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時効の援用とは? メリット・デメリットや手続き方法を弁護士が解説

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更新日:2025年09月18日 公開日:2023年05月25日

時効の援用とは? メリット・デメリットや手続き方法を弁護士が解説

消費者金融などの債権者に借金をしてから、お金を返済しない状態が一定期間続いた場合、「時効の援用」という手続きによって借金をゼロにできる可能性があります。

これは、消滅時効の制度によるものです。時効の援用を行うには、メリットだけではなく、デメリットも存在することに注意しましょう。

本コラムでは、時効の援用とは何か、時効のメリット・デメリットや手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。

1、時効の援用とは? 時効の援用を行うメリット・デメリット

借金をゼロにするにあたって、時効の援用とは具体的に何かを知っておくことは重要です。この章では、時効の援用に関する概要やメリット・デメリットについて説明します。

  1. (1)時効の援用とは?

    時効の援用とは、債務者(お金を借りている側)が債権者(お金を貸している側)に対して、「時効が完成したので借金の返済はしません」という意思表示をする手続きです

    借金には消滅時効があるため、お金を借りてから返済しない状態が一定期間続けば時効が完成し、借金の返済義務を免れる可能性があります。

    消滅時効は、期間の経過により自動的に認められるのではなく、消滅時効の利益を受ける人がその効果を主張しなければなりません。これが「時効の援用」です。

    債務者は、時効期間が経過した後、時効の援用をすることで借金をゼロにすることができます

  2. (2)時効の援用のメリット

    時効の援用には、以下のようなメリットがあります。

    ① 借金がなくなる
    時効の援用をする最大のメリットは、借金の金額にかかわらず、借金をゼロにできることです。時効期間の経過後に時効の援用をすることで、借金が帳消しになります。

    ② ブラックリストの掲載情報が消える
    借金の返済をせずに滞納している状態だと、信用情報機関に事故情報が登録されます。これが、一般的に「ブラックリストに載る」と表現されているものです。
    時効を援用して借金の返済義務がなくなると、ブラックリストの掲載情報も抹消されます。ただし、事故情報が抹消されるまでの期間は信用情報機関によって異なるため、時効の援用後、すぐに抹消されるとは限りません。

    ③ 自己破産ほど手間がかからない
    借金の返済義務をなくす方法には、時効の援用以外にも自己破産という手続きがあります。自己破産は、裁判所に申し立てをして免責許可決定を得ることで借金の返済義務をなくすことができますが、準備や申し立て手続きなどに時間と手間がかかることに注意が必要です。
    これに対して、時効の援用であれば、基本的には配達証明付きの内容証明郵便を利用して時効援用の意思表示をするだけでよいため、自己破産に比べて簡単な手続きで借金をゼロにすることができます。

    ④ 勤務先や家族にバレにくい
    時効の援用は、基本的に債権者に時効援用の通知書を送るだけでできる手続きです。自己破産などの債務整理の手続きに比べて、借金のことが勤務先や家族にバレにくいというメリットがあります。

    ⑤ 財産を失わずに手続きができる
    自己破産は、一定額以上の資産はすべて手放して債権者への返済に充てなければなりませんが、時効の援用であれば、財産を失わずに手続きを行うことができます。
  3. (3)時効の援用のデメリット

    時効の援用には、以下のようなデメリットがあります。

    ① 時効を援用した先の金融機関は利用できなくなる可能性がある
    時効の援用をすることで信用情報機関の事故情報は抹消されますが、金融機関は独自の社内記録(社内ブラックリスト)を保有していることがあります。
    そのため、時効の援用先である金融機関で、新たにクレジットカードの発行やローンを申し込んだとしても審査に通らない可能性が高いことに注意が必要です。

    ② 時効の援用を失敗すると、遅延損害金を含めた借金の元本を一括請求される可能性がある
    時効の援用に失敗すると、債権者からの請求が再開し、遅延損害金を含めた借金の元本を一括請求される可能性があります。そして、滞納期間が長くなればなるほど遅延損害金が増えていくため注意が必要です。

2、時効の援用を行う手続き方法と流れ

時効の援用をするには、以下のような方法・流れで行います。

  1. (1)消滅時効期間が経過しているかを確認

    時効の援用をするには、借金の消滅時効期間が経過している必要があります

    借金の消滅時効期間は、原則として借金の返済期日または最終返済日から5年です。
    まずは契約書や督促状、信用情報機関への照会などの方法により、消滅時効期間が経過しているかどうかを確認するようにしてください。

  2. (2)時効の援用の意思表示をするため、時効援用通知書の作成

    消滅時効期間の経過が確認できたら、時効援用の意思表示をするための「時効援用通知書」を作成しましょう

    時効の援用は口頭でも行うことができますが、証拠が残らないため、後日トラブルになるリスクがあります。そのため、書面により時効援用の意思表示をするのが一般的です。

    なお、時効援用通知書には、以下のような事項を記載します。

    • 時効援用通知書を作成した日付
    • 債権者の住所および会社名
    • 債務者の住所および氏名
    • 時効の援用を行う旨の意思表示
    • 借金を特定するための情報(債務者の生年月日、借入契約年月日、借入額、契約番号など)
    • 信用情報機関からの事故情報削除依頼
  3. (3)配達証明付き内容証明郵便で時効援用通知書を送る

    時効援用通知書が完成したら、配達証明付き内容証明郵便を利用して、債権者に時効援用通知書を送付します

    配達証明付き内容証明郵便を利用することで、以下の事項を郵便局が証明してくれるため時効の援用をした証拠を残すことが可能です。

    • 差出日
    • 文書の内容
    • 差出人と受取人
    • 文書が届いた日付
  4. (4)債権者からの反応を待つ

    債権者に時効援用通知書を送付した後、債権者から時効を認める旨の連絡があることもあれば、何も返答がないこともあります

    1か月経過しても何も連絡がないときは時効援用が成功した可能性が高いといえますが、必ずしも時効援用が成立したとは限らないため、以後の請求や訴訟提起の有無を注意深く確認しましょう。

  5. (5)債権者が認めないときは法的手続きを進める

    時効援用通知書を受け取った債権者から「時効の成立を裁判で争う」との連絡がきたときは、債権者から裁判を起こされる可能性があります

    このようなケースでは、裁判で消滅時効が成立していることを主張・立証していくことが必要です。法的対応が必要になるため、弁護士に相談して対応するのが望ましいでしょう。

3、消滅時効の援用ができないケースと借金問題を解決する別の方法

この章では、消滅時効の援用ができないケースと消滅時効の援用以外で借金問題を解決する方法について説明します。

  1. (1)借金の消滅時効の援用ができないケース

    以下のようなケースでは、消滅時効の援用をしても借金をゼロにすることはできません。

    ① 時効の完成猶予
    時効の完成猶予とは、一定の事由が生じることで時効期間の進行がストップし、時効の完成が先延ばしにされる制度です

    時効の完成猶予となる事由には、以下のようなものがあります。

    • 裁判上の請求(裁判上の請求、支払督促、訴え提起前の和解、調停、破産・再生・更生手続きへの参加):事由が終了するときまで時効の完成が猶予される
    • 強制執行(強制執行、担保権の実行、形式競売、財産開示手続き):事由が終了するときまで時効の完成が猶予される
    • 仮差押え、仮処分:事由が終了したときから6か月経過するまで時効の完成が猶予される
    • 催告:催告時から6か月経過するまで時効の完成が猶予される
    • 協議を行う旨の合意:権利に関する協議を行うという合意が書面でされた場合は、その時から6か月経過するまで時効の完成が猶予される
    • 天災その他避けることのできない事変:事変が消滅したときから3か月経過するまで時効の完成が猶予される


    ② 時効の更新
    時効の更新とは、一定の事由が生じることで時効期間の進行がリセットされ、新たにゼロから時効期間がスタートする制度です

    時効の更新事由には、以下のようなものがあります。

    • 裁判上の請求(裁判上の請求、支払督促、訴え提起前の和解、調停、破産・再生・更生手続きへの参加):確定判決などにより権利が確定したときに時効が更新される
    • 強制執行(強制執行、担保権の実行、形式競売、財産開示手続き):途中で終了することなく手続きが完了したときに時効が更新される
    • 承認:承認があったときから時効が更新される


    債権者に1円でも返済してしまったり、返済する意思を示してしまったりすると、これらは「承認」に該当し、時効が更新(リセット)されてしまうことに注意が必要です。

    ③ 時効の援用を許されない性質のものである
    時効完成後に一部でも借金の返済をしたり、借金の存在を認めてしまったりすると、時効完成後の債務承認となり、信義則上時効の援用が制限されてしまいます
    時効完成後の債務承認があれば、債権者は「もはや時効の援用をしないだろう」という期待を抱くため、そのような期待を保護するために債務者の時効援用が制限されてしまうのです。

  2. (2)時効援用ができないときは債務整理を検討

    時効援用に失敗すると、債権者から遅延損害金を含めた借金の一括返済を求められてしまいます。大幅に増加した借金の返済が難しい状況であれば、早めに弁護士に相談して債務整理を行うようにしましょう。

    債務整理とは、借金の返済負担を軽減または免除できる手続きであり、主に以下の3種類の手続きがあります。

    • 任意整理:裁判所を通さずに債権者と直接交渉して将来利息のカットや返済条件の変更を行う手続き
    • 自己破産:裁判所に申し立てをして、すべての借金を原則としてゼロにする手続き(※税金や養育費など一部の債務は免責の対象外)
    • 個人再生:裁判所に申し立てをして借金を大幅に減額し、残りを原則3年(最長5年)で返済する手続き


    債務整理の3つの方法には、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがありますので、最適な方法を選択するためにもまずは弁護士に相談することがおすすめです。

4、時効の援用に関する5つのよくある質問

4章では、時効の援用に関するよくある質問とその回答を紹介します。

  1. (1)借金の時効はいつからカウントをスタートする?

    借金の時効は、借金の返済期日または最終返済日からカウントしていきます。借金の返済期日または最終返済日から5年を経過していれば、基本的に消滅時効を援用することが可能です。
    なお、債務の承認や裁判上の請求などにより時効が更新・猶予されている場合は、起算点が変わることがあるため、ご注意ください。

  2. (2)連帯保証人も時効の援用ができる?

    連帯保証人は、保証債務の消滅時効の援用ができるとともに、主債務の消滅時効を援用することもできます。
    ただし、主債務に時効の更新事由が生じたときは連帯保証人にも効力が生じますので、主債務者が借金の返済を続けている間は、主債務の消滅時効を援用することはできません。

  3. (3)時効の援用をしたことで借金が家族にバレることはある?

    通常、時効の援用手続きは債権者とのやり取りのみで完結するため、家族に知られることはほとんどありません。例外的に、債権者からの連絡が家族に届いた場合などは知られる可能性もあります。

  4. (4)時効の援用後でもクレジットカードは作れる?

    時効の援用によって信用情報機関の事故情報が抹消されれば、新たにクレジットカードを作ることが可能です。
    ただし、金融機関は独自の社内記録(社内ブラックリスト)を保有しているため、過去に滞納をしたことがある金融機関ではカードの審査に影響する可能性があります。

  5. (5)時効の援用は自分でもできる?

    時効の援用は、個人でもできる手続きですが、知識や経験に乏しい方では時効援用に失敗するリスクがあります。
    時効の援用に失敗すると、遅延損害金を含めた借金の元本を一括請求される可能性があるため、借金問題に知見がある弁護士に任せた方が確実です。

5、まとめ

借金の返済期日または最終返済日から5年を経過した後であれば、消滅時効の援用をして借金をゼロにすることができます。

ただし、借金の時効には時効の完成猶予や更新制度があるため、単純に期間の経過だけでは判断できないケースもあることに注意が必要です時効の援用に失敗しないようにするためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします

ベリーベスト法律事務所では、時効の援用や債務整理などのお悩みについてご相談を受け付けております。借金に関するご相談は何度でも無料となっておりますので、まずはお問い合わせください。債務整理専門チームの弁護士が借金問題を迅速に解決すべく、サポートいたします。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 13万1237件
  ※集計期間:2010年12⽉〜2024年12⽉末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約410名の弁護士が在籍
※2025年4月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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