債務整理 弁護士コラム
破産手続きの申し立ては、債務者自身が自力で行うことも認められています。
破産を考える人の多くは、「お金に不安がある」人がほとんどなので、「できるだけ安く済ませたい」と自分で破産申し立てすることを考えている人もいるかもしれません。
たしかに、同時廃止となるケースであれば、申し立てを自分で行えば、2万円弱と安い費用で、借金問題を解決できる可能性があります。
そこで、今回は、破産申し立てのやり方について、裁判所に提出しなければならない書類や納付しなければならない費用などについて解説していきます。
破産の申し立てを自分ですべきか、弁護士に頼むべきかで迷っている人は特に参考にしてみてください。
破産手続きの申し立ては、「申立書」を裁判所に提出することで行います。
法律の規定の上では、裁判所の窓口で「口頭」による申し立てをすることも可能なことになっています。
ただ、実際に口頭で申し立てをしても、受け付けてもらえることはないでしょう。
口頭で申し立てをされると、裁判所が申し立て内容を正しく把握できない可能性があるからです。
なお、現在の実務では、破産手続き開始の申し立てをするのと同時に、免責手続きの申し立ても行うのが一般的です。破産する人は、免責を受けるために破産をする訳ですから、免責も同時に申し立てをするのです。
破産の申し立てをすることができるのは、債務者本人と債権者です。
よく「自己破産」といわれるのは、債務者本人が破産を申し立てることをいいます。
実際の破産の大半は自己破産ですが、毎年200件程度の債権者申し立てがあります。
破産の申し立てをする裁判所は、どこでもよいというわけではありません。
破産の申し立ては、「破産者(自己破産の場合は自分)の住所地を管轄する地方裁判所」に行わなければなりません。
破産手続きの申立書は、それぞれの裁判所で交付しているひな形に必要事項を記載することで作成するのが一般的です。
ひな形は、裁判所の窓口で交付しているほか、インターネットでもダウンロードできる場合があります。
また、申立書の記載例(注意点をまとめた用紙)も、窓口・インターネットで入手できる場合もあります。
それぞれの地方裁判所のWEBサイトを確認してみると良いでしょう。
破産申立書は、裁判所に出してもらいたい判断内容(結論)と、その判断を求める理由を記載するものです。
破産の申し立てにおいて、裁判所に求める判断内容は、
の2点です。
判断を求める理由としては、「債務者が支払い不能にある」ということを記載することになりますが、実務的には、債務者が支払い不能であることの疎明(そめい)は、添付書類(証拠の類いとなる資料)で行うのが一般的です(添付書類については4、で解説しています)。
一般的な破産申立書の記載例は、下記のとおりです。
上記のうち「申し立ての趣旨」の部分が、裁判所に求める判断内容(破産手続き決定・免責決定において申立人が希望する主文)に該当するものです。
申し立ての理由の部分では、破産を求める理由(破産要件を満たしていることの説明)を記載するのですが、実務では、上の記載例で示したように、詳細の説明は添付書類に譲ることが一般的です。
なお、裁判所に提出する書面は、次のルールに基づいて作成することが慣例となっています。
破産申し立ての際には、添付書類がとても重要です。
債務者の借金や保有財産の状況は、添付書類を通じて、裁判所に説明を行うからです。
破産申し立ての際に提出が必要な添付書類は、下記のものがあります。
陳述書には、「破産申し立てをするに至った事情(ストーリー)」を具体的に記載する必要があります。
陳述書に記載されるべき項目としては、
を挙げることができます。
記載方法は、文章形式でも、箇条書き形式でもどちらでも、書きやすい方で記載してかまいません。
債権者一覧表には、
を記載する必要があります。
債権者一覧表は、破産手続きを進める上でとても大切なものです。
破産手続きは、「債務者が抱えている『すべての借金』」を対象に手続きを進めなければならないからです。
そのため、債権者一覧表の作成は、債権者に漏れがないように、慎重に行う必要があります。
特定の債権者を意図的に除外するようなことがあれば、「免責不許可」となることがあるので、正直に裁判所に申告しましょう。
たとえば、「家族や知人からの借金」は、「破産とは関係ない」と勘違いしている人が少なくありません。
また、他人の連帯保証人となっている場合も、「忘れてしまっている」ことがあるので注意しましょう。
「家計の全体状況の報告書」は、債務者の生活状況を裁判所が把握するための資料です。
この報告書では、毎月の収入・支出の状況を詳細(家賃・光熱費・通信費・交際費などの細かい費目ごと)に記入しなければなりません。
また、報告しなければならないのは、債務者の家計の収入なので、配偶者や子ども、親と同居しているような場合には、これらの者の収入・支出も含めて記載する必要があります。
破産手続きは、厳密には、債務者の財産を換価して債権者に配当することを目的としている手続きです。
そのため配当の原資となる財産状況を裁判所に報告するために、資産目録を提出しなければなりません。
資産目録は、以下に示すような「破産手続きによって差押えの対象となりうる財産」をすべて記載しなければなりません。
差し押さえを受けたくないからと、特定の財産を故意に深刻しなかった場合には、同時廃止の案件でも管財事件となったり、免責不許可となる可能性があるだけでなく、詐欺破産罪(財産隠匿)に問われる可能性もあります。
破産を申し立てる際には、裁判所に手数料などを納付しなければなりません。
裁判所に納める破産の費用としては、
があります。
申立手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納付します。
破産手続きの申立手数料は下記のとおりです。
破産手続きは、債権者への公告を行うために、債務者の氏名などを官報に掲載する必要があります。
官報掲載のための費用は、この記事を作成している時点では下記の金額です(免責分も含めた金額)。
官報掲載費用は、現金納付となります。
予納金は、申し立てた破産事件が「管財事件」となったときに必要となる費用で、破産管財人の報酬に充てられるものです。
予納金の金額は、裁判所ごとに定めることができますが、「個人の場合は50万円」、「法人の場合に70万円(以上で、負債額に応じて高くなる)」がひとつの目安額となります。
なお、弁護士に依頼して破産を申し立てた場合には、予納金が少額となる手続き(「少額管財」などの名称で呼ばれています)を利用することができます。
少額管財の場合の予納金は、20万円が目安となります。
破産手続きを申し立てるときには、裁判所が債務者・債権者に書類などを送付する際に用いる郵便切手も予納しなければなりません。
納める郵便切手の種類・枚数は、それぞれの裁判所によって指定が異なりますが、それぞれの裁判所の売店で、「破産申し立て用のセット」として販売しているのが一般的です。
裁判所に破産を申し立てても、すぐに破産手続きが始まるわけではありません。
申立人からの申し立てを受けて、裁判所は「本当に破産手続きを始めても良いか」ということを審理しなければならないからです。
したがって、破産を申し立てたらすぐに、財産を差し押さえられたり、仕事に就けなくなる(資格が使えなくなる)というわけではありません。
裁判所は、破産申し立てを受理すると、破産手続き開始の可否を判断するために、「破産審尋(しんじん)」と呼ばれる期日を開催することがあります(裁判所によって異なります)。
破産審尋は、申し立てから1~3週間後の時期に開催されるのが一般的で、申立人(債務者)も出席するのが原則です。
破産申立書・添付書類・破産審尋の結果をふまえて、「破産手続きを開始してもよい」と裁判所が判断したときには、「破産手続き開始決定」が出されます(従前は、「破産宣告」と呼んでいたものです)。
破産手続き開始決定が出されたことをもって、「破産者の財産を破産管財人が管理する」などの、破産手続きの法律上の効果が初めて発生します。
自己破産したことによる資格制限が生じるのも、破産手続き開始決定のときが基準日となります。
破産申し立ては、債務者が自分自身で行うことも認められています。
しかし、実際には、破産の申し立てをするときには、弁護士に依頼して行った方が有利な場合が多いといえます。
破産事件に限りませんが、弁護士に依頼をすれば、書類作成のほとんどをお任せにすることができます(ただし、破産の場合には、本人にしか分からないこともあるので、最低限の協力は必要です)。
また、弁護士に依頼している場合には、破産審尋の期日に出頭する必要もありませんから(東京地裁などの場合。裁判所によっては債務者本人も出頭が必要です。なお、東京地裁なども免責審尋には出頭する必要があります。)、破産申し立てにかかる当事者の負担はかなり軽くなります。
破産を申し立てるときには、上で解説したような書類を作成しなければなりません。
裁判所に提出する書類には、さまざまな決まりごとがあるだけでなく、専門的な知識がなければ正しく作成するのが難しいもの場合もあるでしょう。
提出した書類に不備があると、申し立てが「棄却」、「却下」の対象となる可能性があります。
また、記載内容が不十分であったことで、「財産隠し」、「債権隠し」を疑われたことで、本来なら同時廃止となるべき案件でも管財事件として取り扱われてしまうこともあります。
破産を申し立てる債務者にとっては、破産事件が「同時廃止」となった方が、すべての負担が軽くなります。
同時廃止になれば、予納金の負担がないだけでなく、開始された破産手続きがすぐに終わるので、免責までの期間も短くすることができます。
同時廃止になるか管財事件となるかは、
で決まります。
実際の案件は、差し押さえ可能な財産についても、免責不許可事由に該当するかどうかについても、「グレーな場合(あるともないとも一概にいえない)」が少なくありません。
弁護士に依頼して破産を申し立てた場合には、グレーな案件の場合でも、「同時廃止」にしてもらえる可能性があります。
「弁護士がきちんと調査した結果」や、「弁護士が破産者を管理(指導)すること」については、裁判所から一定の信頼があるからです。
本人申し立ての場合には、管財事件となった場合の「予納金」が50万円からと負担が重くなってしまいます。
弁護士に依頼している場合には、予納金は「20万円」程度になることが一般的です。
弁護士がついている案件であれば、破産管財人の業務負担が少なくなるので、その分だけ予納金(破産管財人の報酬額)を安くすることができるというわけです。
以上のように、破産の本人申し立ては、
といった点で、弁護士に依頼した場合よりも不利となる可能性が高いといえます。
破産の申し立てに必要な書類は、時間を掛ければ、弁護士ではない一般の人でも作成することは不可能ではありません。今ではネットなどで詳細な記入例なども入手できるからです。
しかし、弁護士に破産申し立てを依頼するのは、「代わりに書類を作ってもらうため」だけではありません。
実際の破産申し立てでは、「同時廃止にすべきかどうか」といった点について、裁判所と弁護士との間でタフな交渉が行われている場合も少なくないのです。
万が一、管財事件となってしまえば、弁護士に依頼しなかったことで、逆に多額の予納金を負担しなければならなくなってしまいます。
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