなります。
自己破産した後にブラックリストから解放される時期は、前述のとおり、約10年後と言われています。
結婚後の住宅購入や子どもの教育費などに支障をきたさないためには、少しでも早く解放された方がよいでしょう。
結婚するよりも先に自己破産手続きを終わらせておけば、その分だけ早くブラックリストから解放されることになります。
ここまで、自己破産したことを隠して結婚したい方のためにさまざまな注意点をご説明してきましたが、できれば自己破産した事実はきちんと伝えて結婚した方がいいでしょう。
その理由をご説明します。
自己破産をするとローンを組めなくなり、その状態は約10年間続きます。
その事実を結婚相手にきちんと伝えることで、マイホームをいつ購入するか、車をいつ買い換えるかなどの生活設計を立てやすくなります。
家財道具や家電品を選び、子どもを私立の学校に通わせるかどうかを決める際にも、いつブラックリストから解放されるのか結婚相手が知っておくことは大切です。
普通の人にとって、自己破産したことがあるかどうかは人生において重要な事実でしょう。
それだけに結婚相手に秘密にしておきたい気持ちも十分に分かります。
しかし、結婚相手にとっては、それほど重要なことを隠されていたことを結婚後に知った場合には多大なショックを受けてしまいます。
場合によっては、離婚問題にまで発展する可能性もあります。重要なことほど、結婚前に話して理解を得ておくべきでしょう。
結婚するとふたりで一緒に生活を営まなければならないので、愛情だけではなくお互いの信頼関係を築くことも大切です。
結婚後に自己破産の事実が発覚してしまうと、通常は信頼関係が大きく揺らいでしまうでしょう。自己破産してしまった事実は、消しようがありません。事実は事実として結婚前に伝えて、その上で生活設計をふたりで話し合うことで、夫婦間の信頼関係を築くことも可能になります。
自己破産をすれば多額の借金もいったんゼロになりますが、人生はそれで終わるわけではありません。その後、経済的な生活を立て直していく必要があります。
しかし、ローンや新たな借り入れを利用できない状態で生活を立て直すことは、時には厳しいこともあるでしょう。
そんなとき、結婚相手の理解があれば節約や増収などに協力してもらいやすくなります。夫婦間の信頼関係がしっかりしていれば、精神的にもサポートしてもらえることでしょう。
借金を解決する方法は、何も自己破産だけではありません。
多くの方は「自己破産」を特別なこととして捉えてしまいますが、他の債務整理方法をとれば、結婚相手から聞かされたとしても精神的ダメージはそこまで大きくはないものです。
したがって、結婚相手に自己破産のことを伝えにくい方は、他の債務整理方法を検討してみるのもいいでしょう。
任意整理であれば、高金利の借金だけを整理して車のローンはそのまま残すということもできます。個人再生であれば、持ち家を手放さずに借金を大幅に減額することもできます。
どの債務整理方法が最適な方法かについては、弁護士に相談してアドバイスを受けるといいでしょう。
債務整理することをどうしても結婚相手に話せないという方もいらっしゃることでしょう。
そんな場合でも、自己破産以外の債務整理方法をとれば、結婚生活に及ぶ影響をなるべく少なくすることができます。
債務整理で借金を解決することは、何も悪いことではありません。まずはお気軽に弁護士にご相談の上、最善の方法を選択しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
自己破産は、裁判所に申し立てることにより借金の返済義務をすべて免除してもらうことができる債務整理の方法です。一定の条件のもとに裁判所が免責を許可することにより、債務者が経済生活を再生する機会を確保します。
ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
本コラムでは、自己破産は何回できるのか、また複数回できるとして、2回目以降の自己破産で気を付けるべきことについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産すると、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。もちろん、車も評価額によっては処分の対象となります。
とはいえ、仕事で車の使用が必要不可欠という方や、お住まいの地域や生活状況によっては日常生活に車が欠かせないという方も少なくないことでしょう。
そこで、本コラムでは、自己破産をすると車はどうなるのかを解説し、車が処分対象となった場合でも自己破産後に車を使用できる方法もご紹介します。
借金を作った原因によっては自己破産が認められないことがあるって聞いたけど本当?
カードローンでお金を借りて、まだ1回しか返済してない。この状況でも自己破産は認められる?
実際に自己破産の手続きを進めていこうと考えている方の中には、上のような不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、令和2年の司法統計を確認すると、自己破産を申し立て結論が出た個人(統計上は自然人と表記)72329人のうち、90人は棄却又は却下となっています。
(出典:令和2年司法統計 第108表 破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所)
自己破産の手続きを進めていくうえで、もっとも大きな障害となるのが「免責不許可事由」の問題です。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケースのことで、ギャンブルや浪費など借金を作った原因によっては借金の免責が認められないことがあるのです。
一方で、免責不許可事由に該当してしまうケースであっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあることも理解しておきましょう。
今回は、以下のような項目について具体的に解説いたします。
・免責不許可事由について
・免責不許可事由になるケース
・免責不許可事由でも免責になる裁量免責について
・自己破産をしても免責されない(非免責債権)借金について
・自己破産できない場合に借金から解放される方法
自己破産についてのルールを正しく理解し、適切に手続きを進めていけば借金の苦痛から脱することができます。この記事があなたの借金解決に役立てば幸いです。