債務整理 弁護士コラム
2017年3月、生活保護を受けている「被保護世帯」が過去最多となったことが厚労省の発表で明らかとなりました。さらに、生活保護世帯の51%が高齢者とされており、この数は年々増加の傾向をたどっています。
現在、仕事があって安定して収入が得られている人も、自分自身や家族の将来に向けての備えを少しでも進めておかなければなりません。退職後の生活のために十分に備えていたはずが、突然の出費で生活に困窮する「老後破産」に陥る世帯も増えています。
この記事では、
•老後破産の主な原因と付随要素
•老後破産を避けるための対策
•老後の収支のシミュレーション
について、具体例を交えて解説していきます。将来もらえる年金に不安のある方や、老後破産を避けてゆとりある生活を送りたいという方は、ぜひ参考になさってください。
老後破産の主な原因は、「予想外の」多額の出費です。次のようなケースが予想外の出費を招きます。
① 病気、怪我
予想外の多額の出費の最たるものが、病気や怪我の治療費です。高齢者の病気や怪我の例としては、認知症、脳卒中、骨折、関節症などが挙げられます。介護が必要となれば、治療費の他に介護費用などもかかり、経済的に大きな負担となります。
② 家のリフォーム
家の老朽化に加え、病気や怪我による車いす対応やベッドの新調などでリフォームが必要となるケースがあります。たとえば車いすに対応したリフォームは玄関、リビング、お風呂、トイレなど多方面に亘るため、高額なリフォーム費用がかかってしまいます。
③ 家族の事故、不祥事
家族が病気や怪我をした、あるいは不祥事の賠償金を肩代わりするなども予想外の出費と言えるでしょう。
予想外の出費以外に、次の付随要素も老後破産の懸念材料となります。
① 生活水準を落とせない
一般的に、会社員の方は定年を迎えると収入が減ります。自営業の方であっても、体力の低下などで40代・50代の頃に比べると働ける時間も少なくなるでしょう。しかし、安定した収入があった頃の生活水準を老後もキープするとなれば、収入は減ったのに支出はそのままという状態で生活を続けていかなければなりません。当然ながら、徐々に生活が苦しくなっていきます。
② 老後のための貯蓄をしていない
働き盛りの40代・50代の頃は、老後の生活に必要なお金がイメージしづらいものです。定年を迎えて収入が減る前にお金の対策をしておかなければ、いざ老後を迎えたときに生活費が賄えなくなってしまいます。
③ 自立しない子どもの生活費
最近では40代・50代の中高年引きこもりも増えており、子どもの生活費を支払い続けることが老後破産の引き金となるリスクも考えられます。
とくに贅沢な生活をしていたわけでも、詐欺被害に遭ったわけでもなく、ごく普通の生活を送っていたのに老後の生活が苦しくなったという人は少なくありません。
老後の生活は20年、30年と続きます。老後の生活が苦しくなった方の多くが「こんなに長く生きるとは思わなかった」と振り返るそうです。若いうちには想定するのが難しい老後破産、回避するためにはどのような対策を講じれば良いのでしょうか?
老後破産を避けるために、早くからやっておくべき対策を紹介します。
病気や怪我、介護など、人生で起こりうる一般的なリスクに対しては、社会保険制度(健康保険、介護保険、年金保険)があります。ただし、社会保険制度だけでは全てのリスクはカバーできません。たとえば、万が一がんになった場合、手術や化学療法、放射線療法の高額な費用は社会保険制度ではカバーできません。
がんなどの大きな病気については、生命保険、事故については損害保険など、起こり得る事態を予測し、必要な保険を検討することが重要です。
前述のように、働き盛りの40代・50代の頃から老後のための蓄えを考えておく必要があります。老後を迎えてみないとどれだけ貯金が必要かはわかりにくいですが、一般的に老後生活に必要な自己資金の目安は1700万~3200万円とされています。
さらに、挽回のきく年齢においては、可能であれば資産形成も視野に入れると良いでしょう。資産形成は将来への備えです。代表的なものに株式投資や投資信託、手軽に始めるなら「NISA」などが有名ですが、投資は失敗の可能性もあります。自己責任ですので慎重に検討してください。
人生の三大費用は「住宅・教育・老後」と言われます。住宅を賃貸するか購入するか、子どもを私立に入れるか公立に入れるかなど、選択肢がいくつか考えられるときは慎重に、老後のことも視野に入れたベストな選択をしましょう。
老後もゆとりある生活を送るためには、夫婦で月額34.9万円のお金が必要とされています。夫婦2人の老後の生活を考えたとき、どのような出費が考えられるでしょうか?
食費や光熱費、水道代などをはじめとした必要経費は、なかなか出費を減らすことが難しい支出でしょう。65歳以上の夫婦2人の1か月あたりの消費支出は、26万円ほどになるという調査もでています。
よりゆとりある生活を送るためには、洋服代や旅行も含めた日々の交通費用、趣味に関わる出費なども想定しておきましょう。1か月あたりどれくらいかかるか、というように計算しておくと、必要経費と合わせて計算がしやすいです。
退職後の収入をシミュレーションしてみます(2019年11月現在)。以下の夫婦で考えてみましょう。
【シミュレーション】
会社員として64歳まで40年間、平均的な収入で働いていた会社員の夫と、同い年でずっと専業主婦をしてきた妻
1か月の年金額:約21万8000円
(内訳)
夫と妻の基礎年金:約12万8000円
夫の厚生年金:約9万円
年金には国民年金(基礎年金)と厚生年金があり、65歳になると会社員の方は基礎年金+厚生年金が、専業主婦の方は国民年金(基礎年金)が受け取れます。年金は加入期間やそれまでの年収によっても金額が変わります。
なお、現在65歳以上で公的年金だけで生活する世帯は、全体の54.1%にのぼります。
現在、定年後の働き方として継続雇用がもっとも多く希望されています。一般的には退職後に雇用条件を引き下げたうえで再雇用されるというケースがほとんどです。
定年後も働いている男性の6割以上が定年前と同じ企業やそのグループで継続雇用をしており、再雇用者の4割近くが定年前の年収の「50%~75%未満」で働いています。
前項シミュレーションの男性が平均年収約700万円で64歳まで働き、退職して継続雇用となった場合、平均年収は約350万円~525万円、月収は額面で約30万円~43万円です。
退職金制度や企業年金制度のある会社に勤めていた場合、定年退職後はその支給対象となります。大学卒で入社、定年退職した人の退職金の平均は、大企業で2489万円、中小企業で1139万円です。ただし、退職金は企業ごとに計算方法が異なるため、同じ勤続年数でももらえる金額が変動します。
2017年の家計調査報告によると、「夫65歳以上・妻60歳以上のみの無職世帯」の実収入は20万9198円。1か月あたりの必要経費は約27万円とされていますが、前述の通り、ゆとりのある生活を送るためには、夫婦で月額34.9万円必要です。そのため、ゆとりある生活のためには年金以外に約15万円のお金が必要という計算になります。
この数字を目安に、具体的なこれからの貯蓄や年金保険の検討、定年後の職をどうするかなど、これからの家計の計画を立ててみてはいかがでしょうか。
老後破産の最大の問題は、「(老齢する前に比べて)労働によって収入を得ることができない」という点です。
現在借金をしていて、まだ働ける年齢であるならば、いますぐ借金を整理して、将来にわたって収入を得られる仕事を見つけることが望ましいでしょう。債務を整理するには、借金問題の解決経験が豊富な弁護士に相談されることをおすすめします。
老後破産は誰の身にも降りかかる可能性がある問題です。現在の「65歳から年金支給」も、今後年齢が引き上げられる可能性があり、決して「しっかり働いていれば老後は安泰」と楽観視できる状況ではありません。
「備えあれば憂いなし」というように、いま働き盛りで老後の生活を想像できないとしても、本稿で紹介したような老後の対策をおすすめします。
もし借金でお困りなのであれば、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。借金問題の解決経験が豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせたお悩みの解決方法をご提案いたします。
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債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
住民税とは、都道府県や市区町村といった自治体がさまざまな行政サービスを住民に提供するための費用に充てられる税金のことです。正式名称は「市町村民税」や「都道府県民税」など地域によって異なりますが、この2つを総称して住民税と呼びます。
会社などに勤務している方は、住民税のことをあまり意識したことはないかもしれませんが、自営業の方などは住民税の他にも国民年金保険料や国民健康保険料をはじめとして、さまざまな税金や公共料金を自分で納めなければなりません。
全ての納付額を合計するとそれなりの金額になってしまうので、支払うのが厳しい場合もあるでしょう。また、支払い忘れによって滞納してしまうこともあるはずです。
本コラムでは、住民税を滞納するとどうなるのか、財産の差し押さえはいつどのようにして行われるのか、どうしても住民税の滞納を解消できないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
住民税滞納により、お困りの方のご参考になれば幸いです。
受任通知とは、債務整理を始めるときに弁護士や司法書士が債権者宛てに送付する書面をいいます。
債務整理を検討している方の中には、借金を滞納してしまい、連日のように債権者からの取り立てを受け、落ち着いて生活できないという方が少なくありません。
そんなときでも、受任通知の送付後、債権者に書面が届いた時点で一時的に取り立てや返済をストップすることが可能です。ただし、受任通知の送付にはいくつかのデメリットもあるため、あらかじめ注意しておくべきことがあります。
本コラムでは、受任通知とは何か、弁護士に債務整理を相談してから取り立てが一時的に止まるまでの流れ、受任通知を送付する前に注意しておくべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
債務を整理すると信用情報機関に事故情報が登録され、新たな借り入れができなくなるなどのデメリットが生じます。俗にいう「ブラックリスト」に載せられた状態となります。
しかし、ブラックリストによるデメリットは生活が困難になるほど深刻なものではありません。それに、事故情報は一定期間の経過後に削除されます。いたずらにブラックリストへの掲載を恐れず、正しい知識を持って債務整理するかどうかを検討することが重要です。
今回は、債務整理でブラックリストに載るとどうなるのか、その状態はいつまで続くのかについて解説します。