債務整理 弁護士コラム
任意整理後、今月だけ払えないという状況になる場合があるかもしれません。
任意整理をすると借金を減額できますが、3年~5年にわたって返済を継続する必要があります。その間には、急な出費や失業などによって「今月だけ払えない」と困ってしまう場合もあることでしょう。
そこでこの記事では、任意整理(債務整理)後に今月だけ払えないときのリスクと対処法をご紹介します。
まずは、任意整理で債権者と約束したとおりに払えなくなった場合に、どのようなリスクを負うのかを解説します。
何らかの事情で今月だけ払えない場合でも、来月からはまた確実に払えるのであれば、通常直ちに問題が生じることはまずありません。
原則、任意整理の和解書には「返済を2回以上怠ると期限の利益を失う」と記載されています(借金残額を一括請求されてしまう)。逆に言えば、1回怠っただけでは特に不利益を受けることはありません。債権者から「今月分のお支払いはいつになりますか」と尋ねられますが、「来月中に必ず支払います」と答えれば済みます。
ただし、債権者によっては和解書に「1回でも返済を怠ると期限の利益を失う」と記載されていることもあります。その場合には、今月だけ払えなかった場合でも期限の利益を失ってしまいます。期限の利益の意味は、後ほど(3)でさらに詳しく解説します。
今月分を払えず、来月も払えない場合は、返済を「2回以上」怠ったことになるので、期限の利益を失います。
なお、「返済を2回以上怠る」とは、2回分以上の返済金を延滞することを意味します。したがって、1回分の延滞を放置していると、来月は払えてもその後に1回でも延滞すると2回以上怠ったことになるため、期限の利益を失うことに注意が必要です。
2回以上、返済を怠った場合には期限の利益を失い、債権者から残額を一括請求されてしまいます。
期限の利益とは、返済期限までは支払わなくてよいという債務者の利益のことです。分割払いの和解をした場合には、毎月の支払日までに決められた金額を支払えば、残額の支払いを待ってもらえます。
しかし、期限の利益を失うと待ってもらう権利がなくなるため、直ちに残額を一括で支払わなければなりません。通常、一括請求を受けた場合には遅延損害金(消費者金融の場合は14.6%~20%程度が一般的)も加算して支払わなければならないことに注意が必要です。
一括で支払えない場合には債権者から裁判を起こされ、最終的には
などの財産を差し押さえられることになります。
任意整理後に返済が厳しくなったときは、まず和解書を確認しましょう。延滞によって期限の利益を失うのが「1回」なのか「2回」なのかを確認する必要があります。
「2回以上」となっている場合で、今月だけ払えない場合には、何らかの対処が必要不可欠というわけではありません。しかし、今後払えなくなるリスクも考えて、以下の対処をとることをおすすめします。
返済できないことが分かったら、早めに債権者に連絡して、その旨を伝えましょう。
延滞すると債権者の方から連絡がありますが、先にこちらから連絡することで誠意を示すことができます。
債権者に連絡したら、払えない事情を説明した上で、いつまでに支払えるのかを伝えましょう。
延滞したのが1回だけでも、債権者は「この債務者はもう支払えないのではないか」と危惧するものです。いつまでに支払うかを約束することで債権者も安心してくれるでしょう。
今月だけ払えず、来月からは通常どおりに払える場合でも、延滞してしまった分は早めに返済しておくことが重要です。
任意整理で借金を減額したにもかかわらず返済ができなくなるときには、必ず原因があります。事情によっては再度、債務整理をする必要もあるかもしれません。
借金問題を無事に解決するために、1回でも払えなくなった場合はご自身の原因を把握しておきましょう。
今月だけ返済できないという場合は、突発的な出費のために返済資金が不足するケースがほとんどでしょう。
など、さまざまな事情が考えられます。
他にも
などで収入が途絶えた場合は、今後も返済が難しくなる可能性が高いといえるでしょう。
任意整理で和解する際に、毎月の返済額を高めに設定することも払えなくなる原因となり得ます。月3万円なら問題なく払えても、月5万円になると払えないときもあるという方は多いことでしょう。しかし、早期に完済したいという思いが強いと、無理な条件で和解をしがちです。
繰り返しになりますが、3年~5年の返済期間中には誰にでも突発的な出費があるでしょうし、減収や失業の可能性もあります。そのため、任意整理ではある程度の余裕を持った返済計画で和解することが重要です。
借金額が大きすぎて、無理な和解をせざるを得なかったというケースもあります。その場合は、そもそも任意整理に適した事案ではなかったということも考えられます。
任意整理では、借金総額が100万円なら毎月1万7000円~2万8000円程度の返済で済みますが、借金総額が300万円になると最低でも毎月5万円の返済は必要となります。最初から返済が苦しいような場合には、別の債務整理手続きを検討した方がよいでしょう。
任意整理後の返済が2回遅れた場合でも債権者に対して誠実に対応していれば、今後の返済が可能である限り、分割払いの継続を認めてもらえる可能性は十分にあります。
しかし、今後の継続的な返済が難しくなった場合には、再度の債務整理が必要となります。具体的には、以下の対処法が挙げられます。
すでに任意整理をした債権者と、2回目の任意整理をすることも可能です。1回目の任意整理の返済ができなくなった時点で残っている借金について、改めて返済方法を交渉し、再和解をするのです。
ただし、1回目の任意整理ですでに利息はカットされているはずなので、2回目の任意整理で借金を減額することはあまり期待できません。むしろ、遅延損害金が加算されることにより返済総額が増えてしまう可能性が高いといえます。
個人再生では、裁判所の決定によって借金が大幅に減額されます(原則として5分の1、最大で10分の1まで)。任意整理で返済が難しくなった場合でも、個人再生に切り替えれば返済できる可能性は高いといえます。
ただし、
などに注意が必要です。
自己破産で裁判所から免責を許可されると、すべての借金の返済義務が免除されます。失業して無収入の方や、収入が少ない方には自己破産が向いているといえます。
ただし、
などの点に注意が必要です。
任意整理後に「今月だけ払えない」という場合は、それほど慌てて対処する必要はありません。しかし、今後も払えなくなる可能性がある場合には、早めに対処しなければ最終的に財産を差し押さえられるおそれがあります。2回以上延滞してしまった場合には、債務者が自分で債権者と再交渉をするのは難しいことが多いものです。
ベリーベスト法律事務所では、借金問題のご相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
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債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
銀行ローンは、消費者金融からの借金とは異なり、安心感がある上に金利(利息の割合)も消費者金融に比べると低い場合が多いため、利用者も多数いらっしゃいます。
しかし、銀行ローンには総量規制(借り入れできる金額の上限を定める制度)が適用されないこともあり、ついお金を借りすぎてしまって、返済が困難となるケースも少なくありません。
借金の返済が難しくなった場合は、任意整理で毎月の返済額を減額することが有効です。銀行ローンも基本的に任意整理の対象となりますが、消費者金融とは異なる点に注意してください。
本コラムでは、銀行ローンの任意整理について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
任意整理をすると、信用情報に事故情報が登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に登録された状態となり、その後はローンなどの借り入れやクレジットカードなどの利用が難しくなってしまいます。
しかし、一定期間が経過すると事故情報が削除されるので、その状態は解消されます。本コラムでは、任意整理によってブラックリストに登録されるのは、いつからいつまでなのかを解説します。登録期間中に生じるデメリットと対応策も具体的にご紹介しますので、参考になさってください。
弁護士に任意整理を依頼した方のなかには、費用の滞納や、弁護士からの連絡を無視するなどの不誠実な態度をとってしまった方もいるかもしれません。そのような状況では、担当する弁護士に辞任されてしまう可能性があります。
弁護士に辞任されると、債権者から借金返済の督促が再開します。そして督促に対して支払いが滞ったままだと、家や車などの財産を差し押さえられてしまうリスクにつながります。
弁護士に辞任されてしまったとしても、別の弁護士に再度任意整理の依頼をすることは可能です。ただし、再度の依頼には注意点がありますので、しっかりと押さえておきましょう。
今回は、任意整理で弁護士に辞任された場合のリスクや、その場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。