債務整理 弁護士コラム
貸金業者からの借金やクレジットカードの利用代金は、最後の取引から5年で時効が完成します。このとき、「時効援用」をすることで、借金の返済義務がなくなることをご存じでしょうか。
しかし、信用情報機関に事故情報が登録されていた場合、時効援用によって信用情報がすぐに回復するのかというと、そうとは限りません。その後も一定期間、事故情報が残る可能性があります。
本コラムでは、時効援用が信用情報に及ぼす影響や、時効援用によってJICC・CIC・KSCに登録された事故情報がいつ消えるのかについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理チームの弁護士が解説します。
まずは、時効援用とは何か、信用情報とは何かを確認したうえで、時効援用が信用情報にどのような影響を及ぼすのかをご説明します。
貸金業者やクレジットカードに対する債務の消滅時効期間は、最後に取引をしてから5年です。ただし、この期間が経過したからといって、自動的に債務が消滅するわけではありません。
時効によって借金の返済義務を免れるためには、債権者に対して「時効が完成したので返済しません」という意思表示を行う必要があります。この意思表示が「時効援用」といわれるものです(民法第145条)。
時効援用の方法に決まりはないので、口頭で伝えるだけでも意思表示としては有効です。しかし、証拠を残しておかなければ再び債権者から請求される可能性もあるため、「消滅時効援用通知書」を作成し、内容証明郵便で債権者宛てに送付するのが一般的です。
信用情報とは、貸金業者からの借り入れや各種ローン、クレジットカードの利用など「信用取引」の申し込みや契約、利用残高、返済状況といった客観的な事実に関する情報のことです。
以下の3つの信用情報機関におけるデータベースには、それぞれの加盟業者の申込者や顧客の信用情報が個人ごとに登録されています。
加盟業者は、加盟している信用情報機関に照会することで、他の加盟業者が登録した信用情報も確認できるようになっています。延滞などの事故情報が登録されている個人は、業者から「支払い能力に問題あり」と判断されてしまいます。
そのため、信用情報機関に事故情報が登録されていると、借り入れやクレジットカードなどの利用が難しくなるのです。
信用情報は信用情報機関が何らかの調査をして登録するものではなく、加盟業者が信用情報機関のデータベースに登録するものです。したがって、時効援用した事実も、その借金の債権者が、顧客に関する客観的事実として、加盟している信用情報機関のデータベースに登録します。
ただし、時効援用の情報が登録されたことによって事故情報がいつ消えるのかについては、信用情報機関によって取り扱いが異なります。
ここでは、信用情報機関ごとに、時効援用によって事故情報がいつ消えるのかをご説明します。
借金の返済を長期間延滞すると、JICCには「延滞」という事故情報が登録されます。この事故情報は、原則として延滞を解消したうえで、さらに5年が経過するまで消えません。
しかし、時効援用の情報が登録されると、事故情報は時効の起算日にさかのぼって削除されます。つまり、JICCのデータベース上は初めから延滞がなかったのと同じ状態になるのです。他に事故情報が登録されていなければ、すぐに借り入れやクレジットカードなどの利用が可能となります。
ただし、時効援用をしてから事故情報が削除されるまでには、手続き上の問題で1か月程度かかることに注意が必要です。
CICでは、借金の長期延滞は原則として「異動」という事故情報として【返済状況】の欄に登録されます。ただ、「異動」も「延滞」と同じ意味です。延滞解消から5年間は削除されないことも、JICCの場合と同じです。
この場合、時効援用をすると【返済状況】の欄に「完了」という情報が登録されることになります。その後の5年間、CICのデータベースにはこの情報が残り続けます。その間に借り入れやクレジットカードなどを利用できるかどうかは、各貸金業者やカード会社の審査次第となります。
例外的に、CICでは【返済状況】の欄ではなく【支払い遅延有無】や【遅延有無】の欄に延滞による事故情報が登録されることもあります。この場合、時効援用するとすぐに事故情報が削除されます。
つまり、CICでは、時効援用しても5年間は事故情報が消えない場合もあれば、すぐに消える場合もあるということです。どちらの取り扱いとなるかはCICに情報開示請求をして確認しないとわかりませんが、多くの場合は5年間、事故情報が残ります。
KSCに事故情報が登録されるケースとして多いのは、銀行カードローンを延滞した場合です。銀行カードローンを長期間延滞した場合には保証会社が代位弁済を行うため、「代位弁済」という事故情報がKSCのデータベースに登録されます。この事故情報は、登録から5年間、保有されます。
そして、時効援用をしたとしても代位弁済の事故情報には影響がありません。そのため、代位弁済から5年が経過する前に時効援用をしても、すぐに事故情報は消えません。一方で、代位弁済から5年が経過した後に時効援用した場合は、すでに事故情報は消えています。
もし、代位弁済の後に保証会社から請求されて債務を承認したり、裁判を起こされて判決が確定していたりするような場合は、時効完成が遅くなります。その場合には、時効援用する時点ですでに事故情報が消えている可能性が高いことになります。
借金の消滅時効期間が経過したら、放置せず速やかに時効援用すべきです。そうしなければ、以下のリスクが生じてしまいます。
債務者が時効援用しない限り、債権者はまだ請求権を失っていません。時効完成後に支払いを請求してくる貸金業者やクレジットカード会社も少なくないので、注意が必要です。
時効完成後であっても、時効援用をする前に債権者から請求されて1円でも返済した場合や、返済を約束した場合、返済の猶予を求めた場合などは「債務の承認」となり、時効が更新されてしまいます(民法第152条1項)。
時効の更新とは、それまで進行していた時効期間がリセットされてゼロに戻ることです。そのときからさらに5年が経過するまで、時効援用ができなくなってしまうことになります。
JICCとCICに登録された延滞の事故情報は、延滞解消から5年が経過するまで削除されないのが原則です。時効が完成しても時効援用をしなければ、JICCとCICのデータベースには「延滞」という事故情報が残り続けます。
そのため、いつまでも借り入れやクレジットカードなどの利用ができないままとなる可能性があることに注意が必要です。
時効援用をした後は、借り入れやクレジットカードの作成などを申し込む前に、信用情報から事故情報が削除されたかどうかを確認しましょう。
手違いなどで事故情報が残っていると審査に通らず、申し込みを拒否された事実も一種の事故情報として6か月間登録されるため、その後の信用取引に支障をきたすおそれがあります。
JICC、CIC、KSCでは信用情報の開示請求制度が用意されています。これは原則として本人からの開示請求が必要です。スマホ、パソコン、郵送、窓口で請求できますが、具体的な請求方法は信用情報機関によって異なります。手数料も信用情報機関ごと、請求方法ごとに異なり、500円~1200円です。
念のために3つの信用情報機関すべての信用情報を確認したうえで、借り入れやクレジットカードなどの作成を申し込むようにしましょう。
もし、事故情報が消えているはずのケースで消えていない場合は、信用情報機関ではなく、加盟業者と交渉して登録情報を訂正してもらう必要があります。
時効援用をすると借金の返済義務はなくなりますが、信用情報機関に登録された事故情報がすぐに消えるとは限りません。
また、時効期間が経過しても、状況によっては時効が更新されていて、時効が完成していないケースもあるため、時効援用の手続きを正しく行うことが大切です。
そのため、借金の時効が気になったら一度、弁護士に相談することをおすすめします。
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お金を借りた債務者本人に代わって、第三者が借金などの債務を返済するケースがあります。このような第三者弁済が行われるケースは少なくありませんが、あらゆる場合に第三者弁済が有効となるわけではありません。
また、第三者が弁済する場合であっても、民法上の「第三者弁済」には該当しないことがあります。第三者弁済に当たるケースとその他のケースの違いについて、知っておいたほうがよいでしょう。
なお、第三者弁済が有効に行われると債権者は満足しますが、弁済した第三者と債務者との間には債権・債務関係が残ることに注意が必要です。
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