債務整理 弁護士コラム
社会保険とは怪我や病気をした際に保険給付が行われる制度のことです。
生活が苦しいことが原因で、国民年金や健康保険といった社会保険料を滞納してしまうケースは珍しくありません。
また、これらのケースではあわせて市民税や県民税などの税金が未納となっていることもよくあることです。
さらには、これらの公租公課(国や地方自治体に納める金銭的負担の総称)の支払いのために、カードローンなどを利用したことで、借金と社会保険のどちらも支払えなくなってしまったという人もいるでしょう。
本コラムでは、社会保険を滞納してしまった場合の流れや、社会保険料の滞納分と債務整理との関係についてご紹介します。
まずは、社会保険料が未納となってしまったときの手続きの流れを確認しておきましょう。
社会保険料が期限までに納められないときには、徴収機関(自治体など)から督促状が送付されてきます。
督促状の送付時期は、期限の1週間後が一般的です。
また、督促状の送付時期にあわせて、徴収機関から電話連絡が来ることもあります。
送付されてきた督促状には、納付書が同封されているので、それにしたがって保険料を納付すれば、原則として手続きはそれで終了します。
督促状で指定された指定期日までに、未納になっている保険料を納付しないときには、「延滞金」が発生します。
送付された督促状に示されている「指定期日」までに未納金を納付した場合には、遅延金は発生しませんが、指定期日を過ぎたときには、「当初の納期限の翌日から未納解消の前日」までの期間が遅延金の積算基準となるので注意しましょう(指定期日の翌日から遅延金が発生するわけではありません)。
遅延金は、民間の金融機関からの借金における「遅延損害金(延滞利息)」に相当するものです。
公租公課の滞納があるときの徴収機関による強制回収のことを「滞納処分」とよびます。
社会保険・税金といった公租公課の徴収機関には、未納金を滞納処分できる法律上の権限があります(正確には、強制回収しなければならない義務があります)。
そこで、公租公課の納付状(督促状)で指定され指定期日を過ぎても保険料などの未納が解消されないときには、徴収機関は滞納処分(滞納分を強制的に回収すること)を実施するために必要な財産調査を実施します。
徴収機関には、滞納者の了承なく銀行口座などの調査を行えるだけの法律上の権限が認められています。
現在では、マイナンバーと紐付けられている銀行口座も増えているので、調査も迅速・正確に行えるようになりました。
滞納処分が実施される前には、滞納者に対して「差押え予告通知」が送付されます。
この差押え予告通知は、「指定する期日までに未納が解消されなければ滞納処分を実施する」という最終予告に該当します。
差押え予告通知で指定された期日までに未納が解消されないときには、徴収期間は都合のよいタイミングで滞納者の差押えを実施します。
公租公課の徴収機関には、滞納者の財産を直接差し押さえられる権限が付与されているので、民間金融機関による差押えの場合のように、差押え前に債務名義を得る(訴訟や支払督促を経由する)必要はありません。
したがって、民間の金融機関の差押えと同様に考えていると、「ある日突然財産が差し押さえられた」ということになりかねませんから注意しましょう。
なお、差押え対象となる財産がない(差押え前に処分されてしまった場合)ときには、滞納処分は執行停止となりますが、それで「永遠に差押えを回避できる」というわけではありません。
執行停止になっても徴収機関の回収権限は消滅しないからです。
執行停止となった場合には、再度の滞納処分実施にむけて、滞納者の財産を調査する段階に戻ることが一般的です。
滞納の状況が悪質なケースでは、2回目以降の滞納処分は、「給料日を狙って」密航的(事前予告なく)に実施されることもあります。
民間の金融機関からなどからの借金(の返済義務)は、自己破産・個人再生といった裁判所の債務整理によって大幅に減免してもらうことができます。
しかし、社会保険料の滞納分は、債務整理をしてもその納付義務が減免されることはありません。
自己破産をした人に社会保険料の滞納分があったときには、「非免責債権」となります(破産法253条1項)。
非免責債権とは、その呼び名のとおり「免責の対象とはならない支払い」のことをいいます。
したがって、自己破産で免責を得たことで、消費者金融などの借金が帳消しとなった場合であっても社会保険の滞納分は支払わなければなりません。
また、自己破産の手続きの最中に徴収機関が滞納処分(差押え)をすることも可能です。
ところで、公租公課の滞納が生じるときには、複数の公租公課(たとえば、健康保険と国民年金、年金と住民税といった具合に)に未納が生じることも珍しくありません。
このような場合には、複数の滞納処分が重複して実施されることがあり得ますが、重複差押えが行われたときには、国税(所得税)→地方税(住民税)→社会保険(年金・健康保険など)の順で回収にあてられることになります。
個人再生をしたときの滞納保険料は、「一般優先債権」という取り扱いになります(民事再生法122条1項)。
一般優先債権とは、再生計画に優先して支払いをしなければならない支払いのことをいいます。
したがって、滞納保険料は、個人再生(再生計画)が認可された場合でも、返済を先延ばし、分割払いにすることはできません。
社会保険を滞納していることによって滞納処分を実施される可能性のあることは、債務整理失敗の原因となることがあります。
たとえば、個人再生では、「公租公課に多額の滞納がある」ことが「再生計画不認可」の理由となることが少なくありません。
再生計画の履行中に、滞納処分が実施され給料が差し押さえられれば、再生計画の履行(3年間の分割払い)が不可能になる可能性が高いといえるからです。
実務的にも、公租公課に多額の滞納があるときには、それを解消して(解消の目処を立てて)から個人再生を申し立てることが一般的です。
同様のことは、任意整理の場合にも当てはまります。
任意整理も和解後(将来)の収入から借金を分割返済していくことには変わりがないからです。
滞納してしまった社会保険料は、徴収機関との話し合いによって「分納」を認めてもらうことができます。
保険料の滞納状況がよほど悪質な場合(財産隠しなどが疑われているケースなど)でない限り、ほとんどの徴収機関が分納の話し合い(分割協議)に応じてくれるでしょう。
なお、滞納保険料の分納は、3~6か月程度の期間となるのが一般的です。
カードローンを任意整理する場合のように、何年もかけて分割で支払うということは難しいことに注意しておく必要があります(基本的には1年を超える分納は認めてもらえません)。
社会保険の滞納に加え、カードローンなどの返済も抱えているケースでは、弁護士に債務整理の依頼をすることで、社会保険の滞納を解消しやすくなります。
なぜなら、弁護士に債務整理を依頼すると、民間の金融機関の借金の返済は一時的にストップさせることができるからです。
また、債務整理の手続き(自己破産・個人再生)は、弁護士に依頼してすぐに手続きを始めるというものでもありません。
申し立てをする前に、借金などの状況を正しく把握し、必要書類を整えるために一定の期間が必要となるからです。
したがって、受任通知送付(債務整理の依頼)から手続き申し立てまでの間に、徴収機関と分割協議を行うことで、滞納処分を回避できる環境を整えることができます。
たとえば個人再生の場合であっても、徴収機関と分割協議が整っていることを証明できる書類を提出して、実際に滞納額を減らしていることを明らかにすれば、社会保険料の滞納があることを理由にした再生計画の不認可を避けられる可能性も高くなります。
社会保険や税金などの公租公課には、生活が苦しい人のための減免・猶予の制度も用意されています。
たとえば、国民年金保険料は、前年の所得額に応じて、全額免除・3/4免除・半額免除・1/4免除の軽減制度が用意されています。
また、過去の保険料についても、25か月前までさかのぼって免除手続きができます。
さらに、住民税も納期限前であれば、減免の手続きをすることができます。
公租公課の支払いが苦しいと感じたときには、それぞれの徴収機関に早めに相談するとよいでしょう。
借金返済が原因で社会保険の支払いが苦しいというときには、弁護士に債務整理を相談すれば、上でも書いたように借金返済をストップさせられるので、社会保険料の滞納それ自体を回避できる可能性も高くなります。
国民年金や健康保険といった社会保険料の支払いができないときには、家計がかなり深刻な状況に陥っている場合が少なくありません。
社会保険料の支払いは国民の義務なので、完全に免除されることはできませんが、適切な対応をとれば、保険料の納付額を減額、滞納額を分納で解決可能です。
他方で、社会保険料の支払いのために、カードローンなどから借金をしてしまえば、状況はさらに苦しくなってしまいます。
民間の金融機関からの借金には負担の重い金利があるからです。
万が一、社会保険料の支払いが原因で借金をしてしまったというときには、できるだけ早いうちに、弁護士に債務整理の相談をしておくとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
「今回だけ…」とおそるおそる少額で始めたはずの課金も、いつも間にか抵抗がない状態に陥っている方も多いのではないでしょうか。
スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
本コラムでは、ソシャゲなどのスマホゲームで課金をやめられない心理、課金に制限をかける方法、課金をやめる方法、課金が原因で借金に悩んでいるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介します。
廃課金とよばれるような過度な課金は、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。できるだけ早めに課金をコントロールしたり、借金問題を解決したりして、通常の生活に戻していきましょう。
「必死に働いても生活が苦しい」「働きたいのに働けない」「借金返済でどうすればよいのか分からない」などの悩みを抱える人は少なくありません。
このような生活苦には、働けない・給料が低い・借金を抱えていることが大きな原因となっているケースも多くあります。
本コラムでは、生活が苦しい状況から抜け出すための対処方法や相談先、支援制度について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。