債務整理 弁護士コラム
自己破産すると利用していたクレジットカードは強制解約になります。
そのため、「自己破産するとクレジットカードが一生作れなくなるのでは」と思い込んでいて、自己破産に踏み切れない人は少なくないようです。
しかし、自己破産をしたからといってクレジットカードが一生作れない、というのは間違いです。
このように自己破産するとどうなるか?ということについては、間違えた情報に基づく思い込みというケースもよく見受けられます。
そこで、この記事では、
●自己破産するとクレジットカードが使えなくなるのか?
●自己破産したときには、いつからカードを作れる(使えるのか)?
といったことについて解説していきます。
「自己破産するとカードがいつから使えなくなるのだろうか?」「カードを失わずに借金を何とか解決できないか?」と思っている人は、是非参考にしてみてください。
自己破産したときのクレジットカードの取扱いの基本について確認しておきましょう。
自己破産は、「債務者が抱えているすべての負債」を一括清算するための裁判所の手続きです。清算の対象となる借金は、「破産手続きが開始された時点(破産手続き開始決定のとき)」が基準です。
カードの利用残額は、ショッピング枠・キャッシング枠の区別、1回払い・分割払い・リボ払いの区別なく、すべて負債となります。
また、残っている金額が少額であろうが、多額であろうかも関係ありません。たった数千円の利用残額しか残っていないクレジットカードであっても、自己破産手続きの対象となるのが原則的な考え方です。
家族カードは、親カードの名義人の信用力に応じて発行されているクレジットカードです。
したがって、Aが親カードの名義人で、その家族カードを使っているBが自己破産したという場合であれば、Bが持っている家族カードは、そのまま利用することができます。Bの自己破産は、Aの信用力の評価に影響しないからです。
ただし、この場合でも家族カードの利用限度額の引き下げや、家族カードの更新拒否というデメリットが生じる可能性があることは否定できません。
他方、親カードの名義人であるAが自己破産した場合には、Aの信用力に基づいて発行されているBがもっている家族カードは使えなくなります。
「利用残額が0円」のクレジットカードであれば、自己破産の手続きの対象とはなりません。
自己破産の対象となるのは、「実際に抱えている負債」であって、「負債を作るかもしれない契約」ではないからです。
また、利用額が0円のカードであれば、弁護士からの受任通知が送られる対象ともなりません。したがって、全く使っていないクレジットカードは、自己破産をしても解約されずに手元に残せる可能性があります。
しかし、借金が返せなくなり、家計を建て直すために自己破産をするという状況を考えれば、「利用残額が0円のクレジットカード」でも、「自主的に解約する」と考えるべきといえます。
カードが手元に残っていれば、再び借金生活に戻ってしまう可能性があるからです。
実際にも、弁護士などに債務整理を依頼したときには、「持っているカードは利用残額の有無にかかわらずすべて解約(処分)した方がよい」とアドバイスされる場合が少なくないでしょう。
自己破産の対象となるクレジットカードが使えなくなるタイミングについて確認しておきましょう。
自己破産によるクレジットカードが強制解約となる時期は、自己破産を弁護士などに依頼して行うか、自分で申し立てをするかで異なります。
弁護士などに債務整理を依頼した場合には、代理人となった弁護士などからカード会社に「受任通知」が届いた時点で、強制解約となると考えられます。
受任通知とは、「債務整理の依頼を受けたこと」を債権者に知らせるために弁護士などが送付する書類のことです。
受任通知は、受任後すぐに送付されるので、債務整理(自己破産)を依頼すると、対象となるクレジットカードはすぐに強制解約となると考えられます。
本人申請で自己破産を申し立てる場合は、当然、「受任通知の送付」はありません。したがって、裁判所から届く「自己破産手続き開始の通知」が債権者に送達された時点で、カードは強制解約となります。
自己破産を考えているときには、「カードの強制解約直前までカードを使って良い」というわけではありません。
自己破産をするということは、「残額は返せない」ということはすでにわかっているからです。
「返済するつもりがない(返済できないことがわかっている)」にもかかわらず、負債を抱えることは「詐欺罪」に問われる可能性があります。
特に、自己破産では、「債権者を騙して負債を抱えた場合」には、免責不許可となる可能性があるので慎重に考えなければなりません。
したがって、弁護士に自己破産(債務整理)を依頼するときには、その直前の時期以降は、クレジットカードの利用を現に慎むべきといえるでしょう。
本人申請で自己破産するという場合でも、自己破産の申立ての直前数ヶ月前からは、カードの利用は慎むべきといえます。
最近は、スマホ・携帯料金や公共料金の支払いもカードで行っている人が増えています。これらの支払いのためにカードを使うことも慎むべきですので、弁護士の指示にしたがって、適切な時期までに支払い方法を変更する必要があります。
自己破産した場合でも、自己破産(債務整理)対象とならなければ、クレジットカードの強制解約を免れることは可能です。
しかし、特定のカードを残したい(自己破産の対象から外したい)と思っていても、次のような対応は絶対にしてはいけません。
カードがあることを弁護士に黙っておくことは、厳禁です。
自己破産の手続きを正しく進める上で、依頼人の借金の状況を正確に把握することは最も重要なことだからです。
また、利用残額のあるカードを申告せずに自己破産を申し立てた場合には、自己破産手続きの中で不利益が生じる場合もあります。最悪は、免責不許可となります。
さらに、意図的に借金の状況を正しく伝えなかったということで、弁護士に辞任されてしまうこともあるかもしれません。重要なことをきちんと告げてくれない依頼人とは信頼関係が気づけないと判断されてしまう可能性があるからです。
借金状況についてウソの申告をしたことが原因で弁護士に辞任されてしまったときには、その落ち度はすべて依頼人にあります。したがって、それまでに支払った弁護士費用(着手金など)も返金してもらうことはできません。
利用残額が0円のカードは自己破産(債務整理)の対象とはなりません。
そこで、「自己破産前に残したいカードだけ残額を0円にしておこう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、「自己破産前に特定の支払いだけを優先的に行う」ことは、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、債権者の平等を害する問題のある行為とされています。
偏頗弁済は、破産管財人による「否認権行使」の対象となります。否認権とは、自己破産前の問題のある行為を取り消すことができる破産管財人に認められた特別な権限です。
したがって、偏頗弁済をしても、後に取り消されてしまうので、あまり意味がありません。
それどころか、偏頗弁済がある(ことが疑われる)ときには、破産管財人を選任しなければならないので、差し押さえの対象となる財産が全くない場合(同時廃止になる場合)でも、必ず管財事件となってしまいます。
同時廃止で処理できる事件が管財事件となれば、予納金の負担が20万円(以上)増えることになるので、結局損をするのは債務者ということになります。
自己破産を検討している人には、「自己破産したらいつからカードを作れる・使えるのか」ということが気になる人も多いと思います。
たしかに、今の時代にクレジットカードが1枚もないというのは、スマートな支払いができず格好が悪いと感じることもあるかもしれませんし、ネットで商品を購入する機会が増えた今の環境ではカード決済ができないことはとても不便です。
自己破産後にクレジットカードを作ることができないのは、「信用情報」が原因です。
金融機関から借金のある人が自己破産をすると、そのことが「異動情報(いわゆるブラック情報)」として、信用情報に残ってしまいます。
そのため、クレジットカードの新規発行を申し込んでも、事故情報が残っていることで、審査落ちとなるのです。
自己破産した場合にブラック情報が残る期間は、破産手続き開始の日から5年~10年です。5年~10年と差があるのは、信用情報機関によって規定の年数が違うからです。
日本で営業している金融機関は、CIC、JICC、KSCという3つの信用情報機関のいずれか(もしくは複数)に必ず加盟しています。
この3つの信用情報機関の違いは、設置母体の業種の違いで整理することができます。
JICC加盟の金融機関(消費者金融)のほとんどは、CICにも重複加盟しています。
また、銀行の多くもCICに加盟しています。
自己破産した場合のブラック情報の登録期間は、
となっています。
信用情報にブラック情報があることは、審査の上では重要な判断事項ですが、ブラック情報の有無だけでカード発行の可否が決まるわけではありません。
したがって、「ブラック情報が消えたらすぐにクレジットカードが作れる」とは限りません。
カードを申し込んだ時点での収入などの信用状態が悪ければ、ブラック情報がなかったとしても、カードの発行審査に落ちることがあります(自己破産したことがない人でも審査に通らないことがあるのと同じです)。
特に、ブラック情報がある人の場合には、数年以上「一切の信用取引が行われていない」状況が続きます(信用履歴が全くない状態のことを「スーパーホワイト」ということがあります)。今の社会においては、「数年以上信用取引の実績がない」ということは、収入が不安低、過去に信用事故を起こしているといった事情を疑われる要因になりかねません。
たとえば、カード会社によっては、年収1000万円の人でも、スーパーホワイトであることを理由に審査落ちさせるということもあるようです。
いわゆる喪明け(ブラック情報が消えること)直後に、カードの発行を申し込む際には、できるだけ審査のハードルの低いクレジットカード(限度額が小さいカードや、流通系のハウスカード)から始めることも重要でしょう。
よく誤解されていることですが、(上でも触れたように)ブラック情報があることは、カード発行審査において「重要な基準」ではありますが「絶対の基準」ではありません。
たとえば、法律などで「事故情報のある人にカードを発行してはならない」と決められているわけではないからです。
実際にも、「ブラック情報が残っているのにカードを作れた」という体験談などを目にすることもないわけではありません。
過去に、自己破産の経験がある人でも、勤務先の属性評価が高く(たとえば、一部上場企業の管理職で勤続年数が長い)、持ち家もあるというような他の条件が整っていれば、喪明け前でもカードが作れるということは、十分に考えられます。
また、外資系のカード会社などでは、過去の事故情報よりも、「今の収入額」を重視するという会社もないわけではないようです。
ただし、収入額最重視のカード会社の多くは、「一括払い専用」のクレジットカードしか発行していない場合も多いですので、注意が必要です。
自己破産しても残額0円で手続きの対象とならなかったカードは、破産手続き開始決定の後であれば、利用することは可能といえます。
自己破産の手続きは、「破産手続き開始決定のとき」を基準に負債と積極財産を清算する手続きだからです。
しかし、「自己破産後のカードの利用は最低限度の範囲」に限定すべきといえます。
その理由は次のとおりです。
自己破産をすれば信用情報が汚れてしまっています。手元に残ったカード会社も、信用情報を照会することで、「自己破産があったこと」を事後に確認することが可能です。
実際にも、カード会社は、契約期間の途中であっても一定の場合には、顧客の信用情報を調査しています(これを「途上与信」といいます)。
たとえば、
という場合には、カード会社は顧客の信用情報を照会します。
その結果、過去の自己破産を知られてしまい、突然強制解約を通知される可能性があります。クレジットカード契約では、契約期間中に自己破産したことは(対象が他社の借金の場合でも)解約事由となっているからです。
また、契約更新の際にも、信用情報は必ずチェックされます。したがって、過去の自己破産を理由に手元に残ったカードの更新ができない場合もあることは頭に入れておくべきでしょう(カード会社の判断で問題なく更新できる場合もあります)。
利用残額の残ったカードを失うことなく借金を解決することは、不可能というわけではありません。
たとえば、残したいカード以外の負債・借金を「任意整理」で解決できるのであれば、処分できない事情のあるカードを何とか手元に残したまま、債務整理することも可能といえるからです。ただし、任意整理の場合も信用情報に情報が出ますから、契約更新の際に更新できないこともありますし、途中で解約になることも考えられます。
しかし、「自己破産しなければならない」と考える状況の多くは、すでにかなり多額の借金を抱えてしまっている場合が少なくありません。
任意整理は、自己破産よりも解決可能な借金額の少ない手続きです。任意整理では、将来利息の免除しか生じないため、自己破産よりも減免される借金の程度が小さくなるからです。
他方、「一般の人が自己破産でしか解決できないと考えているケース」には、弁護士から見れば「任意整理でも解決可能」と判断できるようなケースがないわけではありません。
借金や収入状況(勤務先の属性など)によっては、「利息の免除だけでも大幅に借金の負担を減らせるケース」や、「5年を超える分割返済」が不可能とはいえない場合もありうるからです。
したがって、「カードを失わずに借金を解決したい」と思っているときこそ、「自己破産すればカードを失ってしまう」と決めつけるのではなく、「1日でも早く債務整理に着手する」ことが大切です。借金が増えればそれだけ解決の選択肢が減ってしまうからです。
今の私たちの生活ではクレジットカードはなくてはならないもののひとつといえます。
その意味では、自己破産したことでカードが持てなくなることは確かに不便かもしれません。
しかし、借金が返せない状況をそのまま続ければ、自己破産しなくてもカードが使えなくなってしまう可能性も高くなります。信用情報は、自己破産(債務整理)をしなくても、借金を長期間滞納すれば汚れてしまうからです。
また、「借金問題は自己破産でしか解決できない」というわけではありません。
他の債務整理で借金の負担を減らすことで分割払いが可能となるのであれば、任意整理で借金を解決できる可能性も残されています。
カードを使い続けたいと考えるときこそ、早めに弁護士に相談することが、解決の選択肢を多く残すという意味でもとても大切です。
ベリーベスト法律事務所では、それぞれの借金のケースにあわせた最善の解決方法をご提案することができます。返済が苦しいと感じている借金があるときには、できるだけ早くご相談ください。
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借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
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借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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