債務整理 弁護士コラム
借金などを滞納し続けると、最終的には財産の差し押えを受けることがあります。
ただ、差し押えには一定のルールがあり、あらゆる財産を差し押えられるわけではありません。また、滞納してすぐに差し押えを受けるわけでもありません。
それでも、財産を差し押えられると生活に支障をきたすおそれがあるため、できる限り差し押えは回避すべきです。
この記事で分かること
差し押えとは、金銭債権を有する債権者が、債務者から強制的に債権を回収するために、裁判所に強制執行を申し立て、債務者の財産の処分を禁止することをいいます。
借入先の金融機関によって差し押えられた財産は換価され、その代金が借金の回収に充てられます。
まずは、差し押え手続きの流れを詳しくみていきましょう。
滞納してから差し押えを受けるまでの流れは、以下のとおりです。
債権者としても、できる限り差し押え手続きに手間と費用をかけたくないので、まずは任意での支払いを催促してきます。
滞納がおおむね2〜3か月続くと、債権者から「これ以上、滞納が続くと法的措置をとる」との警告が記載された催告状が送付されます。
それでも支払わなければ、債権者は実際に裁判を起こすでしょう。裁判手続きには「支払督促」と「訴訟」の2種類があります。
裁判所から支払督促が届いた場合は、2週間以内に異議申し立てをしなければ仮執行宣言が付され、その後2週間以内に異議申し立てをしなければ仮執行宣言付支払督促が確定します。
裁判所から訴状が届いたとき(訴訟を起こされたとき)は、放置すると債権者勝訴の判決が下されるため、注意が必要です。
その判決書を受け取ってから2週間以内に控訴をしなければ、判決が確定します。
仮執行宣言付支払督促や判決が確定した場合(または判決に仮執行宣言が付された場合)には、債権者は強制執行を申し立てることが可能となります。
なお、債権者は提訴前でも仮差し押えを申し立てることができますが、保証金などのコストの負担が重いため、一般的な借金回収の事案ではあまり行われていません。
借金などを滞納してから2〜3か月後に催告状が送られてくるところまでは、ほとんどの事案で共通しています。
しかし、その後に裁判を起こす時期は債権者によって大きく異なります。
一般的には滞納から6か月を過ぎた頃から提訴される可能性が高まる傾向にありますが、2〜3か月が経過すると、いつ提訴されてもおかしくない状態です。債権者に提訴され、対応せずに放置した場合は1〜2か月後に差し押えを受けます。
最短で、滞納から3〜4か月で差し押えを受ける可能性があると考えておきましょう。
次に、どのような財産が差し押えられるのかを解説します。
ほとんどの場合は、給料や預金口座が差し押えられます。解約返戻金のある生命保険が差し押えられることも、しばしばあります。
ただ、これらの債権が全額差し押えられるとは限りません。
給料の場合は、以下のものが差し押えられます。
預金口座の場合は、借金額が差し押え額の上限となります。
たとえば、差し押えをした債権者に対する借金が50万円の場合、口座にある預金が60万円であれば50万円のみが差し押えられるのです。
預金が30万円しかなければ、その全額が差し押えられます。
なお、銀行口座は債権者に申告していなくても、財産調査手続きや第三者からの情報取得制度によって知られてしまいます。
自動車や現金、有価証券、貴金属、骨董品、高級時計などの動産も差し押えの対象です。
もっとも、債権者にとって債務者の動産は所在が分かりにくいうえに、金銭的価値も把握しにくいため、一般的な借金回収の事案で差し押えられることはあまりありません。
自宅などの不動産(土地・建物)も、差し押えの対象となります。
もっとも、不動産の差し押え手続きは保証金などのコストの負担が重いため、一般的な借金回収の事案で行われることはめったにありません。
ただ、他に財産がなければ差し押えられる可能性はあるため、注意が必要です。
法律で認められた差し押え手続きといえども、国民の最低限の生活を脅かすことは許されません。
そのため、以下の財産については法律で差し押えが禁止されています。
① 差し押え禁止債権
差し押えが禁止されている主な「債権」は、以下のとおりです。
ただし、年金・生活保護・児童手当が口座に振り込まれて「預金」となった後は、差し押えの対象となることに注意しましょう。
② 差し押え禁止動産
以下のような、最低限の生活に必要な「動産」は、差し押えが禁止されています。
次に、借金を滞納して実際に差し押えを受けた場合、生活にどのような支障が出るのかを解説します。
差し押えを受けると、自分が所有する財産であっても自由に処分できなくなります。
給料を差し押えられた場合、手取り額の4分の3(手取り額が33万円を超える場合は33万円)しか受け取ることができません。預金口座を差し押えられた場合、差し押えられた金額は引き出せません。
これにより、家賃や食費などの生活費の支払いに支障をきたす可能性があるだけでなく、他の借金を返済できなくなることもあるでしょう。
給料を差し押えられた場合、勤務先に裁判所から差し押え命令の通知書が届き、かつ債権者からも連絡が入ります。
そのため、借金を滞納して差し押えを受けたことは、確実に職場に知られてしまうでしょう。
また、どの財産を差し押えられた場合でも、自宅に特別送達で裁判所から差し押え命令の通知書が届きます。
これを家族が受け取ってしまうと、借金を滞納して差し押えを受けたことを知られてしまう可能性が高いです。
職場では評判が悪くなって居づらくなったり、家庭でも場合によっては離婚問題などの家庭不和が生じかねなかったりします。
借金の滞納を放置していると、いずれ差し押えを受けることは避けられません。
差し押えを回避するためには早めに滞納を解消することが望ましいですが、それができない場合は、債務整理をする必要があります。
債務整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産という4種類の手続きがあります。
個人再生または自己破産を申し立てた場合、裁判所の手続きが開始された後は差し押えができなくなります。
任意整理と特定調停の場合は、強制的に差し押えを回避できるわけではありません。
しかし、裁判を起こされる前に手続きを始めれば、債権者も任意での支払いを期待して差し押えを思いとどまる可能性が十分にあります。
債務整理を始める時期が早ければ早いほど、差し押えを回避できる可能性が高まるので、借金の返済が厳しくなったら早めに債務整理を検討しましょう。
すでに差し押えを受けている場合でも、自己破産または個人再生を申し立て、裁判所の手続きが開始されると、差し押え手続きは自動的に中止されます。
特定調停を申し立てた場合も、別途「強制執行停止の申し立て」を行うことで、差し押え手続きを停止させることが可能です。
これらの債務整理手続きが無事に終了した場合は、差し押えはそのまま効力を失います。
すでに差し押えを受けている場合も、早めに債務整理をすることが重要です。
ただし、任意整理では基本的に差し押えを解除してもらうことはできません。
借金の滞納を自力で解消できない場合でも、債務整理によって差し押えを回避することが可能です。
ただし、債務整理をするときは自分の状況に合った手続きを選ばなければ、根本的な問題の解決に至らない可能性があります。
最適な解決方法を選ぶには法律の知識も求められるため、債務整理を検討する際は弁護士にご相談ください。
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結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。