債務整理 弁護士コラム
破産先行をしたら、どうなるのでしょうか? 「破産宣告を受けたら楽になるらしいけど、実際に手続きをしたら今の生活がどうなるのか不安……」と悩まれている方も少なくないようです。
破産宣告は、現行法においては「破産手続開始決定」といい、自己破産を裁判所に申し立てた後、裁判所が破産の手続きを開始することです。
破産宣告を受けると、あなたが現在負っている借金はすべて返済義務を免除してもらうことができます。
ただし、破産によって受けられるのはメリットだけでなく、デメリットもあります。十分に理解した上で破産手続きすべきかどうかの選択をすることが大切です。
本コラムでは、
●破産は実際にどのように手続きが進んでいくのか?
●破産を選択すると今の生活がどうなるのか?
●破産にはどういったデメリットがあるのか?
について具体的に弁護士が解説します。
まずは「実際に破産の手続きを選択した場合、どのような流れで手続きが進んでいくのか?」について確認しておきましょう。
破産手続きの流れは、ごく大まかにいうと以下のようになります。
それぞれの項目について、順番に解説していきます。
実際に申し立てを行う裁判所によって多少異なる可能性がありますが、破産手続きは以下のような書類が必要となります。
必要書類が手元にそろったら、裁判所に破産手続きの申し立てを行います。
破産手続きには「①同時廃止事件」と「②管財事件」の2種類がありますので、順番に説明します。
①同時廃止事件での手続き
手続き開始の時点で、お金に換えられるような財産が何もないという状態の場合は、「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」として破産手続きが行われます。
同時廃止事件の場合、管財人(破産手続きの中であなたに代わって財産を管理する人)の選任が必要ありませんので、非常に簡便に手続きを進めることができます。
同時廃止の場合の破産手続きの流れは、まず、裁判官と面接を行い、問題がなければ自己破産手続き開始の決定が出て、次の面接日が指定されます。もう一度裁判官と面接(免責審尋といいます)を行い、問題がなければ免責許可決定が出ます。
免責許可決定が出てさらに1ヶ月後に借金の免除が確定することになります。
なお、「同時廃止」という名前は手続き開始と「同時」に、「廃止(=終了)」となることからこのような名前がついています。簡単にいえば、「債務者の破産手続き(財産を分配するための手続き)を進めてもできることがないので、手続きを廃止(終了)します」ということです。
②管財事件での手続き
管財事件とは、同時廃止事件とは逆に、あなたに借金を返済するための財産がある程度あるケースのことです。
破産管財人(破産者の財産を管理する人:通常は弁護士です)が財産の換価処分(売却してお金に換えること)を行い、最終的に配当という形で債権者に平等に分配を行います。
管財事件では、次のように手続きが進んでいきます。
まず、裁判官と面接を行い、問題がなければ自己破産手続き開始の決定が出て、次の面接日が指定されます。破産手続き開始が決定されると、破産管財人の選任について打ち合わせをします。
同時廃止事件と管財事件の大きな違いは、管財事件ではあなたの代わりにあなたの財産を管理する破産管財人が選任される点です。管財人となる弁護士の事務所に打ち合わせに行くように指示されますので、指定された期日に訪問しましょう。
その後、債権者集会と免責審尋が行われます。債権者集会とは、あなたが借金をした相手に対して、あなたの状況や破産手続きの進め方について管財人が説明を行う手続きを言います。
この集会により、破産債権者は、債務者が今どのような状況にあるのか、そしてどれくらい配当をしてもらえるのかなどの情報を得ることになります。
債権者集会は、自己破産手続き開始の決定が出てから、3ヶ月程度で第一回目の集会が開かれるのが一般的です。
免責許可もしくは不許可の決定がされたあと、配当期日に管財人によって財産の換価処分が行われ、債権者に対して適当な財産が配当された段階で、破産手続きは終了します。
破産手続きには、どのような費用がかかるのでしょうか?
お金がないから自己破産をするというのに、多くの費用がかかってしまわないか心配……という方もいらっしゃるかと思います。
同時廃止事件、管財事件それぞれにかかる費用は、以下のとおりです。
破産手続きを弁護士に依頼した場合、弁護士に対して支払う費用がかかりますが、どれぐらいの費用がかかるかは弁護士事務所によってさまざまです。
ベリーベスト法律事務所の費用については、以下のページをご参照ください。
それでは、実際に免責許可が出た場合、その後の生活にはどのような影響があるのでしょうか?
免責許可が出た後のことについて説明する場合に、「そもそも自己破産の申し立てをしても、免責許可が出ない(借金が0円にならない)可能性があること」を理解しておいてください。
破産によって借金の免責を裁判所に認めてもらうには、一定の条件をクリアする必要があるのですが、もしもこの条件をクリアできない場合には、あなたの借金は残ったままになってしまうのです。
免責許可をもらうために必要な条件としては、次の2点があります。
「免責不許可事由」とはその名のとおり「免責許可を出してもらえない条件」のことです。
具体的には次のようなことがあります(これに該当してしまうと、免責が認められません)。
借金を作った理由が、ギャンブルや風俗などの場合には、債務者に落ち度があるとして、免責が認められない可能性があります。
ただし、これらは「法律上はダメ」という扱いになっているものの、実際には裁判官があなたの今後の生活態度などを見ながら柔軟に判断しているのが実際のところです(これを裁判官の「裁量免責」と呼びます)。
「借金がどうしようもなくなったら、最後の手段として自己破産がある」というのは事実ですが、そのための条件もあるということは理解しておいた方がよいでしょう。
免責許可が出て、晴れて借金が0円になったとしましょう。しかし、実は免責許可後にも残ってしまう債務というのが存在します。
具体的には未払いとなっている税金や社会保険料、他人に対して負っている損害賠償債務や家族の養育費支払いなどが含まれます。
※これらについては、後ほど詳しく解説いたします。
破産をすると、「借金をすべて免除してもらえる」という大きなメリットがありますが、デメリットも存在します。
自力では返済できない借金を負ってしまった場合に自己破産を選択するのはやむを得ないことですが、自己破産によるメリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
以下では、免責許可が出た場合のメリット・デメリットについて具体的に解説いたします。
自己破産手続きを行い、裁判所に免責許可を出してもらうことには以下のようなメリットがあります。
以下で順番に解説します。
①借金の支払義務が0になる
免責が確定すれば、その時点で借金は免除され、債権者からの借金の取り立てはなくなります。
これが破産によるもっとも大きなメリットといえるでしょう。
②免責決定後も生活していくために必要な財産は残してもらえる
自己破産による免責では、借金を0にしてもらえる代わりに、あなたが所有している財産は債権者に引き渡さなくてはなりません。
とはいっても、「生活するために必要なすべてが没収されるのか」というと、決してそうではありません。
生活をするための必需品(テレビやエアコンを含む最低限の家財道具)や、現預金100万円まで(東京地方裁判所の場合)は破産手続き後もあなたの財産として持ち続けることができます。
一方で、破産をすることのデメリットとして次のようなことがあります。
こちらも順番に見ていきましょう。
①クレジットカードやカードローンが使えなくなる
破産をすると、金融機関の情報ネットワーク(信用情報機関と呼びます)に事故情報が掲載されます。いわゆる「ブラックリスト」として扱われてしまうため、10年間はクレジットカードやカードローンが新たに利用できなくなります。
破産手続き後は収入の範囲内で生活していけるように準備をしておくことが大切です。
②換金価値のある財産は没収される
破産手続き開始の時点で、あなたが所有している「換金価値のある財産」は、お金に換えて債権者に引き渡さなくてはなりません。
具体的には、次のような財産を失うことになります(手続きをする地方裁判所によって若干異なります)。
目安として「20万円を超える財産は没収される」と考えておきましょう(現金は例外です)。
しかし、言い方を変えれば、20万円未満であれば没収はされないということができます。一般的に生活必需品は20万円を下回る額のものが多いでしょうから、その多くは残すことができます。
③その他のデメリット(官報掲載や手続き期間中の資格制限)
官報とは、国が刊行している新聞のようなものです。
法律の改正があった際の公示や、破産や相続などに関する裁判内容が掲載されています。
しかし、官報を読むには購読料がかかりますし、内容的には一般の方にはほとんど関係のないものばかりです。
そのため、官報に名前が載ったとしても、そこからあなたが自己破産の手続きを行ったことがバレてしまうリスクは少ないといえるでしょう。
また、一部の資格が制限されるというデメリットもありますが、これは自己破産の申し立てから免責が決定される間の期間だけです。
申立内容によっても前後しますが、一般的には3ヶ月~半年ほどで解除されることがほとんどでしょう。
破産にはこのようなデメリットがありますが、実際は、人生を壊してしまうほどの大きなデメリットはないといえます。
破産(自己破産手続きとその結果として出される免責許可決定のこと)が認められれば、借金は帳消しになります。
しかし、厳密に言うと「借金のすべて」が消えるわけではなく、以下のものは引き続き支払義務が残りますので、注意しておきましょう。
破産宣告後も、次のような債務は免責されません(支払義務が残ります)
破産手続きを開始した時点で未納となっているものに加えて、破産手続きが完了した後に発生するこれらの債務については、支払義務を免れることができません。
科料や罰金などに関しても、税金と同じく支払う義務のある債権であり、破産後であろうと免除されることはありません。
自己破産はあくまでも「借金苦からの救済制度」ですので、これらの債務は支払う必要があります。
自己破産をすると、あなたが他人に対して負っている損害賠償の支払義務は免除されます。
しかし、故意による(わざと)他人を傷つけたような場合や、あなたに重大な過失があることが認定された事故による損害倍書義務については免除してもらうことができません。
たとえば、危険運転致死傷罪が成立する悪質な交通事故を起こした場合などは、損害賠償を支払う義務があります。
婚姻に関わる分担金や扶養義務、または子どもがいて離婚した場合の養育費などは、破産後も支払う必要があります。
従業員への未払いの給料、退職金、社内預金、または身元保証預かり金などに関しては、破産後も支払いを逃れることはできません(個人事業主の場合)。
破産の手続きは、本人(あなた)が自力で行うことも法律上は認められていますが、実際にはほとんどの人が弁護士と相談しながら手続きを行っています。
弁護士に破産手続きの相談をすることのメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
法律に関する知識がない人が、自己破産の準備や実際の手続きを行うのは非常に難しいというのが実際のところです。
裁判所の手続きは日中の昼間に行われるうえ、必要書類を集めるのにも大変な労力がかかってしまいます。
法律のプロである弁護士に相談をすることで、より早く、そしてよりトラブルのない解決が望めるでしょう。
弁護士に相談した場合、当然ながら弁護士に対して支払う費用が発生します。
『自己破産を考えているのに、弁護士に対してもお金を払わないといけないなんて……』としり込みしてしまう方もいらっしゃるでしょう。
自己破産手続きでは、裁判所に対して支払う費用(管財事件の場合20万円程度)が必要ですから、これに加えて弁護士費用が必要となるのは大変な負担となります。
しかし、この弁護士費用は『自己破産の全ての手続きが終了してから少しずつ分割で支払っていく』ということも可能です。
毎月の支払額についても柔軟に相談に乗ってくれる弁護士事務所がほとんどですから、検討してみる価値はあるでしょう。
実際に相談する弁護士を選ぶときは、「自己破産手続きの経験が豊富な弁護士か」を確認しておく必要があります。
具体的には、次のようなポイントを参考に依頼する弁護士を選ぶようにしましょう。
これらを総合的に判断し、相談を依頼するかを決めましょう。
無料相談を行っている弁護士であれば、実際に相談をしてみて相手の人間性を見きわめておくのも有効です。
今回は、破産によって借金を免除してもらうための条件や、具体的な手続きの流れについて解説いたしました。
返せない金額の借金を負ってしまっている人の場合、破産は人生をリスタートさせるためにはとても効果的な方法といえます。
破産をすることにはデメリットもありますが、これらが回復不能なほどの問題となるケースは実際問題として少ないでしょう。あなたが現在、返せない金額の借金返済に苦しんでいるのであれば、破産手続きを行うことをぜひ検討してみてください。
その際は自分一人で考えるのではなく、弁護士と相談しながら手続きを進めていくことが賢明といえます。借金問題、自己破産などでお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
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借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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ただ、自己破産後に生活を立て直すために努力をしても、事情があって再び借金を抱えてしまい、再度、自己破産をする必要性が出てくることもあるでしょう。
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