債務整理 弁護士コラム
払いきれない借金を抱えている方なら、「すぐにでも自己破産で解決したい」と考えることもあるでしょう。
自己破産を申し立てて免責が許可されると、借金の返済義務から解放されます。しかし、自己破産の申し立ての準備から裁判所の免責許可決定が確定するまでには、ある程度の期間が必要です。事案の内容などにより、手続きが長引くことも珍しくありません。
本コラムでは、自己破産で借金問題を解決するためにかかる平均的な期間や、手続きが長引く原因、解決までの期間を早める方法について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
自己破産をするためには、まず裁判所に申し立てる準備のために平均して1~3か月程度の期間がかかります。
申し立て後の自己破産手続きには同時廃止事件・少額管財事件・通常管財事件という3種類のパターンがあり、どの事件となるかによって期間が異なります。それぞれの事件における期間の目安は、以下のとおりです。
同時廃止事件とは、破産手続きが開始決定と同時に廃止されて終了し、すぐ免責の手続きに移る破産事件のことです。債権者への配当に充てるほどの財産がなく、かつ、免責不許可事由がないことが明らかな事案が同時廃止事件となります。
同時廃止事件の手続きは以下の流れで進行し、3種類の破産事件の中ではもっとも短い期間で終了します。
申し立てから免責許可決定までの期間は、3~4か月程度が平均的です。
免責許可決定が確定するまでには、さらに約1か月を要します。申し立ての準備に1か月かかるとすると、合計5~6か月程度で完了となります。
少額管財事件とは、管財事件の中でも手続きが簡略化された破産事件のことです。
管財事件とは、破産管財人が選任され、破産者の財産の管理・処分・配当や免責に関する詳しい調査などが行われる破産事件のことをいいます。
破産者が99万円超える現金、あるいは評価額20万円を超える他の財産を有している場合や、免責不許可事由に該当する疑いがある事案が管財事件となります。
個人の自己破産では、管財事件となる場合でも少額管財事件に付されるケースが大半です。ただし、裁判所によっては少額管財事件を実施していないところもあり、その場合は通常管財事件に付されます。
少額管財事件の手続きは以下の流れで進行し、同時廃止事件よりは少し長い期間がかかります。
申し立てから免責許可決定までの期間は、4~6か月が平均的です。
申し立ての準備に2か月かかるとすると、免責許可決定が確定するまでの約1か月と合わせて7~9か月で完了となります。
通常管財事件とは、破産手続きが簡略化されず破産法の規定どおりに行われる破産事件のことです。換価処分が必要な財産が多くて手間を要する場合や、財産調査に手間を要する場合、債権者と債務者との間に複雑な権利関係がある場合などが通常管財事件に付されます。
手続きの流れは少額管財事件と同じですが、財産調査や財産の換金処分などに時間がかかるケースが少なくありません。債権者集会も複数回にわたって開催されることが多く、3種類の破産事件の中ではもっとも長期間を要します。
申し立てから免責許可決定までの期間は事案の内容によって大きく異なることがありますが、平均的には6~12か月程度です。申し立ての準備に3か月かかるとすれば、免責許可決定が確定するまでの約1か月と合わせて、完了するまでに10か月~1年4か月程度を要します。
自己破産をすると、さまざまなデメリットが生じ、自己破産手続きの終了後も悪影響が残ることがあります。ここからは、自己破産による悪影響がすべてなくなるまでに要する期間について解説します。
管財事件に付されると、破産者宛の郵便物はすべて、破産管財人に転送されます。財産調査や免責に関する調査のために、破産管財人が郵便物の内容を確認する必要があるからです。
管財業務が終了すれば郵便物を転送する必要性がなくなるため、最終の債権者集会の終了をもって転送が解除されます。その後は、元どおり破産者の自宅に郵便物が届くようになります。
同時廃止事件の場合は、郵便物の転送は行われません。
破産者になると、一部の職業に就けなくなったり、転居(2泊以上の宿泊を伴う旅行や出張を含みます)には裁判所の許可を要したりするという悪影響が生じます。
ここにいう「破産者」とは、破産手続き開始決定を受けてから免責許可決定が確定するまでの人のことです(破産法第2条4項、第255条1項1号)。
免責許可決定が確定すると、職業や転居の制限は解除されます。免責許可決定が出ても、約1か月後に確定するまでの間は制限が続くことに注意が必要です。
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、新規の借入やクレジットカードの利用などが難しくなります。いわゆる、ブラックリストに掲載された状態です。
この事故情報が削除されて信用情報が回復するまでには、5~7年かかる可能性があります。正確には、以下の表のとおり、信用情報機関によって事故情報が削除されるまでの期間が異なります。
信用情報機関 | 事故情報が削除されるまでの期間 |
---|---|
JICC | 免責許可決定が確定するまで |
CIC | 免責許可決定から5年 |
KSC | 破産手続き開始決定から7年 |
自己破産手続きが長引く原因として、主に以下の3点が挙げられます。
財産状況が複雑な場合には、破産管財人の業務処理に時間を要するため、自己破産手続きが長引く傾向にあります。
数多くの財産があるために調査や換価処分に手間がかかるケースや、なかなか買い手が見つからない財産があるケース、売掛金のなどの債権回収が難しいケースなどで、管財の手続きが長引きがちです。
債権者は、免責の申し立てに対して異議(破産法第251条1項)を述べたり、免責許可決定に対して即時抗告(同法第252条5項)をしたりすることが可能です。
異議を述べられると、反論・再反論といったやりとりが繰り返されることがあります。即時抗告をされると、高等裁判所で免責の是非が審理されます。どちらも、手続きが長引く原因です。
大手の金融機関や貸金業者がみだりに免責に反対することはありませんが、個人の債権者は感情的になって異議申述や即時抗告をすることがあるので、注意しましょう。
弁護士に依頼せず自分で自己破産を申し立てた場合も、手続きが長引くことになりがちです。
申立書類の不備で補充や訂正に手間を要することが多い上に、受理されても管財事件に付される可能性が高まります。
破産管財人とのやりとりでも、法的な知識がなければ的確に対応することが難しいことから、手続きがスムーズに進まない可能性が高いのです。
4章では、自己破産手続きにかかる期間を短縮し、早期に解決できる方法を紹介します。
裁判所の手続きにかかる期間は、破産者の都合で左右することができません。しかし、申し立ての準備を速やかに行えば、その分だけ解決までの期間を短縮することが可能です。
弁護士に自己破産を依頼した場合は、弁護士の主導で準備を進めていきます。依頼者としては、弁護士から指示された書類を効率よく集めて提出するとともに、打ち合わせなどの打診があれば速やかに応じることが大切です。
同時廃止事件となれば、管財事件よりも早期に自己破産手続きが終了します。
不動産があれば申し立て前に任意売却をしておく、預金や生命保険などは現金に換えて保管しておくなど、同時廃止事件となる可能性を高めるために工夫できることはいくつかあります。
ただし、自己判断で財産を処分すると財産隠しを疑われ、管財事件に付されたり、免責が不許可となったりすることにもなりかねません。弁護士に依頼し、指示に従った方がよいでしょう。
自己破産の手続きをスムーズに進めるためのもっとも有効な方法は、弁護士に依頼することです。弁護士は債務者の代理人として手際よく手続きを進めるので、自分で申し立てるよりも期間短縮につながる可能性が高まります。
ただし、自己破産の手続きに慣れていない弁護士は手間取るおそれもあるため、債務整理の実績豊富な弁護士に依頼することが重要です。
自己破産にかかる期間は、同時廃止事件なら準備期間を含めて5~6か月程度ですが、管財事件になると1年を超えることもあります。
少しでも期間を短縮するためには、弁護士に依頼した上で、自己破産の申し立て準備や手続きの進行に積極的に協力することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理専門チームの経験豊富な弁護士が自己破産の申し立てから免責許可決定まで、全面的にサポートいたします。自己破産をお考えの方は、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。
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債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
借金問題の解決手段として自己破産を選択すれば、裁判所から免責許可を得られた場合に限り、原則としてすべての借金返済義務が帳消しになります。
ただし、自己破産の強力な借金減額効果を享受するには、自己破産特有の「財産処分」というデメリットに注意が必要です。特に会社員の方が自己破産をする場合は、退職金という大きな財産の扱いが問題になります。
本コラムでは、自己破産をしたときの退職金の取り扱いについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。自己破産手続きは、財産処分以外にも注意すべき点が少なくありません。想定外のデメリットを被る事態を避けるためにも、事前に弁護士までご相談ください。
多額の借金を背負っても、自己破産をして免責が許可されれば借金はゼロとなり、人生の再スタートを切ることができます。
実際、令和3年、自己破産を裁判所に申請し受け付けられた件数は、6万8240件でした。(令和3年司法統計第105表 「破産新受事件数 受理区分別 全地方裁判所」より)
とはいえ、自己破産をしてしまうと、その後の生活においてさまざまな制限に悩まされることになると考えている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、自己破産をすると、その後の生活への影響がゼロというわけではありません。しかし、実は多くの方が心配しているほど制限された生活を余儀なくされるわけでもありません。自己破産後の生活が気になる方は、本コラムを参考にしてみてください。
自己破産とは、返済できなくなった借金から解放されるための法的手続きです。
しかし、自己破産を申し立てても、必ず借金の返済義務が免除されるとは限りません。「免責」が許可されて初めて返済義務が免除され、借金から解放されます。
本コラムでは、自己破産における免責とは何か、どのようなケースで免責が許可されないのかについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。免責許可を受けるための手続きや、免責許可が難しい時の対処法も解説するので、ぜひ参考にしてください。