債務整理 弁護士コラム
借金問題を抱えた人は、手持ちのお金にあまり余裕がないことが多いと思います。
そのため、弁護士費用を節約する目的で、本人申立てによる自己破産を考える人もいるのではないでしょうか。
たしかに、本人申立てで申し立てた自己破産を同時廃止にしてもらえれば、数万円程度の費用で借金を完全に解決することができます。
同時廃止については後ほど詳しく解説しますが、結果的には自己破産を行っても財産を処分されることなく、借金から解放されることになります。
ウェブなどでは、「個人の自己破産のほとんどは同時廃止」といった情報を目にすることもあるので、「私も安く自己破産したい」と考えてしまう人もいるでしょう。
そこで、今回は弁護士に依頼せずに自己破産をした場合のデメリット・リスクや、弁護士費用の工面(支払い)方法などについて解説していきます。
「自己破産で借金を解決したいけど、費用が支払えない」と諦めそうになっている人はぜひ参考にしてみてください。
自己破産の手続きは、書類の作成や裁判所への対応をきちんとこなせるのであれば、弁護士に依頼せずに申立人(債務者)本人だけで手続きすることも不可能ではありません。
場合によっては、債務整理(借金返済の負担を小さくするための手続き)の3つの種類である、任意整理・個人再生・自己破産の中でもっとも本人で行いやすい手続きといえることもあります。
免責(返済するという責任の免除)を得られることを前提にすれば、自己破産では「手続き後の返済」を考慮に入れる必要がないからです。
しかし、一般的には、自己破産も他の債務整理手続きと同様に、弁護士に依頼して手続きを行うべきといえます。
以下では、その理由などについて解説していきます。
一般的な自己破産の場合とは違い、次の条件を(完全に)満たすケースであれば、弁護士に依頼せず、債務者自身が自己破産の手続きを進めても問題となる可能性は小さいといえます。
以上の条件をクリアしている場合には、自己破産の申し立てに必要な書類の作成に不備が起きる可能性も小さく、また、自己破産の申し立て後の手続きもさほど複雑にならない場合が多いといえます。
しかし、実際の自己破産のケースでこれらの条件が完全にそろうことはかなりレアケースといえます。負債額・所有財産額の計算が簡単というケースや、免責不許可に完全に該当しないと断言できるケースというのは、一般の人が思っているよりもはるかに少ないからです。
自分のケースは事案が単純だから弁護士に依頼しなくても手続きできると感じるような場合でも、無料相談などを上手に活用して、何かしらの形で弁護士から一定の助言はもらっておいた方がよいでしょう。
2、で掲げた条件を完全に満たすことのできないケースでは、弁護士に依頼をして自己破産の手続きを行うべきです。
自己破産の手続きは、「失敗」することができないものですから、「ちょっと自信がある」、「費用がもったいない」という程度の事情では、自分自身で手続きを行うべきではありません。
弁護士に依頼せずに、本人申立てで自己破産の手続きを行った場合には、次のようなリスクやデメリットが生じるからです。
自己破産は、債務者が「支払不能」の状態にある場合でなければ手続きを開始することができません。
「支払不能」というのは、「現在抱えている債務を完済することが不可能といえる客観的な状態」のことを指しますが、「借金が○○万円あれば自己破産できる」といった具合に金額などで具体的に示すことのできない抽象的な基準です。
したがって、自己破産についての専門知識のない一般の人が「私の借金はもう返済不可能」と思っていても、裁判官の評価がそれとは異なる可能性があります。
実際の本人申立てでも「1・2年程度の分割で返済可能な借金にすぎない自己破産申立て」は少なくないようです。
自己破産を債務者自身が申し立てるときの最大のリスクは、「財産の有無にかかわらず管財事件の取り扱い」になるリスクです。
①同時廃止にしてもらうための要件
まずは、同時廃止にしてもらうための条件について、確認しておきましょう。
自己破産の同時廃止というのは、開始された破産手続きについて通常通りに手続き(差押え・換価・配当の手続き)を薦めることが誰の利益にもならない場合に選択される終了形態です。
財産の差押え・換価・配当を行うためには、一定の手続き負担(費用)が生じるため、債務者(破産者)がそれすら負担できない状況のときに、自己破産の手続きを行えば赤字になってしまうということです。
そこで、実務の上では、債務者(破産者)が「破産手続きにかかる費用(=破産管財人の報酬)すら負担できない財産状況」にあるときには、開始された破産手続きは、開始と同時に廃止(途中終了)させるということになっています。
したがって、同時廃止になるかどうかの基準は、債務者が破産手続き開始決定のときに所有している(差押え可能な)財産の総額が破産手続き費用(=予納金=破産管財人の報酬額)より多いか少ないかということになります。
破産管財人の報酬額は、それぞれの裁判所が自由に定められることになっていますが、本人申立ての際には50万円、弁護士申立ての場合には20万円が目安の金額となります。
②免責不許可事由と管財事件
ただし、債務者が免責不許可事由に該当する(可能性がある)場合には、必要な調査を実施するために、破産者に財産があるかないかを問わず管財事件となることに注意する必要があります。
裁判所が、裁量免責を与えるときには、基本的に破産管財人を選任し必要な調査を行わせることになっているからです。
③本人申立てでは、免責不許可事由を疑われるリスクが高くなる
ギャンブル・浪費が原因で多額の借金を抱えてしまったことが、免責不許可に該当することは比較的よく知られていると思いますが、実際の免責不許可事由はそれ以外にも多くのケースが法定化されています。
たとえば、クレジットカードの現金化や、破産を引き延ばすための財産の投げ売り、返済できない状況での追加の借金といった行為も免責不許可事由とされることがあります。
その意味では、実際の自己破産は、何かしらの免責不許可事由(の疑い)を抱えていることの方が多いといえますから、本人申立てで自己破産をする場合には、50万円(以上)の予納金が必要となることを前提にしておいた方がよいといえます(予納金は、一部の裁判所を除いては一括払いが原則です)。
他方、弁護士がついているケースであれば、申し立て前の調査結果(免責不許可中に該当しないという上申書など)を裁判所に提出することによって、確実に同時廃止にしてもらえるよう働きかけてもらうことができます。
実際にも、弁護士の対応のおかげで、(裁量的な)同時廃止決定を得られたというケースは少なくありません。
自己破産を本人申立てで行った場合には、裁判所や破産管財人への対応のすべてを債務者本人が行わなければなりません。
そのため、平日の昼間などに破産管財人の事務所などに出向かなければならない、連絡を入れなければならないというケースも当然増えてきますので、負担は小さくありません。
破産管財人(裁判所)との約束を無断ですっぽかすようなことがあると、その後の免責判断に大きな不利となることがあります。
近年の裁判所は、免責判断において「破産手続きに誠実に協力したか」ということを重視する傾向があるからです。
自己破産を本人申立てする理由は、「費用を節約したい」という点につきるでしょう。
確かに多くの自己破産を検討している人にとって、弁護士費用の支払いは大きな負担といえます。それでも費用が無いからと言って債務整理をあきらめる必要はありません。
債務整理を引き受けている事務所のほとんどは、報酬の分割払いにも応じているからです。
「借金の返済もあるのに、分割払いなんて無理だ」と思う人もいるかもしれません。
しかし、弁護士費用を分割払いすることは可能です。弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士は債権者に受任通知を送り、それを債権者が受け取ったあとは、毎月の借金返済は一時的に停止します。その後は、これまで支払ってきた借金返済のお金を、そのまま弁護士費用として積み立てられるのです。債権者から苦情がくることもないため、安心です。
自己破産をするときには、弁護士に依頼すべきということは、ほとんどの人がきちんと理解できていると思います。
専門的なことは、専門家に任せた方が安心というのは、裁判手続きに限った話ではないからです。
しかし、実際の場面では、「手元にお金がない」ことが原因で、「費用を節約するために自分でなんとかできないか」、「お金がないから自己破産もできない」と考えてしまいがちです。
自己破産をはじめとした債務整理は、お金に困っている人のための救済手続きですから、費用の負担についてもケアしてくれる仕組みがきちんと用意されています。
費用工面の方法についても弁護士に相談することは可能ですから、無料相談を上手に活用するとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
本コラムでは、夫婦がそろって借金を抱えてしまった場合の解決方法と重要なポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
本コラムでは、妻の借金を自己破産で解決した場合に、家族に及ぶ影響について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
本コラムでは、「自己破産したくない」と考えたときに、自己破産以外で借金を解決する3つの方法と特徴などについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。