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奨学金を滞納すると起こり得ること|滞納率や滞納額の実態・対策とは?

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更新日:2019年06月13日 公開日:2019年06月13日

奨学金を滞納すると起こり得ること|滞納率や滞納額の実態・対策とは?

『奨学金を滞納してるけど、バレずに済まないのかな……?』
奨学金の滞納に対し、このように軽い考えをもっている方もいるかもしれません。

『ちょっとくらい返済が遅れても大丈夫だよね!』
またはこのように、滞納によるリスクを軽視している方もいるかもしれません。

しかし、このどちらの考えも実はとても危険であり、滞納を続けることはリスクがあります。
独立行政法人日本学生支援機構Webサイトには、このような文言があります。

“本機構では、返還金を延滞すると、本人、連帯保証人、保証人に対して、文書と同時に電話による督促を行うこととしております。”
引用元:独立行政法人日本学生支援機構

このように、独立行政法人日本学生支援機構より、遅延に対する督促が文書や電話などで届き、それによって生活のあらゆる場面で大きなデメリットが生じる可能性があるのです。

そこでこの記事では、日本学生支援機構から奨学金を借りている方を対象に、

・奨学金を滞納し続けるとどうなるのか?
・実際のところ、どれだけの人が奨学金を滞納しているのか?
・奨学金を滞納してしまったらどうすればいいのか?

などについて、詳しく見ていきたいと思います。
この記事があなたにとっての参考になれば幸いです。

1、奨学金の返済を滞納し続けると起こり得ること

それではまず、奨学金の返済を滞納し続けることによって起こり得ることについて、主な4つをご紹介していきます。

  1. (1)ブラックリストに載る

    まず考えられるのは、信用情報機関に事故情報が登録される、いわゆるブラックリストに載るというリスクです。

    ブラックリストに載ることで、自身の信用が傷つき、その後クレジットカードなどが作れなくなるなどの影響があります。

    ブラックリストに載った事実は、家族や知人に知られることはありません。
    ですが、クレジットカードが作れなくなることは、生活をする上での大きなデメリットにもなりかねないでしょう。

    3ヶ月間滞納を続けると、ブラックリストに載る可能性が高いです。

  2. (2)他のローンなどが契約しづらくなる

    ブラックリストに載ることで、他のローンなども契約しづらくなります。

    たとえば、

    • 住宅ローン
    • 自動車ローン
    • 携帯電話の割賦購入
    • 家賃保証のついた賃貸契約


    などです。

    あらゆる場面で、大きな影響が出ることが予想されます。

  3. (3)延滞金が上乗せされる

    奨学金を滞納し続けることで、返済の際延滞金が上乗せされ、通常より高い金額を返済する必要が出てきます。

    どれくらいの延滞金が上乗せされるのかについては、後ほど解説いたします。

  4. (4)財産の差し押さえ

    奨学金を滞納し続けると、最終的に財産の差し押さえが行われます。これは、裁判所からの強硬手段といえる対応です。

    まず、滞納が長期間続くと、裁判所を通じて『支払督促の発付』の通知が送付され、これを14日間無視することで、今度は裁判所から『仮執行宣言付支払督促』正本が送られてきます。これが意味するのは、『そろそろ強制執行をしますよ?』という最後通知です。

    ここからさらに14日間無視を続ければ、強制執行が可能となり、財産の差し押さえが行われるという流れになります。

    ここまでくると、もはや抵抗することはできません。奨学金を滞納し続けることは、非常に大きなリスクがあるといえるでしょう。

2、滞納するとどのくらいの延滞金が上乗せされるのか

奨学金を滞納することで、どれだけの延滞金が上乗せられるのでしょうか?

延滞金は、第一種奨学金と第二種奨学金の2種類に分けられ、それぞれによってその割合が変わってきます。

  1. (1)第一種奨学金の場合

    第一種奨学金の延滞金は、その採用年度が平成17年3月以前の場合と、平成17年4月以降の場合で異なってきます。

    ①採用年度が平成17年3月以前の場合
    採用年度が平成17年3月以前で、かつ平成10年2月以前に貸与が終了し、年1回払込用紙で返還する場合は、その延滞金の考え方は以下のとおりです。

    “延滞している割賦金の額に対して、各返還期日から6月を経過した日(以下「延滞金賦課日」という。)ごとに、その6月について延滞金賦課日が平成26年3月31日までに該当するときは5%、平成26年4月1日以降に該当するときは2.5%の割合を乗じて計算した額の合計額が賦課されます。”
    引用元:日本学生支援機構

    また、採用年度が平成17年3月以前で、かつ平成10年3月以降に貸与が終了、または平成10年2月以前に貸与が終了し、口座振替の手続きを行って返還する場合は、延滞金は以下のようになります。

    “延滞している割賦金の額に対して、各返還期日から6月を経過した日(以下「延滞金賦課日」という。)ごとに、その6月について延滞金賦課日が平成26年3月27日までに該当するときは5%、平成26年3月28日以降に該当するときは2.5%の割合を乗じて計算した額の合計額が賦課されます。”
    引用元:日本学生支援機構

    ②採用年度が平成17年4月以降の場合
    採用年度が平成17年4月以降の場合には、貸与終了年度にかかわらず、その延滞金は以下のようになります。

    “延滞している割賦金の額に対して、返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて、平成26年3月27日までは年(365日当たり)10%、平成26年3月28日以降は年(365日当たり)5%の割合を乗じて計算した額の合計額が賦課されます。”
    引用元:日本学生支援機構

  2. (2)第二種奨学金の場合

    第二種奨学金の延滞金は、その採用年度は関係なく、貸与終了年度によって変わってきます。

    ①平成10年2月以前に貸与が終了し、年1回払込用紙で返還する場合
    平成10年2月以前に貸与が終了し、年1回払込用紙で返還する場合、第二種奨学金の延滞金は以下のとおりです。

    “延滞している割賦金(利息を除く)の額に対して、返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて、平成26年3月31日までは年(365日当たり)10%、平成26年4月1日以降は年(365日当たり)5%の割合を乗じて計算した額の合計額が賦課されます。”
    引用元:日本学生支援機構

    ②平成10年3月以降に貸与が終了、または平成10年2月以前に貸与が終了し、口座振替の手続きを行って返還する場合
    平成10年3月以降に貸与が終了、または平成10年2月以前に貸与が終了し、口座振替の手続きを行って返還する場合には、延滞金は以下のようになります。

    “延滞している割賦金(利息を除く)の額に対して、返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて、平成26年3月27日までは年(365日当たり)10%、平成26年3月28日以降は年(365日当たり)5%の割合を乗じて計算した額の合計額が賦課されます。”
    引用元:日本学生支援機構

3、奨学金の実態|滞納率や滞納額とは?

日本学生支援機構によると、2015年度末時点の奨学金の延滞額は、約880億円にものぼるそうです。これはまさに、奨学金を返済するということに対し、重要感や危機感が薄れている結果だといえるでしょう。

また、全国の大学の奨学金延滞率は平均1.3%、5%以上の大学は7校存在するそうです。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、やはり880億円という延滞額を考えると、軽視できないデータといえるでしょう。

4、なぜ奨学金を滞納してしまうのか?

多くの学生が奨学金を延滞してしまう理由とは、いったい何なのでしょうか?

日本学生支援機構の調査による、奨学金の延滞が始まったきっかけは、以下のとおりです。

第1位:「家計の収入が減った」69.2%
第2位:「家計の支出が増えた」43.0%
第3位:「入院、事故、災害等にあったため」19.2%
第4位:「忙しかった」14.3%

また、延滞が継続している理由については、以下のような調査結果が出ています。

第1位:「本人の低所得」と回答した者が64.5%
第2位:「奨学金の延滞額の増加」47.5%
第3位:「本人の借入金の返済」30.9%

引用元:日本学生支援機構

就職先の給料が低かったり、家族ができたことで支出が増えたりなど、家計が圧迫されることによって奨学金を支払えなくなる、という方が多いのが現状です。
奨学金制度を利用したときは、現在の状況を予測できなかったでしょうから、ある意味では仕方のないことかもしれません。

しかし、そう言っていても解決はしませんし、滞納を続けることによって、自らの首を絞めることにもつながりかねませんから、督促が届く前、もしくは届いた段階で、早めに返済をすることが何よりも大切です。

5、奨学金を滞納しそうになったら

もしも奨学金を滞納しそうになったら、以下のような方法で、それに対応するようにしましょう。

  1. (1)猶予制度を利用する

    もしも返済が難しいなと感じたら、すぐに各奨学金窓口にその旨を伝えましょう。
    ほとんどの場合、奨学金返還の猶予を認めており、返還の猶予が認められれば、その時点で返還がストップします。

    これまでの滞納分が免除されるわけではありませんが、それ以降の延滞については加算されないため、慌てて返さなくてはと焦ることもなくなるでしょう。

    日本学生支援機構ではその猶予について、たとえば以下のような条件に該当することで利用できるようになります。ぜひ併せてご覧ください。

    • 留学する場合
    • 国内の大学や大学院、またはその他の学校に進学する場合
    • 新卒後、極端に収入が少ない場合
    • 国内外で研究員として勤務する場合
    • 災害や事故に遭った場合
    • 産休中・育児中の場合


    参考:日本学生支援機構

  2. (2)奨学金を免除してもらう

    身体的、または精神的障害により返済ができなくなった場合、奨学金が免除される可能性があります。
    それらに該当すると思われる方は、日本学生支援機構に相談をし、免除してもらえるかを確認してみましょう。

  3. (3)減額返済制度を使う

    減額返済制度とは、毎月の返済額を減らして返済していく制度のことです。

    “減額返還制度は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方を対象としています。
    一定期間、当初約束した返還月額を減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長します。毎月の返還額を減額するため、無理なく返還を続けることができます。
    願い出るためには、提出いただく証明書が、一定の要件に合致しなければなりません。
    1回の願出につき適用期間は12か月で最長15年(180か月)まで延長可能です。”
    引用元:日本学生支援機構

    引用元の日本学生支援機構のページにもそれについて詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。
    また、少しでも不安なことがあれば、直接相談をしてみましょう。

  4. (4)債務整理をする

    返済額がかさみ、生活苦が限界に達する前に、債務整理をすることも効果的な方法です。
    債務整理をすることで、債務が全てなくなったり、債務の一部が免除されたりし、毎月の返済額を少なくすることができます。

    債務整理というと、あまり良いイメージはないかもしれません。
    しかし、債務整理には、借金に悩む毎日から解放されるという絶大な効果があります。

6、差し押さえられる財産がない…は通用する?

『自分は価値のある財産はもっていないから差し押さえはされないだろう』
そのようにお考えの方もいるかもしれません。
しかし、差し押さえはそのような財産だけではなく、給料を差し押さえられることもあります。

給料の全てが差し押さえられてしまうのかと考えるかもしれませんが、そんなことは決してなく、給料から税金などを控除した残額の4分の1までが、差し押さえの対象になると定められています。

また、その他の財産の差し押さえに関しては、民事執行法により、以下のように定められています。

“第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
(以下略)”
引用元:民事執行法第131条

このように、家財道具もその全てが差し押さえられるわけではありませんので、ご安心ください。

7、まとめ

今回は、奨学金を滞納した際のリスクや対応策について、解説してきました。

奨学金を滞納し続けることは、はっきり言ってよいことはありません。督促が届く前に、遅くても何度も督促が届かないうちに、その返済を済ませることがベストです。

もしも返済が難しければ、その旨を日本学生支援機構や各種奨学金相談窓口に相談し、対策を仰ぐようにしましょう。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約360名の弁護士が在籍
※2024年2月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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